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第82話「TIME3 〜エロ本大作戦〜」

「……私は町には戻らない」


「え? どうして?」


深刻そうなメリーにゴードンが聞く。


「そもそも、なんでこんな下水道に……」


「この町から脱出するためよ」


「え? 脱出?」


メリーは暗い水路の先を見つめたまま静かに語り始めた。


「パオンタウンは、魔術や機械の文明が特に発達した町だったの。人々は魔法や技術を学びに集まってきて、いつも活気があったわ。でもね、ある時この町にブランドーという富豪の集団が目をつけたの。文明そのものを奪うためにね」


ゴードンは息を呑むがメリーは続けた。


「ブランドー一味は、パオンタウンの王にうまい話を持ちかけて、この町の土地や技術を丸ごと手に入れたの。そのとき彼らは、王に“謎の装置”を渡した。城にその装置が設置されてから……王は別人のようになったわ」


暗い下水道に、メリーの声だけが響く。


「誰より民を大切にしてきた王が、今では民を奴隷のように扱っている。逆らえば処刑。民だけじゃない……身内すら処刑すると言い出したのよ」


ゴードンは言葉を失った。


「私はあの装置の正体を暴くために、町を出て情報を集めるつもり。あのまま町にいれば……いつか私も処刑されるかもしれないから」


「そ、そうか、そんなことが……」


「あなたも気をつけた方がいいわ」


「謎の装置か……」


話をしながらしばらく下水道を歩いていると、じめっとした空気が少しずつ軽くなり、前方に薄い光が差し込んできた。


「ここから出れば、とりあえず地上に出られるかな」


ゴードンが先に梯子を上がり、二人は下水道を抜けて地上へ出ることができた。

外の空気は少し埃っぽいが、閉塞した下水道よりはずっとマシだった。


「情報を集めるといってもこの先、アテはあるの?」


「いや、町を出た後は、まだあまり考えてない。でもまずは、ここから離れなきゃ」


二人で話をしていると、とある男がこちらへやってきた。


「探しましたぞ、姫!」


「姫!?」


「オーベン……」


そう、メリーとはアルメリア姫のことだったのだ。

オーベンは待ち伏せしていた。


「やはり私の読み通り、ここから脱出なされましたか。王があなたをお呼びです。参りましょう」


「……」


メリーはゴードンに近づき、ある物を渡した。


「これは……」


「城の秘密の通路の鍵よ。もし、私になにかあったら、あなたに謎の装置を調べてきてほしいの」


「でも、秘密の通路なんて知らないし……」


「そこはあなたが頑張って見つけるのよ」


「姫!!」


「それじゃあね……」


オーベンはゴードンの方を見る。


「若者よ……城には近づかぬことだ……」


そう言い残しオーベンとメリーは去っていった。

ゴードンの手には、ひんやりとした鍵だけが残されていた。


 ♢♦︎♢


ゴードンはハックの所へ向かった。


「おお! 取り返してくれたか! ん? なんじゃ、険しい顔して」


ゴードンはハックに今まであったことを話した。


「なるほど……謎の装置……うーむ……これは昔の話じゃ……このパオンタウンはカルゴスによって滅ぼされたということは姫から聞いておるじゃろ。そして町は荒れ果て、魔法の技術や文明も奪われた。その後、荒れ果てたパオンタウンにカルゴスの手下がやってきた。名前はカーズ。呪術や洗脳術を得意としている。そのカーズという男がパオンタウンの王に話を持ちかけてきた。その話を王は聞き、カーズの話を受け入れたのだ」


「なぜ?」


「さすがに理由までは分からん。パオンタウンの城にいた兵士から聞いた話でな。そしてさっき聞いた話では、今日急遽、カーズが再びパオンタウンに来るらしい」


「なんだって!?」


「謎の装置を調べ、カーズを倒すタイミングは今日くらいしかなかろう」


「でも、地下の下水道の道は多分もう誰かに見つかってるだろうし、秘密の通路もどこにあるか分からない」


「それならワシに考えがある、ちょっと待ってろ」


ハックは発明品を漁り、あるものを取り出した。

ゴードンにラジカセのような物を渡した。


「これは?」


「睡眠用ラジカセじゃ。このラジカセにセットされている曲を再生すると、どんな者でも必ず眠ってしまうというものじゃ。これを人目のつかない場所で使い、城にこっそり潜入するんじゃ。秘密の通路についても教えてやろう。随分昔に姫に教えてもらったが……秘密の通路は姫の部屋のベットの下にある。その通路が謎の装置へ繋がっておる」


「分かった」


「あとラジカセをかける際、この耳あても渡しておこう」


「ありがとう。がんばってみるよ」


そう言い残し、ゴードンは城へ向かった。


 ♢♦︎♢


途中、町の墓場へ着いた。

そこには、墓の前に立つオーベンの姿があった。


「姫といた若者か……」


「その墓は?」


「ああ、カルゴスの襲撃の時に散った私の弟、ベッカム・アムスだ。ベッカムはこの町の最高の学者でね、私の自慢の弟だった。結婚もして、一人の息子もいた。だが、襲撃に遭って息子を残してこの世を去ったのだ」


「息子さんは?」


「ベッカムの息子ならここから少し離れた安全な施設に預かっている」


「こんな襲撃に遭って、弟も亡くして、それでもカルゴスの一味に従うのか!」


「私の主はカルゴスではない、我が城の王だ。王も私の弟にはよくしてくれていた。あの日までは……」


「若者よ、もう一度だけ言う。城には近づくな」


ゴードンに忠告し、オーベンは去っていった。


 ♢♦︎♢


ゴードンは城の門前まで移動し、人気の少ない場所でラジカセを使った。

すると、門前だけでなく、城内にいる数名も眠りにおちた。

城内で起きていた兵士が異常に気づき、すぐに王に報告した。


「寝ている兵士から鎧を拝借して、城に入るか」


兵士から鎧を奪ったゴードンは無事、城に潜入し、城内で怪しまれないようにメリーの部屋へ進む。


メリーの部屋に入りベッドをどかすと秘密の通路へと続く階段があった。

階段の先に扉があり、メリーから受け取った鍵を使って開けた。

謎の装置の部屋を探していると地下牢を見つけた。

地下牢になんとメリーがいた。


「メリー!」


「あなたは?」


「僕だよ、ゴードン」


「ゴードン!?」


ゴードンは鎧を外して姿を見せた。


「やっぱり城に来てくれたのね!」


「それよりどうしてこんな所に?」


「実は城に戻った後、謎の装置の部屋の鍵を見つけたんだけど、私が鍵を手にした途端、父様……王様が怒り出して……反省しなさいと言われ、そして鍵をオーベンに預けられ、私はこの牢屋に……」


「そんなことがあったのか……」


「謎の装置の部屋の鍵は今、オーベンが持ってるわ。一緒にオーベンから鍵を取り返しましょう」


「でも、君は牢屋にいるじゃないか」


「あなたの持っているその鍵は、秘密の通路の扉の他に牢屋の扉も開けられるようになっているの」


「そうなのか……」


ゴードンは牢屋の扉の鍵を開け、メリーを救出した。

そしてゴードンたちは地下牢を出てオーベンの部屋へ向かおうとするが、その前にオーベンに見つかってしまう。


「オーベン!!」


「姫!! 勝手に牢屋から出てはならぬと申したではありませんか!! それにそこの若者……たしかゴードンといったか……何度も言ったはずだ! 城に入るなと!」


「……」


「さあ、姫! 牢屋へ戻るのです!!」


すると、メリーはある物を取り出した。


「これがなんだか分かる?」


「そ、それは!!」


「そう、あなたの部屋にあったエロ本よ!! しかも幼女物の……」


「こ、これは!!」


「エロ本? 幼女!?」


「私はこっそりあなたの部屋に入って見つけたものなの。この本が発行されたのは、私が今よりも小さかった頃……そしてちょうど、あなたが私の世話役になった時……あなた……私に下心を抱いて見ていたの?」


「いや、違う! 違う! 違いますぞ!! 断じてそのようなことは!! 決して!! 断じてありませんぞ!!」


「もし、下心抱いて私に手を出そうとしていたならば……このことは王にも報告させてもらいます。そうなれば、処刑されるのは私じゃなくあなたになるのよ。万が一、王にこの話が通じなくても、世間にこのことをバラせばどううなるかくらい、分かるでしょ? もし、バラされたくなかったら謎の装置の部屋の鍵を渡しなさい!!」


「くっ……!! うぅ……!! ……姫……私はなにがあっても、姫に危害を加えたくないのです。ですが、王の命令は絶対。なにがあっても逆らう訳にはいかぬのです。カルゴスの襲撃が遭って以来、王は変わられてしまった」


そして、オーベンはゆっくりとゴードンへ視線を向けた。


「謎の部屋へ入った者がどうなるか……誰にもわからぬ。ゴードンよ、それでも姫を守り、この城を救う覚悟があるのか?」


「はい」


「……そうか」


覚悟を確かめるように一瞬目を閉じ、オーベンは鍵を差し出した。


「もし姫に何かあれば、その時は生涯、貴様を恨むであろう。行け!」


「ありがとう、オーベン」


メリーの腕をとり、ゴードンは再び秘密の通路へと向かった。

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