第78話「町の破壊」
薬屋で役割分担の話が始まる。
「そしたらメグさんの言うように、役割を決めましょう。主にカルゴスを駆逐するチームと、負傷者をここで治癒させるためのチームに分かれましょう」
「分かりました。メグさんは治癒ですね。それと先ほどカルネスさんにカルネスナビを二ついただいています。それぞれの役割が決まったら、チームごとに持っておくようにして、なにかあれば連絡を取り合いましょう。スムーズに連携してお互いサポートしあいましょう」
「シーサー、了解」
「ニーナちゃん、私と一緒に組まない?」
「メグさん!?」
「私一人だと心許ない。治療の補佐をしてほしい」
「でも私、二年生の途中に退学になったから、特化魔法はできずに、基礎魔法くらいしかできないですよ……」
「私もよ……いや、ごめん、それさえできれば補佐はできるし、あなたがいたら心強いのよ。お願い!」
「分かったわ……そうとなると人数的にあとの皆、カルゴスと戦える?」
「はい! 僕たちに任せてください!」
「私はこの辺りの土地勘があるわ。未来になって少々違うけど、大体把握できてるはず。だからそこは頼りにして!」
「メル、いつも頼りになるわ」
「しゃあねぇな……いっちょやってみっか」
「皆! ありがとう!」
その時、外から足音が響いた。
応援の兵士たちだった。
テイクタウンのミクロン戦に出陣していた兵士であるエドワード、フレディ、ジョニー、パスカル。そして足を失ったスコットも、補給隊として同行していた。
そしてもう一人、店の扉がきしむ音とともに、重く落ち着いた気配が入り込んでくる。
「その青い格好をした兵士は! チュロスか!」
「チェロスさんよ! 何回間違えれば気が済むの! でもよく来てくれたわね。なにが起きてるか分かるの?」
「ああ、カルネスから聞いた。世界が危機にさらされているとな。んで門番として突っ立ってるよりはこっちに来た方が戦力になるってな」
「チェロスさん、心強いわね!」
「ああ、最善は尽くす」
「あとはカルゴスの居場所だけど、私の魔法で分かるから、さっきシーサーが言ったようにカルネスナビで発信するのを追いかけてね。一応、カルネスナビなしで、声を送る魔法が使えるけど、魔法よりもこっちのほうが精度が高いと思う」
「「了解!!」」
皆の声が響き、小さな薬屋がまるで戦場の司令室のように感じられた。
「最後に装備品やアイテムを揃えることね。特にアイテムは近くのショップでたくさん買ってくるわ。スピードアップルやスーパスタ、そしてボブリーズやSPの種とかたくさんあっても損はしないからね」
・スピードアップル(一定期間足が速くなるアイテム)
・スーパスタ(一定時間無敵になるアイテム)
・ボブリーズ(強烈な臭いを放ち、敵を寄せ付けないアイテム)
・SPの種(食べるとSPが回復するアイテム)
まずは必要な装備を整え、アイテムを買い揃える。
スピードアップルの芳しい香りが袋いっぱいに詰まり、ボブリーズの強烈な匂いが鼻をついた。
準備が整うと、一行は小型船に乗り込み、出航した。
十人でカルゴスに立ち向かうそう決めた。
マヤとリリアも、震える指先を必死に隠しながら、それでもついてきた。
『カルゴスはここから南の方向に進めばいるわ』
カルネスナビから声が届く。
「分かった、ニーナ」
「おい、カルロス」
フラムが口を開く。
「なんだ? 呼び捨てにして。不快だ」
「カルネスって奴が息子なんでしょ? 同じこと言われたわ。面倒だから呼び捨てだろうが気にしないでちょうだい」
「僕ちゃんが気にするかどうかだろ……」
「アンタが時の水晶を運んできてアンタの根城に立てかけたんでしょ?」
「貴様口が悪いな……その水晶だが、僕ちゃんの豪勢な城にお似合いだと思ってな、拾ってきて城外に立てかけてたぞ。おかげで毎日美貌なお顔が確認できて仕事のモチベーションになってたから重宝してたぞ」
「アンタ、その水晶でどれだけの人が迷惑してるか分かってるの!?」
「ま、まぁ、水晶の欠片のことで、あのイケメン野郎……っていっても貴様は知らないと思うが、そいつやそいつの息子に大変な思いをさせたことは悪かったと思ってる。まぁ、そもそもカルネスが水晶を割らなければここまで大事にはならなかったけどな」
「そこは知らないんだけどさ、本当にそれだけ?」
「……ああ」
「違うでしょ!?」
「…………あとはタイムスリップとかなんとかで、何人かこっちの世界に来た……とか?」
カルロスはちょっと小さくなる。
「それで今こんな大事になってるんでしょ! いくら時の水晶のこととか、カルゴスのこととか知らなかったとはいえ、あれを拾って皆の目のつく所に置いたアンタが元凶って言ってもいいんだから」
「はぁ、悪かったよ。だからこうして僕ちゃんもカルゴスを倒そうと向かってるんじゃねぇかよ」
「はぁ、過ぎてしまったことをこれ以上責めても無駄だわ。先を急ぎましょう」
「ああ、本当にその通りだ」
「あなたが言うセリフじゃないわよ」
「ニーナっぽいなお前。口うるさい女第三号の誕生か?」
「聞こえてるけど……」
「あれ、そういえば、お前、知ってるぞ。前にニーナかなんかにお前のこと聞かされたような……たしかヴェラムだがそんなかんじの……」
「その話はしないでちょうだい!!」
フラムはカルロスを睨みつける。
「……」
♢♦︎♢
奥にカルゴスがおり、二つ目の町を破壊していた。
「そういえば、さっきはこのサイボーグを使っていなかったな。どれほどのパワーがあるか。試しに使ってみっか」
『ドォォォン!!!!』
カルゴスは一発、人型のなにかを振り回すと、一瞬で一帯が火の海となった。
「ふははははは! この町も俺のものだ!」
その狂気じみた高笑いに、カルロスたちは言葉を失った。
「なんてこった……くだらん話してる場合じゃねぇな。一振りで町を破壊できるとはな。ってことはメンディ村も、この一振りで……とにかくちんたらしてる場合じゃねぇだろ。おい、船! 急げ!」
カルロスでさえ、珍しく真面目な顔をしていた。
「そうね、追っかけているだけじゃ、町を破壊されるのをただ見てるだけですもの」
「でも明らかに、音が違う気がする。一発目の時は爆発音がなかった。今回は近くにいるってのもあるけど、明らかに音が違う」
「なにか、制圧の仕方を変えた!?」
「まずい……」
「だったら僕に考えがあります」
シーサーはカルネスナビ越しのニーナとその場にいた全員に話しかける。
皆はシーサーを見る。
「ニーナさん、大変です。皆さんもお聞きください。カルゴスにより次の町が襲われてしまいました。一瞬の出来事でした。これ以上は被害を増やすわけにはいきません。ですから、先回りしてカルゴスに立ち向かう、といったものです。ニーナさんには、今のカルゴスの居場所ではなく、ある程度向かいそうな方向を予測して共有していただきます。皆さん、この意見でよろしいでしょうか?」
『少し怖いけどそれしかないわね。賛成だわ』
この場にいる全員も頷く。
満場一致だ。
もはや迷っている時間はどこにもなかった。
「皆さんも僕の意見でいいとのことです。ではニーナさん、お願いします」
『分かったわ。ちょっと魔法を使うから待ってて』
「お願いします」
「そうだ、今の被害に遭った町も生存者を確認したほうがいいのでは?」
「そうですね、人数も増えたことですし、一人そちらに行ってもらいましょう」
「じゃあその役目はアンタ、カルロスね。一番戦力にならなそう」
「またフロムかよ」
「フラム!」
「で、なんで僕ちゃんが戦力にならなそう? ナメんな! 僕ちゃんはスーパーエリートだぞ?」
「スーパーエリート? それが関係あるの?」
「やだやだ~! 僕ちゃんがカルゴス倒してカッコイイとこ見せたいじゃん~!」
「キモ……」
すると、カルネスナビから怒声が聞こえる。
『カルロス!! 今すぐ町の人を助けに行きなさい!!!』
「クッ……やはり一号は圧というか迫力が違うな……わ、わぁったよ……行けばいいんだろ行けば」
カルロスはずっとブツブツいいながら破壊された町へ向かっていった。
「ふぅ、やっと行ってくれたあの傲慢男。ニーナ、さすがね」
『あの男とは長いからどうやれば動くのか大体分かっちゃうんだ。そうだ、今魔法でカルゴスの居場所を確認した。それでこのままいけば、パオンタウンって所に向かうと思われる』
「パオン……タウン……」
フラムは頭を抱え込んだ。
「パオンタウンといえば……」
♢♦︎♢
ラヴォスはニーナの予想通り、パオンタウンに近づいていた。
「ん? ちょっと行った所に町が見える。なんだかここ見覚えがあるぞ。昔制圧したことがあったような。たしか、魔術や機械が発達していた……」
魔の手が迫る。




