第77話「再会と集結」
「ん? なんか聞き覚えのある声……」
「ニ、ニーナ!?」
「……あなたは……フラム?」
「うん、私はフラム。もしかしたらその姿、メグと同様未来から来た?」
「そうよ。にしても久しぶりね! 元気してた?」
「私の方が久しぶりだよ!!」
「そっか、フラムはこの世界にずっといるんだもんね」
「うん、でも怒ってないの?」
「なにが?」
「あんなひどいことしたんだよ? なのにニーナは自分の夢を捨てて私に学校に残るよう言ってくれた」
「たしかにね。許せない部分もある。けど今こうやって反省してるみたいだし、少なくとも私が退学した意味はあったかな」
「それ、メグからも言われたよ……皆優しすぎる……」
「こうして出会ったのもなにかの縁。今外はすごいことになってるんだ。協力してほしいことがあるの」
「すごいこと? 協力?」
すると奥からぞろぞろとやってくる。
「シーサー! マヤ! リリア! メル! そして……奥で佇んでるのはアーサーね! 老けてないってことは、みんな過去から来てここに集まってたのね」
「「ニーナさん!?」」
「「ニーナ!!」」
「おっぱい」
アーサーのぶれない一言が空気を一瞬だけ台無しにしたが、誰も突っ込む余裕はない。
ニーナは全員を見回し、真剣な声で告げる。
「皆と会えていろいろ話したいことはあるんだけど、今は外がヤバいことになってるから、皆聞いて。カルゴスが来たの。奴は人の心を持たない化け物よ!」
シーサーはすぐさまカルネスに知らせるため、カルネスナビを操作して通話を繋ぐ。
ニーナは続けた。
「カルゴスを野放しにできない。だから私たちでなんとか封印した……けれど、私たちの不手際で再び解放されてしまったの。その後メンディ村が襲われた。生き残ったのは、今あそこで休んでる二人だけ」
「ひどい……」
「そこまでするカルゴスの目的はなんなの?」
『世界征服って言ってやしたよ~』
カルネスナビから声がする。
「おい! バカルロスのバカ息子!」
「私たちひどい目に遭ってるんだけど! 金庫は開いたの!?」
マヤとリリアが声をそろえる。
「あ、開きやしたから、いつでもお越しください……」
「メスども! 今余計な事言うな!」
フラムは激怒する。
「「……」」
『それと思い出しましたよ! アーサーって奴、情報があれば調べておいてほしいってことだったんで、伝えやすね! そいつ前に俺の城に訪ねてきやしたよ!』
♢♦︎♢
「カルロス城、アーサー? カルロス? カルロスって、どっかで聞いたような単体…あっ、父さんか! ということは、お前はは元々はこの城にいた奴だったのか! もしかして父さん同様タイムスリップしてきたのか!? うーむ……こいつは元々、この城にいた奴か。見た感じ、ヘンテコな奴ではあるが、悪い奴にはみえんし、おっぱいだけは俺と気が合うし……よし、お前をこの城に置いてやる。どうせ行く当てもないんだろう?」
「おっぱい」
「ええ!? いいんですか!? カルネスさん! こんなあからさまに、おかしい奴を城に入れて……」
「うるさい! 俺が決めたことだ! まぁ、なにかやらかせば、すぐにでも追い出すさ。役に立つかどうかは分からんが、いないよりかはいてくれた方がいいだろう」
「ええ……」
「おっぱい」
♢♦︎♢
「んなことがありやしてね、せっかく親切にしてやったのにその後こいつどうしたと思います? 抜け出したんすよ! そんで……」
「もうアーサーと会ってるから! そんな話今どうでもいい! 空気読め!」
『す、すんません……も、もう会ってるんすね……』
「いい? それで私たちでカルゴスを倒すしかないと思ったの。もちろん危険だし無理強いするつもりはないけど、協力者が多いほどカルゴスを倒せると思うの」
すぐに手を挙げたのはフラムだ。
「私、手伝う。ニーナには恩がある。その恩を忘れずに生きてきた。ついさっきまで弱音を吐いてたけど、こんな状況になって考えは変わった。あなたに恩返しをしたい。そして、世界を救いたい!」
「フラム……」
「僕もできることならなんでもお手伝いしますよ」
「シーサーまで……」
「私もなにかできることあったら言ってね」
「メルまで……皆ありがとう!」
「ま、僕ちゃんも手伝ってやらんことはないな」
「アンタは当然でしょ。元はと言えば、アンタが手を滑らせて私と一緒に未来に行ったのが原因でカルゴスを解放してしまったんだから」
「な、なんなんだよこの差は!!」
「「カルロス!! またアンタだったの!! 毎度毎度なにかあればアンタが原因じゃない!!」」
皆に怒られるカルロス。
「す、すまん…………」
「ところでメグは?」
メグは涙をそっと拭った。
その表情にはまだ痛みが残っていたが、それでも前を向こうとする意志がにじんでいた。
「私も手伝うよ。よかったら役割決めない? 怪我人が出ると考えると、私はここに残ってたほうがいいのかなって(だって……)」
♢♦︎♢
「人の体を守るのが私たちの仕事よ。だからあなたも行ってきなさい」
♢♦︎♢
「(……でしょ? 先生)」
過去のクラーラの声が、ふと脳裏に蘇る。
その言葉はあの時と同じように、今のメグをそっと背中から支えた。
「そうね。でももう平気なの?」
「ええ、いつまでもクヨクヨしてられないわ」
「さすがね、メグさん」
「「私たちはちょっと……」」
「まぁそうよね、マヤ、リリア。好きでこの世界に来てるわけではないんだよね? あなたたちもあの後すぐにこの世界に来たってことでしょ?」
「うん、ニーナとかメグがいなくなって……」
「その後に水晶に飲み込まれて……」
「気づいたら未来の世界にいた……」
「その後ここに来るまでそんな時間かかってないし……」
「急に世界征服だとか言われても……」
「私たちなにもできないよ……」
「分かったわ。安心だと思う場所にいな。水晶の金庫も開いたみたいだし、過去の世界も帰ってもいいんだよ」
「「うん……」」
「アーサーは?」
「おっぱい」
「あ、アーサーおっぱいしか言えないんよ」
「どういうこと?」
「コーンチの実を食べてこうなったのよ。そこにいるバカルロスがアーサーに必要ない依頼するから」
「……」
「カルロス! いや今は怒ってる時間はないわ。あとはカルネス君は通信中なんだよね?」
『あ~はい、聞いてやすよ~』
「カルネス君はどう?」
『俺はここに残りますねぇ~! もしかしたらカルゴスがこちらに攻めてくるかもしれませんからね~! そん時は俺がなんとかしますよ~!』
「そう。分かったわ。その時はカルネスナビで連絡してちょうだい」
『(あのカルゴスとかいう奴は、父さんかニーナさんがなんとかしてくれるはず。俺の出る幕ではない……)』
「そちらの城から援軍は呼べないの?」
『そうですねぇ……兵士に声をかけてみやすね……』
俺はどうすることもできなかった。
カルネスナビの通信を聞いている間も今起きている現実に震えが止まらなかった。
ミオにも指示をして抜け出せる態勢を整えていたのに、通信を聞いてひよってしまいどうすることもできなかった。
そんな身勝手で弱虫な奴に城主は務まるのだろうか……
陽だまりはいつも俺の枕で、昼寝の時間は風よりも静かで……
ああ、あの頃の俺は……悩むこともなく、責任という言葉も知らず、ただ……寝て、食って、おならして……それだけで生きていけたのに……
だけどふと思うんだ。
もし明日というものが誰かの努力で出来ているなら、俺がのんびり昼寝している間にも、どこかで誰かが汗を流してるんじゃないかって。
柔らかいベッドの温もりは、誰かの戦いの上にあるんじゃないかって。
そう考えた瞬間、胸の奥がざわついた。
昼寝より重いものが胸に乗るなんて……俺らしくもねぇ。
けれど逃げたい気持ちと、立たなきゃいけない気持ちがぐるぐる回って……
それでも俺は、今ここから動けなかった。
一歩踏み出すだけでいいと分かっていても、その一歩が鉛みたいに重かった。
情けねぇ……けど、逃げ続けるほど俺は薄情じゃない。
胸の奥で、今まで聞いたこともない音がした。
きっとこれが覚悟ってやつなんだろう。
こんな時でも平常運転のカルネスだった。
平和だった……




