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第72話「邪念の水晶」

スカイギャラクシーの薬屋には過去から来た後にこの世界で働くメグとアーサー、そして過去から来てアーサーたちを連れ戻そうと探していたシーサー、メル、マヤ、リリアがいた。

そこに水晶のことなどを知っているフラムが同行していた。

そしてアーサーは自分がおっぱいを連発する理由をなんとか伝えた。


「なるほど、だからおっぱいおっぱい言ってるのね……」


「今はそんなことより、メグはどうするの?」


「そんなことって……おっぱい……」


アーサーはなぜかがっかりする。

そしてメグはしばらく悩んだ末に、ついに決心した。

これからの道のりは簡単ではないかもしれないが、彼女は自分の選択を信じて前に進む覚悟を決めた。


「薬屋で働いててもみんなの役に立ってることが嬉しいし、スカイギャラクシーの人たちはいい人ばかり。私、ここに残る」


「でも……」


リリアが何かを言いかけたが、メグの表情を見て、そっと口を閉じた。


「言いたいことは分かる。せっかくここまで探しにきてくれたのに……自分勝手でごめんね……」


「そうですか、メグさんがそうおっしゃるなら……」


そしてシーサーがフラムに尋ねる。


「そういや先ほど、あなたは水晶について知っていそうでしたよね? もし分かればですが、過去の世界のメグさんがここ(未来の世界)に留まることはなにかリスクとかあるんですかね?」


「詳しくは分からないけど、水晶で皆が飛ばされたのがカルゴスの仕業だとしたら、未来に留まり続けるとよくない気もする。カルゴス抜きにしても最悪、こちらにいるべき存在とみなされ、肉体が消えてしまうってこともなくはないかも。まだまだ時の水晶について、分かってないことだらけなの。私はヴィレムの子だし、学校で学んだくらいの知識だけどね」


「たしかに授業でちょっとやったわね」


そこへオースティンが来た。


「すまんが怪我をしてしまって……手当してくれんか……ん?」


オースティンの目には人々の集まる光景が映った。


「むむ、なんだかたくさん人がおるな……」


彼は驚きと戸惑いを隠せない様子で呟いた。


「おじいちゃん、この人たちは以前一緒に働いていた人たちなの」


「メグくんの知り合いなのか。んで、みんなしてなにを話していたんじゃ?」


オースティンは手当してもないながら経緯を聞いた。


「ふむふむ……そもそもメグくんは過去から来ていたのか。それとそこのおっぱい小僧も」


「おっぱい」


「相変わらずそれか。まぁよい、話をしてくれたのに悪いが、これはワシが関与する問題ではない。だが、なにかワシにできることがあればなんでも言ってくれ」


「ありがとうございます!」


「あと、そんな事情があったのにここで働かせてすまんな」


「いえ、ここで働いててやりがいを感じますよ。先生のこともありますし、今は天職だと思っています」


「フォッフォッフォッ、それはよかったわい」


オースティンは手当ての礼を言うと自宅へと帰っていった。


 ♢♦︎♢


一方、カルロスたちは、時の水晶がある城外にいた。


「んで、なにが言いたいんだよ?」


「どうした?」


「アンタ、もう一度水晶に吸い込まれなさいよ」


カルロスの顔からシワは一気に消え、今まで見たことないくらい怒っていた。


「は? お前まさか僕ちゃんに城の連中とかを助けろって言うんじゃ……」


「言うわ」


「てめぇいい加減にしろよ! バカも休み休み言え!」


ニーナは一呼吸置いてからゆっくりと口を開いた。


「儀式の時に老けたアンタを見た。死にかけのね」


「死にかけだ? だからなんだよ?」


「だとすれば、アンタがその姿になるまで生きていたという証拠。つまり今、アンタが無茶したとしても生き残るってことよね?」


「……理屈はそうかもしれん。だが死んでまた翼で生き返るって可能性もあるんじゃ?」


「結果生き返るならまだいいんじゃない? 骨さえ残れば生き返ることができるみたいだし」


「おい、てめぇも死んだことあるし分かると思うが、精神的負担あるし、死後の世界暇なんだよ。それに死ぬ時痛かったしよ! 死後の世界で目覚めた時もその違和感はなかなか消えなかったぞ!」


「今まであの子とか何度助けられた? 溜まってる仕事片付けてくれたと思ったら、その後縛られてた私たちも助けてくれたし。一度くらいアンタが助けたら?」


「で、でもよ、そのうち戻ってくるじゃ……入れ違いにもなりたくないしよ」


「だから魔法で確認がとれなかったから嫌な予感がするって言ってるのよ。まあ、なにもなければ戻ってくればいいじゃない? これもこないだの人助けの続きと思って」


カルロスは頭をかきながら、盛大なため息をつく。


「はぁ……もうこいつはなにを言っても考えを変えないな。わぁーったよ、行けばいいんだろ行けば! ったく、このアバズレは!」


「誰がアバズレよ!」


「おっと、言葉のアヤだ」


「はっきり言ってるじゃない!」


軽口を交わしながらも、二人の足取りは次第に重くなっていく。

宝箱がある部屋の扉を開けた瞬間、冷たい空気が流れ込み、肌に粘りつくような邪気が漂った。


「……嫌な感じね」


ニーナの表情が険しくなる。

カルロスは冗談を言う余裕もなく、黙って宝箱の前に立った。

そして、カルロスは封印魔法を解く準備をする。


「アンタが封印魔法を解いた後、すぐに私が魔法をかけなおす。そうじゃないとカルゴスはなにやるか分かったもんじゃないからね」


「もう好きにしろ。やるぞ」


「ええ、よろしくね。アンタの目的は城の皆やあの子を助け出すこと。分かったわね」


「はいはい」


カルロスは魔法を解くと、水晶に吸い寄せられた。


「うわっ! 思ったより吸引力があるな! おっと!」


時の水晶の吸い寄せにより、カルロスは体勢を崩し、よろめいてニーナの手を掴んでしまった。

そのままニーナごと水晶に吸い込まれてしまった。


「キャー! なにするのよ!」


「水晶が! うわぁぁぁ!!!!」


一瞬の出来事だった。

城外から二人は消えた。

そして魔法をかける者がいなくなった城にポツンと残された水晶。

なんと、邪念を放つ水晶の封印が解かれた。

カルロスにより魔法が解け、カルゴスは自由の身になってしまった。

ニーナも水晶に吸い込まれたため、再度魔法をかけることはできていない。

ついには肉体も外に出ることができたカルゴス。


「フッ……バカな野郎だ、ほんとにこいつは俺の後裔なのかよ……おっと、そんなことはどうでもいい、早速こいつを試す時が来たな」


その手には異次元で作ったサイボーグ青年が握られていた。


「目覚めろ、兵器よ。お前の初陣はこの愚か者どもを滅ぼすことだ」


 ♢♦︎♢


一方、カルネスは──

まだ金庫と格闘していた。

金庫の前には空になったコーヒーカップが山積みだった。

近くにはなぜか丸まったティッシュが転がっていた。


「18782(嫌な奴)……違う。25933(地獄耳)……違う。53864(憂さ晴らし)……これも違うか! なんでこの番号五桁なんだよ! もう順番に開けていくしかないのか!? 何日かかるんだよ!」


カルネスはため息をつく。


「しかしあの部外者女、俺にこんな情けないことさせといて……全然帰ってこねえじゃねえか……ったく、鼻につくな……鼻につく? 87229(鼻につく)……開いた!! 開いたぞ!!!」


まさかの奇跡。

金庫のロックが外れ、扉が開いた。


俺はどうにかすることができた。

自分で蒔いた種ではあるが、俺は初めて人の役に立ったと思えた。

なぜか、もはやさっきのみんなが帰ってくるのが待ち遠しかった。

そんな身勝手な城主だが、これからもこの城で勤務するつもりだ。


平和だっ……


次の瞬間、空気が変わった。

背筋に氷のような寒気が走る。


「や、やべ……やな予感が……」


カルネスが一歩後ずさる。

その瞬間、金庫の奥から黒い腕がずるりと伸びた。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 中から人がぁぁぁぁぁぁぁ!!」


カルネスは盛大に腰を抜かし、尻餅をつく。

金庫の扉が勝手に開ききり、そこからゆっくりとそれが姿を現した。

──カルゴス。

彼の全身はまるで闇そのものをまとっているかのようだった。

血のように赤い瞳が、怯えるカルネスを射抜く。

その冷酷な眼差しは、まるで悪夢が具現化したかのようだった。

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