第70話「おっぱいの大集合」
パオンタウンはカルゴスと手下ヴィレムに滅ぼされ、生き残った者たちは絶望の中で暮らす。
フラムはそんなヴィレムの子供であり、孤独な生活を送っていたが、シーサーなどといった城のメンバーと出会う。
シーサーたちはメルに導かれ城へ潜入するも、フラムだけが部外者として扱われる。
彼らはカルネスナビを手に、アーサーたちを探す旅へと駆け出す。
その陰で、カルゴスは水晶の力を強化すべく若き女の命を犠牲に欠片を再生し、過去に破壊された水晶も蘇る。
息子は自由を謳歌するが、カルネスナビの返却のため渋々ギブタウン城へ足を運ぶのだった。
♢♦︎♢
その頃、ボルタウンでは、港に停泊していた船が大破したとの報せが駆け巡った。
どうやら上陸を試みた船が突如として荒れ狂った波にのまれ、近くの大岩へ激突したという。
船体は真っ二つに裂け、黒煙を上げながら浅瀬に座礁していた。
港には多くの野次馬が集まり、村長のウィルソンの姿もあった。
焦げた木材の匂いと、油のような臭気が風に乗って漂う。
「……あの方のおかげで環境は戻りつつあったのに、また船の大破で海が汚されるとは……」
その時、破損した船の奥に、もう一隻の船が見えた。
ラヴォス軍だった。
ラヴォス軍のクルーたちは、ラヴォスを失った虚無と怒りで海原を暴れ回っては無差別に他の船を襲撃していた。
「へっ……空気砲だ!」
黒煙の向こうで、クルーの叫びが響いた。
♢♦︎♢
数日前──
テイクタウン城にはミクロン、クルー、絆創膏、ボス1〜5、その他兵士がいた。
「なっ……ラヴォス様がやられた!?」
「クッ……」
「 ミクロン下士官!? クルーさん!?」
「もうこんなとこにいたって無意味だ。俺らの目標はラヴォス様の目的を果たすこと。もう遂行することもできないのだ」
彼らはなにも言わず、ぞろぞろとどこかへ散らばっていく。
「行かないのか?」
やがて、クルーと絆創膏だけがテイクタイン城に残っていた。
「俺っち、行くあてがないんだ」
「実は俺たちも……」
♢♦︎♢
「ラヴォス様は青髪の奴のところへ行き、そして倒された。青髪の奴といえば、俺らに歯向かってきた、あの妙な野郎だと思う。強いには強いが……あれは実力じゃない。なにか、得体の知れないものに支配されてる……そんな気がしてならねぇ。チクショーッ!! 俺たちはどうしたらいいんだ!!」
船にはクルーと絆創膏が乗っていた。
「クルーさん! もうちょっと丁寧に操縦してくださいよ! 俺たちカナヅチなんすから! 海なんて、二度と落ちたくないんすよ! 青髪の奴にハメられて海に落とされた時のトラウマが蘇るんす!」
「……チッ、ムカムカしてきた。うざいから腹いせに前の船もぶっ壊そうぜ!」
巨大な波が巻き上がり、前方の船を攻撃する。
「へっ、ざまあみろ! あれ? 今の船、どっかで見たような……」
前の船はハックたちが乗る船だった。
「さすがは絆創膏戦隊。絆創膏だけに……怪我の功名ってやつだな」
「言いたいことは分かるようで、全然分からねぇな」
「怪我したら絆創膏貼るだろ? だから……」
「いや説明してんじゃねぇよ!」
無駄な言い合いの最中、相手の船、冒険家ハックの船から砲弾が飛ぶ。
圧倒されたクルーたちは尻尾を巻いて逃げていった。
「うぎゃああああああ!!」
黒煙を残し、ラヴォス軍の船は水平線の向こうへ消えていった。
「危ないなぁ、オイラの操縦がなければ大破してたなぁ」
舵を握るピッケが胸を張る。
「やれやれ……まだあいつら、あんなことしてんのか」
ハックがため息をつく。
「そういや奴らと最初に出くわした時におっぱいが口癖の謎の男と会ったな」
それを聞くとマニーがニヤリと笑う。
「アンタと一緒にいた子ね。おっぱいって……レディの前で言うって、常識無さすぎじゃない? でも、ちょっと可愛いかもね」
ピッケは苦笑いしながら肩をすくめる。
「いや、可愛いかどうか以前に、あの男、扱いに困るっての」
ギプトは片目を細めた。
「目立ちすぎる馬鹿は、敵にも味方にもなる。油断するな」
「でも、あんなこと言う男って、ちょっとムカつくけど……面白いのよね。私の稲妻でビリビリッと雷落としたくなるくらい」
その会話を、探索中のメルたちが偶然耳にしていた。
ボルタウンの浅瀬は入り江のように音が反響し、遠くの声でも風に乗れば聞こえる。
メルたちは砂浜の向こうから響く『おっぱい』という単語に思わず顔を見合わせた。
なぜメルたちがボルタウンにいるかというと、サハラタウンには手掛かりがなかったため、ボルタウンに来ていたのだ。
「おっぱいが口癖の謎の男? おっぱいが口癖の人ってなかなかいないわよね。まさか?」
「「アーサー!!」」
メルは手を振り、船を呼び寄せる。
「すみません、今おっぱいが口癖の男っておっしゃっていましたよね。こういう聞き方も変なのですが、おっぱいが口癖の男を探しているんです。なにか知っていることはありませんか?」
「あ、はい。少しの間行動を共にしましたが、彼は今スカイギャラクシーの薬屋で働いていますよ」
「スカイギャラクシー?」
メルは首を傾げる。
彼女のいた時代には、その名の島は存在しなかった。
後にスカイギャラクシーと呼ばれるようになる島。
「はい、ここからあちらに向かっていけば……」
「分かりました! ありがとうございます!」
メルたちはその方角へと進んで行った。
「しかし、アーサーさんを探しているって一体、彼女たち、いやアーサーさんは何者なんだろうか。一つだけたしかなのは、アーサーさんと彼女たちが会えば、アーサーさんは開口一番おっぱいって言うんだろうな」
♢♦︎♢
しばらくしてメルは、マヤたちを呼び、スカイギャクシーで合流した。
「おっぱい」
「アーサー!」
「すごい。女性が四人いる。だからおっぱいが八個だ」
訳の分からないことを言っている。
「よかった! 無事だったのね! 探してたのよ! しかし私たちの時代のここら辺の島は無人島だったはずなのに、今はこんなに栄えてるのね!」
メルは変哲もない島が、スカイギャクシーに変わっていてびっくりした。
「なによ、騒がしいわね」
薬草を抱え、採取を終えたメグが戻ってくる。
「「メグ!」」
「おっぱいが十個になった! しかもデカパイ!!」
次の瞬間、アーサーは盛大に殴られて倒れた。
「いたっ……痛っぱい」
「アンタたち! どうして! まさか過去から!?」
「かくかくしかじかがありまして、みんな未来の世界にいるんですよ」
「つまり、みんな水晶により吸い込まれた。カルロスとニーナちゃんとカルロスに奴隷にされてたあの子は先に過去に帰ることができ、あなたたちはその後未来へ到着した。その後、私とアーサーが過去に帰った記録がないから探しにここまで……迷惑かけたわね……でもどうしよう」
「ねぇ、メグってあの?」
フラムだ。
「そっか、フラムちゃんか。あなたと同じ学校に通ってたメグよ。見た目についてはいろいろと理由があるの」
「タイムスリップね。彼女たちと行動していたから知っているわ。それより私、あなたに言いたいことがあったの。あの時私はニーナを裏切り、あなたまで退学に追い込んだ。私、謝っても許されないことしたわよね」
「たしかにその時は少しは恨んだ。でもなんだかんだあの後、ニーナちゃんと出会い、同じ職場で働くことができ、楽しい日々を送っていたわ。上司がクソだったのはアレだけどね」
♢♦︎♢
「ハッッックション!!!」
カルロスは盛大にくしゃみをした。
「ん? なんか僕ちゃんのこと言われた気がしたな……それも時空を超えて……」
「どっかでアンタの悪口でも言われてるんじゃない?」
ニーナは冷たく返す。
「バッキャロー、スーパーエリートな僕ちゃんに限ってそんなことは……」
「相変わらず脳内お花畑ね」
「しかし、未来から帰ってきたはいいが、城の連中はどこ行ったんだよ。せっかく仕事と向き会おうってなってもいくらなんでも人手不足にもほどがあるだろ」
「まさか……みんなも水晶に吸い込まれていたとしたら……まだ未来の世界に……」




