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第7話「遺恨の日記」

そこは書庫のようで、棚には古い本や整理されたレポートが並んでいた。

机の上には誰かが書いた日記が置かれており、無人の書庫の静けさの中で、それが自然とチェロスの目に留まった。


「誰の日記だ? ちょっと読んでみるか」


俺の父が死んでもう随分経った。

一刻も早く自分の父を奴隷にしていた奴を見つけ出してやる。

ようやく自分の父を奴隷にしていた奴を見つけ出した。

奴の名はカルロス。

噂には聞いていたが、本当に口だけの男とは思わなかった。

カルロスを見つけ出し、捕獲したのだが、トドメを刺そうとした時、邪魔が入ってしまい、その隙に縄で縛っていたカルロスが何者かによって救助されてしまった。

クソ! あの時、邪魔さえ入らなければトドメを刺せたというのに……


「これはラヴォスが書いた日記か? もう少し読んでみるか」


チェロスはページをめくる。


俺はカルロスを倒せるなら、どんな手段を使っても構わない。

もう一度、同じようにカルロスを襲撃しに行ってもいいが、さすがに奴もそこまでアホではないだろう。

次に俺がやって来ることを警戒して、軍も強化されているに違いない。

ならば、こちらも軍を作り、奴の城を征服するまでだ。

あと調査によるとカルロスを助けたのはカルネスというおそらくカルロスの子供だ。そいつも許さない。


「カルロスという奴が何者かは分からんが、どうやら俺はそのカルロスを倒すために働いていたということか」


そして次のページをめくると……


「ん? これは……」


『町の侵略リスト』と書いてある紙が添付されていた。


「これは今までミッションで侵略してきた町のリストか? どれどれ……そんな……バカな!?」


そこには、なんとチェロスが住んでいたベンチャータウンの名前が記載されていた。


「ど……どういうことだ!?」


慌てながらも、ページをめくり、さらに日記を読む。


軍を作るなら、より強い者やより賢い者を雇わなければならない。

手当たり次第、強そうな奴を勧誘し、近くの町を征服し、軍を強化していく。

少しずつではあるが、我が軍が完成されつつある。

今日もまた近くの町に立ち寄った。

他の町で奪った金を、その町にいた若者に見せつけ若者たちを味方にした。

その後、近くの町を襲撃しろと命じた。

どうやらうまくいったらしい。


「そうか……そういうことか……それで俺の町は襲われたのか。ということは、あの時、俺を勧誘した時に……」


チェロスは部屋を後にし、ラヴォスがいる玉座の部屋に向かった。


「おい!」


「なんだ? チェロス、なにか用か?」


「聞きたいことがある」


「なんだ? やけに表情が硬いな」


「俺と初めて会った時、町を襲撃するように隣町の若者に言ったのはアンタか?」


「そうだが?」


「なぜ、俺の町を襲った!! なぜ、俺を仲間に入れた!!」


ラヴォスは冷たい瞳でチェロスを見下ろす。


「そうか、勝手に書庫を……いいだろう、教えてやろう。あの時、たしかにお前の町を侵略するように言ったが、お前の町は既に滅んでいた。一つでも、めぼしい文化や財産があると期待し、滅びた町を見に行ったが、これといって大した物はなかった。そしてお前がいた。全く使えなさそうな奴に見えたが、強くなりたいという意志はあった。だから俺はその強い意志を見込んで、お前をこの軍に入れてやった。まぁ、あんな低文明でどうしようもないところに留まっていたってお前は強くなれなかったな。この城で働いていれば、いずれ強くなれる。なにはともあれ、この城で働けるということを幸運に思え」


「俺の生まれ故郷の町が、低文明でどうしようもない? てめぇの軍にいた方が幸運だと? ふざけるな!! 人の町を破壊しておいて、なにが幸運だ!! 俺は町を破壊され、無力さを知り、守りたい人を守るために強くなりたいと願った!!」


チェロスの怒りは全身に漲り、拳は自然と握りしめられる。

脳裏には焼け跡の町と、瓦礫の下に埋もれた故郷の風景、そして両親の顔が浮かんでいた。

怒りと悲しみが混ざり合い、胸を押し潰すようだった。


「ここで働いていけば強くなれると信じていたが、ただ人殺しや町を侵略するばかりで俺はなにも変わってない! 俺が求めていた強さではない!」


「チェロス……お前は階級は低いが、ミッションを確実にこなし、俺の命令にも忠実に従っていた。お前を信頼していたが……残念だな……」


「ああ、俺の居場所はここではなかったようだ」


「で、ここを辞めた後、家や家族を失ったお前が一人でなにができる?」


「お前に俺の未来など関係ないだろ。とにかく俺はここを辞める」


「ここは裏組織であり、知られていけない情報ばかりだ。もしお前がここを辞めたあと、もしお前が敵の軍隊にでも俺らの計画や情報をチクりでもしたら? 俺が今まで入念に敵情の調査をし、苦労して築き上げてきた。復讐計画のためにな。だから口封じのために消えてもらう。それでもいいなら勝手にしろ」


「クッ……」


「この俺に逆らうということは、覚悟はできてるのだろうな?」


「ああ、俺はお前を許すわけにはいかない! 俺はお前を倒す! そして初めて強くなるんだ!」


ラヴォスと戦うチェロス。


ただ、ラヴァスの方が優勢だ。


「ああ、俺はお前を許すわけにはいかない! 俺はお前を倒す! そして初めて強くなるんだ!」


チェロスは渾身の力で剣を振るう。

だが火花を散らして押し返されたのは、いつもチェロスの方だった。


「なかなかやるな、チェロス。だが所詮、俺の相手ではないのだ。観念しろ!!」


「(くっ、このままだとやられる……やはり今の力じゃラヴォスに勝てない……!)」


ラヴォスの刃が迫る。


「死ねぇぇぇぇ!!」


「(どうすれば……! どうすれば勝てる!?)」


その瞬間──城の廊下をドタドタと駆ける足音。


「ラヴォス様ぁぁぁ!!」


「なにぃ!?」


血相を変えたミクロンが飛び込んできた。


「今いいとこだっちゅーのによ!!」


ラヴォスは大剣を振り下ろしかけた体勢で、思い切り地団駄を踏んだ。


「敵軍が攻めてきました! しかも全員、武器より飯持ってます!!」


「はぁ!? どんな軍勢だそれは!」


「食糧庫、全部やられました! 全員、腹が減ったと怒ってます!」


「……(今だ!)」


チェロスは隙を見て全速力で逃げる。


「クソッ! 逃げやがったな…まぁいい。今は放っといてやるか。だが、覚えておくがいい……奴を葬りしだい、お前も葬ってやる……」


ミクロンは汗だくで戦闘態勢に立ちながらも、頭の中は空腹でいっぱいだった。


「ラヴォス様……あの敵軍……私の飯を……!」


「は? お前……戦う前からそれで大丈夫なのか?」


「無理です……腹が減りすぎて、思考が……!」


ミクロンの心は、剣を振るうよりも先に飯を取り返すことでいっぱいだった。

ラヴォスは苦笑しながら、ミクロンの頭を軽く叩いた。


「まずは戦闘に集中しろ……飯は後だ。お前が潰れたら誰が取り返すんだ」


戦場の喧騒をよそに、ミクロンの脳内は完全に飯モード。

剣よりも飯、盾よりも飯。

空腹とは、戦士の理性をも打ち砕く、最強の敵である。


「おい! ミクロン! もたもたせずに戦闘態勢に入れ!」


「は、はっ!」


ミクロンは戦場に向かった──奪われた飯を取り返すために。


 ♢♦︎♢


テイクタウンを離れ、途方に暮れたチェロス。

その足取りは重かった。


「………もう帰る町も家もない。母親も父親も…ましてや職もない……結局、俺はただ人を殺し、町を破壊してただけだった………強くなどなってない…俺はただの人殺しだ ……本当の強さがなんなのか俺には分からなかった…………ハハハハハハハハハハ!! もうどうにでもなれ!! ハハハハハハハハ!! ハハ………」


チェロスは狂ったような奇声を上げた。

しばらくして落ち着きを取り戻した。


「とりあえずしばらく歩いたが、追ってくる気配はないな。だがラヴォスの目的などを知っている俺を口封じのために殺しに来るはずだ。それは時間の問題だろうな。ラヴォスの目的? そういやラヴォス言ってたよな」


俺はアイツさえ殺せれば、それでいいのだ……あの憎きアイツを……」


「そして、あの日記」


俺の父が死んでもう随分経った。

ようやく自分の父を奴隷にしていた奴を見つけ出した。

奴の名はカルロス。


ならば、こちらも軍を作り、奴の城を征服するまでだ。


「ラヴォスが言うあいつというのはとある城にいるカルロスという人で、そのカルロスを憎く思っているから、殺すために軍を強化しているという感じか。ま、もう俺には関係ないことか」


軍を作るなら、より強い者やより賢い者を雇わなければならない。

手当たり次第、強そうな奴を勧誘し、近くの町を征服し、軍を強化していく。

少しずつではあるが、我が軍が完成されつつある。

今日もまた近くの町に立ち寄った。

他の町で奪った金を、その町にいた若者に見せつけ若者たちを味方にした。

その後、近くの町を襲撃しろと命じた。

どうやらうまくいったらしい。


「そのカルロスの殺せるなら俺らの町を破壊してもなんとも思わないのかよ。なんて冷酷非道な奴なんだ。それにしてもテキトーに歩いていけばアテは見つかるだろうか……ん? なにか遠くに見えるぞ」


チェロスは歩いているとギブタウンにたどり着いた。

そこは昔カルロスがラヴォスの父親を奴隷にしていた場所だ。

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