第64話「先祖の力2」
カルゴスは過去と未来を繋ぐために水晶を生み出し、力を失った後は自らの魂をその中へ封じた。
カルロスたちが今カルロスたちがいる場所も、その水晶の内部であった。
「自分の理想の世界を創るために、人々を道具のように利用し、使えなくなったら死に追いやる。私はあなたがやってきたことを許すわけにはいきません!」
「そうよ! 私たちは絶対ギブタウンの人々をアンタから守ってみせるわ!」
「フン……そうだ、カルロスよ、お前はこの世界に興味はないか?」
「なにを言っているんだ……?」
「私と共にこの世界を手にしてみないか? お前は極力働かずに楽して生きたいのだろう? 今なら、私のもとへ来ればお前にも世界を与えてやろう。私と共に来れば苦労もしない、金は腐るほどあり、土地も女もお前に与えてやるという話だ。悪くないではないか」
「カルロスさん!!」
「バカルロス!!」
息子とニーナは必死に呼びかける。
「ん~まぁたしかに、僕ちゃんが働かずにそれだけのものが手に入れるならばそれも悪くないなぁ~! なんせ僕ちゃんは楽して生きたいからな!」
「カルロス! いくらバカでもカルゴスに騙されてるってことくらい分かるわよね!」
ニーナたちは必死に呼びかけた。
「ならば答えは決まったな……」
「だがな。僕ちゃんはできればその世界を一人で手に入れたいものだ。僕ちゃんを殺そうと考えた奴と共に世界を手に入れようなんざ、一生ゴメンだ。たとえご先祖でもあってもな。だから断らせてもらおう」
「カルロスさん!」
「カルロス……! アンタ昔よりほんの少しだけマシになったのね……うまい話だからすぐに乗っかると思ってたわ」
「だからお前は、僕ちゃんを最初からバカみたいに言うな!!」
「それが答えか……ならばカルロス諸共、この大魔法使いカルゴスによって滅亡させてやる!! この時の水晶と共にお前たちを完全に消し去ってくれるわ!!」
その後、三人がかりで、ついにカルゴスを打ち倒した。
圧倒的な力の差に、絶望しかけた。
だが最後の瞬間──あるひらめきを掴み、起死回生の一撃を放ったのだ。
「バカな……お前たちにやられるのか……私はまたあの時のように敗れてしまうのか……私の計画が……世界が……フッ……まぁいい……カルロスよ……お前が再び、悪や自分の欲望に堕ちたその時、私は必ず復活し、今度こそお前を始末する……せいぜい今のうちに、この世界で楽しく生きるんだな……フハハハハハハハハハ!!!!」
「カルロス! 弱ってるうちにトドメを刺したほうがいいんじゃ!」
「俺と血が繋がってると考えると少し悩むが、そうだな、そうしよう」
カルゴスは消滅し、辺りが光に包まれる。
途端に水晶の空間全体がまばゆい光に満たされる。
重力の感覚が失われ、意識が遠のいていく。
次の瞬間、三人はギブタウン城の床に崩れ落ちていた。
カルロスたちはなんとか元の世界へ戻ってくることができた。
「ハァ……ハァ……危うくまたあの世に行くところだった」
カルロスは呼吸困難となっていた。
「もうこの水晶を破壊しましょう!! この水晶がある限りまたあいつがやって来るかもしれないでしょ!!」
「いえ、それはやめたほうがいいかもしれません」
青年は口を開く。
「どうして!?」
「あのカルゴスという男……仮に水晶を破壊しても、カルゴスの魂はその水晶にあると思います。トドメを刺されることを嫌って、自ら消滅し、水晶の中に入ったのかもしれません。そしてその水晶がバラバラになったとしても彼の魔法によって完全に復元され、また私たちに襲いかかるかもしれません。自分の魂を水晶に移したりすることができる魔法を持っているわけですから、その位は容易くできるでしょう」
「たしかに……なら、どうしよう……」
カルロスはようやく落ち着きを取り戻す。
「うーむ……そうだ! この水晶を宝箱に封印しよう! そして誰の目の届かない所にしまっておくんだ」
「アンタ、封印の魔法を使えるの?」
「まぁな。魔力は高くはないが、自我を封じ込めることはできると思う。墓石の所で十分練習は積み重ねた。ただカルゴスがどれほどの魔力を持ってるかは予測できん。たださっきもこいつが言ったように、魂を水晶に移せる奴だから油断はできんな。それによって封印が解かれてしまう可能性はあるが……少なくとも水晶は城外に置かないほうがいいだろう。奴は悪さや自分の欲望に堕ちたときに復活すると言っていた。だから破壊したり捨てたり、誰かに譲渡したりしたらロクなことが起こらないかもしれない。水晶が他の所へ渡ったら、それがこんなにも凶悪な物かも知らないだろうし、僕ちゃんたちの監視下に置いた方が安全かと思う。僕ちゃんたちが三人がかりで奴と戦いギリギリで勝利したのだ。あいつが強くなって復活でもされたら、それこそひとたまりもない……もしこの水晶の封印を解くのであれば、この城を大きな災害から救えるような勇敢な者でないとダメだ」
相手はカルゴス……どれほどの魔力を宿しているかは未知数だった。
たとえ封印できたとしても、やがてその魔力が蘇り、封印を破る危険はある。
「そうですね。珍しくカルロスさんに賛成です」
「どいつもこいつも一言多いな……そうだ、これはいずれカルネスにも伝えておかなければな……」
「ですね……」
「よし、この水晶を宝箱に封印するぞ!」
そしてカルロスは時の水晶を宝箱に封印し、それを金庫の部屋の金庫に保管した。
「ふぅ……これで一件落着だな……」
「私もやっと自由の身になれるんですね」
「本当にお疲れ様! あなたがいたから今私たちはここにいるのよ。ありがとう!」
「いろいろありましたが、元の世界に戻ることができて本当によかったです。カルゴスも倒せました。皆さんありがとうございます」
「よし、ならば、今日から改めてここでみっちり働いてもらうか」
「カルロス、いい加減、解放してあげなさい」
「だって、元の世界に戻れば、メグとか他の城の連中がいなくなってるんだもん。人手不足に決まってるだろ」
そう、メグとアーサーは未来の世界で生きることを決断していた。
彼らはスカイギャラクシーの薬屋で働いている。
「もうこの子にこだわらないで、別のちゃんとした人を雇ったらどう? この子は奴隷にされてただけでここの城の従業員でもなんでもないのよ? アンタのせいでひどい目にあっているから、家に帰ってじっくり休んでもらわないと」
「え~やだやだ~また届け物が遅配すんじゃん~荷受とかがパンクすんじゃん〜」
「なら根本的に杜撰な管理体制をなんとかしなさい! 城のトップでこんな滑稽な存在、他にいないわよ!」
「あのぅ……カルロスさん……もういいですか……限界です……私があなたに強く言った言葉を時々思い出してほしいです……」
「チッ、生意気な餓鬼が図に乗りやがって。ちょっとは言うようになったじゃねぇか。生意気でイケメンな奴……憎くてしょうがないわい。ま、てめぇがいてなんだかんだ仕事も回ったし、いないよりかはマシだったな。いろいろ足手まといだったけどな」
「カルロス、さっき遅配するとかパンクするとか言ってたけど。そんな人をいないよりかはマシだとか足手まといとまで言う!?」
「………チッ、わぁったよ。はっきり言うといてくれてすごく助かった。正直言ってお前がいないと今後この城が運営できるかってのも分からなくて心細い。お前が来てくれたおかげで滞っていた仕事も片付いたし、失われた信頼を取り戻してくれた人もいるだろう。そしてお前の貴重な人生を棒に振るようなことをして悪かったな。これでいいだろ?」
城の周囲では、ようやく平穏が戻りつつあった。
かつて遅配に悩まされていた宅配業務も、青年の働きによって立て直され、顧客の信頼は少しずつ戻ってきている。
これから先、この城の名が再び人々に愛される日もそう遠くないだろう。
こうしえ青年はギブタウン城をあとにした。
♢♦︎♢
施設に預けられていた息子だったが、しばらくして里親に引き取られることになっていた。
だがその性格の荒さや扱いづらさから、里親も次第に手を焼き、やがて育児を放棄してしまう。
息子は途方に暮れ、頼る者もいないまま、町外れの廃屋を見つけてそこで身を寄せながら暮らしていた。
やがて時は流れ、ギブタウン城の新たな城主がカルネスとなる時代。
息子はすっかりやさぐれ、世間から外れた一人暮らしを続けていた。
やはり性格のせいでまともな職にも就けず、収入源もなく、手元には一文の金すらない。
そんな時、父親が亡くなったという報せが届く。
そして本当に金目的だけで父親たちを生き返らせたのだった。
最終的に父親たちを過去の世界へ送り届ける。
息子はカルネスとかの話により、この父親は過去から水晶によってタイムスリップしてきたのであり、時代を生き抜いた父親ではなかったことを知る。
その確証を得たのは、父親の顔が子供の頃に見た父親と同じで老けていなかった時だ。
そうとなると過去の世界へ戻った父親はなぜその後、息子に会いに行かなかったのか。
カルゴスを倒した後、そこで息子と会っていれば、カルネスがいた時代も、息子は一人でいることなく、父親と一緒に暮らしている、もしくは顔を合わせているはずだ。
あんなにも息子思いの父親が何故息子に会いにいかなかったのか……いや、なにかあって会えなかったのか。




