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第63話「先祖の力1」


第19章「先祖の力」


「カルロスよ……よく来た……」


「誰だ! 貴様は!」


「私の名はカルゴス……」


「カルゴス?」


「来たっていうかおめーが呼びせたんじゃねーのかよ!」


「それよりカルゴスなんて人、今まで聞いたことないけど、カルロス、アンタ知ってるの?」


「うーむ……」


「気づかないか?」


「思い出したぞ! 僕ちゃんのご先祖のカルゴスだ! 大昔に親に聞かされたことがある」


「その通りだ」


「ちょっと待って! なんでカルロスのご先祖様がこんな所にいるのよ!」


「クックック……」


「お前が水晶を拾ってくるのも、未来の世界へ飛ばしたのも、全ては私が仕掛けたものだ」


「なに!?」


「遡ること古の時代。お前たちの住む島がまだ広かった頃だ。私は世界一の富豪であり、世界をこの手で掴むため日々、奮闘していた。法に縛られず全てが自由な世界を創るためにな。私はほとんどの島は制圧してきたが、一つだけ私の交渉に応じない島があった。そこが今はギブタウンと呼ばれている所だ。その後、島を巡り戦争が起こった。そして私はその戦争に勝利し、ギブタウンも我が配下となったのだ」


「そ、そんなことがあったのか……」


「全てが順調だと思ったが、ある時ギブタウンの中に私に反抗してきた盗っ人の小僧が現れた。その小僧は仲間を集め、次第に我が配下を次々と滅ぼした。ついには我が城まで崩壊させ、私を滅亡まで追い込んだのだ。その後、城が崩壊したと同時に、城にあった時の水晶が……」


 ♢♦︎♢


話は遡り、そもそもなぜあの時、時の水晶が光ったのか、なぜ時の水晶は城外に立て掛けられていたのか。


はるか昔、ギブタウンという名前が付けられる前の話になる。

そこはとても裕福な町とは言えないものの、なにかに縛られることもなく、自由で平和な町だった。


ところがある日のこと、富豪の集団がやって来きた。

彼らは各島の国や地位を多額の金で次々と占拠していた集団だった。

噂では、宝石や金属製の物を売って商売をして金を稼いでいるとのこと。

その裏では、無断で宝石などを採取したり、町や村の人を捕獲し、奴隷のように働かせていた。


その後、町にその集団がやって来て無理な交渉を持ちかけてきたが、町の人は断固拒否した。

やがて対立し、戦争が始まった。


結果は富豪の集団が勝利し、生き残った人たちは彼らの奴隷になってしまった。

やがて町は廃れていき、町の人々の暮らしは貧しいものとなった。


その後、町の近くに城が建ち、町はおろか、島全体を支配していった。

支配者の名はカルゴス。

生まれながらの富豪であり、貴族の血を引く男だったが、性根は腐りきっていた。

冷酷で支配のためなら命も感情も切り捨てる。

彼はまた、強大な魔力を持つ大魔法使いでもあり、その力をもって数多の国を脅し、従わせてきたという。


カルゴスがこの地を手中に収めてしばらくした頃、一人の青年が立ち上がった。

名をゴードンという。

彼はこの状況に深い憤りを抱き、カルゴスを打倒しようと決意した。


ゴードンは貧しさゆえに盗みを生業としていた。

だが、彼が狙うのはカルゴスと結託した富豪や役人の財だけであり、奪った物は密かに町の人々へと分け与えていた。

その行いはいつしか義賊として語られ、人々に希望をもたらしていた。

やがて彼は仲間たちと共に、カルゴスの城を目指す。

そこは幾重にも防衛が施され、周囲には魔物や私兵が徘徊していた。

盗賊としての腕はあっても、ゴードンに戦闘の才能はない。

彼は戦いを避けるため、盗んだ煙玉や薬品、幻惑の道具を駆使しながら、敵を翻弄して進んだ。

仲間との連携も冴えわたり、幾多の危険をかいくぐって、ついに城の目前へと辿り着く。


近くには門番がいたが、自分の戦力だけでは太刀打ちできない。

そこで盗んだ物の中にあるボイスレコーダーを使い、自分の声を録音し、門番の見えない場所に隠れ、ボイスレコーダーを再生したと同時にあさっての方向へ投げた。

すると門番は録音した声の場所へ行き、その隙に、ゴードンたちは城の門へ入っていった。


城内に入ったゴードンたちは、敵の視線をかわしつつ、奴隷にされた町の人々がいる牢獄にたどり着いた。

そして、町の人々に敵から奪った食糧などを、平等に分け与えていった。

その後、敵から牢屋の鍵を盗み、牢屋の扉を開き、小さい爆弾などを使い壁に穴を開けて、町の人々を脱出へ導いた。

町の人々を脱出させた後、再び城へ戻り、ついに、カルゴスがいる部屋についた。


カルゴスに見つかるゴードン。

カルゴスの部屋には、貴重な宝石や水晶など、金目のものがたくさん置かれていた。

部下の不審な動き、物の消失、建物の破損──すべてを指摘し、犯人が目の前にいることを確信する。

カルゴスは襲いかかり、ゴードンはそれを阻止しようとするが、力の差は歴然。

カルゴスは普通に戦っても強い上、大魔法使いである。

当然、ゴードンは手も足も出なかった。


しばらくして、ゴードンたちは相手の攻撃方法を確認し、カルゴスの放った攻撃魔法を、盗んだものの中にあった魔法の鏡を使ってなんとか跳ね返し攻撃していった。

激闘の末、ゴードンはカルゴスを倒すことに成功した。

それと同時に跳ね返したカルゴスの魔法によって城はみるみる崩壊した。


町へ戻った彼らを人々は歓声で迎えた。

奪われた自由を取り戻した喜びに涙し、誰もがその名を讃えた。

やがて、彼の勇気と与える精神にちなみ、その町はギブタウンと呼ばれるようになった。

そして、人々は語り継いだ。

いつか再び、富と権力に飲まれた者が現れたとしても、

また新たな英雄が、この地を救うだろうと。


しかしゴードンによる城の崩壊ののち、瓦礫の奥で、瀕死のカルゴスはなおも息をしていた。

砕けた宝石が血にまみれ、かつての栄光を照らしている。

己の魔法が強大すぎたこと、そしてそれが跳ね返り、自らを滅ぼしたことへの皮肉。

その瞳にはまだ狂気の光が残っていた。

水晶が脳裏をかすめる。

長らく修復を怠っていた時の水晶こそ、最後の望みであると気づいたのだ。

崩れ落ちる身体を引きずり、カルゴスはその水晶に手を伸ばした。

もはや肉体は限界だったが、彼は執念で魔法を発動させる。

本来ならば、それに触れた者の意志によって、時の行方が決まるはずだった。

しかしカルゴスは、その原理をねじ曲げた。

崩壊寸前の魂を、強引に時の水晶へと流し込み、自我を宿らせたのだ。

水晶は脈打つように光を放ち、まるで彼の意識そのものがそこに移り変わるかのようだった。

カルゴスは誰かが水晶を拾うのを待ち、なにかを企んでいた。


その後、ギブタウン城が建てられ、水晶はカルロスという男に拾われ、それは城外に飾られた。


しばらく大人しくしていたカルゴスだったが、ラヴォス軍が城を襲う際に、一部を爆破したことによる環境の変化で、自我を持つ水晶の怒りに触れ、赤く発光した。

そこでカルゴスはラヴォスにカルロスを倒させることを思いつく。

この時、特性である赤く光ったら触れた者が未来へ行くという時の水晶と変化した。

その後、城の関係者が続々と未来へ行ったというわけだ。


 ♢♦︎♢


「……そんな昔から時の水晶は存在していたのか」


「時の水晶を作ったのは私だ」


「なんだと!?」


「時の水晶を作り、過去と未来の世界から物資を手に入れていたからな。時の水晶だが別世界に行こうにも私には力が残っていなかった。だから私は今ある魂を自分の魔法によってこの水晶に移したのだ。水晶が多少砕かれても、完全に消滅しなければ私の魂は消えることはない」


「この水晶だと!? つまりここは水晶の中なのか? もしや、未来の世界に僕ちゃんたちを飛ばしたのもお前の仕業だというのか!?」


「そうだ。カルロスにしては冴えてるな」


「一言余計だ」


「話を戻す。私はその後、人気の多い場所に瞬間移動した。するとお前が現れ、水晶を拾い城に持っていったのだ。とても運が味方したと思った。なぜならお前は我が一族の身。私と同じ冷酷な奴である可能性が高いから相応しいと思い、お前に水晶を託すことにした」


「そうか、思い出した。出掛けたときに僕ちゃんが持って帰ったんだ!」


「私はしばらく様子を見ることにした。ギブタウンの連中を滅ぼせる奴かどうかを。するとお前はラヴォスの父親を捕まえ、奴隷にし、働かせるだけ働かせて奴を死に追いやった。私はこの時、お前なら使えると思い、お前に力を与え私の野望を叶えられるかもしれない。そう考えていた。だが、それは思い違いだったようだ。なぜならその後にやって来たそこにいる青髪の男にはどういう訳か、仕事を終わらせたら奴隷から解放させてしまったのだ。私はそれを見て失望した。ギブタウンを滅ぼせるのはお前ではなかったと。すぐにでも別の奴を探そうと考えたが、急にここから離れたのであれば、疑われ、次に見つけられた時に、水晶を破壊されかねない。だからどうにかしてお前を始末し、その後に移動しようと考えた。そして私はお前を未来の世界へ飛ばしたのだ」


「何故、カルロスさんを未来の世界へ?」


「カルロスによって、ラヴォスの父親が死んだ後、息子が父親の仇をとろうとしていた。ならば未来の世界でラヴォスは今以上に強くなってると想定し、カルロスたちを未来の世界へ飛ばして、ラヴォスに倒させるつもりだった。しかし、お前たちは未来の世界から帰ってこれてしまった。しかも青髪のてめぇの息子がラヴォスを倒した。そうとなれば、もはや私自らが始末するしかないと思い、お前たちをここに呼んだのだ。そして今、お前たちは私の手によって滅ぼされるのだ」


「自分の理想の世界を創るために、人々を道具のように利用し、使えなくなったら死に追いやる。私はあなたがやってきたことを許すわけにはいきません!」


青年は珍しく声を荒げる。


「そうよ! 私たちは絶対ギブタウンの人々をアンタから守ってみせるわ!」


「フン……そうだ、カルロスよ、お前はこの世界に興味はないか?」


「なにを言っているんだ……?」

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