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第58話「金の力・改2」

ラヴォスは瞬間的にチェロスの所へ行き、殴り飛ばす。


「グハァ!!!!」


「だから言わんこっちゃない!! なにしに来たんだテメェは! 一ミリも役に立ってねぇぞ! ただの足手まといじゃねぇかよ! ったく、どいつもこいつも頭にウジでも湧いてんのかよ!」


「フンッ……相手にもならんな……カルネスと比べてこいつは弱くなったな。前の貴様なら、俺と互角とまではいかんが、それなりに戦えてたのにな。まぁ、こんな頭の悪い城に務めてれば、腕もかなり落ちるだろうしな」


「おい! ぶつくさ独り言、言ってんじゃねぇよ! 耳障りなんだよ!」


「それもそうだな。こんな奴相手にしてないで、追いかけっこの続きを始めようではないか」


「なにが追いかけっこだ……ふざけやがって。まぁ、こんな奴置いといて行くぞ」


息子がそう言い放ち、走り出した。

チェロスは壁に寄りかかり、痛む身体を押さえながら、歯を食いしばる。


「……どっちが味方なんだ……」


その後、息子は『報酬』という言葉を頻繁に口ずさみ、チェロスの指示で攻撃を狙いつつ逃げ回っていた。


「やったか? これで莫大な報酬が!!!! フアハフヒフフフウハハハ!!!!」


青年は次の部屋に入ると、天井から吊るされた古びたタライを見つけ、にやりと笑った。


「よし……今度はこっちの番だ!」


息子は片手でタライをそっと揺らしてみる。

吊り紐の軋む音、金属同士がかすかに触れ合う音を耳に刻み、ラヴォスが現れる直前の間合いを測る。

ラヴォスが通路の入口に姿を現し、一歩を踏み出した瞬間、息子はためらいなくタライを放った。


「ぐっ……!? な、何だこれ!!」


『ドスン!』


タライはラヴォスの肩に直撃し、巨大な衝撃が彼の肩を揺さぶる。

ラヴォスはバランスを崩して一歩後退した。

息子は間髪入れずに次のタライをつかみ、狙いを定める。

狭い通路の有利を活かし、ラヴォスの進路上を執拗に攻める。

タライが連続して体に当たり、金属の鈍い衝撃音が反響するたびに、ラヴォスの顔に苛立ちが滲んだ。


「逃がさないぞ、ラヴォス!!」


「くっ……くそっ、邪魔するな!」


息子は勢いを落とさず、次々とタライを叩きつける。


「ふははは!」


息子の笑い声が、勝ち誇ったように狭い部屋に響く。


「もはや遊んでいる場合じゃない。チェロスがカルネスを回復させたせいで、また面倒なことになった。もうあの二人はいい。とにかく、水晶を使ってカルロスの所に向かい、奴に復讐をするのだ!」


言い終わるとラヴォスは一瞬で姿を消した。

通路に残るのはぶら下がったタライの揺れだけだった。


「待て! クソ!! なんとしてでも、屋上へ向かわなければ!!」


『調子は……どうだ?』


チェロスはカルネスナビが震える声を伝えてくる。


「奴は水晶を完成させようと屋上へ向かっていったと思われる」


『まずいな……このままだと完成して城を乗っ取られてしまう……チッ……俺がもう少しあいつの足止めが、できていれば』


「この役立たず! お前が、足止めできていれば、もう少し楽にあいつを阻止できたかもしれないのに!」


『悪かったな役立てなくて。すまないが、お前はそのまま屋上へ向かってくれ。たしか、あの屋上にもセキュリティのなんかがあって、数分経つと、ミサイル砲が出てくるらしい。そのミサイル砲で奴にミサイルを打ち込めば、なんとか阻止できるかもしれない。あの強敵を鎮めるには、他に手立てはないかもしれない』


「はいはい、分かった分かった。ったく、この城のセキュリティは、鉄格子の時といい、タライといい、ミサイルといい、無駄が多すぎる。ミサイル砲なんて、数分とかじゃなくて常時設置してればいいだろ。なんで数分も待たなきゃならないんだ。まぁ、なんとかしてあいつを追って、あいつの野望を阻止してやるよ。そのかわり……」


『どうせ、金寄越せとか言うんだろ』


「そうでーす。この件が解決したら、たんまり報酬をくださいね♪」


『はいよ、分かった分かった』


「よぉし!! そうと決まれば、ラヴォスを倒すぞー!!」


息子は無駄にテンションが高かった。


 ♢♦︎♢


屋上では、ラヴォスが静かに立っていた。

息子が息を切らして駆け上がってくる。

ラヴォスは振り向きもせずに告げる。


「時は満ちた。今こそ、時の水晶を完成させる時が来た。見ろ。この城だけで、四つの欠片が揃っている。水晶の完成は近い。だが、あと一つ足りない。誰がその水晶の欠片を持っているか……それは、お前だ」


「何度も言ってるが、カルロスはすでに死んでんだよ! お前が、水晶を使ってカルロスのとこに行ったとこで、お前の本来の目的は、果たせないはずだ!」


「カルロスは本当に死んだのか? フッ……まぁいい。ならば、カルロスがいない内に、あの城を乗っ取り、私の理想の世界にすればいいだけなのなからな」


 ♢♦︎♢


「そうか、あいつがもし、翼で僕ちゃんを生き返らせていたら、真っ先にラヴォスにターゲットにさていただろうから、翼はまだ温存しておき、あいつがラヴォス倒した後に、僕ちゃんを蘇生させる魂胆だったのか。さっき、優先順位がどうこう言ったが、前言撤回だ。ちゃんと考えていたんだな」


「(あの人、本当にそんなの考えているのかしら…)」


「あ、かと言って僕ちゃんがラヴォスにやられるってことではないぞ」


「真っ先に、最初の敵にやられているアンタが言うことじゃないわよ!」


「(はぁ……情けない……)」


「うっせーな! 僕ちゃんが敵にやられるところを助けにも来ないお前は、なんなんだよ! そりゃ、あんな始めの方でやられるとは思わないわよ!」


「落ち着いてください、二人とも! 喧嘩ばかりしてないで、うちの息子を応援ぐらいしてくださいよ!」


 ♢♦︎♢


「上等だ! 俺だって、その水晶が必要だ。奪えるもんなら、奪って見ろよ! 莫大な報酬が貰えるという未来があるこの俺には、勝てないだろうがな!!」


「報酬報酬って。そこまで金の力で動ける奴がいたものか……ならば、決着をつけようじゃないか! どちらが、この水晶を持つのにふさわしいか……見極めさせてもらうぞ!」


ラヴォスは炎の球を投げつけ、屋上の床が爆ぜる。

息子は紙一重でかわしながら、舌打ちした。


「ちょ、マジで燃えるって! この服、高かったのに! 少しでも焦げたら弁償しろよ!」


チェロスの声が通信越しに響く。


『もうすぐだ。あと十秒でミサイル砲が起動する。奴を中央に誘い出せ!』


「十秒!? そんな悠長なこと言ってる場合かよ!」


炎の球の煙に隠れるように、息子は転がり込みながら、崩れた鉄柱の陰に滑り込んだ。


「……よし、今だ!」


床下から重々しい駆動音が響き、屋上中央に巨大な砲塔がせり上がる。

息子はスイッチを叩きつけるように押した。


「報酬のためなら、撃つしかねぇっ!! 発射ァァーーッ!!」


轟音が鳴り響き、ラヴォスは一瞬にして光に包まれ、苦悶の声を上げて倒れ込む。


「グハァ……! まさか、こんな力のない雑魚に……!」


息子は汗をぬぐい、にやりと笑った。


「雑魚でも、報酬のためならやる時はやるんだよ!」


カルネス戦やチェロスの弓矢、そしてタライで弱っていたラヴォスはミサイルによりやられてしまう。

息子はラヴォスを蹴り飛ばした。


「観念しろ! 水晶の欠片を返せ!」


そしてラヴォスは捕獲され、兵士たちにズルズルと引きずられた。

その時、ラヴォスから天使の翼が一つ落ちた。

ラヴォスは計画の際、ギブタウン周辺を散策し、天使の翼を集めていたのだ。


「ラッキー! これは俺が使お!」


息子は天使の翼を拾おうと、そっと手を伸ばした。

しかしその瞬間、翼は淡い光を放ち、砂のように崩れ、目の前で消滅してしまった。


「消えた? どういうことだ!」


 ♢♦︎♢


やがてラヴォスは処刑の時を迎える。

兵士たちに囲まれ、両腕を縛られていた。

顔には怒りも恐怖もなく、長い苦しみをようやく終える者の表情があった。


「俺は自分で言うのもなんだが、元々真っ当な人間だった。俺の人生はカルロスにより狂わされた。俺は父親の仇をとることだけを考えていた。そのためなら町を破壊したり、数えきれない、無関係な人物も殺した。なんの手段も惜しまなかった。周りが見えなかった。やってることがカルロスよりひどいよな。こんなんで父親が喜ぶわけではない。なのに俺は……」


「今更なに言っても無駄だ」


兵士の冷たい声が響いた。


 ♢♦︎♢


「ふぅ、なんとかラヴォスを倒したようね。この後処刑されるようよ」


「もしや、この世界へラヴォスが来るのでは?」


「いや、きっと地獄行きでしょ。むしろカルロスはなんで地獄に行かなかったのかは分からないけどね」


「なんか言ったか?!」


「あれ、私なんか言ったかしら?」


「このアマ……」


青年も笑った。


「おい、貴様笑うな!!!!」


 ♢♦︎♢


ラヴォスとの決闘で息子さんが倒されていたら、天使の翼はラヴォスの手に渡ったとしたら……

あの日記が事実なら、ラヴォスの父親は死んでいる。

おそらくラヴォスの父親を生き返らせるのではないだろうか。

ラヴォスの父親が生き返らせることができたなら、悲願は成就されるだろうから、町を滅ぼすことをやめたのだろうか。


ラヴォスは最期にチェロスと対面する。


「俺は悪い人間だ。父親を殺されたその恨みで、関係ない多くの人を殺し、町を破壊した。今更謝っても許してもらえないと思うが……謝ってもお前の家族は戻ってこない。 それとお前には本当の強さとか言いつつ、やらせてたこと単なる人殺しだ。チェロス……すまなかっ……」


「いい。謝らなくていい。俺はアンタのおかげで少しは強くなった。そりゃ強くなる方法は間違ってはいたと思うが。だがアンタは少なくとも弱い俺を強くした。そこだけは感謝をしている。俺はその“強さ”を活かして日々の仕事に打ち込むつもりだ」


自分のしてきたことが、誰かの糧になっているという事実が、ラヴォスの胸を刺した。


「……そうか……チェロス……強くなったな……やはりお前を最初に見た時の俺の目は間違っていなかったようだ。そうだ! 天使の翼がある! これでお前の親なりを生き返らせてくれ! あれ! ない! 落としたか!」


「その気持ちだけ受け取っておく」


ヴァルサ……クラウン……そして町のいろんな人……俺はカルロスを倒すためだけに、関係ない人物まで巻き込み、死なせた……

結局俺はなにがしたかったのだ……

俺の人生はこれでよかったのか……

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