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第57話「金の力・改1」

ラヴォスは一瞬のうちに姿を消した。

その後、城の防備を掻い潜り、金目の品や保管されていた水晶の欠片、天使の翼を奪い去っていった。

カルネスの吐息は弱まり、カルロスは震える声で言う。


「何度も言うが……俺の父はもう……いない……行ってしまったか……うっ……」


広間に残されたのは血の痕、そして虚ろな沈黙だけだった。


「カルネスさん! いやカルネス!! おい、しっかりしろ!」


息子とチェロスはカルネスの元に駆け寄る。


「ああ……息子さん、わざわざこんな所まで来てくれるとは……」


チェロスはすぐに無線を握った。


「緊急事態! 兵士全員、至急、広間まで来い!! カルネスを救急搬送してくれ!!」


チェロスが叫ぶと、兵士たちの足音が遠くから近づいてきた。


「おい、起きろ! 口だけ野郎! てめえに死なれたら困るんだよ! てめぇから、莫大な報酬と金を貰わなきゃならねぇんだ! だから今、死なれたら報酬がロクに貰えないだろうが! 頑張ってる俺を誰が評価するというんだ!」


「えぇ……そうですね……そうとなれば……まだ死ねませんねぇ……アンタが……必死こいて……水晶の欠片と……天使の翼を……集めてくださっているというのに……俺は……たいして……あなたの力になっててああげられなかった……だから……せめて……この戦いが終わったら、莫大な報酬を……あなたに差し上げましょう……」


「おう、本当か? その言葉忘れんなよ?」


「は……はは……分かりました。あと、俺は知ってますよ……あなたは文句や愚痴を言いつつも、なんだかんだいって町や村の手助けをしてくれていたことを……」


「(カルネスナビで、電話がかかってきた時俺の愚痴とかは聞こえてないと思ったが、聞こえてたのか。意外と鈍感じゃないのな)」


「毎回ギブタウンを……知っている人から……お礼の電話が何件か来てたんですよ。中には、苦情などもありましたけど……水晶の欠片集めや、天使の翼集め……さらには、強盗まで追って奪われた物を取り返しに来てくれた。あなたには……とても感謝してますよ。なのに……俺は……グハァ!」


「もう喋るな!!」


「なんだチェロス? その顔は……死にかけのこの俺を、嘲笑おうとしてるのか……?」


「嘲笑う? フン、何言ってんだ? 軽蔑しないと言ったのはお前だろ。だから俺もお前を軽蔑するのをやめた。アンタを助けようと思っただけだ。なにか手を貸してほしいことがあったら言え」


「チェ……チェロス……分かった。ならお前に命じよう。あいつによる攻撃で……被害が出ないように……城内や町の……人々を安全な場所に……誘導しろ……」


「了解だ。だがその前にお前を、救急搬送するのが先だろうな。俺が呼んだ兵士たちがまもなく到着する」


「ああ……チェロス……助かる……」


カルネスは息子の方を向く。


「息子さん……俺のお願いを聞いてほしい。あいつを倒してくれ。あいつは、水晶の欠片で過去に行って……父さんたちを倒し……城を乗っ取ろうしている。だが、あなたも知っての通り、父さんはもうすでに死んでいる……すなわち、父さんがいなければいないで……そのまま城を乗っ取るに違いない。そうなってしまうと……今の未来が……変わって大変なことになってしまう可能性もなくはないのかもしれない。だから……なんとしてでも……あいつを倒してくれ、頼む!」


「しゃーねぇな。手柄は俺のもんだ」


「奴は、もしかしたら……屋上へ向かって……水晶の欠片を合わせて……水晶を完成させようとしているのかもしれない。この先の通路は……屋上へ繋がっている……まだ間に合うはずだ。た……たの……む……あいつを……倒してくれ……健闘を祈る……」


「ただし報酬は……」


息子が言いかけると、チェロスが重い息をついて割り込んだ。


「はぁ……用意しておく。さっきカルネスコンピュータで見たが、広間の構造や仕掛けは理解した。ラヴォスを罠にはめよう。カルネスナビで連絡を取りながら奴をやっけよう」


 ♢♦︎♢


屋上へ続く通路を歩きながら、息子はぶつぶつ独り言を言っていた。


「はぁ……まさかあんなことが起きるとは……にしても、カルネスの奴、あんなに強かったのか……ミッションをサボってたりしたら、どうなってたか分かったもんじゃないな。というか、あんなに強いんだったら、最初からあいつが、ミッションに行けば、こんなことには、ならなかったんじゃないか? 受付の仕事がどうこうとか言って、出れないとか言ってたけど、受付なんてしてないでさっさと、ミッションに行けばもっと早くこの事件を解決できてたはず」


すると目の前にラヴォスがいた。


「おい!」


「またお前か! なんの用だ!」


「なんの用だじゃねーよ! 水晶の欠片とか返せこの成金野郎!!」


「なんかよく分からないが、お前にだけは言われたくない気がするな。で? 水晶の欠片……いや、完成した水晶を、お前が手にしてどうするのだ?」


「天使の翼を使って父さんたちを生き返らせて、水晶で元の世界に帰す。帰す前に莫大な報酬を貰って、家に帰ってゴロゴロしたいんだよ! もう、あんな話が通じない奴らの所に行きたくないんだ!」


「フッ……とういうことは、カルネスに言われて俺を倒しに来たのか。しかし、カルネスたちに不満があるようだな。ならば、俺の所に来ないか?」


「なんだと!? お前の所!?」


「ああ、俺の所に来れば、好きなだけそのイライラを奴らに、ぶつけることができるぞ。それに安っちー報酬でもない。働きしだいでそれ相当の報酬も用意してやる。どうだ? 今だったらお前を仲間として入れてもいいぞ?」


「あんな安い報酬でもない、さらにはあのキ〇ガイどもをぶっ飛ばせるのか~それもいいな~! こっちの方が報酬高そうだし、こっちに入っちゃおうかな~」


「おお、ならば是非ともわが軍に」


「待てよ……よく考えてみれば、お前の部下は、力があるわけでもない逃げ回って避けてる俺に敗れたんだよな。お前の所に入ったら、俺も、あんな感じにやられるかもしれない……しかも、この俺に負けるなんて、軍事力なんてないようなものじゃないか! そうなると、アンタの言ってることも信用できねーな! 不本意ではあるが、お前のとこで働くぐらいなら、今のままの方がまだいい。俺は、できれば楽して報酬を貰いたいんだ」


「フン……お前とは仲良くできると、思ったが、仕方がない。お前も俺の力で葬ってやる。逃げ回ってだけで倒せるものなら倒してみろ!」


「今、奴を攻撃できる手段はなさそうだ。とりあえず、攻撃できる所まで逃げるか」


そして息子は急いで先に進む。


「クソッ! こんな時に限って、このドア鍵かかってやがる!!」


隣に人一人が通れる穴が空いているのを見つけ、慌ててチェロスに連絡を入れた。


「おい!! チェロス!! 屋上まで行くドアが鍵かかってたぞ!! 慌ててとっさに、抜け道に入ったら、なんか鉄格子がたくさんあるとこに来たぞ!!」


「多分そこは緊急通路で、敵を追い込むために作った通路だ。レバーを何回か引くと、鉄格子が出現する場所が変わる。しかも、そのレバーは、聞いた話によると熱に触れても反応するから注意だ」


「どうやったら、屋上まで行ける?」


「たしか赤いスイッチを三回踏めば、扉が開くはずだ」


「おう、分かった。三回踏めばいいんだな」


ラヴォスの掌から迸る火花が、壁を焼きながら飛び散った。

息子は咄嗟にそれを目で追い、熱で反応するというチェロスの言葉を思い出す。


「そうか……あの火花を利用すりゃいいんだな!」


炎を避けながら逆に炎を誘導する。

炎がレバーに触れた瞬間、重い金属音とともに鉄格子の配置が変わる。


「三回踏めば扉が開くんだったな……!」


息子は息を切らせながら赤いスイッチを探す。


「一回目……二回目……あと一つ!」


ラヴォスの影が背後に迫る中、三度目のスイッチを踏み込むと、前方の鉄扉が開いた。


「よし、抜けた」


息子は炎を背に、開いた扉へと身を投げ込むように飛び込んだ。


「なんとか抜け出せたが、ここはどこだ? もしや、さっきの鍵閉まってた所のドアかこれ? クソ! こんなことなら、ドアをぶち破いたほうが早かったぜ。まぁ、相手を攻撃できる所まで逃げなければ……」


「逃げ切れてるとでも思ったか!! 今度はもう逃がさんぞ。観念するんだな!!」


ラヴォスが追いつく。


「そう簡単にくたばってたまるか!! このまま死んだら、報酬が貰えないだろうが!!」


「おのれ!! 愚か者!!」


すると、背後から矢が飛び、ラヴォスの肩に命中した。


「無駄な抵抗をする奴がいたものだ……」


「無駄かもしれねえが、その一矢が一ミリでも助けになればそれでいい」


放ったのはチェロスだった。

命中はしたが、ラヴォスの頑健な体格には致命傷には至らない。


「おい!! チェロス!! カルネスはどうした!! 救急搬送してたんじゃないのか!?」


「ああ、そうだ。カルネスなら大丈夫そうだ。早めの治療でなんとか一命はとりとめ、容体は安定している。城にいた一般人たちも安全な場所へ避難させた。時間に余裕できたから援護しに来た。もう、誰も死なせやしないぞ、ラヴォス!! 俺が相手だ!!!!」


「貴様がこの俺の相手か……俺に逆らうなど、お前にはできぬ……」


「おい、バカ野郎!! 早く逃げろ!! カルネスと同じ目に遭いたいのか!!」


ラヴォスは瞬間的にチェロスの所へ行き、殴り飛ばす。


「グハァ!!!!」

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