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第52話「変人いや星人3」

敗北したクルーたちは、しょんぼりと肩を落としながら城へ戻った。


「お前らというものは……なにを任せられるのだ……」


「す、すいやせん……ラヴォス様……」


「もういい! てめぇらは城の清掃でもしてろ!!」


「「……はっ!」」


背筋をピンと伸ばし、涙目で敬礼した。

こうして、トイレ掃除要員として第二の人生を歩むことになった。


 ♢♦︎♢


私は船を貸してくれた船長のもとへ向かった。

そして、船長に事情を話した。


「そうか、船が沈んだか」


「本当にすみませんでした……」


「おうおう、気にすんな! 命にゃ代えられん! お前らが無事ならそれでいい。それより、襲ってきた奴らってのは噂の連中だろう。島を襲って占領してんだとよ。人々を洗脳して部下にするって話も聞いたことがある」


「そんな……恐ろしい奴らですね」


「そんな奴相手にして無事だったのは良かった。しかも仲間も見つけたんだろ? 上出来だ!」


「はい!」


「いい仲間を持ったな」


「よし、冒険の続きするか!」


「ああ!」


……盛り上がる中、ひとりだけ微動だにしない影があった。

アーサーさんだ。

今も安定の置物スタイルである。


「あの、アーサーさん、もし、行く当てもないなら一緒に冒険に行きませんか? あなたは変人であり、そんなに強くもないかもしれない。でもいると何故か役に立つ」


そう言うとアーサーさんは首を横に振る。


「え? なんでですか?」


「はっはっはっ、そいつにもきっとお前らと同じように探したい奴がいるんだろ」


「そうなんですか?」


アーサーさんは頷いた。


「おっぱい」


「人探しするってんなら、別のボロい船ではあるが一隻、お前にやるよ」


「おっぱい」


「すごい。本当におっぱいって言ってるだけで事がうまく運んでいく」


「でもアーサーさん、おっぱいって、胸の大きな女性ならこっちにいたっていずれ見ますよ」


「大きさだけじゃないんだよな! わっはっは!」


「おっぱい」


……最後までブレない男だった。

私は改めて、アーサーさんのコミュニケーション能力(?)の高さに感服したのであった。


「………あっ、カルロス……」


アーサーさんがポツリと呟いた。

その名前に私は思わず首をかしげる。


「(カルロス? あぁ、ネームプレートの。もしかすると、アーサーさんはその城の皆と一緒に自分と同じく船ではぐれて遭難して離ればなれになっていたのかもしれない)分かりました。残念です。あなたとは変な出会い方をしてしまいました。あなたがいてくれたおかげで、何故かおっぱいで事がうまく運び、仲間たちと再会することができ、敵も倒すことができた。本当にありがとうございました」


「おっぱい」


「あっ、そういえば気になっていたんですが、出会った時に持っていた木の実はなんだったんですか?」


「おっぱい?」


首をかしげながら、アーサーさんはポケットから例の木の実を取り出して差し出した。

まさか本当におっぱいじゃないかと一瞬思ったが、普通の木の実だった。


「これを?」


「んー、これなんか見たことあるな」


「ほんとですか? 船長さん」


「ああ……あ! 思い出した。昔この町の商店で買い物してたとき、胡散くせぇ男がこの木の実を売りつけてたんだよ。でもな、店主が調べたら本物で、めっちゃ貴重だった。だから高値で取引されたってわけだ」


船長の顔に、当時の記憶が蘇ったような表情が浮かぶ。


 ♢♦︎♢


時は遡り、元の世界のギブタウン城。


「おい、アーサー!」


「……なんでしょうか?」


「お前、商品発掘部門だったよな」


「……はぁ、商品開発部門ですね」


「ならばある物を採ってきてほしいのだ!」


「ある物とは?」


「コーンチの実だ。珍しい木の実でな、なにかと開発の役に立つだろう」


「……分かりました。場所は?」


「そんなの資料室で調べろ! なんのための資料室だ!」


「分かりました……」


「(これでよしと、この珍しい木の実を売ればいい値段になるんじゃねぇか?)ウシシ!」


「はぁ……」


そしてアーサーはコーンチの実を持ってくる。


「アーサーの奴まさか本当にコーンチの実を持ってくるとは。普段寡黙でなに考えてるか分からんが思ったよりできる奴だな」


数時間後、カルロスは町の商店に立っていた。


「よぅ、店主!」


「誰だアンタ?」


「僕ちゃんはスーパーエリートのカルロスだ。このコーンチの実、売りにきた!」


店主が実を確認して頷く。


「たしかに珍しい……わかった。高値で買おう」


「よっしゃ! これでまたゲーセン通い放題だぜ〜!」


 ♢♦︎♢


「おっぱい」


アーサーはハックにその実を差し出す。


「そんな高いものを貰っていいんですか?」


「おっぱい」


「それじゃあいただきます。その実はあの島で?」


「おっぱい」


「なるほど。それを探しにあの島にいたんですね。そんな貴重なものをありがとうございます(なにに使うか分からないが、ここは一応貰っておこう)。それじゃあ、お気をつけて。探してる人が見つかるといいですね。またどこかでお会いしましょう。では、さようなら」


「おっぱい」


こうして私は、仲間も見つかり、再び宝を見つけるため、我々は旅立った。


遭難した先で、変な出会い方をしてしまったが、私はおっぱいしか言わない変人、いやおっぱい星人のことを忘れない。

というか忘れたくても忘れられないであろうう。


その後、私は戦いで怪我をしたため、薬屋に出向き、今に至る。

ちなみに仲間たちは引き続き宝を探しており、私もこれからも合流する。


 ♢♦︎♢


アーサーは新たな島にたどり着いていた。

そこはギブタウンであり、近くにいた兵士に足止めをくらう。


「やい、何者だ! お前! このギブタウン城になにしに来た!」


お客様入口ではなくチェロスがいた門付近でキョロキョロしていたアーサーは呼び止められる。

するとアーサーは案の定おっぱいで会話しようとする。


「……おっぱい」


「は?」


「なに言ってんだ? お前?」


「おっぱい」


「おい! ちゃんと答えろ!」


兵士がカルネスに報告しに行く。


「カルネスさん! 城の外で怪しい不審者を捕らえました」


「ほう、どんな奴だ?」


「それが、なにに対しても、おっぱいとしか答えない奴でして……しかもなにかあればおっぱいで誤魔化そうとしますし……」


「なに言ってんだお前?」


「いや本当なんですって! 来てくださいよ!」


「はぁ?」


半信半疑であったが、カルネスが直接会いに行く。


「こいつか、その不審者というのは! おい、お前、この城になにしに来た? 財宝が目当てか? それともこの城を乗っ取るつもりか?」


「おっぱい」


「フン、おっぱいでお茶を濁しても無駄だ……大人しく白状しないとどうなるか分かってんな?」


「…………おっぱィ……」


「なんや、こいつ……」


すると、アーサーの視界にミオが映る。


「あの女性のおっぱいの形、しっかりしてる!」


「お、おっぱい以外に言葉喋ったぞ!!」


「そこじゃないですよね!」


「ほう、おっぱい、おっぱい、言ってるだけはあるな。実は、俺もミオのおっぱいだけは、いい形してると思ってたんだ。お前とはおっぱいだけなら少し気が合いそうだな」


「ちょっと! 私がいる前で堂々とセクハラ発言しないでくださいよ!」


「あ、スマン。つい」


カルネスはアーサーのネームプレートを見る。


「ん?」


「カルロス城、アーサー? カルロス? カルロスって、どっかで聞いたような……あっ、父さんか! ということは、お前はは元々はこの城にいた奴だったのか! もしかして父さん同様タイムスリップしてきたのか!? うーむ……こいつは元々、この城にいた奴か。見た感じ、ヘンテコな奴ではあるが、悪い奴にはみえんし、おっぱいだけは俺と気が合うし……よし、お前をこの城に置いてやる。どうせ行く当てもないんだろう?」


「おっぱい」


「ええ!? いいんですか!? カルネスさん! こんなあからさまに、おかしい奴を城に入れて……」


「うるさい! 俺が決めたことだ! まぁ、なにかやらかせば、すぐにでも追い出すさ。役に立つかどうかは分からんが、いないよりかはいてくれた方がいいだろう」


「ええ……」


「おっぱい」


アーサーはカルネスの城に勤務することになったのであった。

しかし次の日、彼は出門してから姿を消し、その後の彼の姿は見ていない。

アーサーはカルネスコンピュータであることを調べていたみたいで、検索履歴を見ると、『おっぱい』『ロケット』 が残っていた。

その情報をもとに、アーサーはスカイギャラクシーへ着いたようだ。


 ♢♦︎♢


「おっぱい」


「あれ……アンタ……えっ!?」


アーサーはメグの胸元に目線をやり、しばらくじっとしている。

メグは恥ずかしそうに胸元を隠した。


「ん? でも似てるようで違う……」


「な、なんの話?」


アーサーが求めていたのはロケットのような胸だったが、ロケットがある町の胸だった。


「人違いだとしても、この形といい、色、光沢、まさに探していたおっぱい。ようやく探してたおっぱいに再会できた。まさに希望の実だ」


「誰なんじゃこのおっぱいを連呼する小僧は」


「アーサーです……普段は寡黙なはずなのに……いつからかおっぱ……胸の話題になるとやたら饒舌になるの」


「メグのはちょっと歩いただけでも揺れるし、それで理性も揺れるんだ」


「か、寡黙な小僧がこんなに喋るとはよっぽど魅力的なおっぱいなのか」


「ちょっと、おじいちゃん!」


「おっぱい」


「でもアーサー、やはりあなたもこの世界に来ていたのね」


「すごい……ロケットがロケットがある町で働いていたとは」


メグは意味不明な発言に首を傾げた。


「と、ともかくじゃ、ここはなにかの縁。お前さんもここで働いていかんか? ここで働けば毎日メグの……いや、なんでもない……」


「おっぱい」


「もう! それが嫌で私がここの薬屋やめたらどうするつもり?」


「フォッフォッフォッ、すまんすまん。小僧もおっぱいはほどほどにな」


「おっぱい」


「早速言ってるし……」


こうしてアーサーは薬屋で働くこととなり、その夜、眠りについた。

時折、寝言で呟くのはやはり『おっぱい』だった。

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