第50話「変人いや星人1」
薬屋でメグに声をかけられた息子は、間違えてモンスター用の混乱薬を飲んでしまい、暴走して村民を襲ってしまう。
オースティンのミサイルで気絶させられ、事態は一応収束。
目覚めた息子は、夢の中で父や亡霊たちと向き合い、自己の行いを振り返る。
そして村長の依頼で宇宙に行くためのパーツ集めを命じられ、ジェットシューズを履いて危険な空中ステージを攻略する。
集めたパーツを使い、ロケットで宇宙へ向かう準備を進める中、強盗に奪われた水晶の欠片と天使の翼も取り返さねばならず、村長とともに塔へ向かう。
息子は強盗を追いかける途中、スプレーの浮遊効果が切れ、薬屋に落下してしまう。
薬屋の人々やオースティンも驚きつつ、息子の無事を確認する。
その後、奪われた物を取り返し、霊障からも解放された。
♢♦︎♢
メグは小さくため息をつき、呟いた。
「やれやれ、やっぱり改心してなかった。口だけ男、やっと帰ってくれたわ」
「ひどかったですね。あんな奴がいるとは。この前の悪党と変わんないな……」
「悪党?」
「あ、はい。いろいろありまして。でもこの話はちょっとここでは……」
「あ、そう。無理に話さなくてもいいわ」
「あっ、そろそろ帰らないと。仲間が待っているので。お世話になりました」
ハックは去っていった。
そこへ、入れ違いに新たな宿泊客が来る。
「おっぱい」
卑猥な言葉を口にしながら入店する騎士らしき人物。
「あれ……アンタ……えっ!?」
♢♦︎♢
私の名前はハック。
これから話すのは少し前の出来事である。
忘れたくも忘れられないあの出来事。
そう、私は変人と出会ってしまった。
トレジャーハンターと呼ばれる私たちは、偉大なお宝があると伝えられている島へ、船に乗って目指していた。
しかしその途中、大きな嵐に見舞われてしまう。
船は大破し、仲間たちもそれぞれ別れ離れになってしまった。
気がつけば、見知らぬ島に打ち上げられていた。
潮の匂いと混ざる湿った風を感じながら、私は歩き始める。
そしてその島で、奇妙な人物に出会ったのだ。
「よし、まず拠点を作るために、安全そうな場所を見つけよう。見たところ、人の気配がない。助けを呼ぼうにも呼ぶことができなさそうだ」
その後、私は島にある森へ入っていく。
すると木陰に青い髪をした騎士が静かに佇んでいた。
「(あの人は誰だろう? 自分と同じ遭難者なのだろうか)す、すみませーん!」
「………」
彼は振り向くが、喋らないどころか表情も変えない。
「もしかしてあなたも遭難者ですか?」
「………」
それでも返事はない。
「よかったら一緒に行動しませんか? 今、拠点を作って島から出る方法を考えているところなんですよ」
「………」
「………」
「………」
「あの、なにか喋ってくださいよ!」
「おっぱい」
「え?」
彼の意外すぎる言葉に沈黙が流れた。
彼の胸元にネームプレートのようなものがあり、カルロス城アーサーと記されている。
これを見る限り、彼のアーサーというのだろう。
「アーサーさん? 何故こんな所にいるんですか?」
口を開いてもおっぱいしか言わない。
なかなか話は進まなかった。
すると、アーサーの手になにか握られているのを発見し、それは木の実のようだった。
「それは?」
「………」
当然答えはない。
呆然と立っていると、向こうから足音が聞こえてきた。
そして強面でいかにも、屈強な男たちがやってきた。
「おうおう、おめぇら見ねぇ面だな」
「無断でこの島へやって来たのか? ええ! この無法者が!」
「あっ、あの、その…実は昨晩、嵐に遭って…あっ、その……」
「うるせえ!!」
「ヒッ、ヒィィ……」
「おい、そこの青いあんちゃん、なに黙ってるんだよ……」
彼はこんな状況でも、表情一つ崩していなかった。
「なんとか言ったらどうなんだ! ゴラァ!」
「おっぱい」
「は?」
また沈黙が続く。
「……な……なに……なに、訳の分からんこと言ってやがる! 舐めやがって……テメェらは……」
「待て!」
また誰かがやって来た。
「そ、村長……」
「訳も聞かずに、頭ごなしに追い出そうとするな!」
「す、すんません村長、ちょっと見ない奴らなんで警戒しちまってよ」
村長はアーサーさんを見つめる。
「……見たところ、この男の目はおそらく修羅場をくぐった強者の目だ」
「………」
「お前たちが敵う相手ではない……」
「おっぱい」
「いや、ただ、ぼーっと突っ立っておっぱいって言ってるだけなんだが……」
「いやぁ、分かってないなお主よ。この者たちは私が相手をする。して、一体なにしにここへ?」
「あっ、実は……」
私はこれまでのいきさつを話した。
「なるほど、仲間たちと船に乗って冒険していたが、嵐に遭ってこの島にたどり着いたと」
「そういうことです」
「ここはピーブータウン、ワシは村長のオームじゃ」
「自分はハックで、彼は……」
「………」
「たぶんアーサーです」
「ハックにアーサー。それで、これからどうしようと?」
「ここから出て、嵐によって別れた仲間たちを探します。ここを出るためにまた船を借りられればいいんですが……」
「それならこの村にある船着き場に行ってみるといい。きっと話を聞いてくれるだろう」
それを聞いて、私は村の船着き場へ行ってみようと思ったが、嵐に遭った後、自分の持ってた所持金や武器などは全て海へ流れてしまっていた。
そうなると、船着き場に行ったところで船を借りられるかどうかは分からない。
そう思った私はアーサーにこんな提案をする。
「アーサーさん、すみません。少しの間だけですが、一緒に行動してもらえませんか? 一人だとどうも心もとなくて……」
「………」
「………」
「あの!」
「 ………りょっぱい」
どうやら『了解』ということらしい。
こうして短い間ではあるが、一緒に行動することになった。
しばらくして村の船着き場に着き、船員に会釈をして話を持ちかける。
「なんだ? お前ら」
「すみません、どの船でもいいので一隻だけお借りできないでしょうか」
「船を借りたい? すまないがね、ここ最近、この辺の海は結構、荒れてんのよ。あんまり被害を多くしたくないから、船の貸し出しはやってないのよ」
「そうですか……」
「そうだなぁ……ちょっと遠くではあるが、この先の町にも船着き場がある」
「そこに行ってみるといい。あの町にある船はここより頑丈だ。だからもしかしたら借りられるかもしれない」
そう言われ、町にある船着き場へ向かうことにした。
町に向かう最中、アーサーさんは喋ることもなく、ずっと真顔なまま、一緒について来た。
途中、モンスターに遭遇した。
モンスターが飛びかかってきた瞬間、私は横に飛び退く。
近くに落ちていた棒を振り下ろし、ギリギリで攻撃を回避させた。だが、攻撃が当たった瞬間、モンスターは逆に怒りを増す。
私は防御を固めつつ、次の一手を考える。
「くっ……どうする、アーサーさん!」
「おっぱい」
私は連続攻撃を仕掛け、なんとかモンスターを怯ませる。
すると、アーサーが軽く手を振るだけで、モンスターが不思議と怯んだ。
彼の力なのか、ただの偶然なのか、私にはわからない。
私は未だ、彼がなにを考えてるかは分からない。
そして、思ってた以上になにもしてくれない。
もしかしたら、状況は私と一緒でなにも所持品を持ってなく、どうすることもできないから、なにもしてくれないのかもしれない。
あとはそんなに強くないのかもしれない。
そう思うと一気に不安になってきた。
そして次に背後から低い唸り声が響いた。
振り返ると、巨大な象のようなモンスターがこちらに向かってきていた。
牙は鋭く、まるで殺気を纏っている。
「くっ……またか!」
私は棒を構え、前に踏み出すと、モンスターが跳びかかってくる。
咄嗟に横に避け、斬撃を叩き込む。
「アーサーさん……今度は手伝ってください!」
「おっぱい」
相変わらず彼は微動だにしないが、不思議なことに、彼の視線だけでモンスターの動きがわずかに鈍る。
私はその隙に連続攻撃を仕掛け、なんとか象を倒した。
戦いが終わり、私は深く息をついた。
アーサーさんは相変わらず無表情のまま、ただじっと私を見ている。
しばらくして町にたどり着く。
町で船着き場を探している途中、女性が歩いていた。
するとアーサーさんは、その女性……いや女性の胸をじっと見つめていた。




