第5話「火山のドラゴン」
「皆の者、集まれ! 会議を始める! まず、始めに先日に調達した武器や道具、捕獲した人間たちの話をする。我々が手に入れた武器や道具の戦利品を次の任務に移る前に装備しておいてくれ。捕獲した人間たちについてだが、洗脳することに成功した。そこで何人か戦力になる者が欲しいと考え、数名その者たちの訓練をしてほしい。その数名はあとで選抜する。また今日は新たな任務を遂行してもらう。その任務とは、この島の近くにある火山の頂上で採れる鉱石を採ってきて欲しいのだ。現在我々が開発している新兵器の製造の材料にその鉱石が必要なのだ。ただあの近くにある火山はとてつもなく険しい上に道もそれほど開拓されてない。それに加え、頂上付近には人を襲うドラゴンがいるとのことだ。鉱石を採る際は、十分気をつけろ。なお今回はすでに何人かは火山に移っている。早いとこ、皆も火山のほうへ向かうのだ」
「「はっ!」」
♢♦︎♢
「おう、チェロス、お前も火山のほうへ向かうのか」
ミクロンだ。
「今日は捕獲してきた奴らの訓練指導で、お前と一緒に行動はできない。火山の入り口付近に、ヴァルサという女兵長がいる。その女と合流して、共に行動しろ。じゃあな、俺は忙しい」
こうしてチェロスは火山へ向かうことになる。
しばらくして火山の入り口付近に到着する。
「あら?もしかして貴方が今回の任務に協力することになったチェロスかしら?」
「ああ、そうだ」
「初めまして私はヴァルサよ。話はラヴォス様からいろいろと聞いてるわ。下級兵士ながら、ラヴォス様のお墨付きみたいね。私も長いこと兵長をやってるけど、あなたのような人は今までいなかった。でも、あなたがラヴォス様のお墨付きだろうと、贔屓するつもりはない。そこのところ、覚悟しておきなさい。さて、本題に入るけど、今回の任務の話はラヴォス様から詳しく聞いてるかしら?」
彼女の声には冷たさと威圧感があった。
そしてチェロスは黙って頷いた。
「これは重大ミッションだから念のため説明するけど、今回の任務は火山の頂上付近にある鉱石を回収すること。ただその付近に強力なドラゴンもいるからそれも退治しなければならない。その頂上までの道のりなんだけどこの火山は普通に進めるような安全な道はないの。だから力がありそうな兵士を集めて安全な道を開拓しようとして掘り進めてるけど、まだ全然。悪いけど結構険しい道を通ってくと思うわ。でも、ラヴォス様が認めたあなたなら問題ないわよね。頂上前までは一度行ったことがあるわ。私が案内するからついて来なさい」
こうしてヴァルサの案内により、チェロスは火山の頂上を目指すのであった。
♢♦︎♢
その道中、一人の男を見つける。
「へへへ……やっと金を見つけたぜ。これでしばらくは苦労がねぇや」
「その金はこのへんで採れたものかしら?」
「おう、そうだぜ。この辺はよく金が採れるって聞いて駆け付けてきたが、本当に採れるとはなぁ」
「情報提供ありがとう。それじゃあ……」
ヴァルサが男を突き刺す。
「お礼に死をあげるわ」
男は呻き声を上げる間もなく倒れ、絶命した。
ヴァルサは何事もなかったかのように金鉱石を奪い取る。
チェロスは目を見開き、その残酷さに言葉を失った。
「どうしたの? そんな顔して……まさか、私のやったことが酷だと思ってるの? 今まで散々、人を殺してきたあなたがそんな顔をするなんて……もしかして間近で人を殺してきたことがないのかしら? この世界は殺すか、殺されるの世界…あなたみたいな少しの良心を持っている者はいずれ身を滅ぼすことになる……」
「俺の身が……滅ぶ……アンタの昔に一体なにがあった?」
「人間は誰しも当たり前にあったものを全て失うと、なにもできなくなる。そして、明日を生きるために、がむしゃらに一筋の光を求める」
「ヴァルサ兵長?」
「私もあなたみたいに、平和に暮らしていた。だけどある日突然、その平和はなくなり、私は全てを失った。普段の日常がこんなにも幸せだとは思わなかった」
「……」
「当時小さかった私は一瞬で両親を失い、希望を失い、行き場を失った。でもその時目の前にラヴォス様が現れた。その時希望と行き場はあると思い入隊を希望した。それからはラヴォス様に服従し、兵長にまで上り詰めた。いつ、なにが起こるかは分からない。いかなる時でも強く生きる覚悟が、あなたにはないの?」
チェロスは拳を握りしめる。
「……俺もそうだ。アンタみたいなことが、数日前にあったばかりだ。俺もアンタみたいに強く生きるために、入隊したんだ。でも、日々思うんだ。こんなことばかりで俺は強くなってるのか……俺たちのやってきたことは、決して許されないものばかりだ。俺たちの強さが一体なんなのか…よく分かってないんだ……」
「チェロス……」
その時、地面が激しく揺れた。
「なに……? 今の揺れ……! 噴火……?」
ヴァルサが振り返った瞬間、背後から巨大な影が覆いかぶさった。
「ドラゴン! 私が食い止める! あなたは鉱石を確保しなさい!」
ヴァルサは剣を抜き、巨躯に立ち向かった。
チェロスは歯を食いしばりながらも、指示どおり鉱石を回収する。
だが火山はさらに大きく揺れ、赤々としたマグマが地表を裂いて溢れ出す。
その一瞬の隙を突かれ、ヴァルサの体がドラゴンの巨腕に捕らえられた。
ドラゴンに体を掴まれ、身動きできないヴァルサ。
ヴァルサは大声で叫ぶ。
「チェロス! 集めた鉱石を持って早く火山を出るんだ! 火山はもう噴火する! 取り返しがつかなくなる前に急げ!」
「だが……アンタは!」
「言ったはずだ! その良心が身を滅ぼすと! 私はもう間に合わん! ドラゴンがおもいのほか強くてな! かくなるうえはドラゴンと心中してやる!」
「ヴァルサ兵長!」
ヴァルサはドラゴンと共に噴火に巻き込まれてしまった。
♢♦︎♢
その後、チェロスは城に戻り、集めた鉱石を納め、ラヴォスに報告する。
「そうか……それは残念だ。アイツは出会った頃から素質があると感じてこの城に入れた。その結果、見事に我が軍に貢献してくれた。奴は強くて信頼していたんだがな」
ラヴォスは一瞬だけ目を伏せ、感情を抑え込むために冷酷を装う。
「だが、たかだが味方の一人が消えたところで俺的にはどうでもいい。俺はアイツさえ殺せれば、それでいいのだ……あの憎きアイツを……」
「アイツ?」
「お前には関係のないことだ。それより覚えておけ、チェロス。本当の目的に到達するのに手段なんぞ選ぶな。どんな手を使ってでも一つの目的だけに向かって進むのだ」
ラヴォスには強く憎む誰かがいるらしいが、それ以上語ろうとはしなかった。
俺はどうすることもできなかった。
ただ人の後ろを歩いていただけで、なにもできなかった。
自分の仲間が危機に陥ってるのに、戦おうともしなかった。
そんな臆病な奴に強くなる資格があるのだろうか……
♢♦︎♢
「皆の者集まれ! 会議を始める」
玉座の部屋にて会議が開かれた。
ラヴォスは玉座に座り、大声を出す。
「先日の任務でヴァルサ兵長が亡くなった!」
周りがザワザワとする。
当然だ、ヴァルサは誰もが慕っていたからだ。
「そのせいで我々はまた一つ、戦力を失ってしまった。だが、そんなことでうろたえるな!たかが一人、いなくなったくらいで我々の軍事力は衰えないのだ!死にたくなかったら、己自身を鍛えろ!」
「はっ!」
「……ヴァルサ……」
ラヴォスはボソッと呟いたのをチェロスは聞いた。
「そこで今日は新たな兵長を決める! 新たな兵長は……」
そこへ一人の兵士がやってくる。
「ラヴォス様、大変です! 敵軍が攻めてきました!」
ラヴォスは玉座から立ち上がり、全兵に命じる。
「なんだと! 俺の指示に従って、今すぐ戦闘配置に着け!」
「はっ!」
兵士たちは慌ただしく配置につき、陣を組み始めた。
ミクロンとチェロスは計画を立てる。
「いいか、チェロス。下級兵士のお前は他兵士たちのサポートだ。戦いは必ず負傷者が出る。そこでチェロス、お前が手当てするんだ」
「手当て?」
「城の中に水や、救急道具があるはずだ。それをこれからやってくる負傷した兵士に与えてくれ。兵士が一定数やられると、俺たちは終わりだ。だからなるべく迅速な行動をとるようにしてくれ」
「了解だ」
「城内にも、敵兵が忍びこんでるかもしれない。気をつけて持ってきてくれ。あ、そうだ。水や救急道具の数が無くなった時は、城の外に出て、倒れてる敵兵からなにか使えそうなものを奪ってきてくれ。その際は、SPとかを駆使してくれ。分かったか?」
SPとは兵士の必殺技のようなもので、その人が得意とするものを極めた業をそのように呼んでいる。
SPは消費が激しく、一戦で少ししか使えない。
また、階級が高いほどSPの種類が増えたり、ランクが上がる傾向がある。
「ああ」
こうしてチェロスの任務が始まった。




