第49話「宇宙での出来事3」
「俺は……死んだのか?」
亡霊たちの姿が見えた。
亡霊たちは息子のことを鬼の形相で睨みつけている。
「亡霊? そうか、そういうことか! 立て続けに起こる不幸は、やはりお前らの仕業だったのか! いや、ムキになったらいけないのか。だから俺が態度を改めれば、お前らも寄ってこないって事だろ!? 分かりました! 態度を改めますからどうか、成仏してください!! そ
して私をお許しください!!」
♢♦︎♢
「危ない! 私たちも巻き添えになるところだった!」
「おい! 大丈夫!?」
「いや、もう死んでるでしょ」
「そりゃ、そうですよね……」
血だらけになり、原型もとどめていない息子だったが、元通りの形になり、元気に立ち上がった。
亡霊に誓い、改心した息子は、なんとか許されたようだ。
「生きてた!」
「な、なんて不死身なんだ……おい、大丈夫なのか?」
「はい。今まで、ご迷惑をおかけいたしました」
「まるで別人みたい。落ちたショックで逆にいい人になっちゃったのかしら」
「おい! でーじょうぶか!」
村長も宇宙から降り立ち、急いでやって来る。
「あ、村長。私なら、大丈夫ですよ」
「すまんな、スプレーの残量はたくさんあった気がしたが……いずれにしても適宜スプレーをかけてやるつもりだったが、すっかり忘れてたわい。いや~そんなこというとお前さんのことだから怒ると思って、お詫びとして金を持ってきた。これで許しとくれ」
「金ですか。大丈夫ですよ」
「「えっ、まじで?」」
驚きのあまり、オースティンとメグは口を揃えた。
「ほ、本当にいらんのか?」
「はい。私もいろいろと悪いことをしたのでお互い様です。せめて、もう一度、宇宙へ行くことは可能でしょうか? 強盗を追っているものでしたから」
「た、容易いご用だ。今度からスプレーをかけるのを忘れないようにしないとな。では、行くぞ」
「お願いいたします」
「いつものように金をせがんでこない方が逆になにかあるんじゃないかと不安になる……」
メグたちは呆然と見送った。
死んだと思っていた男が生き返ったことよりも、性格がまるで別人のように変わっていたからだ。
「(俺が金を断るなんて、読者もびっくりしてるだろうな。でも、幽霊に付きまとわれて相当こたえてるんだ。だが、やはりこの村長むかつくが、もう少しの辛抱だ)」
息子は再び宇宙に行き、強盗を探す。
ロケットの近くで待機する村長。
「あの若者は、強盗を見つけ出せたのだろうか。ん? なんか今通ったような……」
村長の前を何者かが横切る。
「よう……あっ、間違えた。ただいまです」
「おお! よく戻ってきたな! では、スプレーで補充するぞ」
「ありがとうございます。追っている強盗はまだ発見できませんでした。引き続き追跡いたします」
「そうか、頑張れよ。そういえば、なんかワシの前を何者かが横切ったぞ。赤くキラキラした物を抱えてたような…なんじゃったんだろうか?」
「………」
「………」
「強盗ってのはそいつだよ! やってんだ! バカチン! う◯こ野郎! お前の言う赤いキラキラした物は、こっちにとってはずっと追いかけてる水晶なんだよ! とっ捕まえとけよ! ほんとお前役立たずだな!」
「す……すまん……でも口調戻っとるぞ」
「とりあえず、そいつはどっちに行ったんですか?」
「ん? ああ、あの向こうじゃ」
息子はそのまま猛スピードで追走し、勢いよく強盗を取り押さえ、容赦なく殴りつけた。
「この野郎! この野郎! お前のせいでどんだけ迷惑かかってると思ってんだ! いい加減にしろ!!」
息子は奪われた水晶の欠片と天使の翼の羽根を取り戻す。
疲れた呼吸を整えながら、息子はぶつぶつ呟く。
「よし、盗まれた欠片や翼が手に入ったし、一旦戻るか。お前のせいで、こっちはえらい目にあったんだ。永遠に倒れてろ。二度とこっちの世界に戻ってくんな。まぁ、なにはともあれ水晶の欠片とか天使の翼の羽も戻ったし、あとは城に戻るだけか。だが未だに天使の翼は全然集まらないな。ここまで来て、羽は二枚しか手に入れてない。たしか天使の翼を持ってないのか……」
「天使の翼……か……あの城も、今ごろ大変なことになってそうだな……」
「フン……あんなキチガイな頭している奴らばっかいるんだぞ。城が大変だなんて今に始まったことじゃないだろ」
「ハハッ……まぁ、今に分かるさ……城に戻ったら地獄が待ってるかもしれないぞ……まぁせいぜいその水晶が奪われないよう頑張るんだな……」
「訳の分からないこと言いやがって……ったく。こっちにたくさんの被害を与えただけではなく、まさか脅しにまでくるとは……なにはともあれ、村長のとこに行くか」
強盗が言った、城に戻ったらの地獄とはどういうことなのだろうか。
この時の息子は深く考えずに村長の所へ向かう。
「おお、戻ってきたか。盗まれた水晶の欠片とかは、取り返せたのか?」
「はい。なんとか取り返せました(やれやれ……とんだ災難だったな。薬、村長、亡霊……これらのことがなければもっとスムーズに、ミッションを終えることができたのに……)」
息子は荷物をまとめながら溜息をつく。
「はぁ~~~~やっと終わったァ!」
「ご苦労さん。これでワシの夢も叶ったし、村の皆を襲った罪はこれで帳消しだ」
「調子はどうですか?」
カルネスナビを通じてカルネスから電話がかかってくる。
「はい。なんとか強盗から水晶の欠片と天使の翼の羽を取り返すことに成功しました」
「おお、さすがです。城に戻って来たら今まで集めた水晶の欠片を、こちらで回収させていただきますね」
「はい。了解しました(はぁ……あいつ任せるとロクなことにならないから、渡したくないんだけどなぁ……管理が雑なんだよな、あいつは)」
カルネスナビを切る。
「あ、そうだ! そういえば報酬の件について忘れてました!」
「あ、ああ……そういえばそうじゃったな。少し待っておれ」
「早く寄越せ、宇宙人う〇こジジイ。お前の下らない頼みごとで、こっちはさんざん働いたんだぞ。分かってんなら、早く金寄越せゴラァ!」
「おっと、また口調が変わっとるぞ。金はいらないんじゃなかったのか?」
「ミッションが終わったんだから、別にもういいだろ!」
「そんなこと言うと、また亡霊たちがお前のところに来るぞ、いいのか? お前のためにも、言っているんだ。少しは反省したらどうだ」
「はいはい、分かりましたよ。大人しくしてます。そういえば、もう亡霊たちがとりついた感じしないな。とういうことは、俺は少しでもいい性格にでもなったのか? だから亡霊たちも、俺のことを認めて成仏してくれたんだな。ともかく報酬をください」
「分かった。今渡してやる」
自分の体をすすり、青ざめてくる村長。
「……あ、言いにくいのだが……お金を宇宙に落としたかも」
村長はお金を落としたショックより息子になにをさせるか分からない恐怖で青ざめていた。
「は? ぶっ殺されてぇか? 鍵の時といえ落としすぎなんだよ。だったら、お前の全財産を寄越せ!」
「やれやれ、図々しいのぅ……そんなこと言わなくても家に結構あるから持ってくるわい。待ってろ。あ、そうじゃ、そういえばこんな物も落ちていたぞ」
天使の翼の羽と水晶の欠片を手に入れた。
「は? それを、もっと早く寄越せ! なんで今まで渡してくれなかったんだ!」
「い、いや……ワシも宇宙から帰ってきて、見つけたものだから、つい……」
「こっちは必死こいて翼を集めているというのに! まぁいい、そいつを貰ってとっとと城に戻るか……」
「……あ、そういえば思い出した!」
「なんなんだよ、早く城に戻らせてくれよ!」
「数ヶ月前に、お前にそっくりな奴がこの村に訪れていたの……」
「なに!? まさか、そいつは父さんのことか?」
「多分な。いやあまりにも性格が違いすぎるからそうなのか? お前と違ってワシの頼みごともすんなり受け入れてくれてたわい。最初はあの時の方と思っていたが、口調が違うからすぐに別人と分かったわい」
「(このジジイ、自分の父親まで、コキ使わさせたのか……こいつも十分、図々しいわ)そいつは父さんだ。お節介なところあるし間違いない。ところで……父は一体なにしにこんな村に来たんだ?」
「なんか、人を探しているとか言ってたな……」
「探している人は、金髪の男カルロスと、赤髪の女ニーナとか言ってなかったか?」
「いや、違うな。その名前は聞いていない」
「なんだと!? 父さんは、カルロスとニーナを追っていたんじゃないのか? もしかして、あの二人とは別に、また誰かを追っていたのか? どんな奴だと聞いた? 聞きましたか?」
「ん~あんまハッキリ覚えてないが、たしかカルネとかチェなんとかとか、ラボとか言ってた」
♢♦︎♢
「お前さんには散々、迷惑をかけたな! ここまで手伝ってくれて本当にありがとう。なにか礼をせねばな」
「礼だなんてそんな……そうだ! なら一つ聞いてもいいですか?」
「なんじゃ?」
「ラヴォスという銀髪の大男のことを知っていますか?」
「ラヴォス? 銀髪の大男? さぁ分からんな」
「そうですか……(まずい、時の水晶の存在を知られたら、水晶を使ってあらぬことをしかねない。早くなんとかしなければ……)」
「ん? もしかして別の島へ行くのか?」
「はい。私もずっとここには残れません。やるべきことが残ってますので……あと一つの町を見たら一旦カルネスさんやチェロスさんの所へ戻ろう」
「そうか、残念じゃ。だがどんな困難が訪れてもお前さんならやれる。ワシはそう信じておる」
♢♦︎♢
「(カルネスとチェロスは多分、一度城に来ていただろうからまだ分かるが、ラボという奴は一体? もしや、強盗の言ってたボスのことか?) ま、いっか。とりあえず城に戻るとしよう」
息子はスカイギャクシーを後にした。
その後、亡霊に誓った息子は霊障に悩まされることはなくなった。




