表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/100

第48話「宇宙での出来事2」

「うぅ~ん……ん? 亡霊……またお前らか! なんなんだ一体! 毎度、毎度、俺にまとわりつきやがって! 気味悪ぃんだよ! なんだ!?俺がお前らに同情しろとでも言うのか!」


目の前に数体の亡霊が現れる。


「やだね。邪魔だし、目障りなんだよ! 寄るな! なんだ! 言いたいことあるんなら言え!」


息子が怒鳴るたびに、亡霊たちは微かに震え、そしてゆっくりと消えていった。


「ど、どうしたのじゃ一体……うなされておったぞ……」


オースティンが慌てて駆け寄る。

息子は荒い息を吐き、額の汗をぬぐった。


「なんでもねえよ。ただちょっと悪夢を見ただけだ」


「なんか、亡霊がどうこう言ってたような……」


「シャラップ! いちいち聞いてくんな! なんで俺の事情をお前に話さなきゃならないんだ。お前のようなゲテモノに話す義理はない!」


「ワシ、そんなふうに言われるようなひどいこと言ったかの……」


「存在が邪魔なんだよ。ジジイの分際で出しゃばりやがって!」


「そこまで言わんでもいいだろ。ワシだって話相手の一人はいて欲しいものじゃ」


「だったら宇宙人と交信でもしてろ! こっちはストレス溜まっててめぇの顔を見るだけでもイライラするんだ! なぜ脳みそまで宇宙人みたいなジジイと一緒にいなきゃならんのか!」


老人は肩を落とし、しょんぼりとうなだれた。

しかし息子の顔にはどこか妙な笑みが浮かんでいる。


「だがこれは金儲けのチャンスか……今回に限っては、金をくれれば、今日の悪夢について話してやろう」


なぜか金を要求する息子。


「はぁ、やれやれしょうがないのぅ……ほい、金、ってなんで、ワシ、金払ったんじゃろ……」


なぜか金を払う老人。


「おうよ。たしかに貰ったぜ。まぁ、話すとカクカクシカジカで……」


「ほう、そんな夢だったのか……」


「そういうこった。とにかく俺にいつもその亡霊たちがまとわりついてくんだよ。ったく、うっとうしい」


「お前さんはその亡霊たちに、なにかした覚えはあるのか?」


「思い当たる節はない。だがあいつらの共通点は、俺を目の前にして死にやがったということだ」


「ま、まさかお前さんが手にかけ……」


「ふざけんな! 当然、俺はあいつらになにも手を出してないし。自殺幇助とまでもいってないだろう。あいつらが、自殺や病死で勝手に死んでいったんだ。だから俺はあいつらに、恨まれるようなこともしていない」


「本当か? なにも恨まれてないなら、そんなしつこくまとわりつくとは思えんが……」


「だから悩んでるんだよ」


「どうせ傷つくことを言ったり、揚げ足を取るようなことをしたんじゃろ」


「だから! 俺はなにもしていない。恨みを買うようなこともした覚えもない」


「でもまぁ、お前のことじゃ。無意識にでもどうせその亡霊たちに、辛辣なことでも言ったのじゃろう」


「辛辣? むしろ俺は善人だぜ? 死のうとして死ねねぇ優柔不断な奴に死ぬか死なないか、自分で決めろって判断をさせてやったり、死にそうな犬を助けようとしたこともあるんだ。ま、その犬も結局死んじまったがな」


「……むむ。もしかしたら、その亡霊たちは、お前にちゃんと助けてほしかったんじゃないかの?」


「は? どういう意味だ?」


「お前さんが言った自殺しようとした優柔不断な奴は、お前の言葉によって、傷ついて死んだんじゃないか? その人にしても、犬にしても、本当は、ちょっと引き止めて欲しかったのかもしれんな」


「どちらにしても俺には、関係のない奴らだ。あいつらが死のうと俺の知ったことじゃない」


「……なんて冷たいことを言うから、その亡霊はお前にまとわりつくんじゃないのか?」


「じゃあどうしたらいいんだ俺は!」


「もっと心良く人助けをすれば、いいんじゃないか? 少なくとも、人に対する態度をどうにかすれば、その亡霊たちも、納得して来なくなるだろう」


「うるせえ! 俺は、何度も何度もてめぇらみたいな、面倒な奴らの手助けをしてきてんだよ! これ以上相手してられん! こっちに対して報酬も礼も寄越さないような奴らにいちいち心良く手助けなんてしてられっか!」


「ならそのままずっと霊にまとわりつかれてもいいのか? お前さんは、大したことはやってるんだろうが、態度だけでも治せばいいのに……」


「恩知らずの愚民どもに比べれば、十分俺の方が態度いいに決まってる。どいつもこいつも、勝手なこと言いやがって……しかし、これ以上クソ亡霊どもが、俺にまとわりつくと、ミッションに支障をきたすかもな。そうなってミッションに失敗すると、カルネスやチェロスに文句とかいろいろ言われそうだな……」


息子は腕を組み、考え込んだ。


「仕方ない、不本意ではあるが、ほんの少し態度よくしてみるか……あとのことを考えるとそっちのが得策かもしれんな。そのかわり、報酬はさらに倍にして貰いますからね。ここまで私をイラつかしたんですから当然ですよね」


「はぁ……しょうがないのぅ。ワシはこの男に、完全に手のひらで転がされとる気がするわい……」


「よし! 決まりだ。私は今回に限り、少しだけ心を改めようじゃないか。あっ、そうだ! 強盗を追っていたんだったな。すみませんが、またあとで手伝いしますよ」


「あーはいはい、行ってこい……(やれやれ、金で釣らんと動かんし、情緒は不安定だし扱いづらい男じゃ)」


息子は一人ごち、強盗を追いかけた。


「にしても、ああ言ったものの、やっぱり無茶な話だよなぁ……この町に限らず、理不尽な事が起こるんだ。まずこの町に踏み入れた途端、とんでもない女に出会ったよな。元気になる薬を貰おうとしてただけなのにあの低脳ときたら、気が狂ってしまう薬を渡しやがった。そして、目が覚めたら変なジジイに説教されるわ、中途半端な靴を渡されるわ、夢で亡霊に付きまとわれるわ……しかもこれ、この町で起きた出来事だけだからな。他の町でももっとひどい事が起こったからな。なんでこんな短い期間に災難が続くんだ!」


ぶつぶつ愚痴りながら、宇宙空間を漂う息子。

ふと、身体に妙な違和感を覚えた。


「……ん? なんか、体が軽く……いや、違う! スプレーの効果が切れた!? おいジジイ!! なんでお前がくれるもんは、いっつも中途半端なんだ!! うわああああああああああああああああ!!!!」


『バシュウウウゥゥゥゥゥンッ!!』


スプレーの浮遊効果が途切れ、息子はそのまま宇宙から急降下した。


「あ、いけない! スプレーの補充、忘れとったわい!」


「そんな大事なこと忘れるなあああああああああああああ!!!!」


『ドゴォォォンッ!!!』


 ♢♦︎♢


一方、メグは──


「……ということでニーナちゃんって人と出会ったの。今どうしてるんだろ……」


メグは怪我の治療がてら宿泊に来ていたハックという男性に、ニーナやヴィレムの話、そしてここに来るまでの経緯などをした。

メグの店は薬屋であるが、村長の要望により、宿泊施設兼病棟として二床ベッドがある。

貸し切り状態だった今、メグとハックは対話をしていた。


「ここに来る前はそんなことがあったんですね。大変でしたね」


「大変といえば、なんで私たちが殺されそうにならなきゃいけないわけ?」


「私は少し見ていただけなのでなんとも言えないですが、薬を間違えて渡してしまったなら、あなたにも少しは責任はあると思います」


「そりゃまあ……そうだけど……無理に薬をせがんできたあの男が8割方悪いと思う」


「まあそうですね」


「ん?」


『ズドン! ガシャン!』


「きゃー!!!!」


轟音とともに、天井から何かが降ってきた。

なんと息子が落ちた先はメグたちの働く薬屋だった。

屋根は見事に貫通し、床には大きな穴がぽっかりと空いている。

棚の薬瓶が次々と倒れ、店内は粉塵と薬の匂いに包まれた。


「な、なにが起きたのっ!?」


「……お、おそらく、何か……いや、誰かが落ちてきたかと……」


恐る恐る覗き込むメグとハック。

穴の底には、ぐしゃりと潰れた人影が転がっていた。


「ひっ……やっぱ人間!? これ、まさか、息子!?」


「さっき話してた人か……」


幸い、薬屋の客や他の村人には怪我ひとつなかった。

だが、落ちてきた息子はもはや見る影もない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ