表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/100

第46話「ニーナと魔術学校3」

「嘘……でしょ?」


「長い生活の中で私はやっと、強者の魔法使いになれたわ。今こそ私のやりたいことができる。久しぶりね、ニーナ」


「フラム!!」


なんと反逆者の集団のリーダーはフラムだった。


「どういうことなの、フラム!!」


「ここまで私の計画が順調にいくとは思わなかったわ。あなたのおかげよ、ニーナ! 私を……ヴィレムの子であるこの私を、この学校に入れてくれたんだから」


「え?」


「な、なんだと!? 優等生であるニーナが俺たちの敵であるヴィレムを入れたのか!?」


生徒たちは騒ぎ出す。


「もしかして入学式の時に来るはずだった生徒が消息不明になったのって、もしやアンタの仕業なの!?」


「ええ、そうよ。私はこの学校にある最強と呼ばれる魔法のことが載っている本が欲しくて、この学校に潜入しようと思ったの。本は見つかったが、授業もそこそこためになるからしばらく学校に留まることにしたの。ただ私はヴィレムの人間……この世界のほとんどはヴィレムの人間を受け入れない。だから、私は入学式の日に、近くにいた子の身ぐるみを剥いで、制服も学生の証であるバッジも全て奪い、その子を人目のつかないところへ棄てたわ」


「ひどい……」


「その後、学校へどうやって入ろうか悩んでたところ、アンタが来た。私はこの時、自分の正体がバレるかと思ったけど、アンタがフォローしてくれたおかげで、私はすんなり学校に入れた。本当の自分を隠すことで、周囲からの不信感もなく、学校にいることができた。だからニーナ、今ならお礼としてアンタを仲間に入れてもいいわ。アンタの魔法に対する知識は私たちにとっても大きな力になる。ね、私たち友達でしょ?」


「……聞いていい? 私たちが一緒に頑張ってきたあの日常は……全部、嘘なの?」


「……別に嘘じゃないわ、こうして立派で強い魔法使いになれたんだから」


「どちらにしても、私がアンタをこの学校に入れた以上、もうここにはいられそうにないわ。アンタは私を裏切った。私はアンタと一緒に、学校を出て、共にちゃんとした魔法使いになれるって信じてたのに! 私を裏切った以上、アンタは敵だわ」


「そう……それは残念。でも、文明コースを選んだあなたに、この私が倒せるかしら?」


「くっ……」


ニーナの身体が少し崩れる。

フラムの言葉の棘は彼女の胸に突き刺さり、足元の重心を乱した。

すると生徒たちが味方につく。


「ニーナがヴィレムを入れたことなんざ、今はどうでもいい! 今はヴィレムのお前を倒すだけだ!」


「そうだ! ニーナがヴィレムを入れた裏切り者だと言われても、俺たちはニーナの仲間だ!」


「私も戦います! ニーナを騙して、好き勝手やってるあなたを許さない!」


「みんな……」


「どれだけ束になって私に挑んでも勝てないってことを教えてあげるわ!」


ニーナは涙をこらえるように拳を握る。

かつて仲間と信じた者たちが敵に回った。

けれど今ここにいる仲間が自分を信じてくれている……それだけで十分だった。


すると地面が爆ぜ、魔力が溢れ出すと瓦礫を巻き込みながらニーナたちを飲み込もうとする。


「避けてッ!」


ニーナの叫び、その後杖を構えた。


「……あの頃と同じだね、フラム。魔法の型は変わってない」


「違うわ。もうあなたといた頃の私じゃない!」


仲間の支援魔法がニーナの背を押し、光の結界が展開される。

その隙に生徒が突撃するが、ヴィレムはそれを片手で受け止め、逆に蹴り飛ばす。

倒れていた仲間もフラムの回復魔法により回復されていた。


「無駄だよ。君たちの魔力では、僕に届かない」


「届かないって……決めつけないでよ!」


ニーナが杖を振り下ろした瞬間、仲間たちの魔力が一斉に集束した。


「今よ!」


爆風が中庭を包み、視界が白く染まる。

フラムとヴィレムは咄嗟に防御魔法を張ったが、ニーナたちの連携の方がわずかに速かった。

そして、静寂……砂煙の中、ニーナたちは息を荒げながらも立っていた。

地面には倒れたフラムと、片膝をつく仲間。

勝ったはずなのに、心は晴れなかった。


「アンタこんなに強かったの……」


「私だって時々、あの人と放課後戦ってたのよ……! それよりも、ねぇ、フラム……教えて……どうしてこんなことをしたの……」


「……私だって……私だって、好きでこんなことをしたいわけじゃない! 私はパオンタウンに住んでいた。私自身は何不自由なく生活をしていた。けれど両親は運悪くヴィレムの人間だった。いつもちゃんと生活できているのは親が仕事で稼いでいると思っていた。しかし、実際はよその町から資材や食料などを強奪していた」


フラムは視線を落とす。


「私は普段、親がどういうことをやっているのか一度も聞かされたことがなかった。しばらくして、ウチの家に警察部隊がやってきて、両親は捕獲され、その後殺された。そして私は親がヴィレムだったと知られ、私は周囲から白い目で見られた」


風が吹いて、埃が二人の間を舞う。


「私はヴィレムの子。町のみんなから、蔑まされ、暴力を受けたり、追い出されそうな時もあった。私は親がヴィレムと発覚する前は魔法を学び、将来、人の役に立つことがしたかった。けれどヴィレムの子は当然入学を許すわけがない。魔術に関する資料なんて渡してくれる人なんていない。だから私は手荒な手段をとり町中の魔法に関する資料は、根こそぎ奪ってやった。そして徐々に魔法の知識を高めていった。私はいつか強い魔法使いになって、私を虐げていた奴らに復讐がしたかった……」


フラムの胸に渦巻く感情は言葉だけでは埋められない。


「もし私がヴィレムの子じゃなかったら、普通にアンタと一緒に魔法使いになれて楽しくやれていたかもしれないのに……」


ニーナは言葉を失い、ただフラムを見つめる。


「……」


「ニーナ!」


校庭の方から駆けてくる足音が近づいた。

ノーブルが血相を変え、息を切らして二人の前に飛び込んでくる。

片手には報告書の束が掴まれている。


「ノーブル校長……」


「ニーナ……非常に言いづらいことなんだが……君は成績も優秀で、魔法に対しても情熱のある立派な生徒だ。だがな……君が反逆者、またヴィレムの関係者を入れてしまった以上、私は君をこの学校から追放しなければならない……フラムをヴィレムの子と気づかずに入学させてしまった我々にも責任がある。ただニーナはそれ以上だ」


「分かってます。私がヴィレムを入れて退学になることは……ただお願いがあります」


「なんだ?」


「このヴィレムの子供であるフラムを、この学校に残して欲しいんです」


「なんだと!?」


「なに言ってんだ! そいつは……」


生徒もざわめき出す。


「たしかフラムがやったことは許されない……けれど、フラムの魔法への熱意というのは、きっと嘘じゃない。それが、ヴィレムという身分によって邪魔されただけ……フラムだって好きでこんな身分になっているわけでもない。悲しい過去を歩んできた。親だって殺された。それはおかしくなるわよ。もちろん私はヴィレムを許さない。そこは複雑だけど……でもフラムは……フラムには普通に生徒として学び、普通に卒業させてやりたいの……」


「ニーナ……」


「フラムは私を裏切った。それは悲しかった。ただアンタの思いは伝わった。この学校を卒業して、私がなりたかった立派な魔法使いに、アンタが代わりになってほしいの。そんなことがあったなんて、気づかなくてごめんね、フラム」


「……」


「そうか……ニーナの言い分は分かった。そこまで言うのならいいだろう。その願い飲もう。ただ、またなにかやらかせば、今度こそフラムを追い出すからな」


「分かってます。ありがとうございます」


「ニーナ、ごめんね……私……」


「いいのよ、あなたの気持ち、よく分かったわ。校長の言う通り、もう悪いことはしないでよ。じゃあね、フラム」


ヴィレムという身分が生んだ悲劇。

過去の戦争で多大な被害が出たため、たとえ残党であっても人々は未だに彼らを許していない。

それは当然の反応でもある。

だが私は、今回の件でせめて子どもたち……ヴィレムの子らだけでも許してやるべきだと思った。

身分のせいで、やりたいことが奪われる。

将来の夢すら抱けない。

その恨みや憤りが、無関係の人々を巻き込み、犯罪へとつながることもある。

現に今回の騒動は、負傷者が出て校舎の破壊にまで至った。

そんな結末を誰も望んではいないし、幸せには程遠い。

だがそれを口に出せる者は稀だ。

声を上げれば、いつの間にか悪になってしまうことが多いからだ。


こうして私は、ヴィレムの子を学校に入れた罪で、ノーブル高等魔術学校を退学になった。

噂は瞬く間にパオンタウン全土へと広がった。

もうここにはいられない……私はそう思い、行き先も定めず、とある島へと逃げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ