第45話「ニーナと魔術学校2」
一年生のうちは魔法の基礎を一年間勉強することになった。
フラムと共に、魔法の勉学に励んだ。
彼女とは時には協力、時にはライバルといった感じに少しずつ仲を深めていった。
魔法のことや学校での悩みがあった時は、メグ先輩に聞いてもらったりもした。
そして──
「さて、これで今日の説明は終わりだな。質問ある奴は……」
担任のビリーが黒板にチョークを置いた、その時だった。
『ガラッ!』
勢いよくドアが開き、男が教室へ入ってきた。
「おい、このクラス、時々だが今日から見ることになった」
ざわつく教室。
男は黒いコートを肩にかけ、髪は少し乱れており、鋭い目つきに無精ひげ。
「誰だ……先生か?」
「ああ、新任の教師だ。細けぇ挨拶は抜きだ。どうせすぐ顔合わせる」
そう言って、黒板に乱暴にチョークを走らせる。
書かれた文字は『魔力実技補佐』。
「ビリー、後は頼んだ。生徒の顔だけ見に来た」
そう言って帰ろうとするが、出る直前にふと振り返った。
「……おい、そこの。お前だ、赤いリボンの」
ニーナだった。
「えっ、わ、私ですか?」
「お前、目がいい。魔力が通ってる目だ。ちゃんと使えるようになっとけ。潰すには惜しい」
「……へっ?」
教室は一瞬、静まり返った。
「い、今の人、何者……?」
「なんか、怖かったけど……かっこよかったよね……」
フラムが小声で囁く。
私は心臓がドクンと鳴るのを感じた。
「(なに……この人……ただ者じゃない……)」
♢♦︎♢
放課後、魔力制御の補習に呼ばれた私は、半信半疑で訓練場へ行った。
そこには、昼間の男が立っていた。
腕を組み、風にコートの裾を揺らしていた。
「来たか。お前、ニーナだな」
「ど、どうして私の名前を……」
「教師だ。名簿くらい見る。ほら、さっさと構えろ」
「えっ、いきなり!?」
「実戦のほうが早ぇ。口で教えても身につかねぇんだよ」
そう言って、いきなり彼が魔法弾を放ってきた。
反射的に防御魔法を展開……ギリギリで弾く。
「悪ぃな、手加減はしねぇ。だが、それでいい。今の反応は悪くなかった」
「っ……もう、ちょっとは説明してからにしてよ!」
「魔法は考えるより先に動け。頭使ってる間に敵に殺られるぞ」
その言葉は乱暴だけど、不思議と胸に刺さった。
「もう一度だ、構えろ。ビビってねぇな。いい度胸だ」
「ビ、ビビるわけないでしょ!」
「そうこなくちゃな」
彼はニヤリと笑う。
その笑みを見た瞬間、胸の鼓動が跳ねた。
「(なにこの人……怖いのに、ドキッとする……)」
やがてニーナは目を閉じて呟いた。
「……今度こそ、ちゃんとできる気がします」
男は微かに笑い、頷いた。
「その言葉、信じるぜ」
沈みかけた太陽が最後の光を放つ。
ニーナの瞳にも、その光が映り込み、ゆっくりと燃え始めていた。
♢♦︎♢
大変なことも多かったけれど、それ以上に楽しくて気づけばあっという間の一年だった。
まもなく二年生になろうとしていたある日、私はひとつの噂を耳にした。
それは、コース選択をどうするか悩んでいた頃のことだ。
「結局あの人は……名前すら教えてくれない……」
すると、生徒たちの噂話が、隣の席から聞こえてきた。
「俺コースどうしよっかなー」
「おめぇはどう考えても戦闘には向いてないから文明じゃね?」
「その言い方なんかムカつくなぁ。そりゃ戦闘コースに比べたら文明は地味だけどよ、そういうことじゃないだろ。それぞれ得手不得手がある。そしてお互いいいところがある……コースで優劣つけるのは違うって……」
「ああ、悪かったよ。それよりさ、お前、知ってるか?」
「ん? なにが?」
「去年の入学式で本来、入ってくるはずだった生徒が消息不明になっている話」
「マジか! そんなことがあったのか!」
「なんでも、入ってくるはずだった生徒が来なかった代わりに別の生徒が来たって話だぜ」
ニーナは聞き耳を立てていた。
「(物騒な事件が入学式の時にあったなんて……)」
「ニーナ!」
フラムだ。
「ん?」
わわ「どのコースにするか決めた?」
「んー、私、戦闘が苦手だったから、文明コースにしよっかなって思ってるところ(だいぶあの人で鍛えられてけど……)。フラムは?」
「私は戦闘コースに行こうと思ってるの」
「戦闘コースへ? へぇ、意外ね」
フラムの進路に、思わず私は驚きを隠せなかった。
「意外……かなぁ? 私、こう見えても強くなるためにここへ来たんだ。昔から私はひ弱で、自分の大切な家族も守ることができなかったの」
「そう……フラム、お互い違うコースを選んだら、会う機会があまりないかもしれないよね。けれど、どんなことがあっても、めげずに頑張るのよ。お互い、立派な魔法使いになろうね」
「うん。私絶対、強い魔法使いになる! あまり会うことがなくても、私のことを忘れないでね」
「そんなの当たり前よ。友達でしょ?」
「うん! 友達!」
私たちは笑い合った。
こうして二年生になった私たちは、それぞれ別の道へ歩き出した。
そしてお互い別々のコースへ進んだ。
やがて私は、たくさんの魔法の勉強や研究に励み、成績もトップクラスまで昇った。
自分の周りにも多くの仲間や友達も増えた。
そんな感じで順調に学校生活を送っていた。
しかし、ある日のこと、事件は起きる。
「ニーナ、今度、超難題な問題、見てもらっていい?」
「いいわよ」
「ニーナ、この間の研究資料、あなたの席に置いといたわ」
「うん。ありがとう」
手元の書類に目を落としながら、私はため息をついた。
「ふぅ……ちょっと忙しくなってきたわね……そういえば、しばらく会ってないけど、フラムはどうしてるのかしら……」
すると突然、外から爆発がした音が鳴り響いた。
「大変だ!! 謎の集団が校舎を爆撃しに来た!!」
「なんですって!?」
「とりあえず、安全なところへ避難しろ!! いいな!!」
防災ベルのような警報が鳴り、生徒たちは慌てて席を立つ。
先生は落ち着いて誘導しようとするが、その手は震えていた。
謎の集団が校舎を爆破しにきていた。
先生は生徒たちを誘導して教室から避難させる。
私は周囲の混乱を尻目に、どうしても気になって隙を見て外をうかがいに行った。
廊下を抜けると、硝煙の匂いと遠くで鳴る叫び声が鼻を突いた。
すると、謎の集団がいた。
「なんだ? あの集団は……」
「見てみろ、ここの生徒だ!!」
謎の集団は生徒数名で結成されていた。
「お前たち、一体なぜこんなことをしている!?」
教員が続々とやって来る。
「なぜ? フン、そんなの決まってんだろ。アンタらを潰すためさ! 俺たちは、この学校の反逆者の集まりだ!」
「なんだと!!」
「俺たちはこの学校にある超高度な魔術書や、戦闘力の高い武器などを奪うのが目的だ。そして、俺たちが外に出て、この世界で一番、誰よりも強い魔法使いになるのだ!!」
「悪に手を染める奴が、一番強い魔法使いになれると思えないわ!!」
ニーナは叫ぶ。
「ほう? 試してみるか? 来るなら来い!!」
その瞬間、戦闘コースにいるエリートクラスの生徒たちがすばやく反応した。
動きには無駄がない。
その後、エリートクラスの生徒たちによって反逆者の集団たちを追い詰めた。
「くっ……」
「さすがエリートクラス。普段の訓練が活きとるな」
一部の教員は感心している。
そして他の生徒を巻き込まれないようにしている教員もいる。
また、反逆者と止める教員もいた。
「観念しろ! もう終わりにするんだ!」
「チッ……だがな……この計画はとある奴に言われて行ったことなんだよ……」
「とある奴だと?」
「ああ、それは俺たちのリーダーだ。おお、ちょうど来たようだな」
集団の中心へと視線を移す。
瓦礫が足元を覆い、薄い煙が空を漂っていた。
私がそこで見たものは言葉を失うほど衝撃的だった。
「嘘……でしょ?」




