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第43話「憑依された息子3」

「夢か……」


それは夢だった。


「目が覚めたようじゃな」


「誰ですかアンタは?」


「私はスカイギャラクシーの村長のオースティンだ。頭がいかれてたお前をなんとか止めたのじゃよ」


「私の頭がいかれている? いかれているのは私ではなくて、毒薬をすすめたアンタらでは? たしか緑色の髪の女に毒薬を渡されたぞ。そのせいでこうなったのだからだから俺は元はいかれてなどない!」


「なにを言う。そちらこそ、なにか言われたらすぐ金を要求してきたくせに。普通の客はそんなことせんわい」


「うるさい! 黙れ! 私だけは、特別なのだ! あんなキチガイなミッションを受け続ければ、頭もおかしくなるわ! ったく……周りの人間はそれを理解してくれない」


「う~む……なんの話をしているのかは分からんが、お前さんのそのミッションやらなんやらで、村の住民は皆死にかけたのだぞ! あと、お前はいい加減、人に対する態度をどうにかしたほうがよいぞ」


「なんでアンタにそんなことを言われなきゃならないんだ。そもそもなぜ金を要求したことを知っている」


「メグから色々、話を聞いたのだよ。聞いた話だと、とにかく人に対するマナーがなってないと聞いた」


「メグ? ああ、あの口うるせぇ緑髪のおつぼね女か。ったくよ、俺のいねぇところで好き勝手言いやがって。はぁ……やれやれなんか体がダルい……やる気が出てこない、重要なことを忘れてる気もするが、寝るか」


「待て、寝るのはいいが、お前さんに頼みがある」


「またなんか取ってこいとか言うんだろ……めんどくせえな」


「まぁそうなんだが、村の住民を苦しめたお前に罰として、ワシの願いを聞いておくれ」


「罰? それは毒薬のせいだろ? ま、話なら明日聞きますよ。話だけならね」


「ぐぬぬ……仕方ない……今日はもう遅いし、明日にしてやるか……明日ワシの家に来てくれ」


「はいはい……ったくよ、ギブタウンの周辺の村長とかは人使いが荒いな……」


 ♢♦︎♢


夜、息子は深い眠りへと落ちていった。

そしてまたあの夢を見た。


「うわああああああああ!!!!」


息子はまた亡霊に襲われる夢を見ていて、そこで目が覚めた。


「……約束の時間か……」


スカイギャラクシーの頂上付近、雲に近い高台に村長の家はあった。

朝靄がまだ残る空の下、息子は眠そうに目をこすりながら、しぶしぶその家へ向かう。

足取りは重いが、今日も報酬のために歩を進めている。


「よし、来たか。とりあえず、ワシの家に来てくれ。話はそれからだ」


「偉そうに言うなぁ……昨日も夢見てあんま寝れてないっちゅーのに。ちゃっちゃっと済ませてくんから、早く言え! どんな頼み事なんだ?」


「では話すが、お前さんには宇宙に行くためのパーツを取ってきてほしいのだ」


「は? なにそれ?」


「ワシは宇宙に行くのが夢なんじゃ」


「は?」


「それは昔からの夢でようやく実現できそうなんだ。そのために宇宙に行くためのロケットを作ってたんだがロケットを作ってる最中、一部パーツをどこかに、なくしてしまってな、宇宙に行くことができないのだよ」


「なんかめんどそう。却下。だからなんで俺は毎回毎回、見知らぬ奴の雑用をしなければならないのだ。ただでさえ鬼畜ミッションを受けてるのに、なんでコキ使わされる」


「だからお前さんが余計なことをしなければ、こんなことは頼まん!」


「そもそも、村長という肩書きを利用して、願い事が自分のことじゃないか!」


「グッ……そう言われればそうじゃが……仕方ない、宇宙のパーツを集めて、念願の宇宙に行けたら、なにか礼をしよう」


そのなにかに息子の表情が変わる。

目が輝き、さらには声色も変わった。


「承知いたしました。そうですね……金くだちゃい」


「(態度がコロッと変わりよった。めんどくさい奴じゃな……メグも大変だったろうに)そうと決まれば、こいつをくれてやろう」


ジェットシューズを手に入れた。


「なんだよこのヘンテコな靴は。中古の靴か? 中古の靴って嫌いなんだよね。どんな奴が履いたか分からんからな。超くっせぇ足が履いたかもしんないし、水虫になるかも」


「いちいち文句をたれるな。この靴を履かないと宇宙のパーツが落ちてるとこに行けない。よって金も渡せん」


「それならそうと早く言えよ。で? 靴を履かないと行けない場所ってなんだよ? 靴ならすでに履いてるんだけど」


「なぜなら、その宇宙のパーツは、おそらく、雲の上にあり、その靴を履くとなんと空を飛ぶことがきるからもってこいってことだ」


「いや、なに言ってんだ? ここも雲の近くじゃん。ならその靴を履かなくても……」


「うるさい! がたがた文句を言うなっつってんだろう! ワシは親切にしてやってんのに、いちいち癪に障るようなこと言ってくんな! お前のような奴は初めてだわい! いいか? お前は今から危険な場所に行く。雲と雲の間に隙間があったり、空中にも怪鳥とか呼ばれるモンスターもいるんだ。お前の素のジャンプでは行けない場所だから、ワシは親切にこの靴をやってんのに。この靴結構、高いんだぞ」


「じゃあ、売れば結構な額に?」


息子は相変わらず金の計算から離れない。


「はぁ……もう呆れて言葉も出ないわ。こんな奴に頼みごとをしたワシがバカじゃった……」


「ああ、アンタはバカだ。大バカ者だ。あ、そうだバカで思い出した。あのガバガバセキュリティの城のバカどものせいで、どうせ翼や欠片のことで宇宙に行くはめになってんだし、ステージの道中に落ちてるとかいうなんとかパーツも拾ってくれば、宇宙に行けるし、金が貰えるし、一石二鳥だ」


「宇宙のパーツは、たしか二つあった気がする。なんとかがんばって二つの宇宙のパーツを持って来てくれ」


そしてステージを攻略する息子。


 ♢♦︎♢


「おう、帰ったぞ。不潔な老人の身勝手な願いを叶えるために俺は危険を冒してまで宇宙のパーツを取ってきたんだ。それに相当する金は用意してくれたんだろうな」


「危険を冒してまでって、さっきどうせ宇宙に行くはめになってんだしとか聞こえたけど」


「てめぇ俺の独り言を聞いてんじゃねぇ」


「まぁ、金は無事に帰還したらだ」


「まじかよ早くしてくれよな」


「調子はどうですか?」


胸ポケットのカルネスナビがブルブルと震えた。電子音が響き、液晶が光る。


「(いい加減、うっとうしいわ。急にかけてくんなよ。カルネスナビの画面割ったろか?) はい? なんすか?」


「今なにをしているのですか?」


「(なにをしてるだ? こちとら命がけで靴履いて空飛んでたんだぞ。急用とかならまだしも、どーでもいい電話してくんな)はい?」


「今なにをしているのですか?」


「特に変わったことはありません、それでは」


息子は通話をブチッと切り、無言でナビをポケットに押し込んだ。


 ♢♦︎♢


「強盗を追いかけてしばらく経っても反応がなかったからかけてみたけど、切られてしまった……」


カルネスは唖然とした。

画面には無情にも通信終了とだけ表示されていた。


「今度は俺がかけてみるか」


 ♢♦︎♢


「はぁ……やれやれ。面倒なことになった。こっちは、ただでさえ強盗を追って忙しい

のに、頑固ジジイの頼みまで聞かなきゃならんとは……にしても、このジェットシューズだっけ? 結局これどう扱えばいいんだ? あんなざっくりした説明じゃ使い方なんか分からんわ。試しに、テキトーに跳んでみっか。よし、思い切ってジャンプしてみよう」


靴に足をねじ込み、雑に紐を結んだ。


「おい、お前なにしてんだ」


背後から慌てた声が飛んできた。

振り向くと、中年の男が駆け寄ってくる。

その男の作業着には油の匂いが染み付いている。

どうやらジェットシューズの扱いに詳しいらしい。


「なにしてんだじゃねーよ。俺はこのシューズ使って空飛ぼうとしてたんだよ。邪魔すんなバーカ!」


「それジェットシューズだろ? お前、燃料タンクも積まないでそのシューズ使おうとしてたのか? タンクなしで、空飛ぼうとするとか、普通に空からダイブして死ぬと同じだ、バーカ!」


言い合いに火がつく。


「うっせえぞ! てめえ! じゃあ、そのタンクとやらは、どこにあんだ? 教えろバーカ!」


「燃料タンクまたの名をジェットタンクは、各所にタンクを付ける場所があるから、そこで付けてそれを使うんだよバーカ!」


息子は首をかしげながらも、言われた場所にタンクをカチャリと装着する。説明通りに付けると、靴から微かな振動が伝わった。


「分かりにくいんだよバーカ!」


幼稚な言い合いが続く中、息子はにやりと口角を上げると、いきなりシューズのスロットルをグリッと強く捻った。

足元のジェットから勢いよく噴煙が噴き出すと作業着の男の顔にかかった。


「うわっ、な、なにすんだコラ――!」


男は咳き込んでいる間、息子は勢いよくシューズで飛んでいく。


「おい待てええぇ! 戻って来いコラァ!」


男が怒鳴りながら追いかけるが、噴煙は辺りに充満して視界を奪い、息子の姿はあっという間に消えた。


「なんだこのめんどくせえ靴は。最初からタンクを付けておけよ。まぁいい、タンク付ければ使えるって訳か。ま、よくわからない機能であいつを煙まみれにできたしいい気味だ」


 ♢♦︎♢


息子はパーツを集めた。


「集めたパーツを組み立て、ロケットで宇宙まで行くぞ!」


「息子さん、強盗から盗まれた欠片や翼は、今どうなってる?」


今度はチェロスからカルネスナビが鳴る。


「(今度はチェロスか)いろいろありまして、宇宙に向かうためのロケットに乗ろうとしていたところです。取り返すのには、まだまだ時間がかかりそうですが、順調に進んでおります」


「そうか。なら引き続きその調子で頑張ってくれ」


「はぁ……やれやれ」


チェロスの声が切れると、息子はため息をついた。


「さっきから思っとったんだが、やはりアンタも宇宙についてくるのか?」


「ああ、アンタのロケットが完成したら俺も宇宙に行かせてくれないか?」


「まさか、宇宙に行ってなにかまた悪さをしようと考えておるな?」


「ふざけんな! その逆のようなもんだ! 実はさっきもちょろっと言ったが、強盗を追ってるんだ」


「強盗? お前さんの仲間かなにかか?」


「ふざけてる場合じゃない! その強盗が今宇宙に行ってるから、俺が宇宙に行かないと、そいつを捕まえられないんだ」


「宇宙にまで逃げる強盗……一体なにを盗まれたんじゃ?」


「水晶の欠片と天使の翼だ」


「なんかいろいろ事情がありそうだな。まぁ、仕方ない。お前さんも宇宙に連れていってやろう」


「おう」


「塔の中にロケットがある。パーツを組み立てたら、宇宙に向かう」


「おう、早く行かせろ。欠片と翼が取れなくなったらどうしてくれるんだ」


こうして息子と村長はロケットのある塔に向かう。

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