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第42話「憑依された息子2」

「で、どうなったんだ?」


「息子くんが強盗を追ってくれるって」


「無事に追いついて盗まれた翼や欠片を奪い返すことができればいいのですが……」


「お前の子供だ。忍耐強いだろう。奪い返してくれるに決まってる」


「そうね、私たちは祈るしかできないけど、きっと奪い返してくれるわ」


「そうだな、期待していいだろう。僕ちゃんは疲れた。寝る」


「ちょ、また? それもこんな時に?」


「さっきはまともに寝れなかったからな。急用があれば起こしてくれ。ではな」


強盗が押しかけ、今まで集めた天使の翼の羽や水晶の欠片を盗まれてしまった。

それにより、今息子が所持している天使の翼の羽と水晶の欠片の一つずつが手元にある状況である。

息子は謎の強盗たちを追いかけ、スカイギャラクシー方面へと向かった。


死の世界には遂にニーナもやって来た。

そのお陰と言ってはなんだが、ニーナの覗き見の魔法により、息子の様子を見守ることができるようになった。


 ♢♦︎♢


「ここが……宇宙の町、ですか。想像していたよりずいぶんのどかですね。ホッとしましたよ」


息子は歩きながら、誰に聞かせるでもなく話し始めた。


「今までは行く手を阻む厄介者ばかりで、業務に支障をきたしていましたが……最後のミッションくらいは、さっさと片付けたいものです。こうして見ると平和そうな町なのですが、とりあえず進みましょうか。とはいえ、今まで散々コキ使われて、全然休んでいませんでしたね。そんな状態で強盗を追えば……疲労で倒れるのがオチでしょう。ですから、ここで少し休んで、万全な状態で追跡を再開するのが得策かと。そうと決まれば、ここらで休憩にしましょう」


息子はなぜか独り言が敬語だった。


「あら? あなた……どこかで見たことある顔ね……」


薬屋の前のベンチに腰掛けていると、緑色の髪をした女性が話しかけてくる。

その女性はメグであった。


「うるさい! 人違いだ!」


「もしかして、あなた、宝石店で働いてたという青年の息子さん?」


「たしかにそうだが。なんでアンタが知っているんだ? 気色悪いし、二度と息子とか呼ぶな!」


「ったく、失礼な人ね。お父さんとは似ても似つかない人ね。お父さんの方がよっぽど礼儀の良い人だった」


「拙者はなぁ、命懸けの試練を乗り越えて、ようやくもう少しで業務が完了ってとこなんだ! そして最後の試練を受けるために、この町まで来たんだぞ! それなのにアンタに傷つくこと言われて、余計疲れたわ! だから慰謝料の代わりに特別に薬をくれって言ってんだよオイコラ!」


「はぁ~しょうがないわね。体の疲労を癒す薬あげるから、とっとと出てけ」


「ったく、その話の仕方がまず、性格わりーわ。ただでさえ、こんな鬼畜な仕事をして、疲れてんのに! 少しは労ってほしいわ。ったく、口の悪い女だなぁ……」


「薬あげるんだから文句言うな!」


「悪いな。俺はこうゆう奴だ。とにかく、金と報酬以外は、なにも興味がない。いいから、金よこせ。じゃなかった……薬よこせ!」


「金以外でも薬はいるのね。言ってることが早速矛盾してるけど。まぁいいわ、面倒だしあげる。はい、これ」


ゲンキになる薬を手に入れた。


「よっしゃ! これで、少しは休める。早速、飲んでくるわ」


息子はどっかに行った。


「やれやれ……性格の悪い人だった。ん? あれ? これは……」


メグの顔色が変わる。


「ったく、どいつもこいつも本当に融通が利かねえよな、ったくよ。まっ! そんなことより早く飲んでみましょう! ん〜きくぅ〜! ん? なんだか漲って……」


メグの手元には、同じ形の瓶がもう一本残っていた。

メグは間違った薬を渡したことに気づき、息子を追いかけるが、遅かった。


「ちょっとアンタ! まだ飲んで……」


「キエエエエエエエエエエ!!!!」


「遅かった……それは、人間用じゃなくて、モンスターを混乱させるために使う混乱の薬だったわ! パッケージが似てるから間違え……」


「ホワァアアアアアアアアアアアアアア!! くたばれヤァ!!! 愚民どもメェ!!!!」


息子は村民たちを次々と攻撃しまくる。


「誰か!! 彼を止めて!!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


「なんだ!? 何事だ!!!」


スカイギャラクシーの村民が騒ぎに気づいてやって来る。


「大変なの! そこで暴れ回ってるキチガイが、モンスター用の薬を飲んじゃったの!」


「とっ……とりあえず村長を呼んで来よう!」


村民は電話で経緯を説明した。


「なんじゃ?」


「カクカクシカジカで……」


「そ、そりゃ大変じゃ! 今すぐ行く!」


「はい! よろしくお願いします! 場所は……ん? うぐっ!」


息子は電話中の村民を襲い、首を絞め出した。


「キエエエエエエエエエエ!!!! 助けなんて呼ぶんじゃねええええええ!!!!」


しばらくして村長のオースティンが来た。


「来たぞ……ん? これは何事じゃ! これも、キチガイの仕業か…とにかく、ここは助けねば」


目に映ったのは、吊るされた村民たちと、倒れたメグの姿だった。

辺りには家具の破片、血の跡、薬瓶の破片が散乱している。


「ワシが作り上げたこのスカイギャラクシーが………いや、そんなことよりもまずは村人を!」


到着した村長は彼らを下ろして脈を測る。


「うっ……」


「よかった。まだ息はある。ワシが来るの遅かったら、命はなかったな」


「わ………私なら大丈夫。彼の方が苦しがってるし………早く私のとこへ………連れてってあげて…………私は少ししたら自分で向かうから…………」


「分かった。ひとまず彼らにはメグのとこで休んでもらうか。医療系の施設を建てておいて正解だったわい。しかしおのれ……許さんキチガイめ! ワシの村だけではなく、村民を殺そうとして!」


オースティンは外に出ると、暴れ回る息子を見つけた。


「おい、キチガイ!」


「アアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!!!! 金だ! 報酬だ! 金だ! 報酬だ! 金だ! 報酬だ! 金だ! 報酬だ! 金だ! 報酬だ! 金だ! 報酬だ! 金だ! 報酬だ! 金だ! 報酬だ! 金だ! 報酬だ! 金だ! 報酬だ! この世の全ての生き物たちよ!! 全ての物をこの私に貢げ!!!! うひゃひゃひゃひゃ!!!!!!!」


その狂気に、オースティンは一瞬息を呑んだ。

だがすぐに、腰の装置を起動する。


「すまんが、眠ってもらうぞ!」


小型ミサイルが発射され、息子に直撃した。


「ヴハァァァ!!!!!!!!」


「よし! やったか!?」


息子は倒れた。


「だ、大丈夫か?」


恐る恐るオースティンが近づいた。


「うぎゃあああああああああああああああああ!!!!」


「うわっ!!! なんじゃ!!!」


息子はオースティンに掴みかかる。

だがすぐに、糸が切れたように崩れ落ちた。


「ふ、ふぅ……寿命が縮んだわい……」


「しかし本当にミサイルなんて撃って良かったんですか? 彼は間違えて薬を飲んでああなっただけで、元はキチガイではなかったかと……」


別の村民は問いかける。


「いや、そうでもなかったけど……」


メグは少々呆れてボソッと言う。


「でも、一応彼も私のとこ(ベッド)まで連れて行ってあげて」


「……分かった」


「でも、本当に大丈夫なんですか彼は……」


「心配するな。気絶する程度のミサイルだ。少ししたら目を覚ますじゃろ」


息子はまたもやベットで休ませられる。

メグたちも休む。


 ♢♦︎♢


「俺はどうなってしまったのだろう……思えば俺は、父とカルロス、ニーナとかいう奴らを生き返らせるために働いてんだよな……俺はなにを間違ったのか……そもそも間違えてたのか……? ……いや、俺は間違えてない! 俺は正しい間違えてるのは俺以外のみんなだ!! 金を持ってるやつが正しいんだ!!」


「まだ寝ぼけたことを言ってるのか?」


父親が問いかける。

これは息子の幼少の時の記憶のようだ。


「またお前は人に意地悪をしたのか。はぁ……何度もやめろと言ってるのに……こんなんだと将来が心配。金のためなら人を殺すとかいう人間にならないだろうか……」


「うるせー! 弱いやつをぶっ叩いたり、物を盗んだりすることのなにが悪いんだー!」


「バカ者! それがいけないと言ってるんだ!! 金とかを窃盗することよりも人のためになるようなことが、お前にはできないのか!」


「だって人を助けて物を貰うより、人の物を盗んで手に入れた方が早いもん」


「やれやれ……そういう問題ではない。窃盗したって相手が傷つくだけだ。人助けをした方が、相手も嬉しいし、自分も気持ちいだろう」


「ちぇ、分かったよ……」


「そうと決まれば、今すぐ意地悪した子に謝って来い!」


「これは昔の俺……夢か? 俺はいつもこんな感じだった……他人の気持ちなんてどうでもいい。でも父さんは意地悪はダメだとか、誠実な人間になれとか言う。でも俺は父さんをそんなに恨んではない。だって、父さんは小遣いをくれるからだ。それに金欠で困ったときなんかは父さんの財布から金を抜き取ることもあった……そうやって俺は大人になっていった。俺は本能のまま生きているんだ。それでいいだろ? なんだ? また例の亡霊か……」


また息子の前に亡霊たちが現れた。


「うわあ!!!! 来るな!!!」


その亡霊たちは息子に襲いかかった。

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