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第4話「本当の強さ」

カルロスが青年を奴隷にしていた時代より後のこと。

チェロスという男が目を覚まし、家を出る。

その場所はギブタウンからそれほど遠くはないベンチャータウンという町である。


「今日もいい朝だ」


「おう、チェロス。目ぇ覚めたか。昨日はよく眠れたか?」


隣人のリアムが畑を耕しながら話しかけてきた。


「ああ、よく眠れたよ、リアムおじさん」


「おお、そうか。そいつはよかった! いやーしかし、今日は本当にいい天気だな。畑を耕して、汗を流すには絶好の日だな! そうだ、チェロス。お前も畑を耕すの手伝ってくれよ!」


「悪いけど、俺はおじさんほど力ないし、畑を耕すの下手だから…」


「じゃあ、せめて隣の村から植物の種を持ってきてくれよ。種は、隣の村にいるベジーという奴から貰ってきてくれ」


「分かった。行ってくるよ」


「よし、頼んだぞ」


チェロスは隣の村のザウルスタウンへ向かった。

道中、木々の緑や鳥の囀りが朝の町に溶け込む。

村に着くと、ベジーの店に入り、カウンター越しに声をかけた。


「よう、なんのようだい?」


「あの、種を買いに来たんだけど」


「おお、そうか。おやっさんに頼まれたやつね。はい、これ」


「ありがとうございます」


「毎度あり!」


チェロスは種を手に入れ、リアムの元へ向かおうとした時、村人の噂話を耳にした。


「おい、聞いたか? 最近、この辺をウロついてるヤバイ奴の話」


「ああ、なんでも近くに怪しい城みたいなのがあるって聞いたぞ」


「もしかするとそのウロついてるヤバイ奴ってそこから来てるのかもな」


「そういや最近、この村の周辺、モンスター増えたよな。少し前までは、数えるくらいしかいなかったのに…」


チェロスはそれを気にしながらも、種をリアムの元へ届けるためにベンチャータウンへ向かう。

途中、銀髪で貫禄のある大男とすれ違った。

しかし、村へ近づくにつれて違和感が増していった。

空には煙が立ち上り、遠くからは炎の揺らめきが見える。

町に着くと、そこは変わり果て、一帯は火の海となっていた。


 ♢♦︎♢


ギブタウンをよく思っていない町があった。

そこはテイクタウンという町であり、ギブタウンの近くに存在した。

テイクタウンのテイクタウン城には悪さを企てようとする人々がおり、町の破壊や乗っ取りなどをしていた。

テイクタウン城には、弱きモンスターや歴戦の兵士が働いている。


その中の一人、二等兵と階級は低いが仕事がそこそこできる兵士がいた。

その兵士の名はチェロスである。


チェロスがテイクタウン城に来ることになった出来事だ。

もともとは兵士でもなく、戦いに身をおくこともなく、ベンチャータウンで平凡な日々を過ごしていた。

しかし、その生活は突然終わりを告げた。


チェロスが住んでいたベンチャータウンとその近くのザウルスタウンを含んだ町が争いを起こしたようだ。

数時間後、火は消え、家族の安否が気になったチェロスは自宅に到着した。

そこにあったのは、もはや家と呼ぶこともできない瓦礫の山。

かろうじて残った壁や柱は黒焦げとなり、地面には、菜園道具を握ったまま動かない人々の亡骸が転がっていた。

炭と化した数体の存在を見たチェロスはその場で呆然と立ち尽くすしかなかった。


瓦礫の向こうから、巨大な影が現れる。

銀灰色の髪を揺らし、狂気を帯びた瞳を宿した男、ラヴォス。

ラヴォス軍を率いる大将が、チェロスの前に立ちはだかっていた。

家族も町もすべてを失った今、チェロスに恐怖はなかった。

むしろ殺されるならそれでもいいと思えるほどに絶望していた。


しかしラヴォスは何も言わず、燃え尽きた町をじっと見つめるばかりだった。

やがて沈黙に耐えきれず、チェロスが声を絞り出す。


「……アンタ一体何者だ? 敵か? この俺を殺すのか?」


「お前を殺してもなにも価値がない。俺はただ滅びた町を見ていただけだ。フッ……大した文明も文化もない、ましてや力のない町や人はこの様に滅ぼされるのだ」


「俺は……悔しい……俺がもっと強ければ、町の人も家も……一人くらいはきっと救えたかもしれない……奴らを殺れる力があれば平和のままでいられたのに……俺はなんて無力な人間なんだ……」


「なぜお前が無力で弱い人間なのか、分かるか?」


「……なぜ?」


「お前は……甘いんだよ! 力があればこの町を救えるだと? こんな低文明な場所でどれだけの力がつけられるというのだ? 襲撃した人間を殴ってその人間を殺せば平和になるとでも? そんなものがお前の求めていた平和だと言うのか?」


「……違う」


「そうだ。お前のやろうとしてるのは単なる殺し合いだ。考えも甘ければ、詰めも甘い。そんなお前が強くなれるわけがない。その程度の考えしかできないやつに平和など訪れまい」


「俺は……どうすればいいんだ!」


「お前が望むのならば、俺がお前に本当の強さを教えてやろうか? もっとも死ぬ覚悟があればだが……」


「……いいだろう…なら教えてくれ…強さというのを」


「ならば我が軍に入隊するのだ」


 ♢♦︎♢


月日が経った、ある日のことである。

テイクタウン城は石造りの壁に灯された松明の炎が揺れ、重々しい空気が漂っていた。


「皆の者、集まれ!」


ラヴォスの低い声が響き、そこに兵士たちが一斉に集まり始める。


「これから我々は近くの町を侵略する。なにか策はないか?」


「はいっ!」


「おう、クラウン上等兵」


「はい、侵略する町にいくつかの罠を仕掛けておくのがいいかと」


「ほう、その方法は?」


「我々が町に行き、町の人々を襲うのもいいのですが、少々リスキーな上、想定外なことが起こる可能性もあります。そこで我々は、町の人間に変装し、町の人間のフリをしながら、町のいたる所に人目を盗んで罠を設置します。さらに町に使えそうな武器や罠があった場合はこっそり盗むのです」


「そして、町の人間は罠にかかり、弱ってるところを襲い、町を侵略するのだな」


「さようでございます」


「よし、ならばその作戦を実行し、町の侵略を行う!」


号令と共に、兵士たちが(とき)の声を上げる。


 ♢♦︎♢


チェロスはミクロン下士官と組むこととなる。


「チェロス、ラヴォス様の命令で我々と組んで、町に罠を仕掛けるミッションがおりた。今すぐ行動開始するぞ」


「了解だ」


「ミッションを開始する前に装備の準備をしておくんだ。準備ができしだいロビーに来てくれ」


その後、ロビーでミッションを受託し、目的の町へ移動する。


「着いたぞ。ここが例の町だ。ここであのミッションを実行する」


「あのミッション…?」


「さっき受託センターで言われた通りだ! ちゃんと聞いてたのか? まぁよい、そのやり方だがまずは町に時限爆弾を設置する。そして町を半壊させ、町の侵略を図る。お前にこの写真を渡す。事前に他の兵士がこの町を視察した時に撮られた写真だ」


ミクロンはチェロスに町で撮られた写真を何枚か渡す。

そこには町のいたる所が写されていた。


「その写真に写っている場所に時限爆弾を設置するんだ。そこは人目のつきにくい場所、つまり死角になっている。ただし、だからといって、くれぐれも町人に気づかれるな。気づかれると厄介なことになるからな。それで時限爆弾の設置が終わったらすみやかに、町を出るんだ。俺は町人のフリをして、町にある食料や武器などを調達してくる。うまくやれよ」


こうして、チェロスたちのミッションが開始された。


 ♢♦︎♢


「お兄ちゃん、誰?どうして人の家の周りをウロウロしてるの?」


三歳くらいの女の子が話しかけてくる。


「………」


「ドロボーはダメだよ。これあげるから、元気出しなよ」


少額の硬貨を受け取る。


「わたし、これからおつかいに行くから、お兄ちゃんじゃあね」


女の子は隣町までおつかいに行く。

その間、チェロスたちはミッションを遂行した。


数分後、女の子がおつかいから帰ってくる。


「なにこれ…どうゆうこと? パパ? ママ? みんなは?」


目の前で広がる惨状に、幼い心は追いつけない。

焼け落ちた家々や血にまみれた道を見て戸惑いと恐怖に声が震える。

その直後、背後からやってきたラヴォス軍の兵士が無言で銃を構え、少女の小さな体を撃ち抜いた。

か細い悲鳴すら、炎と煙にかき消される。


 ♢♦︎♢


「ラヴォス様、ご報告があります。我々の部下たちが、この町の物をいくらか調達できたもようです! 武器の調達はもちろんのこと、町にいた使えそうな人間を捕獲したほか、それ以外の使えなさそうな邪魔な者は排除しました! 今、捕獲した人間たちを洗脳し、こちらの味方につけようと試みてるとのことです!」


「ご苦労だった。下がっていいぞ」


「はっ!」


クラウンは自室へと戻っていく。


「町の制圧はうまくいったようだな。今日からここは、我々の物になったのだな」


一日してその町はラヴォスたちの手によって軍門にくだった。

このように、ミッションを完了させ、チェロスの一日は過ぎていく……


非情で冷酷、他人の優しさを踏み潰す勇気もまた一つの強さなのだろうか。

どちらにせよ、俺が生き残るためには、どんなことでも、非情でなくてはならない。

たとえ、それが間違っていたとしても……

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