第28話「英雄の死と蘇りの旅」
青年はいくつかの島を渡ったが、結局カルロスとニーナを探したがどこにも見当たらなかった。
「(しかし、どこもかしこも二人が見当たらない……いろんな島へ訪れたのに、見当たらないということは、実はそう遠くに行ってない可能性がある……何日が経過したし、一旦ギブタウンへ戻り、カルネスさんにもう一度、二人のことについて聞いてみるのも手か……)」
青年はそう結論づけ、一旦ギブタウンへ戻る決断を下した。
カルロスたちを探し始めて三日が経とうとしていた。
すると、道を急ぐ青年の前に、黒い影が現れる。
「また会ったな」
「あなたは、もしや……ラヴォス?」
「ほう……俺を知っているのか」
「あなたが、町を侵略していること、そして何者かを復讐するのも知っている!」
「そうか、ならば話は早い。貴様には消えてもらう。俺はこの後、他の町を侵略し、ギブタウンへ向かい、カルロスに復讐をしなければならない…俺が町の侵略や、カルロスの復讐を知られたからには、貴様を生かしておけないのでな」
「カルロスさんに復讐するだと!? 一体なぜ、そんなことを!!」
「貴様には関係ないと言っているだろう、失せろ!!」
鋭い一撃が青年に襲いかかる。
青年は必死に身をかわし、そのままギブタウンの方向へ駆け出した。
だが、青年の身体はすでに限界に近かった。
奴隷解放の後も、津波に飲まれたり、冷たい水に浸かって気絶したり、険しい雪山を登ったり……無理を重ねてきた疲労が今になって重くのしかかっていた。
「チッ……すばしっこいネズミめ…とんだ邪魔が入ったな………待てよ…さっきの若者、ギブタウンの方へ向かって行ったな…もしや、俺がギブタウンへ行ってカルロスを復讐すると喋ってしまったから、あいつはそのことをギブタウンの連中に報告しにいくのでは! だとしたらまずい! そんなことをされたら、ギブタウンの軍が城を固めたり、一斉にこちらに襲いかかってくるかもしれない! なんとしてでも、あの若者がギブタウンに着く前に始末せねば……」
♢♦︎♢
青年は荒い息をつきながら、それでも足を止めなかった。
「ハァ、ハァ……早く、ギブタウンの人たちに、ラヴォスが攻めてくることを伝えなければ……急げ! もうすぐだ!」
しかし、前方に立ち塞がる声が響いた。
「そうはさせるか!!」
「なんだと!!」
ラヴォスは瞬間移動でやって来た。
「お前を生かしておくわけにはいかん!」
「くっ!」
青年は逃げ回るが、行き止まりに来てしまった。
「しまった!!」
「死ね!!」
「ぐはぁ!!!」
青年はラヴォスにやられてしまった。
「やれやれ、危なかったな……油断はできんものだ。まだ息はあるが、トドメを刺す必要もなさそうだ。ただ万が一のことを考え、こいつの俺との記憶も消しておこう。俺と出会ったことを忘れさせてやる」
ラヴォスは青年に記憶が消える魔法かけた。
「フン、どこかへ失せろ!!」
ラヴォスは青年を吹き飛ばした。
「さてと、では仕事に戻るか」
青年はギブタウンに飛ばされた。
♢♦︎♢
その頃、カイブとカイトは舟の上で語り合っていた。
「それにしても、こうして一緒にまた漁に出るとはな」
カイブが網を投げながら呟く。
「なんだよ、急に」
カイトは苦笑しつつも竿を握りしめる。
「お前とは考え方の違いでいつも口論になり、別々に行動して……お互い顔すら見たくなかったのに。あの方が来てくれてから変わった」
「ああ。俺はあの人から諦めないことを学んだ。いつも失敗ばかり考えてた俺は、少しずつ変わったんだ」
二人は静かに空を見上げた。
遭難した仲間も戻り、港には再び笑顔が戻っている。
「それにしても、俺たちを苦しめたあいつらは一体何がしたかったんだろうな。近頃、他の島でも似たような連中が現れたって噂だ」
「大丈夫さ。そんな奴らは皆、英雄がやっつけてくれる」
「……はは、そうだな」
海風に揺れる舟の上で、二人は肩を並べた。
♢♦︎♢
そして青年を探すカルロスとニーナ。
「あれからしばらく、いろんな所を探してるけど、見つからないわね」
「どこいっちまったんだよ! あいつに会わないと詳しいことが聞けねぇから元の世界に帰れないじゃないか! もしや自分だけ帰りやがったのか?」
「そんなことする子じゃないと思うけどね。それに水晶は倉庫にあるんでしょ?」
「あ! そういえば一箇所だけ、しばらく探していない所があった!」
「え、あったっけ?」
「ああ、最初にここに来て、なにか手掛かりになりそうなものを探すために二手に別れた時、僕ちゃんが行って行き止まりだった所だ」
「たしかにもうそのくらいしか残っていないわね」
カルロスたちはその場所へ向かった。
カルロスたちは城壁の所で体がねじ曲がり、全身から血が流れ出ている青年を発見することになる。
「うわぁぁぁぁぁぁ! なにだこの有様は!」
「し、死んでる……」
カルロスたちが彼を見つけた時には既に永遠の眠りについていた。
悲しげな表情の彼は息絶えるまでなにを考えていたのだろう。
「仕事の疲れも溜まっていたのか、過労死してしまったのかしら……でもなんなのこの死に方……」
「僕ちゃんが悪いみたいに言うな! にしてもかわいそうな奴だ。一応カルネスに報告しておくか。一旦城へ戻るぞ」
♢♦︎♢
城に戻ったカルロスはカルネスに事情を説明する。
「クスン……そうですか……ご冥福をお祈りします。後ほど、兵士に頼み、墓庭で葬儀の準備をいたします……」
「ああ、よろしく頼む。だが、あいつが死んだことによって、水晶の欠片集めは僕ちゃんたちがやるハメになるってことか?」
「他に誰がやるっていうの?」
「……ああ、僕ちゃんたちしかいないな」
♢♦︎♢
数時間後、葬儀が開始された。
「(無理矢理顔を変えてまで働かせてすまなかったな。ゆっくり休むんだぞ。だが、この後どうするべきか)」
葬儀中はこのようなことを思っていた。
その後、カルロスたちは葬儀を終え、カルロスとニーナは墓庭から出ようとした。
そこをカルネスは呼び止める。
「あっ、そういえば、ある噂を耳にしたことがあります」
「噂? なんだぁ?」
カルネスはカルロスにある噂を吹き込む。
「この世界のどこかに、天使の翼というアイテムが落ちているそうです」
「天使の翼ぁ?」
「その翼を死者に与えると、蘇らせることができるという話を耳にしたことがあります」
「その翼があれば、あの子はもしかしたら……」
「だが、どこにそんな翼があるというんだ?どこにあるか分からんのに闇雲に探せってか? 第一、水晶の欠片すらもどこにあるかはっきり分からんつーのによ」
「散々あの子にお世話になったんだから、自分のことばかり考えていないで、恩返しだと思って天使の翼を探しなさいよ」
「えぇー、めんどっちぃよ。今は自分のことで精一杯だってのによ」
「ちょっとカルロス!」
「僕に考えがあります」
「なんだ? カルネス」
カルロスはニーナから逃げるようにカルネスの方へ行く。
「父さんは元の世界に帰りたいんですよね?」
「ったりめーだろ! てめぇのせいで帰れなくなったんだからよ!」
「ご、ごめんなさい……」
「で、その考えっつーのは?」
「はい、やはり天使の翼を探していただきますが、あくまでも水晶の欠片メインで探していただきます。父さんたちが三日間、青髪の方を探している間、資料室にこもって、それらの情報を探っていました。それで分かったことは、残念ながら天使の翼に関してはそれといった有力な情報は分からなかったのですが、水晶の欠片はもしかしたらギブタウン周辺の洞窟などで採取できるかもしれないということです」
「ま、まじか! お前にしては有能だな」
「はい。先に水晶の欠片を見つければ、元の世界にお帰りになってもよろしいですし、可能性は低いですが先に天使の翼が見つかれば、青髪の方を蘇生し、もう少し欠片の詳しい情報を聞き、三人で手分けして欠片を探すことができます」
「だが、翼に関してはどこにあるか分からないと」
「残念ながら……」
「チッ……無能な奴め」
「有能って言ったすぐに無能って……」
「うるせぇ! まぁわぁったよ。しかたねぇからそのなんとかの翼ってアイテムを欠片ついでに探してやっか」
するとニーナは大声を上げる。
「ついでとかじゃないでしょ! カルロス、忘れたとは言わせないわよ。あの子は働いてくれたり、私たちが縄で縛られているときも助けてくれたじゃない? 最初から両方のアイテムを同時並行で探しなさい!」
「はいはい、そうでした。面倒だが両方探すしかないかぁ。そうと決まれば行くぞニーナ」
カルロスたちは水晶の欠片と天使の翼というアイテムを求め、まずはギブタウン城の近くの洞窟前に足を運んだ。




