第27話「お人好しな青年6」
目が覚めると、青年はすぐに調査の準備を整えた。
「よし、準備はできたな。あとはこの温かくなる薬を持ってけ! んで、それがなくなったらすぐに戻れ!」
「はい! では行ってきます」
こうして青年は調合に使う草を求めて雪山を登る。
小一時間かけ、山の入り口付近にたどり着く。
「ここが雪山か。この山のどこかに例の草があるのか」
その時、目の前に一瞬謎の影が横切る。
「ん?」
先に進むと、チラチラとなにかが映る。
「なんだ?」
ふと、ポケットに手を入れると村長にもらった薬がなくなっていた。
「なに!? まだ一つも使ってないはず。なのになぜ? 言われたとおり一旦村長の所へ戻るか。ん? あれは……」
青年が先を見回すと足跡のようなものが見えた。
「試しにこの足跡をたどってみよう」
しばらくすると分岐している道に着く。
「右の道に足跡がある…おや、よく見ると今まで見た足跡と違う……それに左のほうが若干寒い気がする。もしかすると……」
青年はあえて左の道を選択し、しばらく進むとすると洞穴を見つける。
そこから声が聞こえた。
「やれやれちょろいもんだぜ」
洞穴の中に兵士がいた。
「まさか奴の持ってるのがこの場所に打って付けの物とは」
「どうせ足跡を追ってどっか行ったはずだ。途中、川に落下して別の靴に履き替えてしまったがな。これで俺たちの作戦は順調に進むだろう。ん?」
振り向くと青年がいた。
「な……なにィ!! なぜこの場所が分かった!!」
「あの……足跡が変わっていて、怪しいと思って来たら……」
「クソ!! 靴を履き替えたのは失敗だったか!! よ、よくこの場所に来たな。この薬を取り返しに来たんだろうが、そうはいかねえ!! お、お前、弱そうだな! この俺様がすぐにやっつけてやる!! 飛んで火にいる夏の虫とはこのことよ!! へックシ!! 寒いけどな!!」
「クッ……」
すると向こうから大きな足音が聞こえる。
「なんだ……この足跡は…獣? まさか熊か!? はっ!! そういえばこの洞穴も、もしや熊の住処か!? こ、こえーーーー!! 逃げろ!!! テキトーにこんなとこに入るんじゃなかった!!!」
「あ、あのちょっと……あっ……」
兵士は逃げたと同時に、持ってた薬を落としていった。
青年は薬を取り返した。
「徐々に足音が近づいている。早く出ないと!」
青年が外をでると、熊がいた。
「ほ、本当に熊がいるとは……」
そして熊が青年に近づいた。
熊の手が動き、自分の頭を取った。
「!?」
頭を取ると、中から一人の男の顔が現れた。
どうやら熊の着ぐるみを着た人だったらしい。
「君、どうしたの?」
「あ、あなたこそ……」
「いやー、寒いから防寒服を着てここまで来たけど、暑苦しいね。この辺に秘湯があるって聞いてやってきたけど、見当たらないんだ。もしかして、別の雪山だったかな」
「ぼ、防寒服代わりにそれを?」
「あれ? なにぼーっと突っ立ってるの? ていうかスゴイね。この寒い中、一人でやってきて。それじゃあ、ぼかぁ行くよ」
男は去っていった。
「なんだったんだ? と、ともかく助かった」
青年は再び山を登り続ける。
すると、向こうから声が聞こえた。
「なんだと!! 盗んだ物をどこかに落としただと!!」
「い……いや……あまりにも驚いたもんで……つい!」
「バカ!! 盗賊が盗んだ物を落としてどうすんだ!! つーか、熊ごときにお前がビビってどうする!!」
「ス……スマン」
「ただでさえ、俺はお前らより寒いとこにいるのに……ブツブツ……」
「なにか聞こえる。さっきの兵士の仲間かな」
さらに山へ登ると、ついにお目当ての草を手に入れることができた。
「これは間違いない……例の草だ。これを村長の所へ持っていこう」
青年の隣にはさっき見た兵士の姿があった。
「あなたは!」
「ん? なんだ? 驚いた顔で見て」
「あなたはさっき私から薬を盗んだ兵士ですね」
「薬? なんのことだ?僕と君は初対面のはずだが……」
「え? しかしさっき……」
「いや、待てよ……盗んだ? もしかしてコウが言っていた窃盗した奴って君のことか。さっきそれを失敗したとか言ってリーダーに叱られてたな」
「もしや、さっきの人とは別人!?」
「ああ。さっき君からその薬とやらを盗んだのは、僕ら三人組の仲間の一人、コウだよ。そして僕の名前はソウだ。僕たちはあるお方の下で働く下っ端兵士さ。とある計画を実行している最中さ」
「計画?」
「おっと、これ以上は話せないね。知ってるかい? 君の隣で僕が採った草のことを」
「なんだろう?」
「知らないようだね。まぁ知らないほうがいいと思うけど。この草は、この世界で最もウイルス性の高い最凶の毒草……ヤドクソウだよ」
「まさか!?」
「僕たちがなにをしようとしているか分かったようだね! では、さらばだ!!」
「待て!!」
ソウは瞬間移動をした。
「リーダー、ヤドクソウを持ってきたよ」
「よし、その草をこのクーラーマシンにぶちまけろ」
「了解!」
ソウがヤドクソウをマシンに投入後、ウィンタータウン全土にウイルスが拡散した。
このウイルスにより、ウィンタータウンの住人が病魔に侵される。
♢♦︎♢
すぐさま青年は村長の所へ戻る。
「村長!!」
「お……おう……戻ったか……なんとか……草を……持ってきたのか……」
青年は草を渡した。
「だ……だが……い……一体……山でなにが……ゴホッ……!!」
青年は山で起こったこと、兵士やヤドクソウの件を詳細に話した。
「なんだと!! それはいかん!!」
「こ……このままでは村が全滅する……!! あのウイルスを治すにはまた別の草が必要なんだが……たしか……山のてっぺんに生えてたような……いや、それよりもその怪しい兵士どもを追っ払うのが先か……」
それは、ゲドクソウという。
「この寒い中、山を登って俺の頼みを聞いたお前さんにしか頼めねぇ……頼む!! その兵士どもを追っ払い、山のてっぺんにある草を採ってきてくれ……!」
「分かりました!!」
「万全な準備が必要だ。装備を整えていけ。あとこの薬を飲め! ウイルスガードだ! これで多少はウイルスをガードできる! 頼む! お前だけが頼りだ!」
「ありがとうございます」
青年は再び山へ登ることになった。
その後、山の入り口にたどり着く。
♢♦︎♢
一方その頃──
「よし、後はパーツを装着してマシンを強化すればと…あれ?」
「どうしたリーダー?」
「おかしいな、パーツがない……」
「まさか、どこかに落としたか!?」
「こんな雪山だ。物なんか落としたら、そう簡単に見つからんぞ。悪いが、一緒に探してくれないか?」
「仕方ないなぁ……」
「てーか、あのヘボ盗賊どうした?」
「なんかリーダー見返すためにまたどっか行っちゃった」
「なんであいつこうゆう肝心な時にいねぇんだ」
リーダーと呼ばれる兵士とソウはパーツを探しに出た。
♢♦︎♢
その頃、青年は薬の調合に必要な草を採った場所までたどり着いていた。
「前はここまで来たな……この先に、あの兵士たちがいるはず。急がねば」
しばらく進むと、山の頂上に到着する。しかし、兵士たちの姿は見えなかった。
「おかしいな……いると思ったんだけど……おや?」
青年の目の前に、奇妙なマシンが置かれていた。
「これはエアコンのクーラーに形が似ている。このマシンによって村の人たちが苦しんでいたのか」
青年は素早くマシンの動作を停止させる。
すると、これまでの異常な寒さが消え、山の周囲の気温は元に戻った。
「後は……壊すだけか。よし、投げ捨てる!」
青年はマシンを蹴り落とす。
「これで後は……そうだ! たしかこの辺りにゲドクソウが生えているはず」
青年が辺りを見渡し、草を見つける。
「あった。よし、村へ戻ろう」
青年は村へ戻るべく下山を試みる。
その下山の途中、声が聞こえた。
「よう、テメェか?このリーダー、バン様の苦労に泥を塗ったのは!」
「誰だ!? あ、あなたたちは!」
青年の目の前に下っ端兵士が現れた。
「こいつが噂に聞いた青髪の奴か! やいテメェ、よくもやってくれたな! まさかクーラーマシンを投げ捨てて破壊するとは!」
「いやー、ビックリしたぜ。パーツを探し途中にコウと合流し、そのコウの頭上の上からマシンが降ってきたからな。おかげでコウの頭にマシンが直撃した」
「そういえば一人いませんね」
下っ端兵士たちの背後から一人の兵士がやってきた。
「う……き……貴様……よく……も……やって……くれたな……」
「テメェがマシンを破壊したせいで俺たちの計画が台無しだぜ」
「計画?」
「俺たちはラヴォス様の部下の命令により、ウィンタータウンを制圧しようとした。村にいる奴らを弱らせ、襲撃し、ウィンタータウンを乗っ取ろうとしたが、とんだ邪魔が入った……俺たちはラヴォス様の最終目的のために動いているというのに」
「ラヴォス…あなたたちは一体、なにがしたいんだ!! なぜ、ラヴォスに従う!? その最終目的を果たした先になにがあると言うんだ!!」
「テメェに答える義理はねぇよ! なぜならテメェはここでくたばるからよ! 行くぞ、お前ら! 俺たち下っ端兵士三人隊、バンソウコウ!」
「絆創膏……?」
「いざ参る!」
下っ端兵士は青年に襲いかかってきた。
兵士たちは青年に襲いかかる。周囲には深い川と、今にも崩れそうな橋があった。
青年は隙を突き、兵士たちを次々と川へ突き落とす。
「しまった! 俺たちはカナズチだった!!」
簡単に倒すことができた。
「ど……どうにかなった。それよりも早く急がなければ!」
その後、青年は下山し、村に戻った。
「も……戻ったか……ゴホッ……元の気温になったってことは、なにとか奴らを追っ払ったわけだな」
「はい、そしてこれを!」
青年は草を渡した。
「おお、見つけることができたか! この草を調合し、薬を作れば村全体でかかっている病魔を治すことができるはず……」
「私も手伝いましょうか?」
「いや、大丈夫だ。俺も多少は息が苦しいが……ゴホッ!! これ以上、お前さんに苦労はかけられねぇ!! それに、やらなければならねぇことが、あるんだろ?お前さんはお前さんの、俺は俺の果たすべきことをやる、そうだろ?」
「村長さん……」
「俺の頼みを聞いてくれてありがとな。困ってることがあればなんでも聞いてくれ……ゴホッ! ゴホッ!!」
「では一つ聞いてもいいでしょうか? カルロスという金髪の男性と、ニーナという赤髪の女性を知りませんか?」
「カルロス? ニーナ? 知らねぇな」
「そうですか……」
「ま、見かけたら教えてやるよ。それじゃあ、達者でな」
「はい!」
青年はウィンタータウンを後にした。




