第23話「お人好しな青年2」
しばらくして青年が目を覚ます。
「……ん? ここは?」
青年は機械だらけの部屋にいた。
そしてその周りにはヤシの村の人らしき人物がいた。
また、魚も落ちている。
「おおっ! 目が覚めたぞ!」
「あ……あなたたちはもしや……」
「しばらく起きないもんだから、死んだかと思ったぜ」
「あなたたちはヤシの漁師ですか?」
「おう、そうよ。つい最近まで漁に出てた奴らさ。だがある日、渦に巻き込まれ、このザマだ。ここからどうやって出たら分からねぇ……」
「俺たちはもう後は死ぬだけかもしれねえな……」
機械の部屋に閉じ込められたヤシの漁師たちは中には数日間閉じ込められている者もいた。
希望を失った漁師たちの表情が、青年の胸に重くのしかかる。
「しかしヤシの漁師以外の人も来るとはよ……気の毒なこった」
「そんな! まだ希望はあるはず!」
青年が辺りを見回すと鍵が掛かったドアと天井があった。
「ん? よく見ると天井に人、一人分入れそうな穴があるな……」
すると、向こうのドアから声が聞こえる。
「いや~大量、大量。魚はとれるし、まさか人間まで捕まえることができるとはな。ラヴォス様も、さぞ喜ぶだろう。このボルテックスマシンに、餌放出機能を取り入れ、大量の餌を海に放出し、食料である魚を大量に捕まえるとは、クルーさんも考えたよな」
そう、渦の原因はラヴォス軍が発明した魚を大量に捕獲するマシンによって発生していたのだ。
「とりあえず、今のところはクルーさんの指示に従って行動するぞ」
「(ラヴォス……この事件はアイツらが引き起こしているのか……そしてクルーというのは、ラヴォスの部下か?)」
『緊急事態発生! 緊急事態発生! ボルテックスマシンに異常発生! ただちに動作を停止せよ!』
ボルテックスマシンのサイレンが響き渡る。
「まじか!! 早く止めに行かないと!!」
ドアの前にいたラヴォス軍の兵士たちは去っていった。
「(しめた! この間に!) 皆さん、すみません!! 少し協力をお願いできますか?」
「なんだ?」
「あそこの天井の近くに人が一人入れる分の穴があります! あそこまで私を導いてくれませんか?」
「おい正気か? いくら入れるって言ったって……」
「この方法以外に助かる術はない。私があの穴の近くまで行ったらこの網掛け機で上まで登ります。そしてここを脱出し、このドアのロックを解除します。今は見張りの人がいません。やるなら今しかありません!!」
「うだうだ言ってても仕方ねえ……おい野郎ども!! 手を貸せ!! この男を向こう側へ連れて行くぞ!!」
何人かの男たちが肩を組み、網掛け機を使い、青年を穴に導いた。
そして青年は穴に入り、ドアの向こう側に着いた。
「なに!?」
マシンの影響か停電が起きた。
「そうだ、貰ったアイテムを使えば! すみません、私のカバンに火を灯すアイテムがあります。これで私のことを照らしてくれませんか!」
「おうよ! 用意周到だな!」
ヤシの漁師は素早くリターン・ザ・炬火に火を灯され、光が周囲を照らす。
壁に張り巡らされた配線やパイプがもはっきり見えた。
「このドアのロックの解除法をなんとかして探さなければ……そしてこのマシンのコアも……」
手早く鍵穴を確認し、慎重に操作する。
すると無造作に置かれた操作パネルの影から光が反射し、コアの存在に気づく。
青年はそれを手に取ろうとした瞬間、背後に影が動いた。
「クックッ……なにをコソコソやっているんだ? ボルテックスマシンのエラー中に、ネズミが嗅ぎ回ってるとはな」
「あなたは?」
「俺っちか? 俺っちはこのマシンの管理者のクルーでヤンス! ボルテックスマシンにより、大量の食料と人質を確保することができた。これで満足してラヴォス様に報告できるというのに、貴様はこの俺っちの邪魔をする気か?」
「こいつがクルーか。これ以上、村の人たちを苦しめるわけにはいかない! 私はこのコアを破壊する!」
「おめぇになーにができる! ヒーロー気取りもいいところだ! もっともこのコアを破壊するには、この俺っちを倒さなければならないのだ!! おめぇにそんなことができるか!!」
「くっ……」
「時間もねぇんで、早速くたばってもらうでヤンス!」
クルーはボルテックスマシンに搭載されている攻撃のボタンを押そうとした。
「……あっ」
しかし、誤操作により、別のボタンを押した。
そのボタンはクルーの身につけている小型機械の爆破スイッチだった。
爆発してクルーは重傷を負った。
「グハッ……バカな……まさか俺っちが発明した機能で……俺っちがやられるとは……」
クルーは自滅し、兵士が寄り添っている間、青年はコアを破壊し、ボルテックスマシンの動作を止めた。
その後青年は漁師がいる部屋に移動し、漁師たちと出口へ向かった。
「そういえばここは海の中だ。このまま出ても出られませんね……どうしましょう」
「おう、そうだ! 俺携帯電話を持ってたんだ。これでカリブたちに連絡して救助を待てばいいや」
「えぇ……なら最初からカリブさんとに連絡して、状況だけでも説明してくれればよかったじゃないですか……」
「最初はそうしようと思ってたんだが、奴らの監視があってだな……だが、奴を倒した今なら連絡ができる」
「そういうことだったんですね」
その後、青年たちはカリブたちの救助により村に戻ることができた。
♢♦︎♢
「アンタすげえよ! まさか渦の原因を突き止めただけでなく、漁師たちも救っちまうなんて大した男だ! オラァ、おめぇさんを信じて正解だったよ。本当にありがとう。感謝しきれねえくらいだ」
「これでようやくこの事件も解決できましたね。本当によかったですこれでやっと普通の生活に戻れますね」
「おうよ。その通りだ! お前さんは俺たちの英雄だ。なんでも頼みてえことを聞いてくれ!」
「頼みたいことか……なんか忘れてる気が………そうだ!! 私はカルロスさんとニーナさんを探すために旅に出てるんだった。カリブさん! 聞いてもいいですか?」
「おうよ、なんでも言ってくれ!」
「この辺りでカルロスさんとニーナさんという金髪の男性と赤髪の女性を見かけませんでしたか?」
「カルロス? ニーナ? 聞いたことねぇし、そんな奴見たことねぇぞ」
「そうですか……」
「まぁ、それっぽい奴を見かけたらおめぇさんに伝えてやるよ」
「ありがとうございます」
「てことは、おめぇさんはそいつらを探す旅に出てたんだな。前に乗ってた船は津波で壊れちまったんだろ? だったらアンタに新しい船をくれてやる。こんな所にいても海しかねえからな。人を探すんなら、もっと遠くを目指した方がいい」
「いいんですか?」
「おめえさんには随分世話になったからな」
「わざわざ私のために……このご恩は一生忘れません」
「そんな大袈裟な。むしろ俺たちのセリフよ。今後俺らは食糧に困らねぇ。そうだ、今日はもう遅い。うちに泊まってくといい。今しがた、ヤシの漁師が安心して漁へ向かった。あとで新鮮な魚をご馳走してやる」
青年はその言葉に甘え、久しぶりの温かい食事に舌鼓を打つ。
脂ののった魚を口に運ぶたびに、心も体もほっと和らぐ。
疲れからその日はぐっすり眠り、眠りの中で今日までの旅路を振り返った。
カルロスに捕まってから、ほとんど休む暇もなかったのだ。
次の日、青年は気持ちの良い朝を迎える。
「大変お世話になりました」
「こっちこそだ!! またここに来たければいつでも来いよ!! じゃあな!!」
こうして青年はヤシの港を去り、別の場所へと目指すのであった。
♢♦︎♢
一方その頃、テイクタウンでは──
「まさかクルーがやられてしまうとは……」
「一体何者なのだ、クルーを倒した奴は……」
「ラヴォス様、ボルテックスマシンのクルー様の部屋に青い髪が落ちてました。もしかしたらその倒した奴の髪の毛かもしれません」
「青い髪? どこかで見たような……とにかくクルーを倒したと思しき青い髪の者を探し、その者の調査を行え!」
「はっ!」
クルーを倒した青年の存在は、ラヴォス軍に探りを入れられる契機となり、やがて軍はその足取りを慎重に追い始めた。
「そしてミクロン、お前は例の村に向かえ。アレを採取してくるのだ」




