第22話「お人好しな青年1」
三日前、青年はギブタウン城を後にして、カルロスやニーナを探す旅に出ていた。
一日目、彼はギブタウンにはカルロスたちがいないことを確認して、近くの町に移動しようと試みる。
「よし、カルロスさんとニーナさんがいそうな所を手当たり次第、探すとしよう。ギブタウンにはいないということはカルロスさんとニーナさんは既にこの町から離れている可能性が高い。そうとなれば、この城の周りをうろついても意味がないかもしれない。苦労はするかもしれないが、この町以外も行ってみるか。いる可能性は決して高くはないが、ここにずっといるよりかはマシな気がする」
そう考えた青年は早速、ギブタウンから離れようとする。
「困ったな、だけどどうやってここから離れよう。周りは海だし、船かなにか移動手段があればいいのだが」
そこへ、兵士エドワードが現れる。
「どうかしましたか?」
事情を聞いたエドワードは、しばし黙考したのちに口を開いた。
「なるほど。過去から……ですか……信じられないが、嘘をついてるようにと思えない。それでここから出たいと。なら私の船を貸しましょう」
「ありがとうございます。この御恩は一生忘れません」
青年は深く頭を下げ、エドワードの船に乗り込んだ。
♢♦︎♢
青年はいくつかの町へ移動し、カルロスとニーナを探していく。
その途中にある人物に出会う。
「フン……今回の侵略も大したことはなかったな」
銀髪をなびかせた大男、ラヴォスである。
「(なんだろう、あの人)」
「ん? なんだ貴様は? 邪魔だ、どけ」
「つかぬことを聞きますが、今さっきなにをされてました?」
「貴様には関係のないことだ」
そう言ってラヴォスはその場を立ち去った。
「(なんだこいつは……あの鋭い目つき……この銀髪の大男は何者なんだ)」
少しして青年は近くの町に着いた。
しかし、その町はラヴォスたちによって侵略されていた。
「な、なんだこれは……」
呆然としてると、そこへラヴォスの手下のミクロンがやって来た。
「なんだ、まだ町の人間が残っていたか……早いとこ片付けてやる……」
「待て! 何故こんなことを?」
「何故? そんなんラヴォス様の命令で、この町を侵略するように言われたからに決まっているだろ。ラヴォス様の復讐の成功のために我々は働いているのだ」
「ラヴォスって誰だ! なぜそいつの復讐のためにお前が町を侵略する必要がある!? まさかラヴォスっていうのは銀髪の大男か?」
「そうだ、だがなぜ知っている? ま、どうでもいい。目的とか俺らの顔を知られたからにはお前にはくたばってもらおう」
「(まずい……早いとこ、ここから出なけれれば……)」
青年は、なんとかして町から抜け出した。
「クソ……すばしっこい奴め……まぁ、たかだかネズミ一匹ぐらいは放っておいてもさほど問題ないか」
♢♦︎♢
逃げた青年は再び船を漕ぎ、別の場所を探す。
「ラヴォス…? 復讐…? なんのことかはサッパリ分からないが…ただ、そのラヴォスという人物を放っておくわけにはいかない。このまま、他の町とかが襲われるのを見ていられない。なんとかしなければ…しかし、私が今すべきことはまずカルロスさんとニーナさんを探すことだ。落ち着いたらこのことも話せばいいか。さて、この先どこへ向かえばいいのだろうか」
不安を抱えながら船を漕いでいた時だった。
「なんだ…波が見える。波が近づいてくる…これは津波では!? まずい!!」
青年は必死に津波を避けようとするが、一瞬にして津波に飲まれてしまった。
♢♦︎♢
しばらくして青年は目を覚ます。
「おい、でぇじょうぶか!?」
「ここは……」
「生きとる! こいつぁ奇跡だ! いやぁ、あんなデケェ津波の後に、まさかこんな所へ人が流れてくるたぁ、思わなかったよ」
「あ、あの……ここは一体?」
「ここか? ここはヤシの港だ」
「ヤシの港?」
「そうだ。俺たちは、漁に出て魚や海産物をとって生活をしている。最近は海が荒れていてまともに漁に行けてないけどな。さっきみたいな津波が来たり、あの事件が起こったりと参っちまうよ」
「あの事件とは?」
青年が問い返すと、港の漁師は顔を曇らせた。
「つい最近のことだ。ここから少し離れた海に、魚たちが大量にいる住処があるんだが、その魚たちを捕まえるべく、漁に出かけた奴らがいたんだ。奴らはその住処を見つけ、魚を捕まえようとしたが、奴らの近くに突然、大きな渦ができたんだ。奴らはその渦に飲み込まれ、そのまま行方が分からなくなった」
「お気の毒に……」
「それ以来、漁に行くのが恐くて誰も船を出さないんだ」
「ということは、魚や海産物が取れない今、あなたたちはどうやって生活をしてるんですか?」
「海産物だけなら、かろうじて遠くの海に行かなくても採れる。だがこのままだと俺たちは飢えて死ぬかもしれん。だからなんとしてでも渦が発生する原因を調べなければ…」
「それなら私が調べに行きましょうか?」
「いや、気持ちはありがてぇけどよ、さすがに危ねぇよ。これは俺たち村民の問題だ」
「こう見えても結構危険な旅に出てました。ですから私もあなたたちのお役に立ちたいのです」
カイブは少し考え込むように息を吐き、周囲の村民たちの顔を見渡した。
彼らも青年の決意をじっと見つめている。
「そうかい、そこまで言うならアンタにも手伝ってもらうよ。村まで案内してやる。そういえば名前を言うの忘れてたな。俺の名前はカイブだ。よろしくな」
「こちらこそよろしくお願いします」
青年はカイブの案内によりヤシの村に行く。
その後カイブは、村の村民を集め会議を始めた。
「皆の者、よく聞け! 例の渦巻きの事件をこの者が調査することになった。よろしく頼むぞ!」
「おいちょっと待てよ、カイブさん。いくらなんでも、見ず知らずの男に例の事件を任せるのはちょっと……」
「そうだ、この辺りはモンスターだってたくさんいる。不用意に行くのは危険すぎる」
「もう少し考えてから行動した方がいい」
そこへ一人の男がやってくる。
「そうだ、考えた方がいい」
「カ……カイト!」
やってきたのはカイブの息子のカイトだった。
「これ以上、村の皆を犠牲にしたくはない。また渦に飲み込まれたらどうする? もっと作戦を練ってから行動しないと、彼らと同じようになってしまう! そうなったら親父はどう責任を取るんだ!」
「カイト……お前から何度同じことを言われたか…考えろ、考えろって、何度考えれば、先に進むんだ! このままじっと考えて待ったってなにも変わりはしない! ロクに飯も食えねえまま餓死するだけだ!」
「だったら親父はこのまま村の皆を見殺しにするって言うのか!」
「そんなことは言ってないだろ!!」
カイブ親子が口論している最中、青年が口を開く。
「おやめください。この事件は私が行くと決めたんです。私に行かせてください」
「見ず知らずの人に行かせられないつってんだろ!」
「たしかに私はこの件に関しては部外者かもしれません。それに海のことなんて全くもって詳しくはありませんし、この村の決まりも分かりません。しかし、例え見ず知らずの人間でも、困ってる人たちの声を聞くことはできる。見て見ぬフリをして、ただボーっと事件を眺めてるだけでは、私のプライドが許しません。なにもしないまま、事件が未解決のまま、人々が苦しむよりかは、誰かがやると言って勇気を出して事件に挑む方がマシです。勝手ではありますが、どうか私にこの事件の調査を任せてください!」
「それだけの自信があるってのかい……仕方ねえ、おめぇにも手伝ってもらうか」
「ありがとうございます」
「だが、お前一人に任せるわけにはいかねえ。俺もなんとかおめぇの力になってやるよ」
「カイト……」
「気が変わったよ。この男のやる気に負けちまった。だから親父もこの男に力を貸せ。なんかこの男ならこの事件を解決してくれる気がすんだ」
「分かった、力を貸そう。俺にできることならなんでも頼んでくれ」
「皆さん、ご協力ありがとうございます。なんとかしてこの事件を解決してみせます」
こうして、青年はこの村の事件の真相を探ることになった。
「港にあった船はみんな渦に巻き込まれてないんだ。だから、緊急用の船で行くしかない。ただ緊急用の船はここから離れた場所にあるんだ。俺がそこまで案内してやるよ」
カイブの指差す方向には、海岸線の向こうに洞窟の入り口が見える。
海風が青年の髪を揺らすと、不安と入り混じる。
カイブに渦の発生場所が書かれた地図を受け取った後、カイトの案内で緊急用の船がある所まで移動する。
青年は洞窟にたどり着く。
「この洞窟を抜けると緊急用の船があるんだ」
その後、青年たちは洞窟を進み、緊急用の船を見つける。
「よし、この船に乗って移動してくれ。ボロい船ではあるが、乗れんこともない。だがさすがに二人乗ったら壊れそうだ。悪いが、ここからは一人で向え」
「了解しました」
船の朽ちた木板が軋む音を立てる。
「もしもの時に備えていくつかのアイテムを持ってきた。受け取ってくれ」
網掛け機や、リターン・ザ・炬火というアイテムを受け取る。
「ありがとうございます」
「渦の発生場所はさっき親父から受け取った地図に載ってるはず。そこを目がけて移動するんだ」
「行ってきます」
「健闘を祈る」
青年は船を借り、渦の発生源へ向かう。
しばらくして青年はその場所にたどり着く。
「ここが例の場所か。たしかにこの辺りには魚が多く見える。しかし妙だな。何故こんな危険な場所に魚たちはやってくるんだ?」
すると突然青年のいる場所に巨大な渦が発生する。
「クッ……逃げられない!!」
青年は舵を握りしめ、必死に船を支えようとする。
しかし渦はすぐに船を飲み込もうと押し寄せ、彼を海中へ引きずり込んだ。




