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第21話「時空の歪み」

「無理だ……帰れん」


皆、黙り込む。


しばらく沈黙が続いたが、カルロスが口を動かす。


「ニーナ、お前の魔法でなんとかなんないのか?」


「んー、厳しいかもしれない……」


「チッ……使えねぇ奴だ。元はと言えばお前が悪いんだ! お前が水晶を落とさなければ僕ちゃんはとっくに元の世界へ戻っていたはずだ。お前がなんとかしろ!」


堪えていた怒りがまたこみ上げ、カルロスは声を荒げる。

突然矛先を向けられたカルネスは顔を引きつらせ、視線を落とす。


「そんな無茶な……僕はまだ魔法の見習いだし、魔法もなにも使えないんだ。壊してしまったのは申し訳ないけど僕にはなにもできないよ……」


急に弱気になるカルネス。


「てめぇはなにも変わってねぇな! 強くなるんじゃなかったのか!」


そしていつもカルロスの言動に飽き飽きしていたニーナだが、とうとう嫌気が差す。


「人には文句ばっかり言うくせに自分ではなにもやろうとしないわけ!?」


叱責にカルロスは少し萎縮し、気まずそうに口をつぐむ。


「わぁったよ。僕ちゃんも帰れる方法を考えてみるよ」


「そうだ! ここのところいろいろありすぎて忘れてたけど、カルロス、アンタ私に頼らなくてもアンタ魔法使えなかった? そう、橋を直した時の魔法で」


「そうか、修復魔法か……よし、ソイヤァ!!! ティヤァ!!!」


カルロスは大仰に詠唱するが、水晶は直らない。


「クソ……この水晶には利かないみてぇだな。なにか特別な力が働いてるとでもいうのか?」


そこで、以前奴隷にしていた青年の存在を思い出す。


「そういえば元の世界の城……まぁ、この城なんだが、青髪の奴がいた気がするよな。奴はどこに行ったんだ?」


「アンタの仕事を処理してくれた子をなんでそんなに覚えてないのよ!」


「タイムスリップのせいで記憶が所々曖昧なんだよ!」


「私も人のこと言えなかったけどさ、それにしてもあの子には感謝してもしたりないくらいでしょ!」


「でも奴はどこ行ったんだ? まだ過去の世界に留まっているのか?」


「数年後のこの世界で同じ見た目で会っていないってことは、あの子、あの後家に帰ったから、私たちが未来にいることは知らないんじゃないの? それともカルネス君、青髪が特徴の青年ってこの城で働いてる?」


「いえ、僕は従業員の管理とかも担当してますが、そんな人は現在勤めていませんよ。僕が入社した時からだと思います」


「っていうことは、解放後、無事に家に帰ったって考えるのが自然か」


「あ! 思い出しました! そんな特徴の人物なら数日前にこの城に立ち寄ってきましたよ」


「ほんとかそれ!」


「え、じゃああの子はなにかあってまた城外へ戻り、私たちと同じように水晶の力により未来へ行ってしまったってこと?」


「かもな」


「たしかに青髪の方は水晶とか発言していました。さらに彼は水晶のことについても教えてくれたんです」


カルネスは青年が来た時のことを語りだした。


 ♢♦︎♢


カルネスは三日前に既に青年と会っていた。

青年は何故か、カルロスたちが未来へやってくる三日前にこの世界に到着したようだ。


「イテテ……」


カルロス同様、門の付近で尻餅をつく。

転送の衝撃から立ち直るまで、しばし息を荒げていたが、顔を上げる。

カルロスのように取り乱すこともなく、状況を冷静に把握しようと努めていた。

そのため、記憶は割と鮮明で、少ししてこの場所は数年後のギブタウン城であることに気づく。

その後チェロスに事情を話し、入門の許可を得て、カルネスの所へ到着する。


「誰だ貴様は!」


「私は旅の者なのですが、先ほど、門にいた青い服装の兵士に許可をもらってここに入ることができました」


「悪いが俺は門にいる青い兵士は信用していないんだ。ま、どうしても用があるというのなら、改めてどういう理由でここに来たのか喋ってくれないか?」


「はい。まず私は過去から来たのだと思います」


「過去から来ただ? なにをバカなことをを言ってるんだ!」


「まずは聞いていただければ幸いです。過去から来た理由は、ある人物たちを探して、過去の世界へ連れ戻そうと考えているからです。その人物たちはおそらくまだこの城にあるであろう水晶の不思議な力によってタイムスリップしてしまいました。その人物の名は、カルロスとニーナといい、この城で勤めていました。その人物を探して過去の世界に送らなければ、ギブタウンの未来が変わる可能性があるので、それを防ごうと考えております。城に来た理由は、カルロスさんたちは先に未来にたどり着き、まずはこの城に顔を出すと考えたからです」


しかし時空の歪みかなにかが影響で、未来へたどり着く順番が前後し、後に水晶に飲み込まれた青年は先に未来に着き、カルロスとニーナはその三日後に未来に着いていた。


「カルロスさんたちがいなければすぐに帰るので、それまでこの城の出入りをお許しください」


「この城って、ギブタウン城のことだよな?」


「はい。私も以前、この城で奴隷として働いていたのです。お手数ではありますが、昔私がここで働いていたか調べてもらうことは可能でしょうか?」


「そ、そこまで言うのなら……」


カルネスはカルネスコンピュータを使い、過去に在籍していた人物のデータを調べる。

データを抽出し、カルロスやニーナ、そして青年が過去に城に在籍していたことが分かる。


「たしかに、確認がとれました。それにしてもカルロスってどこかで聞いたことあるような……ともかく疑って申し訳なかったです。事情は分かりました。ぜひ、僕もカルロスさんたちを探させてください!」


「ありがとうございます!」


数分後、青年はエントランスにあった水晶を見ていた。


「この水晶でこの世界に飛ばされたのです。カルロスさんたちもこの水晶で飛ばされたと思うので、カルロスさんたちを探し、いち早くこの水晶で一緒に元の世界に帰りたいものです。それと人探しは手伝わなくて結構ですよ。あなたには仕事があるでしょう。それに全うしてください。お気持ちはものすごくありがたいです。少し準備をしてカルロスさんたちを探す旅に出ますね」


「分かりました! 無理はなさらずに! もしなにか協力できることがあったらお申し付けください」


「はい! ありがとうございます!」


「あっ、そうだ。このダイヤモンドですが、実は今日処分しようと思ってエントランスに運んでいたんですよ。いまいち鏡の役目を果たせていないし、どうせならこの城に見合った豪華な鏡を購入しようと。あなたが来てくれなければ、そんな大事なダイヤモンドを処分するところでしたよ」


「そうだったのですね」


「ところであの赤いダイヤモンドはなんなんですか? あなたは過去から来たようなので、なにかダイヤモンドの歴史とか情報を知っていますか? 話に出てた通り、未来へワープするものなのでしょうか?」


「はい。ある程度は知っています。あれに触れると過去とか未来に行ってしまうのです。ちなみに、ダイヤモンドの形をしていますが、あくまでも時の水晶という水晶です。それで私は過去から来ました。再度触れると元の世界に戻れるようなのです。水晶が壊れた場合は触れても元の世界へ戻ることができないみたいですね。スペアという形なら、どこか遠くに散らばっている、水晶の欠片を集めて、組み立てれば、同じ水晶が手に入るということです。謎に包まれている水晶のようで、たとえば突然光る理由とか、他の詳しいことはまだ分かっていないことが多いようです」


「そんな大事な物なら、奥の倉庫にしまっておいて、そのカルロスさんが来たらご用意できるようにしますね」


「はい。よろしくお願いします。それでは、私はこの辺で失礼いたします。お仕事頑張ってください」


 ♢♦︎♢


「有力な情報ありがとう! つまりどこかに欠片が散らばっていて、それを集めて組み立てたら、同じ効果を発揮する水晶が出来上がるってことね」


それは水晶の欠片といったアイテムだ。


「しかし、てめぇはこの城で働いていた僕ちゃんの名前を聞いても気づかなかったのか」


「す、すいやせん……」


「でも今ので決まったわね」


「ん? なにがだ?」


「私たちでその欠片を集めればいいじゃない!」


「えぇーめんどっちぃ! 青髪の奴がその辺にいるならそいつにやらせようぜ」


「欠片を探すのは私たちでやりましょうよ! あの子、散々働いてたんだからボロボロじゃない。倒れちゃうわよ」


「ならせめてあいつと合流して、欠片の在り処を聞こうぜ。あわよくばちょっと休んでもらった後でも構わんからあいつに探してもらうって感じで」


「結局は探させたいんじゃない!」


「そっちのが手っ取り早いだろ! もっと徹底的に青髪の奴を探せ!」


「分かったわよ」


その後、青年を探した。


 ♢♦︎♢


「あれからしばらく、いろんな所を探してるけど、見つからないわね」


「どこいっちまったんだよ! あいつに会わないと詳しいことが聞けねぇから元の世界に帰れないじゃないか! もしや自分だけ帰りやがったのか?」


「そんなことする子じゃないと思うけどね。それに水晶は倉庫にあるんでしょ?」


「あ! そういえば一箇所だけ、しばらく探していない所があった!」


「え、あったっけ?」


「ああ、最初にここに来て、なにか手掛かりになりそうなものを探すために二手に別れた時、僕ちゃんが行って行き止まりだった所だ」


「たしかにもうそのくらいしか残っていないわね」


カルロスたちはその場所へ向かった。

そこで、驚くものを目にする。

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