第19話「カルロスの魔法」
テイクタウン城で、ラヴォスは放心状態に陥っていた。
それは傷によるものではなく、またしてもカルロスを仕留め損ねたからだ。
「ラヴォス様! ラヴォス様! しっかりしてください!」
「えい! 黙れ! クソが! 今度襲う時は粉々のギザギザに磨り潰してやる! あと数年は修行する! てめぇら、協力しろ!」
「「はっ!」」
「クッ……大声を出したら傷が……」
「しばらく安静にしといてください」
「すまんな……ミクロンよ」
ミクロンの手当てを受けながら、ラヴォスは心に誓った。
衝動に任せて襲っては失敗し、不意を突かれてもまた失敗。
「次こそは綿密に計画を練り、確実にカルロスを討つのだ」
♢♦︎♢
一同は崩れた橋の所へ来た。
その先に墓庭がある。
「クッ……橋が崩れてて戻れない……厄介だな……」
「これのおかげで助かったんですがね。でもどうしたら……」
「そうだ! ニーナ! 見てみろ!」
カルロスは魔法を使う際の奮い立たせるモードに入る。
「ん? カルロスそんなことしてなにかできるの?」
「ソイヤァ!!! ティヤァ!!!」
すると、崩れていた橋が治った。
「カルロス!? 一体なにをしたの!?」
「へっ! 見たか! 修復魔法だ!」
なんと、橋が直ったのは、カルロスの修復魔法によるものだった。
「すごい! カルロスが初めて役に立った!」
「褒めてんのかそうじゃねぇのか分かんねぇよ! でも僕ちゃんが魔法の練習してたのは嘘じゃなかっただろ?」
「ええ、だいぶ見直したわ。カルロス、ありがとう」
カルロスはまた赤面した。
「カルロスさん、ありがとうございます」
「い、いいってことよ」
そして橋を渡り、無事に墓庭に到着した。
クローンたちが現れた穴も修復魔法で塞いだ。
そしてカルロスは再び青年にオカイモキ魔法をかける。
二度かけることにより、元の顔に戻る。
顔を戻すときは魔法の鏡という手鏡の反射を利用する。
「戻すのは嫌だが、仕方ない」
「まだそんなこと言ってる。早く戻しなさいよ」
「へいへい」
カルロスはだるそうに魔法モードに入る。
「ツヤナヤイ……ツヤナヤイ……ツヤナヤイ……オカイモキ……オカナイケビ……てい!」
「……」
「あれ?」
「ていぃぃ!!」
「……」
「ていぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「……」
呪文をかけても顔は戻る様子はない。
「早くしろや! おいコラァ!!」
鬱憤が溜まっていた青年は、ついにはキレる。
「なんで戻らないのかしら? それともカルロス戻したくないからわざとそうしてる?」
「違うわい! 真剣にやってるわ!」
『ピロピロリン~』
次の瞬間、異音がし、普段と少し違う閃光が走った。
「え?」
「なにが起こったのだ? まさか! おい! 鏡!」
カルロスは鏡を見る。
「うわあああああああああああ!!!! なんということだああああああああああああ!!!! 僕ちゃんの顔が、こんなに…うわあああああああああああ!!!!」
なんと、カルロスの顔がブサイクになっていた。
「その魔法の鏡、ひょっとして……」
「それ自分に向けてみて」
ニーナは青年に言う。
青年は自分に向けた。
そしてニーナは青年にオカイモキ魔法をかける。
「えっと……ツヤナヤイ……ツヤナヤイ……ツヤナヤイ……オカイモキ……オカナイケビ ……てい!」
瞬間、青年の顔が元の美形へと戻る。
「すごい! 元に戻った! キレイな顔はブサイクにブサイクな顔はキレイな顔になるのね! それも、魔法の反射で! 元の美形なお顔に戻れて良かったね!」
「やっと戻ることができました! ありがとうございます!」
「美形なお顔があああああああ!!!!」
こうして、溜まっていた仕事が終わり、青年の顔は元に戻った。
カルロスもしばらくして、ニーナにより顔を元に戻してもらった。
ニーナは少し意地悪をして、中々戻してくれなかったそうだ。
その日の夜、彼らはパーティを楽しんだ。
カルロスの機嫌もようやく直り、ニーナの滅多に見せない笑顔も見えた。
青年もこの時ばかりはカルロスへの恨みを忘れ、飲み騒いだ。
この後彼らにさらなる不幸が待ち構えていることは、この時は誰も知るはずがない。
♢♦︎♢
そして次の日、青年は帰りの支度をし、城から出ようとした時だった。
「皆さん、大変お世話になりました!」
「こちらこそ、いろいろごめんね!」
「いえいえ、その分経験できました。メンタル的にも少し強くなれた気がします。それでは、失礼します」
「あの子、だいぶポジティブになったわよね。最初はブサイクの顔の方が合っているみたいなこと言ってたしね」
「僕ちゃんに感謝してほしいくらいだ」
「感謝……はされてないと思うわよ……」
♢♦︎♢
青年はまずは息子の所に戻ろうとした。
しかし、城から少し出た時に貴重品を忘れていたことに気づく。
「そういえば、財布がない気がする……城へ戻ってみるか」
ここで戻らなければあのようなことにはなっていなかった。
今思うと財布など取りに行かなければよかった……
城へ戻った青年を待っていたのは、異様な光景だった。
ほんの数分前まで賑わっていたはずの城が静まり返っている。
「なんだ? 全員どこかへ出かけているのか? こんな短時間で? 特にすれ違うこともなかったし……一体どこへ!?」
疑問に思いながらも、青年はカルロスとニーナがいるはずの城外へ行く。
「この辺で忘れてる気がする……あ、あった!」
青年は辺りを見渡す。
「やはりカルロスさんとかいないな……」
もう少し辺りを探したが、やはりカルロスとニーナの姿はいなかった。
そして他の人たちもいなそうだった。
またそこにあった水晶が以前は青く澄んでいたそれが、今は不気味な赤に輝いていた。
「なんということだ! 水晶の色が変化している! そういえば……」
時の水晶……使い方により、自分の未来の姿を視たり、過去や未来にタイムスリップすることができる。
この水晶にはいくつか色があり、タイムスリップの際は、色によって過去に行くか、未来に行くかが決まるが、あまり解明されていない。
以前読んだ本の内容を思い出す。
「ここにずっと立てかけられていた水晶って、まさか以前本で読んだ、時の水晶だったのか? そうとなると、これはただの水晶ではない。だとすれば、カルロスさんとニーナさんは、この水晶に吸い込まれ、過去か未来へ飛ばされたというのだろうか? このままカルロスさんとニーナさんを放っておくわけにはいかない。あの人たち、特にカルロスさんはあんな性格でもこの城には欠かせない人たちだ! どうにかしてカルロスさんとニーナさんを助けてみせる!」
こうして、青年は自ら時の水晶に触れ、吸い込まれていった。
♢♦︎♢
数分前の出来事だ。
メグは青年同様城外に人がいないことに気づいた。
その後に変化した水晶に吸い込まれていた。
「ったく、カルロスったらどこへ行ったのかしら! またどっかフラフラと! ん? なにこれ?」
メグは水晶の変化に気づき、水晶に触れると、城外から忽然と姿を消す。
戻ってこないメグを疑問に思い、リリアとマヤ、そしてメルとシーサーは城外へと足を運んだ。
「それにしても遅い……っていない!!」
「どうかしたの?」
「メグが城外にいないの! カルロスがサボってないか確認してくるってこっちに行ったんだけど」
「ええ! ところであのクリスタルみたいなの、あれ青かったっけ?」
「さぁ? ちょっと触れてみるわ」
こうして、城の面々もまた水晶に吸い込まれていった。
彼らが到着したのは、数年後のギブタウン周辺だった。
そこでは仲間たちの死や葛藤、そしてさらなる波乱に満ちた日々が待ち受けていた。




