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第15話「カルロスの事件簿4」

カルロスはオナラをする。

そしてもう一発。


『ブッー』


「誰だ!」


「(やべ……昨日イモばっか食ったせいだ……)」


カルロスは背を向け、体を硬直させた。

砂漠の熱気すら凍りつくような緊張感。

すかさずキャロルがカルロスに近寄り、顔を覗き込む。


「(ま、まずい…)」


「ん? なんだこのおっさん? 待てよ、金髪? なにか思い出しそう」


「なにを睨みつけているのだ。僕ちゃんはスーパーエリートのカルロスだ。なんか文句あるか?」


キャロルは金髪の男に目をつけていたことを思い出した。


「フッ……今ので確信した。アホな奴だな」


「初対面でアホとはいくらなんでも失礼じゃないか?」


「貴様は知らんと思うが、てめぇは俺らの計画を実行するにあたり、数々の邪魔をしてきた。今からてめぇはその報復を受けるというのに自分から名乗り出たからアホだと言っている」


「邪魔をした覚えはないが……それにちょっとなに言ってるか分からないんだけど」


「だから知らんと思うと言ってるだろう。いいだろう、順を追って説明しようではないか」


「あいにくだが、僕ちゃん急に用事を思い出した。わりぃが構ってられんわ(盗み聞きしてたことがバレたらやべぇ……)」


「てめぇ……」


「ま、配達業務はどうせアイツがやってくれてるだろうし、特別に僕ちゃんの貴重な時間を削って、アンタの無駄話を聞いてやんよ。だけどよ、さっき盗み聞きしてたからアンタらのことはだいたい知っているぞ」


「盗み聞き?」


「あっ、しまった!」


「まさかてめぇ、尾行かなんかして俺らが会話をするところを聞き耳を立てていたのか? それにアンタらってことはまさかクルーと話してるところからか! まぁどちらにせよ、獲物から出向いてくれるのだから、手間が省けた」


「クッ……」


「ま、一応てめぇがなにをやらかしてくれたかっーのを話すぞ。齟齬がないか確認するんだな。サラリーマンと宝石強盗のジーズって奴は我々の組織が捕らえた。そいつらは俺らの計画に役立てる人材であったが、てめぇが余計なことをしてくれたおかげでこちとら支障が出ていて、今、目上の者に見せる顔がないんだ。だから挽回を図るはめになった。こんなクソ暑い中、地道な作業をしなければならなくなった。逮捕に導いた奴の目撃証言では金髪で憎々しいおっさんだということは分かっていたが、割り出す手がかりが見つからなかったから探すのは後回しにしていたのだが……で、目撃証言と酷似したてめぇがいた。話を聞くうちに確信に至ったって訳だ」


「ようは逆恨みだな。計画だかなんだか知らんが、僕ちゃんにアンタらの陰謀を阻止されちゃったってことか。ただ僕ちゃんは優雅に犯罪者を逮捕に導いていただけなのに勘弁してくれよ」


「俺は俺にとって邪魔だと思った奴は殺るという主義だ。俺らの計画を知った上に、てめぇは今後も害を及ぼす可能性が大いにある。生かしてはおけん」


「な、なんだか理不尽だな勝手にしゃべりだしといて。なんなら僕ちゃんが知らなかったことも勝手に喋りだしたぞ」


そしてキャロルは襲いかかってきた。

カルロスは砂を蹴り上げ、目くらましを作ると、その隙に側面から攻撃を仕掛ける。

キャロルはバランスを崩した。

キャロルは必死に体勢を立て直すが、砂漠での長時間行動で疲労が蓄積しており、思うように足が動かない。


「フフフ……最後の一手……いや、いっペだ」


カルロスは容赦なくキャロルの顔の前に尻を乗せ、思い切りオナラをこいた。


『ブッブブッーー!』


砂埃と共に響く下品な破裂音に、キャロルの体は硬直する。

戦いの末、実力差があったわけではないが、カルロスが勝利を収めた。


「フン、雑魚が」


「口は達者だったが実力はそうでもねーな。我ながらあっぱれ!」


「ラヴォス様にはもう合わせる顔がねぇよ……」


こうしてキャロルはカルロスに敗れ、ラヴォス軍から退くこととなった。

だがキャロルはラヴォスの直属の部下のため、ラヴォスは情報漏洩を恐れ、クルーを締め上げてキャロルの居場所を吐かせた末に無惨にも彼を暗殺した。


 ♢♦︎♢


ようやくニーナとメグ、そしてアーサーにより長い長い配達業務が終わった直後、奴が現れた。


「「終わったー!!」」


「終わっぱい」


「「あの男はなにやってるのかしら。ほんっとムカつく」 」


ニーナとメグは異口同音に言った。


「同じこと思ってたみたいですね」


「あはは。だけどたいしたもんだよニーナちゃん。普通の人なら投げ出すよ」


「メグさんやアーサーさんが手伝ってくれたおかげです」


「ニーナちゃんの頑張りに私たちが協力しただけ。そうよね、アーサー」


「おっぱい」


「自分に厳しいこともいいけれど、時には自分を褒めることも大事よ。自分自身の成長にも繋がるんだから」


「はい、ここにきて成長したと実感しています


「それでよろしい。にしても、カルロスったらずっと戻ってこない……」


そんな中、奴は現れた。


「おう、戻ったぞ」


「「遅い!!!!」」


「遅っぱい」


「ニーナちゃんは痺れを切らしてアンタのやり残した配達業務を終わらせちゃったわよ!」


「配達業務? なんじゃそりゃ?」


「しかも忘れてるってどういうこと!? ニーナちゃんも言ってやりなさいよ!」


「いやいや、安心したまえ。冗談だ。さっき思い出したから、ここに戻ってきたんだ」


「思い出すのが遅すぎる! ってかまず忘れないでしょ!」


「安心できるわけないでしょ! そうよね、アーサー!」


「おっぱい」


「カルロスがサボりまくったせいで、荷物がいっぱい溜まってたでしょ!」


「ん? あぁ。で、その荷物はどうしたんだ?」


「私たちで片付けたのよ!!!!」


再び口をそろえて言う。


「ん? そうだったのか? あんがとな?」


「この前とんでもない荷物の量をニーナちゃんと確認してたでしょ! アンタ経営するつもりあんの?」


「ったりめぇだろ。この城の経営者なんだからよ」


「仕事に対するやる気や意欲や責任感がないなら経営者はおろか、普通に勤めることもできないわよ! できないならできないなりの理由があるならともかく、忘れてるなんて論外よ! ニーナちゃん、分かった? この男はいつもこうなのよ」


「知ってます…入社日にカルロスの正体に気づきました…私もムカついて怒鳴り散らしましたから」


「本人のいる前で言わないでくれよ!」


「カルロスがサボったり忘れていたりで終わってなかった仕事を代わりに受け持ったんだから私たちに言う資格はあるわよ!」


「クッ……言い返せない……」


珍しく言葉に詰まるカルロスだが、反省の色はゼロである。


「だいたいアンタ今までなにしてたの?」


「僕ちゃんは決して遊び呆けていたわけではないぞ?」


「じゃあなにしてたの?」


「聞いて驚け! 犯罪者を逮捕に導いていたのだ!」


「ふーん……」


「本当だ! ほら、表彰状だ!」


胸を張ってポケットから紙切れを出すが、折り目がグチャグチャで信憑性はゼロである。


「ま、本当だとしてもなぜ本業を優先しないのかしらね」


「ごもっともですメグさん」


「ぼ、僕ちゃんの仕事を終わらせてくれるとは……さすがは僕ちゃんの見込んだ部下たちだ」


「急にどうしたのよ」


「おえっ……カルロスに見込まれたくないんだけど……キモ……」


感謝を告げたはずが、ここまで拒絶されるとはカルロスも想定外だった。


「せっかく褒めてやったのに、素直に受け入れろよ! とにかくありがとな。マジで感謝してるぞ〜」


「だったらその感謝を無駄にしないようにこれからは荷物を溜めないこと! もう私たちは手伝わないわよ」


「えー、やだやだぁ~、手伝ってくれよ」


「キモ!」


「きもっぱい」


「上司なのにとんだお荷物ね……」


「アンタら毒舌だな……」


「アンタがしっかりしないからでしょ!」


「グッ……」


「前々から言ってるけど発送の仕事、外注化しないの?」


「高いじゃん。よく分からないし。それだったら自社でやった方がいいだろ。無駄なコストもかからんし」


「自社でやってなかったでしょ!」


「わぁったよ。僕ちゃんカルロスは以後荷物を溜めないよう誓います。これでいいだろ?」


「言ったね? これでサボってることが発覚したら給料なしね」


「え~そんな~勘弁してくれよ~」


「サボらなければいい話でしょ。毎日コツコツやっていたらそこまで大変なことにならないわよ」


「ニーナちゃん! アンタも言ってあげてよ!」


「はい! メグ先輩! カルロス、悪いけどさっきの誓いの言葉、録音させてもらったわ」


『僕ちゃんカルロスは以後荷物を溜めないよう誓います』


録音機から無慈悲に再生されるカルロスの声。


「おっ、ナイス! ニーナちゃん」


「おい! ふざけるな!」


「ふざけてるのはカルロスの方でしょ! 誓ったんだったら二度と荷物を溜めないことね」


「クッ……」


「男に二言はない!」


「ここまでくるとニーナちゃんが社長になったら?」


「お前ら……本人がいる前で好き勝手に……」


「しょうがないでしょ。役立たずなんだから! 荷物は溜まりっぱなしだし管理職も務まらないなんてよくトップになれたことね」


「ニーナちゃん、それは金が持ってるとかの理由で、実力でトップに登り詰めたわけではないの」


「そんな言うなよ! 傷つくだろ! まぁ僕ちゃんはイケメンでエリートだ! 業務はあまりできないんだとしても、それでバランスは取れてるんじゃないか?」


「言ってることがよく分からないわよ!」


「すまんな、本当にありがとな」


「感謝の言葉はいいから、善処しなさいね」


「はいはい」


いつものように茶番は繰り広げられていた。


しかし、カルロスはこれだけ言っても、これだけ他人に迷惑をかけても、善処どころか改心すらしなかったのである。

むしろ荷物が減った=問題解決と短絡的に捉え、さらに怠けていた。

それを見て部下たちは呆れ果てるのであった。


そして年月が流れ、ニーナはとうとうカルロスを見捨て、なにも言わなくなっていた。

腐臭ただよう荷受は、もはや城の恥部として放置されるばかり。

その荒れ果てた場所へ、青年が奴隷として働くことになる。

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