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第13話「カルロスの事件簿2」

ニーナがカルロスの仕事を手伝っている最中、カルロスはサボっていた。


「金稼ぎてぇ〜、どこかに犯罪者はいないかな~! あ、それっぽいのがいるぞ〜!」


そのコソコソした長身の男はある森へと入った。


「一人で人気のない薄気味悪い森へ行くとは……犯罪の匂いがプンプンするぜ。気づかれぬように尾行するか」


 ♢♦︎♢


一方、ニーナは一段落つき、一旦城へ戻った。


「またぁ?」


メグは呆れた口調で話す。


「そうなんです。カルロスが全然帰ってこないし、配達物も減ってないんです」


「どうせ遊び呆けているんでしょ。部下の前でみっともないわね」


「メグさんもカルロスに振り回されたりされていたんでしたっけ」


「えぇ、ほんとあのクソ男は懲りないんだから。はぁ……私も配達を手伝うから一緒に頑張りましょ」


「いいんですか? メグさんにも仕事があるんじゃ……」


「大丈夫よ……大丈夫じゃないけど……残業しなきゃだね」


「だったら私一人で頑張ります! 関係のないメグさんに迷惑をかけるわけにはいかないので!」


「私もあなたと同じ境遇だったことがあるから分かるけど、あの男に振り回されてストレスを抱えているでしょう?」


「ま、まぁ……」


「あなた、入ってそんなに経ってないし、少しは甘えてほしいな」


「では、お言葉に甘えて……いつも教えられてばっかりだけど私も頑張ります! よろしくお願いします! お忙しいところ、本当にありがとうございます!」


「そんなかしこまんなくても! お姉さんに任せなさい! それに、昔のよしみもあるしね」


二人のやり取りからは、過去に何か深い縁があったことが窺えた。


こうしてニーナとメグで業務をこなし、配達物はなくなっていった。

疲労とともにカルロスへの信頼は確実に失われていった。


 ♢♦︎♢


カルロスは尾行している途中になにかを思い出そうとする。


「ニーナだかに言われてたことがあった気がするが、まっ、覚えてないってことは大したことではないのだろう」


カルロスは本来の目的を完全に忘れてしまっていた。


カルロスが無我夢中で男を追いかけて入っていった場所は、入った者は戻ってくることはない、通称迷いの森。

そこは行方不明者が続出する森であると巷では噂になっていた。


森の最深部、木々の影の中に長身の男が背を向けて立っていた。

先ほど目撃した人物に間違いない。


「見つけたぞ!」


「なんだァ? おめェさんは」


「僕ちゃんはスーパーエリートのカルロスだが」


「エリートだァ? なんでそんな奴がこんな森に」


「エリートが森にいちゃいけないのか?」


「別にそうは言ってないが……」


「まぁ誰にしろ、見られちゃあまずかったろうにな。こんな人目につかない物騒な森へと一人で入っていった時点で怪しいんだよ!」


「おいおい、なに言ってんだアンタ? 怪しい? 怪しいとしても、それがなんだ? 俺は散歩してるだけだぜ?」


「ではなんでこんな危なげな場所に?」


「ああ、ちょっと森林浴をしたくてね」


「こんな物騒な森へで森林浴だと? 笑わせるな。ここは迷いの森だぞ?」


「俺はスリルを求めて生きてるんでね。普通の生活には飽き飽きしたぜ。エリートの君には分からないだろうがね」


カルロスは男の態度に腹が立ってきた。


「お前、なんかしてるだろ! よく分らんが、怪しいこと!」


「俺がなにか罪を犯したとでも言いたいのか?」


「そうだ!」


「ならなにをしたのか教えてくれねェか? 物的証拠でもあるというのかァ? もしなにもねェのに御託を並べていたのなら釈然としねェな」


カルロスが胸倉をつかむ。


「てめぇエリートの僕ちゃんにさっきから生意気なんだよ!」


「おいおい、手ェ出したら君が犯罪者になっちまうぜェ? エリートさんよォ」


次の瞬間、男のジャケットから宝石類が零れ落ちた。


「あっ……」


「ふぅん……この宝石たちはなにかな?」


「買ったんだ! わりィか!」


男は必死に否定するが、カルロスは鼻で笑った。


「ジャケットもほつれてる貧乏くせぇアンタが、こんな大量の宝石を持ってるとは思えんがな」


「人を見た目で判断するな、君、さっきから言いがかりが甚だしいぞ!」


「宝石に値札がついてるのもおかしいとは思わないか?」


「値札なんかついてるまま購入はできるはずだ!」


「だったらこの周辺の宝石店にこう聞いてもいいぞ。宝石が大量に盗まれなかったか? ってな。そして少しでも証拠が出たら言い逃れはできない。疑いが晴れたいなら今から僕ちゃんと一緒にその宝石店へ出向いてみてはどうだ?」


カルロスの挑発に、男はふっと乾いた笑みをこぼした。


「フッ……隠し通せないか……指紋やら証拠は出てしまうだろうな。なんせ突発的な犯行だったからな。俺はこの宝石を強奪した。誰も近づかないこの森に宝石を埋めて、事件のほとぼりが冷めたころに掘り出すつもりが…」


「不幸にも僕ちゃんに見られていていたというわけか。案外素直に認めたな」


「おとなしく小せェ町に住み着いていた方がよかったのかもしれねェな。今となっちまったらもう遅いけどな」


「なんの話だ?」


「いや、なんでもねェよ」


男は逮捕された。

しかしカルロスの胸中にはわずかな疑念が残る。


「でも突発的に宝石強盗なんかやるか? 普通はもっと計画的にやるもんだと思うが。ま、いっか。僕ちゃん天才! ニヒヒ」


連続して犯人逮捕に気を良くし、満面の笑みを浮かべた。

その笑顔は気色悪いという言葉でも生ぬるいほど薄気味悪いものだった。


 ♢♦︎♢


その頃城では……


「だいぶ減ってきましたね!」


ニーナが汗をぬぐいながら声を上げた。

メグの協力により、荷受にあった荷物は減っていった。


「ええ、ありがとね」


「いえ、それは私のセリフですよ」


二人は少しだけ笑みを交わすが、すぐにメグがため息をついた。


「それにしてもカルロスはどこで油を売ってるのだか」


「もうあの男は放っておいて私たちで最後まで終わらせましょ」


「そうね。ほんと心強い子が入ってきてよかったわ。ニーナちゃんが入ってこなければカルロスと私たちだけで経営できなかったわよ」


「いえ……そんなこと……」


「ニーナちゃんが決心してくれなければ荷物だって溜まりっぱなしだったわ。利用者だって減る一方……」


「感謝してるわ。そうよね、アーサー」


「おっぱい」


「お、おっぱ!? アンタなに言ってるの!?」


「アンタが女性の乳房が好きなことは一応知ってるけど堂々と言わないでよ!」


「おっぱい」


「なに?」


「あなたも配達手伝ってくれるの?」


「おっぱい」


「ありがとう! アーサー!」


「(なんで会話ができてるんだメグさん……)」


アーサーも加わり、三人がかりで配達業務を遂行した。

その分業務は捗り、終わりが見えてきた。


 ♢♦︎♢


立て続けに犯人逮捕に導いたカルロスは満面の笑みを浮かべながら歩いていた。

カルロスは森でちょっと迷ったが、なんとか帰れた。


「でもなにか忘れてる気がしてならない……ま、忘れてるってことは大したことではないのだろう……ってさっきも言ったような……」


するとどこからか声が聞こえる。

慌ててカルロスは草陰に身を潜め、耳を傾ける。


「やったでヤンス! ラヴォス様もたいそう喜ばれるでしょうぞ!」


「(ん?なんだ、あの不気味な連中は)」


二人の怪しげな人物がいた。


「見たヤンスな? 俺っちの手さばき!」


「ああ、てめぇにしちゃ上出来だな、クルーよ」


「あれは俺っちにしかできない業でヤンス!」


「ああ、てめぇは俊足だからな。だがてめぇはこれぐらいしかまともにこなせねぇがな」


「そんな言い方したら俺っちがへこむじゃあーりませんかー」


「フン」


「ではあとは頼みましたぞ、キャロルさんよぉ! 俺っちは一旦城に戻ってラヴォス様に報告してくるんで!」


「ああ任せておけ」


クルーは去っていく。


「(奴はキャロルと言うのか……どうも怪しいな)」


少しでも怪しい会話を耳にすると事件解決後の今は余計に敏感に反応してしまう。


「フン、実にくだらねぇ……俺は猟奇的な快楽を求めて殺ってる訳ではねぇ……俺のテリトリーに足を踏み入れたからだ。人の命は儚いものだな」


「(なんだこいつは。なにを言っているのだ)」


「邪魔な者は排除。それが俺のやり方だ」


すると、キャロルの電話が鳴る。


「おっと、電話だ。もしもし? おう、クルーか。どうした?」


「(クルーって、さっきのアホみたいな奴か?)」


「なに!? ジーズが捕まった!? 何者かによって阻止されただと?」


「(ジーズ?)」


「宝石を換金すれば、かなりの金儲けになったというのに、ヘマしやがったか! なんだと!? 謎のおっさんに捕まっただ? 奴は俺が侵略した町の一般住民で唯一、素質があった。我々の前で残虐的な犯罪を平気でやってみせた。何事にも屈しない精神力の持ち主で、我々の組織の適任者であったのに……残念だ」


ラヴォス軍の侵略の途上で、将来を嘱望されていたジーズは、予想外の相手に敗北してしまったのである。


「そうとなるとそのおっさんをとっちめなければな。奴はどんな容姿だったのだ? なんだと? 金髪でとにかく憎々しいおっさん? そんな奴にあいつが?」


「(金髪……それに宝石……逮捕……まさか……)」


「なんだと!? あのサラリーマンも捕まった!?」


その言葉にカルロスは確信した。

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