レイナ、鉄拳を振るう
一方、別室ではユニアスがリキヤスに事情聴取をしていたのだが……。
(真実の愛とか小説の読みすぎじゃないか?)
ユニアスは内心呆れていた。
要は男爵令嬢と恋仲になり徐々に距離が近づきフィリアの事が邪魔になり罪をでっち上げ断罪しようとした、という。
「あのな、お前や俺には影がついていて父上にも報告が上がっているんだ。 それぐらい知っているだろ?」
わかりやすく説明をしているつもりなのだがリキヤスは不貞腐れていて聞く耳を持とうとしていなかった。
「大体、男爵令嬢が王家に近づくという事はどういう事か分かっているのか?」
「……学園内だったら身分は関係無い筈では」
「最低限のラインがある、明らかに身分が違いすぎるし怪しいと思う方が当たり前だ。 それこそ危機管理がなってない、と思われても仕方が無い」
「彼女はそんな怪しい人間ではありません! 私の王家という重荷を一瞬だけでも忘れさせてくれる、そんな女神みたいな存在なんです!」
「その女神は取り調べである人物からお前を誘惑しろ、と言われて近寄ったそうだぞ」
「そんなの出鱈目だ!」
「誘惑する為に魅了する魔道具を持っていた事も確認出来た、魅了魔法にかかっていたんだよ……」
「そ、そんな話信じない……、信じないぞ……」
ブツブツと呟くリキヤスにユニアスは『重症だな』と思った。
と、ガチャリと扉が開きレイナが入って来た。
「お話は終わりましたか?」
「終わってはいないが……、前にも後にも進めない状態だ」
「そうですか」
そう言うとレイナはツカツカとリキヤスに近づき胸ぐらを掴んだ。
「ひっ!? レ、レイナ嬢……、なんでここに」
「いえね、私の友人であるフィリア様が公の場で恥をかかされた、と聞きましたねその元凶であるリキヤス様に一発食らわせたいと思いましてね」
笑みを崩さず言っているがその内容は物騒な物である。
「お、王家に暴力を振るうつもりなのかっ!? 不敬だぞっ!」
ガタガタ震えながらリキヤスは怒鳴るがレイナはどこ吹く風だ。
「私が仕えるのはあくまで国です、国を導く王家が違う道を歩もうとしているのであれば正すのが公爵家の役目だと思っております」
そう言うとレイナは拳を振りかざした。
「ちょっ、まっ……」
リキヤスの顔面に見事にレイナの拳がのめり込んだ。
そのままリキヤスは壁に吹っ飛んだ。
「……ご自身が特別な存在である事をもう一度しっかりとご自覚される事を願っております」
因みにだがユニアスは若干トラウマが蘇りガタガタと震えていた。