レイナ、国王に報告する
「国王様、こちらご依頼の品の『龍の鱗』でございます」
「おぉ、これが……、傷1つ無く綺麗な状態で持って帰って来るとは流石はSランク冒険者だな!」
「お褒めいただきありがとうございます」
「報酬の方は振り込んでおこう、これだけ良い状態持って帰ってくれたんだ、色はつけておこう」
「ありがとうございます」
オーバンス王国内にある執務室にてレイナは国王に謁見していた。
理由は国王から『王国の外れに住んでいる龍の鱗を取ってきて欲しい』という依頼を受け冒険者仲間と共に龍の巣に向かい龍との激闘の結果、鱗を持ち帰ってきたのだ。
何故、国王がそんな依頼をしたのか、と言えば一言で言えば『外交』の為である。
龍退治はその国の最高の戦力を持って行われる。
その占領品である鱗の良さは国の強さを意味する事になる。
つまり、他国に対して牽制する材料になるし有利になるのだ。
勿論、レイナはその辺の事は理解していて依頼を受けた。
ただレイナは『龍と戦える!』事が嬉しかったので他国とかは関係なかった。
「ところで今日はお城は静かですね」
「あぁ、今日は貴族学院の卒業式だからなぁ」
「そういえばそんな時期でしたね、確か第二王子のリキヤス様がご卒業されるんでしたね」
「その通りだ、第一王子であるユニアスに儂の代わりに行ってもらっている」
「よろしいんですか? 本来は国王自らがお祝いの言葉を述べる方が宜しいのに……」
「構わんよ、これも将来の良い経験になるだろう」
そう言ってカッカと笑う国王。
この人もちょっといい加減な所あるよなぁ、とレイナは思った。
ところでレイナは貴族学院に通っていない。
本来は貴族学院に通うのは貴族の義務なのだがレイナは免除されたのだ。
学園に入る前に既に貴族としてのマナーや知識、良識を習得済みとお墨付きをもらっていたからだ。
ただ、ちょっと寂しい気分もある、同年代の令嬢令息達と和気あいあいと学園生活を過ごしたかった。
その代わり冒険者ギルドで気の合う仲間達と過ごしているのだが。
「ち、父上っ! 失礼致します!」
廊下からバタバタと走る音が聞こえバンッと勢いよく扉が開かれゼェゼェと息を切らし入って来たのはユニアスだった。
「どうした? ユニアス、卒業式に出席していたんじゃなかったのか?」
「そ、それどころではありませんっ! リキヤスが勝手に婚約破棄を宣言しましたっ!」
「なんだとっ!?」
「しかも婚約者であるフィリア・トラマーズ公爵令嬢を断罪し追放まで宣言しました!」
「はぁっ!? そんな権限ある訳無いのにかっ!?」
「えぇ、私が席を外した隙にやられました……、身柄は拘束しましたがどうしたら良いのか……」
「そのお話、詳しく聞かせていただきませんか? 殿下」
「えっ!? レイナ嬢っ! 何故ここにっ!?」
「儂の依頼を受けて報告をしに来てくれたのだ」
「フィリア様は家族ぐるみの付き合いがございます、そんな彼女が断罪され追放されるなんて何かの間違いです。 私で良ければ協力させてもらいますわ」
「そ、そうか……、それはありがたい……」
後にユニアスはこう語った。
『敵にはしたくないが味方ならこんなに頼もしい人物はいない』と。