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開戦 虎織視点

 眼の前で血飛沫が飛ぶ。

 何が起きたか理解するのに数秒を要した。

 反応が遅れた私を庇って将鷹(しょうよう)が先代の攻撃を受け、将鷹の背中から先代の腕が飛び出ていた


 「珍しい。貴様の心臓は右寄りじゃったか。しかしまぁ橋の下の水に落とせばどうせ死ぬじゃろう。苦しんで死ぬがよい」


 止めないと。頭でそう考えても身体が動かない。今まで失わないようにと全力でもがいてきた。

 こんなところで1番大切な人を失ってたまるか。そんな考えとは裏腹にこの身体は恐怖し動きはしない。

 何も出来ないまま将鷹は投げ捨てられ橋の下の水面に沈んでしまう


 「今度こそ雪城(ゆきしろ)の小娘、貴様の番じゃ。さっきはアレに邪魔されたが故、殺し損ねたがもう邪魔はおらん。失意の中アレの後を追うがよい」


 先代は距離を詰めてくる。

 もう全部どうでもいい。

 大切な人を助けられなかった私に生きる価値などないし、将鷹が居ない日常なんて有り得ない。有ってはならないとまで思う。

 このまま自刃してしまおうか。そうすれば楽になれる。

 そんな事を考えていると


 「そんなことないよ。虎織には生きる価値があるし、我輩は生きていて欲しいと思ってる。だから……」


 将鷹の声が耳元で聞こえた。

 幻聴なのかもしれない。

 でも、将鷹がそういうならもう少し頑張ってみようかなと思える。

 動かなかった身体は動くようになり、後ろへと飛び退く


 「行くよ虎徹!」


 刀を握り直して、刀の名を呼び、将鷹の気合いの入れ方を真似る。

 魔術式を使っている暇などない。それなら先代より先に攻撃を叩き込めばいい。

 間合いに先代が入ると同時に斬り伏せるために構え、踏み込む

 先代もほぼ同時に将鷹を穿いた時と同じ構えで踏み込む。

 一瞬先代の動きが止まり浅くだが刃が先代へと通る


 「ちっ」


 先代は後ろに下がりながら舌打ちをする。

 将鷹ならここは構え直して相手の出方を見るだろう。

 でも、そんな事をできる相手では無い


 「やはり雪城は厄介極まりない」


 くるりと先代は回り、城の正門の方へと歩いて行く


 「待て!」


 後を追う為に走り出す。これは悪手だった。先代は勢い良く後ろへと跳び、私の真後ろにつく


 「全く……拾った命は大切にせねばなぁ?」


 振り向くがもう遅い。もう先代の手は私へと伸びていた。


 「将鷹……」


 名前を呼んでも仕方ないが呼ばずにはいられなかった。

 将鷹は私の心支えであり、どんな時も傍にいてくれて落ち込んでも励ましてくれた。

 そんな彼が私は大好きだった。

 でも、この気持ちを伝えると今までの関係で居られなくなってしまうかもしれない。そんな事を考えズルズルと今まで来てしまった。ついぞこの気持ちを伝える事は叶わない。

 好きな人を殺されて怒りが込み上げて来ないわけではない。でも今はそれ以上に喪失感や悲しさが大きい。

 そんな事を考えていると蒼い炎が私の周りを渦巻く


 「貴様!妾の腕に何をした!なんなのだこの炎は!?」


 炎が消えると先代の片腕は消えていた


 「あの蒼色って髪留めと同じ……」


 どうやら将鷹が御守りの術式をこの髪留めに仕込んでくれていたみたいだ……

 もしかして耳元で聞こえた声もこの髪留めの術式の1つなのかな……


 「答えろ!あの炎はなんじゃ!」


 先代は叫ぶ。

 その時、水面が大きな渦を作りその中心になにかがいた。

 呆気に取られ私は刀を落としてしまった。

 なぜならそれは真っ黒なフードを深く被り将鷹の片袖の羽織を着ていたのだ


 「■■」


 それは獣の咆哮に近かった。

 黒いフードの何かはいつの間にか手に刀を握っており先代の方へと斬りかかっていた。

 鍔の形や刀身からして間違いなく将鷹のもつ風切であり、動きの癖も将鷹のそれに近い。

 しかし、将鷹の服飾、刀、本人のような動きをしていてもアレはまるで別物のようだ。

 フードからちらりと見えた毛の色は灰色で目の色は薄い青と言うよりも水色に近い


 「貴様はさっき沈めてやったじゃろう。まだ遊び足りぬというのか?」

 「■■■■■」


 黒フードはさっきの蒼い炎を纏いながら蹴りを繰り出した


 「あの炎は貴様の仕業か!?それはいったいなんじゃ!?」


 先代は避けることに必死になっていた。避けられる度に炎は勢いを増しながら使用者をも焼いているように見える。

 何者か分からない……でも確かに将鷹らしさは有る。炎を撒き散らし戦う姿は似ても似つかないけど……

 私には興味がないというように橋を燃やし尽くす程の炎を扱い獣の如く吠える。だけど段々と戦い方が暴れる様な理性のない動きから理性的で人間らしい戦い方になってきている気がする。そんな時、男のフードが風でめくれる


 「っしゃあ!やっと制御が効いてきた!」


 声と共にその顔が顕になる。

 それの顔は髪と眼の色が違うが将鷹そのものだった。しかし、その声は将鷹の声ではなかった


 「やっぱり将鷹じゃない……」


 思わず呟いてしまう。

 いつの間にか眼の前にそれは居た。ずいっとそれは顔を近づける


 「死のうなんて考えるなよ。こいつはすぐ返してやる。もし、こいつが起きてお前が死んでるってなるとまた俺が出てきちまうからな」

 「お前はいったいなんじゃ!?」


 先代が叫ぶ


 「俺か?今はまだ名前が無いからなぁ。そうだなぁ。俺はこいつの影で(おぼろ)げな存在だから影朧(かげろう)とでも名乗っておくとしよう。ちなみに俺はただの魔術式だ」

 「魔術式じゃと……?有り得ん、有り得ん!魔術式が人格を持つなど!」

 「ありえないよなぁ普通。でもこいつは普通じゃない。だから普通ありえない事だって起きるのさ」


 普通じゃない。どういうことだろうか?将鷹は至って普通のどこにでもいる魔術師だ


 「あーすまん。そろそろこいつの傷も癒えたし引っ込むわ。こいつの意識は引っ張り出しとくから速攻この場から退却しろよ」


 影朧はそう言うと蒼い炎の壁を作り、目を閉じる


 「こいつを頼んだ」


 髪の色が黒くいつも通りの将鷹に戻り倒れそうになっていた


 「おかえり。生きててくれてありがと……」


 将鷹の身体をぎゅっと抱きとめ暖かさを感じる


 「んっ……あれ?我輩死んでない?風穴も空いてない。どうなってんの……?あと苦しいよ虎織」

 「あっ、ごめん。話は後でするから今は撤退しよ!」


 きょとんとした表情をした将鷹はなんとも言えない安心感があった。いつもの将鷹だ


 「おっ、おう」

 「本当に忌々しい……この炎も、貴様らも、十二本刀も!」


 先代が炎の壁を避けるように水面を走りこちらに向かってくる。消えていた腕は戻っていたが着物の袖は消えたままだった


 「これの出番はやいなぁ……鼻と目を守らなきゃなんだよな」


 将鷹はポケットから銀色の丸い物を取り出し魔術式を使い、私達の周りにだけ風の膜を作ってから銀色の丸い物を捻ってから地面におく。すると丸い物から赤い煙が辺り一帯を覆い、私達は走り出す


 「ゲホッ!ゲホッ!辛っ!眼が……!うえっ……」


 先代が今日1番苦しんでいるように見えたのは気のせいだろうか……?


 こうして私達は役所へ向かって走り出す

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