カリマンタンのえんぴつはカリギュラ効果
『なろうラジオ大賞4』用に1000文字しばりで書きました。難しかったです。
理科のテスト、私は鉛筆を走らせる。カリカリカリ…
「カリウム」
周囲が顔をあげた。私も誰かの声と思い顔をあげる。
「誰だ。声を出したの」
先生が注意するが沈黙が続き、それ以上の追求はなかった。
「声を出した者は不正と判断する。集中しなさい」
私は家に戻って鉛筆をジッと見る。何となく声はここから聞こえた気がするが、それ以降のテストでは何も起こらなかった。ふと私は問題用紙を出す。理科のこのへんだった。私は記憶をたどり近辺の答えを書きこむ。カリカリ…
「カリウム」
「えっ」
答えがカリウムのところまでくると『カリウム』と鉛筆が呟くような音を立てる。
私はこの鉛筆を大事なテスト用として時々拝んだり。神棚に祭ったりしてきた。だからといってこれは役に立たなすぎる御利益だ。カリウム以外は教えてくれないし、テスト中に声が出る。カリはカリでもガッカリだ。
…玄関先で母親が揉めているような声がする。行ってみると、久しぶりに見る叔父が契約書的なものを置いて話している。
母は私を見ると眼で『奥に行け』という合図を送る。だが私はお節介だし、母親思いなのだ。
「叔父さん、すごく久しぶりだけど何?相談なら、父さんが帰ってからにして」
「そう言うな。義姉さんにちょっとお金を借りたいだけだ。来月には必ず返す」
叔父さんは借金の申し込みに父の留守を狙ってきたのだった。
母はだんだん面倒くさくなってきたようだ。
「…ここにサインすればいいの?」
「ありがとう。義姉さん。恩に着るよ」
お人好しにも貸すことに決めたようだ。私が持っていた鉛筆を取り上げサインし始めた。
カリカリカリ…
「母さん、やめなよ」
私が言うより早く、鉛筆が音を立てる。
「カリシャクホウ」「カリパク」「カリシャクホウ」「カリパク」…
叔父が顔色を変えた。
帰ってきた父にその様子を話す。
「そうか。迷惑掛けたな。あいつは去年、詐欺で捕まったのだ。よく見破ってくれた」
私は母と顔を見合わせる。父は申し訳なさそうだ。
「俺がよく言い聞かせる。二度とここには来させない」
安心してフッと息を吐いた私に父が優しく微笑む。
「ご褒美をあげたいところだが…希望はあるか?」
私は何気なく鉛筆をノートに走らせる。カリカリカリ…
「カリフォルニアディズニーランド」
もちろん却下された。
どこかにカリマンタンとかカリフラワーとかカリオストロとか散りばめたかったのですが、無理でした。ちなみに鉛筆で契約書にサインはできないよって、妻から指摘がありました。カリ契約ということで…お後がよろしいようで。