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どうして。  作者: ぬん
1/1

凍った顔に映った真実

途中に出てくる、(ここから続きを書こう。)は無視してください。

これは作者が学校で作った作品のためです。

ご了承ください。

競技場にアナウンスが流れる。競技場の片隅で、Aは自分の頬をパチンとたたいた。ついに出番がやってきたのだ。

 隣のBを見ると、両手を強く握りしめてうつむいていた。Bは去年、一度も試合に出ていない。思えば去年、自分もこんなふうに縮こまって、初の試合に臨んだのだ。去年の自分とBの姿が重なり、Bを助けたいと思った。

 AはBの肩に手を置くと、小さくほほ笑んだ。

「いつもどおりにやれば大丈夫。安心して。」

 顔を上げたBの肩から、力が抜けたのがわかった。


(ここから続きを書こう。)

AとBは互いに大きな赤いリボンと青いリボンを結びあった。

Aはラケットを握る。この一年半、苦楽をともにしてきたラケット。試しに腕を振ってみる。

「うん、大丈夫。」

Aは自分に言い聞かせるように言ったつもりだったが、Bがありがとう、と小さく呟いたのが聞こえた。

二人はコートに入る。コートを踏みしめる感覚。改めて、深呼吸する。言葉もなく、AとBは目を合わせた。

ピー

試合開始の音。それと同時にシャトルが宙に浮く。

パンッ。

Bが打った。

向こうのチームがそれを打ち返す。Aも負けじと腕を伸ばした。ギリギリだった。こんなはじめから、振り回されている。…無理かもしれない。そんな考えがAの心のなかに芽生える。

向こうのチームは日本一の実力を持つとも言われるミナハナだ。

確かに私たちがかなうはずなど、なかったのかもしれない。なぜ一回戦で、ミナハナとあたってしまったのだろう。敗退の二文字がAの頭に浮かぶ。浮かんだら最後、それは頭の中を埋め尽くした。

荒くなる息。高鳴る鼓動。それなのにミナハナはほとんど動かず、平然と打ち返す。それにまた振り回される。

パンッ。

Bが打つ。

パンッ。

腕を伸ばした。あと五センチ。ついに届かなかった。

わああ、と歓声が上がる。

「ミナハナがとったぞ!」

「このまま!勢いに乗ってストレート勝ちよ!」

みんな、ミナハナを応援している。

ミナハナは一点、また一点と、得点を重ねていった。

Aは周りを見た。

腕をあげてミナハナを応援する人。「ミナハナがんば!」と書かれたうちわを持つ人。

敵しかいない…。Aはついそう思ってしまう。唇を噛んだ。

ふと右を見た。目に入ったのは真剣な顔のBの姿。はっとした。今は試合中。たとえ一人でも、戦い抜かなくてはいけない戦場。それに仲間はいるんだ。二人なら。

「大丈夫。」

それにBは深くうなずく。去年はシングルスだったが、今年はダブルスだ。仲間はいる。そう心の中で繰り返した。ラケットを握りなおす。

パンッ。

Bが打ち返す。

パンッ。

ミナはまた、難しいところに打ってくる。でも。

パンッ。

打ち返せた。練習してきたとおりに。

パンッ。

ラリーが続く。振り回されず、戦えている。

パンッ!

そして気持ちの良い音とともにBのスマッシュが決まった。AとBは意識する前にパンッとハイタッチした。

それからはAもBもさすがというべきか、互角に、いや少々優勢に試合を進めていった。

そして、20点、マッチポイントをとった。

ミナハナは17点。いける。Aは確信した。それはBも同じだった。

毎日練習したことを思い返す。

これで決める。

目をカッと見開き、Aはシャトルを上げた。

パンッ。

ミナが打ち返した。目には必死さが滲み出ている。

パンッ。

Bも打つ。この勢いのまま、第一ゲームをとりたい。

パンッ!

ハナのスマッシュ。Aがとった。まだ余裕が見える。

両者、一歩も譲らない。試合の邪魔になると思ったのか、試合に集中したいからなのか、わあわあといううるさい声は聞こえない。代わりに、パン、パンと乾いた音だけが、競技場にこだまする。

パンッ!

一段と大きな音が響いた。Aのスマッシュが決まった。

ゲームセット。

そのアナウンスに、Aは目を輝かせ、Bに駆け寄った。客席はわあわあとまた騒がしくなった。

Bは呆然と客席を見つめる。

「勝った!勝ったんだよ!」

ぴょんぴょん、うさぎかというくらいに飛び跳ね、Bを抱きしめるA。目の前の出来事に、驚きを隠せないB。

「…あ、あ、あ…」

抱かれたBは客席の一点を指さしていた。

彼女らを応援する者は誰一人としていなかった。ミナハナがこのゲームをとれなかったことへの驚きが客席を包んだ。

Bの震える手。それをAは握りしめ、笑う。

「このままの勢いで行こう!勝とう!」

Aはポニーテールを揺らし、振り返った。大きな赤いリボンがほどけた。

そして凍りついた。目から光が抜け、汗だくの体に、鳥肌が立つ。

二人は客席の端の一点を見つめ、微動だにしなかった。

見つめられたCはにっこり微笑んだ。赤い唇に白い肌。黒い髪がふわりと揺れた。

「なんで…?」

Aはかすれた声でつぶやいた。

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