表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
執着  作者: 流風
1/6

1.プロローグ

 

「なんだ?これ?」


 大学のボランティア活動で参加した清掃作業。

 その時、橋の下で見つけた一冊の本。背表紙にも表紙にも本のタイトルが書かれていない不思議なハードカバータイプの本だった。


 雨に濡れた様子もなく今置かれたばかりのような本。


「どうした?圭太」


 ゴミ袋片手に英治が近づいてきた。


「いや、本が落ちてると思ったが・・・日記だったみたいだ」


 英治が近づいてきている時に、なんとなく開いてみたが、本だと思っていたのは女の人の日記だった。


「え〜?なんでこんな所に日記?」


 背後から、英治が覗きこんできた。


 読んでみると、女同士の職場内での嫌がらせ。冤罪による叱責。職場内での孤立。職場の人に彼氏を奪われた事が書かれていた。


「うわ〜。なんか、悲しい内容の日記だな。書いてて辛くなって捨てたのかな?気味悪いし、それは回収せずに置いとけば?何か嫌だよ。こんなの回収するの」


「そうだな。しかし、この彼氏奪った女が俺の彼女と同じ名前ってのも嫌な感じだな」


「彼女、鈴音ちゃんだっけ?看護師してるんだっけ?」


「そう。看護師の卵。仕事忙しいらしくてさ、最近会えてないんだよな。」


 そんな俺の言葉を聞き、大げさなリアクションを取りながら英治が1トーン下げた声で、


「もしかしたら、その本は呪いの本だったりして。鈴音ちゃんと会えてないんだろ?もしかして・・・ 。活字には魂が宿ると言うし・・・ 読んだ者はこの内容の通りになるとか・・・もしかして・・・ もしかして・・・ 鈴音ちゃん・・・」


 俺は英治の腹にワンパン食らわしてやった。「ぐえっ」という変な声が聞こえてきたが、そんな事知ったこっちゃない。


「うるさい!面白がってんじゃねーよ!俺の鈴音は浮気なんかしねぇよ。ほら、もう行こうぜ」


 日記を元あった場所に戻して、清掃作業を再開した。


 そして、日記のことはすっかり忘れ去ってしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ