レイドブレイク3
「ゲーム?」
部屋で逆刃刀を振り回すお侍さんの漫画を読んで、刀欲しいなと思っていた時にネムからそんな事を言われた。
「そう。どうせ暇でしょ?」
「暇でしょってお前……。俺一応この間県外のホテルまで行って仕事してきたよ?」
「もう2,3日前の事をずるずる引っ張るなんて……礼土もおっさんになったね……」
「熟成したと言って欲しいもんだがな。それでゲームだっけ? 俺ちょっとしか触った事ないぞ」
随分昔に悪魔を狩るゲームをやったくらいだ。雰囲気で遊んでいたけど結構面白かった気がする。なんてタイトルだっただろうか。
「多分大丈夫! 体感型ゲームアトラクションなんだってさ。チーム組んででようって話になってね。どうせ礼土暇でしょ? だから一緒に出ようよ!」
「どうせって……。体感型ゲームって何すんだ? イマイチわからないんだが」
「それがルール調整してるらしいのよ。なんか運営がもっと盛り上がるように調整するって話らしいけど」
「ルール?」
「そ。一応ゲームは全部で3つあってね。1つ目が銃を使ったバトロワ、2つ目が色塗る陣地取りゲーム、3つ目がアスレチックリレーだよ」
銃を使ったバトロワってどういう事だ? 実銃なのか? そんな怖いゲームするとか正気とは思えんのだが。
「銃って危なくないか?」
「私たちは当たっても痛くないじゃん」
「そういう意味じゃねぇって……」
「嘘嘘。何かセンサー使って当たり判定を出すらしいよ? 凄い最新のVR技術が使われてるんだってさ」
へぇ。そりゃ凄い。そういえば何かの漫画で言っていたか。発達した科学技術は、魔法と見分けがつかないと。それなら案外魔法を使ってもバレなかったりするんだろうか。
「一応言っておくけど魔法禁止だよ?」
「……何も言ってないだろ」
「私はゲームはルール通り遊びたい派なの。チートとか禁止だよ、禁止!」
そういって腰に手を当てるネム。
「……俺とお前が出る時点でフィジカル的な問題で既に勝ちが見えないか?」
「そうだよ! だから本当におかしなことはやめてよね! この間のテレビ見たけど、見えなければいいと思って超スピードで後ろに回って答え見たり、空飛んだり、何メートルもジャンプしたり! 禁止だよ、禁止!!!」
「難しい事を言うな……」
「私はね――」
少し言葉を溜めてネムは俺の顔を覗き込むように顔を近づけていった。
「ただ礼土と楽しく遊びたいだけなの」
そういえば、ネムとまともに遊んだのは何時が最後だっただろうか。地球へ戻ってきてから霊関係の事に追われ続けていた。その後は玲愛が生まれ、初めての子供にてんてこ舞いになりずっとバタバタしている毎日だった。ようやく落ち着いてきたと思った頃にあの糞のような神の一件が起きたんだ。
「そうだな。玲愛も幼稚園に通うようになったし、もう少しお前といる時間を増やしてもいいな」
「そういえば玲愛ちゃんって幼稚園じゃ凄いモテモテらしいね」
「え、そうなのか?」
「うん。そりゃ礼土とアーデの子供だち可愛いのは間違いないんだけど、なんて言うのかな……。ちょっと人間離れしてる容姿してるじゃん? そのせいか園内の男のから次々告白されて全部手ひどく振ったらしいよ」
なんじゃそりゃ。そんな話聞いたことないんだが。
「俺知らんぞ」
「ほら、礼土が知ったらさ。俺の娘をよくも!って言って地球滅ぼすかもだし言ってないんじゃない?」
「誰がそんな事するか! 俺一応元勇者ぞ?」
「ははは! 魔王みたいに見られてやんの!」
元魔王が何を言ってるんだよ。
「でもそうか。そんなにモテてるのか。凄いな」
「凄いよ。しかもいきなり近づいて抱き着こうとする男の子を容赦なく泣かせてるらしいからね。鉄壁の天使とか呼ばれてるみたいだよ」
「なんじゃそりゃ……」
玲愛ってそんなに凶暴だったのか?
そう思っていると玄関が開く音がする。俺とネムがそちらに視線を向けると玲愛とアーデ、そして利奈が帰って来た。
「ただいま帰りました」
「ただいま」
「ただいまー!」
なんだろう。殆ど住み込みに近いレベルで利奈がこの家にいるせいかただいまっていう言葉に違和感を感じなくなってきたな。そう思っていると玲愛が笑顔で俺の方へ走って飛び込んできた。
「ぱぱおかえり!」
「逆だろ。お帰り玲愛」
「うん。ただいま!」
肩まで伸びた綺麗な銀髪の髪を撫でる。すると目を瞑ってとろけたような顔をする玲愛。
「聞いたぞ。幼稚園で男を泣かせてるんだって?」
「ぶーだって急に抱き着こうとしたり、ちゅーしようとしてくるんだもん。だからおじいちゃんから教わったごしんじゅつでえいって!」
「そうか、そうか」
道行。お前は何を教えているのだ。
「こら、玲愛。帰ったら手を洗いなさい。それと礼土」
アーデが長い金髪を後ろでまとめていたものを解きながら俺を見て言った。
「――お客様ですよ」
「なんだって……?」
そんな予定はない。いやよく見ろ。アーデが心なしか緊張した顔をしている。あの鉄仮面とまで言われた元聖女が緊張しているのだ。ただの客じゃない。それを瞬時に悟り俺は最大の警戒をする。
「……誰だい?」
「あちらに」
アーデが玄関に視線を向ける。そこにいるのは利奈だ。いや違う。よく見ると利奈の後ろに人影がいる。知り合いなのだろう、利奈が柔らかい表情で応対いる。そうだ、あの顔を見るにそれなりに親しい人物なのだろう。なのに俺の心臓の鼓動がより強く鼓動する。この緊張感、この間のホテルなんて比じゃない。
「まさか……」
乾いた口でそう呟くとその人物がようやく姿を現した。
「お久しぶりです、勇実さん。すぐ近くでアーデさんと山城さんに会いましてね。ああ聞きましたよ、今度"VR対戦型Eスポーツ施設クサナギで行われる大会に出場されるそうですね。実は私こう見えてゲームは結構好きでして、ぜひ当日は応援に行かせてください。特製のコーヒーを持って応援に行きます」
久しぶりじゃないか、たじまぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!




