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閲覧注意13

「ごほっごほっ。一応確認だけど、ネムさんも同じ呪いを受けているって事でいいかな?」

「うん」



 大和さんの質問にアタシは素直に答えた。



「OK。まず野上さんの脳って言えばいいかな。どうもそこに何か異物があるみたい。多分これが呪いなんだと思う。ただ本体ではないね」


 

「ん、どういう意味?」

「端末っていえばいいのかな。確か発信元はネットの動画だっけ。どういう動画だったのか簡単に教えてもらっていいかな」



 アタシは覚えている限り詳細に例の呪いを拡散していた動画の内容を伝えた。海外で旅行していた人が、誰もいない集落で人がいるかのように話し、泥のような食事を食べ、箱を受け取った。そしていくつか風景が撮影された映像も流れたことなど。



「うん。その風景っていうのは恐らく現地で禁忌とされた土地なんだろうね。そして誰か知らないけど、その禁忌自体を箱に、多分さっき視えた業の蔵ってやつかな。それにどうやったか知らないけど集めたんだと思う。それが今回の呪いの元凶って考えていいと思うよ」

「さっき言ってた他の言葉は? ほら星の神とか色々言ってたでしょ」

「なんかそういう言葉は聞こえたんだけど僕も意味が分からないんだよね。ただ変な老婆が凄い形相で睨んでいたのは見えたよ。覚えある?」



 老婆? 誰だろう。身の回りにそういった人はいない。



「知らないかな」

「そっか。ただ今回の呪いに関わる何かってことは間違いないと思うよ」

「うん、覚えておく」

「あとその呪いだけど、どうやら睡眠時に発動しているみたい。野上さんは覚えてないみたいだけど、寝ている時の夢の中で何度も殺されかけている。多分それが呪いの兆候なんだと思う」



 寝ている時。その話なら確かにアーデの話と近い。


「……でも何で寝ている時なんだろう」

「多分だけど、呪いを受けた人が睡眠状態の時に脳の中にある呪いが活発化して発動する仕掛けのようだね。ああ、今の野上さんは気絶状態で脳の血流が低下して起きる意識消失状態だから多分平気だと思う。でも一応そろそろ起こした方がいいかな」



 そういうと大和さんは気絶している野上さんを抱えて、近くの椅子に仰向けで寝かせた。そして近くにあった鞄を野上さんの足の下に置いて足を高くしている。


「これですぐ目が覚めると思うよ」

「うん、わかった。それでこの呪いの解決方法だけど、その箱を直接壊せばいいかな?」

「――そうだね。それが出来れば一番いいのかな。ただ破壊するのもかなり危険かもしれない。かなり呪いとしての力が強い呪物みたいだし」



 それなら大丈夫だろう。アタシならいくらでもやりようはある。



「大丈夫。これで何をすればいいかわかったし。……そういえば野上さんまだ呪われてたんだね。今日は怪我してないって言ってたからもしかしたらって思ったんだけど」


 アタシがそういうと大和さんは少し驚いた様子で目を見開いた。そして何か納得した様子で笑顔を作る。



「そうか。覚えてないんだったね。昨日ネムさんが夢の中でその呪いを思いっきり殴ってたんだよ。どういう方法か分からないけど、それで一時的にあの呪いは活動をやめたみたい」

「アタシが?」

「うん。僕も断片的にしか視えなかったけど、漫画のワンシーンみたいなすごいパンチだった」



 そうか。少しでも野上さんを守れていたのならよかった。でもそれならなんで昨日だけだったんだろう。少し前からアタシも呪われているはずだけど。もしかして昨日の夢の中のアタシは何か糸口を掴んでいたのかな。



「よし。もう移動するわ。例の箱を破壊しないと」

「でも場所わかるの?」

「大丈夫よ。うちのめちゃくちゃな兄のおかげでそういう強いコネがあるの」

「――そっか。気を付けてね」



 アタシは立ち上がり、部屋から出ようとした時、後ろから野上さんの声が聞こえた。




「――頭痛い。ってあれ、ネムちゃんどこかいくの?」

「うん。任せて。今日の内に全部終わらせて見せるから」



 アタシはそういって野上さんに笑顔を見せ部屋から出た。すると部屋の入口に浅海さんがジュースをもって立っている。



「あれ。もう帰る?」

「うん。大和さんのおかげで糸口がつかめたから行ってくる」

「……そっか。真鈴をよろしくお願いします」

「うん、任せて」



 浅海さんの目はどこか憂いを帯びていた。多分アタシたちの状況を知っているからなんだろう。だからアタシは力強くうなずく。この訳の分からない状況を終わらせるために。




 外へ出たアタシはスマホでアーデへ連絡を取った。




「ネムどうしました?」

「うん。朝話してた件、状況が少しだけ分かった」



 大和さんから聞いた情報をできるだけ克明に話す。大和さんの力のこと、そこから見た今回の呪いの一端の話。一通り話し終わると電話の向こうでアーデがゆっくり息を吐いている音が聞こえる。



「いいですか。まず今回の件が終わったらすぐに大和さんを連れてきてください。恐らく礼土が懸念していた状況になっていると思います。また呪いの件もおおよそ理解しました。すぐに京志郎さんへ連絡を取ります。ネムはどうしますか?」

「そうだね。出来れば今日中に終わらせたいから一旦外で待機してるよ。何かわかったら連絡して」

「わかりました」








 私はネムとの通話を切り、もう一度小さくため息をつく。あのネムにまで影響を及ぼす今回の呪い。礼土が不在という間の悪いタイミングで起きた事件であるが、思ったより厄介そうであった。

 ネムとの通話を終え、そのままリダイヤルで京志郎さんへ通話を掛ける。しばらくのコール音の後、すぐにつながった。



『アーデ殿か。先ほどの件何か進捗の確認かな』



 今日の朝、ネムから事情を聴いてすぐに京志郎さんへ連絡を取った。どうやらあちらでも今回の呪いの一件を最近になって事態を重くみた警察からも協力要請が出ているとの事。ただし被害者たち全員が「何かわからないが毎日怪我をする助けてくれ」という話になっており警察も、抱えている霊能者も手を焼いていたという事だった。



『今回の一件、神城家も手を出せないそうだ。どうやら霊視によって呪いに2次感染することを懸念しているらしい。まったくあきれた話だ』

「原因がわからない以上致し方ないでしょう。それで新しい情報ですが、どうやらやはり私たちで予想していた通り、あの箱とやらが本命のようです」

『……やはりか。となると一歩遅かったかもしれん。あの呪物。警察が手に負えず、手放すと言っておる』



 手放す? 日本の警察機構がどこに手放すというのでしょうか。




「どこへです?」

『アーデ殿も聞いたことがあるかな。株式会社アマチ。現在日本の、いや世界のトップシェアとして名高い霊能界の商品を扱う企業だ』



 確か日本の主要道路や都市などに配備されている霊除けの結界グッズなど幅広く取り扱っている会社と記憶している。




「なぜアマチへ?」

『例の箱を回収した警官、それを受け取り保管した警官、管理していた警官、分かっているだけでその箱に関与した警官が死亡したらしい。その箱の処理を依頼された霊能者も同様との事だ。神城家からも手を引かれ、手を焼いた警察は保管という名義でアマチへ押し付ける事に決めたらしい』

「なぜ京志郎さんへは頼らなかったのでしょうか」



 京志郎さんは日本でもトップクラスの霊能者だ。真っ先に依頼してもおかしくないはず。



『さてな。何か政治的な取引があったのだろう。ただ気になるのは今日儂が連絡するまで箱の存在が()()()()()()()()()()()。儂が警察から受けた説明にはそのような箱の存在はなかった。だが今日アーデ殿から連絡があり、すぐに警察に問い詰めた所白状したというわけだ。以前から警察とアマチの関係は一部で有名であったが、想像以上だな』



 どういう事でしょうか。京志郎さんには例の箱の存在が伏せられていた? 確かに警官が何人も死亡しているのであれば、警察にとっては頭痛の種でしかない。であればなおさら京志郎さんへ頼ってもおかしくないはず……いやそうですか。



「扱いきれなくなった箱を警察は誰よりも早くアマチへ相談。そしてどういう訳か秘匿扱いになった。つまり警察は京志郎さんよりアマチを頼ったという事ですか」

『……そうであろうな。元々生須家は落ちぶれておる。神城が手を引いた以上余計そちらへ頼ったのだろう。恥ずかしい話だが、今回の呪いは下手に調べると感染すると警告もあった故、儂の方でも積極的に調べていなかった。これは儂の落ち度だ。言い訳のしようもない』


 

 ネットでもあの箱の異常さに気づいた人はほとんどいない。今ではあの動画関係のデータはネット上からほとんど削除されている。それであれば調べてもすぐに原因にはたどり着けない。

 仮にたどり着けたとしても京志郎さんの体質を考えると慎重になるのは仕方ないようにも思える。



「おおよその状況はわかりました。正直アマチという会社がキナ臭いですね」

『そうであるな。とはいえあの企業の商品は世の中の助けになっているのは事実。だがかなり後ろ暗い噂もある企業だ。完全に信用はできん』

「どういう噂なのですか?」

『あくまで噂話だ。()()()というものを知っているだろうか。紛争地域によく使われている呪具の1つでな。体内に取り入れると使用者は死に強大な悪霊となって暴れるというものだ』


 呪魂玉。どこかで聞いたことがあるような気がしますね。――ああ、確か以前の免許試験の時でしたか。



「はい。名前だけは知ってます」

『その呪魂玉の製造元だがアマチではないかという噂がある』

「それは……」

『あくまで噂だ。儂も今まで戯言と思っていたが、今回の一件で少し見え方が変わった』

「確かに。それだけ強い呪いを秘めたものを回収しようとしておりますからね」

『無論、警察からの要請であって、アマチから催促したという話は聞いていない。だが実際はどうかわからん。表向きには要請があったから協力したという形のはず。であれば、警察からの中止命令が出れば問題はないはずだ。この後すぐに警察の上層部へ儂から連絡を入れる。出来れば礼土殿に頼りたい所だが……』



 確かにここで礼土がいればどれだけ安心できるか。そう考えすぐに切り替える。



「私の妹にネムという子がいます。彼女は礼土に及びませんがそれに近い力を持っています。彼女を同行させて頂けませんか?」

『妹君か。あったことはないが大丈夫かね』

「ええ。あの子が反抗期(魔王)だった時、唯一それを止められたのは礼土だけでしたから」


 

こちらの章はそろそろ終わります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 反抗期を魔王とルビ振りするのはこのラノベだけ!
[一言] Vtuber魔王ネム 反抗期の思い出を背信する
[良い点] 魔王 = 反抗期 (゜∀。)
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