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まるで漫画の世界

ご指摘頂いておりました名前ですが、レイド以外は元のカタカナ表記に戻しました。

漢字の方は設定的にそのままにしておきますが、今後は基本カタカナで書きます。

「は?」


 思わず口に言葉が零れる。いやこれは仕方ないだろう。テレビ画面内のニュースでまるで漫画みたいな話をしているのだから。



「あの礼土? 1つ質問してもいいからしら」

「なんだアーデ」



 そう質問を投げてくるアーデに意識をやりながらも俺はテレビにくぎ付けだった。



「いえ、私が与えられた知識と随分食い違っているようなのですが……その様子からみると貴方もそうなのですね?」

「あ、ああ。こんな漫画みたいな状況じゃなかったはずだ」



 手を額に当てながら目を瞑る。何が起きた? まさか俺たちが戻ってきた地球は別の世界? いやここへ送られる前に爺が妙な事を口走っていたはずだ。まさかそれが原因か?


 そうして思考の中にいると不意に服の袖を引っ張られた。


「それ以上ここで考えても仕方ないわ」

「そう、だな。だったら――予定通りだ。一度家に戻る。その方が色々わかるはずだ」



 そうして俺たちは歩き始めた。不思議なもので一度違和感を感じると先ほどまで気づかなかった事に目が行くようになる。例えば信号機や電柱だ。一見普通なのだが、至る所に梵字が刻まれている。あれの意味は分からないが、恐らく結界の役割をしているのかもしれない。街の様子も何かへんだ。大通りはそうでもないが、一本通りを変えると、どこか殺伐とした様子の人をみかける。



 まだ事務所まで距離がある。どうする? 魔法で移動するべきか。いや今の地球がどうなっているか分からない。もし漫画の世界みたいになっているなら不用意に魔法を使うべきじゃないはずだ。だったら――仕方ない、背に腹は代えられないか。




「……タクシーを使うか」

「おお。あれだろ。車って奴だろ? いいんじゃないかアタシはいいぞ!」

「私も構いませんが、よろしいので?」


 アーデが心配そうに俺を見ている。こいつには以前帝国のUFOで酷い思いをしたと愚痴った事がある。だから俺の乗り物酔いが酷いという事を知っているんだろう。



「仕方ない。まずは確認が必要。そうだろ?」

「わかりました。ではそうしましょうか」



 そうしてタクシーを捕まえ、俺たちは乗車した。背中にいたケスカは俺の膝の上に座って寝ている。運転手へ住所を伝えタクシーは走り始めた。お願いして窓を開けてもらい少しでも新鮮な空気を入れて車独特の臭いを消そうと努力する。



「ねぇ運転手さん。私たち実は最近日本に来たんです。最近の日本ってどうですか?」



 後部座席に座っているアーデが運転手へ話しかけた。

 

「おや、こっちの兄さんといい、そちらさんも日本語上手だね」

「ええ。主人と日本語を勉強しましたので」



 誰が主人だ。……落ち着いたら戸籍を確認した方がいいな。



「ははは。やっぱり家族だったか。そうさな。ちょっと他の国の事は詳しくないけど、でも他国に比べればまだ霊能事件は少ないから少しは安心していいんじゃないかな」

「ああ、そうなのですね。私たち住んでいた村では霊能者がいなかった田舎だったので色々新鮮で――」

「おやそうなの? まあ霊能力に目覚める人って元々霊感がある人らしいからね」


 

 そう言いながら運転手は軽く笑う。この手のやつは流石に俺より上手いな。鏡越しに運転手の目を見つめ、適切なタイミングで笑顔を使い、仕草を入れ、話しやすいように少しずつ誘導している。



「なんせね。僕も元々霊感なかったから、()()()()()()()()()()()()()()()()()。最初は参ったな。ほら急に道路に霊が飛び出してくるから何回か事故りそうになっちゃって。ああもう大丈夫だよ? 最近ようやく道路に霊避けの紋章が刻まれたからさ」



 霊が見えるようになっただけ。妙な言い回しだ。



「そうなんですね。私たちもちょっと前に霊が見えるようになりまして」

「え? ちょっと前なのかい、1年前じゃなくて?」

「あら失礼しました。まだ日本語が上手く話せなくて」



 そういうとアーデは口に手を当てて笑っていた。それを鏡越しで見ていた運転手もにこやかに笑っている。


「十分上手じゃないかな」

「あら、そうですか。ありがとうございます」



 この運転手は俺たちを外国人だと思っている。だというのに、1年前だと断定した言いようだった。という事は日本だけじゃなく海外でも同様な事が起きているのは確定的だ。それも1年前に。



「日本では1年前のアレをどういう風に捉えているのですか? 私たちの村では神の啓示だと言われてましたが」

「え? 何かお告げでもあったのかな。こっちだと1年前に急に霊が見えるようになっただけなんだよ。国によって違うのかな」

「そうなんですね。村の村長がこれは神の声だとか申し上げていたので、てっきりお告げがあったのかと思ってしまいました」

「ははは。まあ見えない者が見えるようになればそう考える人もいるのかな」



 という事は突如霊が見えるようになったという事か。いや考えたとしてはもっとシンプルかもしれない。恐らくだが地球に住む人類全員の霊感が強くなった。その結果、誰もが霊を見えるようになり、元々霊が見えていた人はその分霊力が強くなった、そういう事か?


 だがそうなるとあのニュースで言っていた話がわからんな。



「タクシーに乗る前テレビで見たんですが、スカイツリーの件大変そうですね」

「ああ。あれね。結構大変だったよ。当時は霊界になってもまだ電力も通ってて何故か電波とかも無事だったからそこまで大ごとじゃないと思われてたんだけど、祓いに行ったゴーストハンターの人たちが何人も憑り殺されちゃってね。ほら霊を祓えば霊力が強くなるって噂あるでしょ? それにつられて結構色んな人が中に入っちゃったから逆に向こうが強くなったって言われてたんだよね」

「そうなんですね。あの1つ質問してもいいですか?」

「うん、なんだい」

「霊能者とゴーストハンターってどう違うのですか?」

「ああ。そういえば海外だと霊能者って超能力者と同一なんだよね。日本だと意味は殆ど一緒かな。霊能力を扱う人の事をそのまま霊能者っていうし、その霊能力を使って霊を退治する人をゴーストハンターって言ったりしてるんだよ」



 なるほど、そのまんまだな。



「霊能力があれば誰でも霊能者になれるのですか?」

「もちろんあればなれるけど、今は()()()を取らないと国に怒られちゃうからね。結構無免許で霊能力を行使する人達もいるんだけど、そのほとんどが犯罪に加担している人ばっかりでさ。そういう人たちのことを最近では”ウィザウト”って呼ばれてるけど、殆ど警察のお世話になってるみたい」




 聞く事に徹していた俺だったが流石に言葉を挟まずにはいられなかった。



「え? 霊能者って免許いるんですか?」

「え? うん。当たり前じゃない」




 どうやら俺は職を失っていたようだった。



 

 

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レイド 2◯歳 無職 妻子持ち
まさかの無職ww
[一言] 異世界から地球に戻ったら無職になっていた件
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