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狂乱水城のルクテュレア7

仕事がバタバタしてきたため、明日の更新が少し怪しいかもしれません。

申し訳ないです。

「あーどうしたもんかな」


 俺はそう言葉を零しながら人気のない道を歩いていた。ネムとはぐれたが合流するべきか判断に迷う。探そうと思えば探せるがそのために大規模な魔力探知が必要になる。そうなると必然的に俺の魔力も筒抜けになるため、あまりこういった場所でやりたくないのが本音だ。


「まあそのうち会えるか」


 もうそう割り切ろう。ただそうなると今後の行動をどうするか考える必要が出てくる。あの泉の水に何か入っている。水源がどこだか分からないが何か仕込まれていると見て間違いないだろう。ならこの街に魔人がいる可能性が高い。

 フルニクで動いていた魔人なら即殺すのだが、そうでない場合はどうしたもんか。正直魔人と人間の争いに積極的に首を突っ込むつもりもあまりない。俺の中でやらなければならないのは魔王を倒す事、フルニクの人々を殺した魔人を始末する事。この2点だ。

 本来であれば、人間の味方となって魔人を積極的に倒した方がいいんだろうがそこまでこの世界の人間に愛着がある訳でもない。せいぜい生活の基盤だったフルニクくらいのもんだがそこも全滅しているからな。とりあえずあの鉄仮面聖女を助ければいいだろ。



 そんな事を考えながら歩いていると随分見晴らしの良い場所に出た。そこには数件程度の建物しかなく、代わりに畑が一面を占めている。


「驚いた。都市の中で農業もやってるのか」


 作っているのは麦だろうか。以前はまったく興味がなかったが地球で色々知識を手に入れてた今なら何となく分かる。よく見ると数人の人々が畑の中で何か作業をしているようだ。恐らく収穫しているのだろう。手押し車のようなものに麦を乗せて小屋の方へ移動している。


 風情があるな。そう思っていると視線を感じた。麦畑の向こう側。こちらを見ている人影がある。



「あん。誰だ……女?」



 体型から判断するに女のようだ。こちらを見ながら口が動いている。くそ、こんなことなら読唇術を習得するべきだったか。何を言っているかさっぱりわからん。地球に戻ったらアマズンで本を注文しよう。探せばあるやろ。なければ動画を探すだけさ。


 そんな事を思いながら畑の道を歩いて進むと、1つ畑を挟んで向こう側にいる例の女も並行で歩いている。明らかにこちらに視線を向けており、よく見れば口がだらしなく笑っているようだ。何が楽しいのかね、と思う一方であの女が俺に用があるのは確実のようだ。


 遥か向こうまで続く黄金の海のような畑を見ながら、少し考え俺から向かう事にした。あそこまであからさまにこっちを意識しているんだ。多分この街の奴だろう。とはいえ見た所人間っぽいんだよな。

 立ち止まり女の方を見る。すると歩いていた女もさらに笑みを浮かべ畑を突っ切るようにこちらに向かって歩いてきた。あんまり畑で荒事をしたくないんだがさっさと片付けるとしよう。そう考え俺も畑の中に足を踏み入れる。腰の高さまで伸びた麦を視界に収めながら向こうからやってくる赤髪の女を見る。段々と向こうの歩く速度が上がっていく。そして麦よりもさらに低い姿勢で一気に加速した。まるで波のように風でなびく麦を見ながらこちらに迫ってくる。


「おや?」



 動いていた麦が途中で二手に分かれた。そしてそれが俺を挟み撃ちするように左右から迫ってきている。どちらかは魔法で作ったダミーだろう。なるほど、この畑を利用したかく乱か。


「獲ったぁっ!」


 左から声が聞こえる。奇襲なのに声を出すとはこれいかに。そう思いそちらに視線を向けるが何もいない。そして空気の塊が俺目掛け襲ってきた。俺の視界に飛び散る麦が襲うがそれだけだ。後ろから感じる強い殺気。ああなるほど。どういう方法を使ったか知らないが声を移動させ、俺の意識を逸らしたって訳か。このギリギリまで殺気を我慢したのは中々だが、やはりお粗末としかいいようもない。


「死にやが――ッ!?」


 一瞬の光が走ったと同時に赤い血が飛び散る。だが舞っているのは血液だけではない。血と肉。そして切断された四肢から流れる血液が黄金を赤く染めていく。ダルマになった女の首を掴み持ち上げた。



「痛てぇ! て、てめぇ何しやがった! ゆるさねぇ!!! 絶対殺す、殺してやる!」

「下品だな。ただ()()()()()()()()()()()()()()()()()。いつもなら女相手は加減するんだが、最近は男女平等パンチなる神上さんの本を読んだんでな。折角だしそれに習おうと思ったんだ」

「殺す、絶対殺してやる、同じ目に遭わせてやるからな」

「おお怖いな。なら質問は一度だけにするか。お前の上司だれ?」

「痛いよティル! 痛いよ! 助けてティル!! こいつ殺して!」

「うんうん。なるほどね。”痛いよティル”っていうのか。変わった名前だな。そんなに痛い子なのか?」


 一応こいつの体内を覗いてみたが特に魔物が入っている様子はない。ただ明らかにこいつとは違う別の魔力が入っている様子だ。俺が切り裂いた四肢の傷の血も止まりつつあるし、これ放っておいたらトカゲみたいに生えたりするんじゃないだろうか。


「さて、君の上司の名前も分かったし、仕方ないけど殺すとしよう。いや本当はそういうのやるつもりなかったんだけど、ここまでわかりやすく命を狙われるとね……」

 

 

 それにまだ十分回復魔法で治癒出来る可能性もある。殺すなら早い方がいいだろう。一応俺の敵みたいだし。そう考え首を握り潰そうとした時別の魔力を複数感知した。何か飛来してくるそちらに首を向けると回転しながら飛んでくるのは岩だろうか。人の頭程度の大きさの岩の弾丸が俺の頭に命中した。


「ごほごほッ!」


 俺の頭に当たり、砕けた岩の細かな破片が俺の鼻に入りそうになり思わず咳き込んでしまう。流石に空気に紛れる細かい破片までは魔法で防げないな。

 


「そ、そんな! 確かに命中したはずなのに!」

「……馬鹿な、直撃のはずだ。魔法で防御したのか……?」



 2人組だ。青い髪の男と、茶髪の女の2人組。どちらも随分若い。思ったより早く来たところを見るとあの時話していたのは応援を読んでいたって所かね。


「貴様ッ! 何者だ! ペトラから手を離せ!」


 青い髪の青年が叫んだ。

 

「おっと。助けにきたんじゃないか。痛い子ティルが……」



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