夫に抱かれなかった皇女様の翌朝
朝。
目が覚めて。
隣を見て。
裸の夫と目が合って。
昨夜のことを思い出しました。
「もうやだ。お嫁に行けない…うう…」
夫からシーツを剥ぎ取って、頭からすっぽり包まります。
私…なん…なんてことを…初めてであれとか、もはや痴女ですわっ……
「君はとっくに僕の嫁だろう…」
「うう…」
「顔を見せてくれ。僕の可愛い奥さん」
対して夫は、余裕綽々でシーツの上から私の頭を撫でています。でも
可愛くなかった!昨日の私は絶対可愛くなかったですわ!!!
「もう…恥ずかしすぎて死んでしまいたいです…」
あんなふうにするつもりじゃなかったのにっ…初めてはもっとロマンチックに……
意外と乙女だった自分の願望に、今さら気づいてももう遅い。
「………じゃあ、こうしようか」
「…何ですの?」
夫の口調に興味が湧いて、シーツから顔だけ出しました。
「今度は僕がしよう」
「………え?」
真面目な顔の夫に、目を瞬きます。
「君も次期皇妃教育で色々教わっただろうが、僕だって次期皇帝に決まってから、教育は閨も含めてみっちり受けている。安心して欲しい」
「………え゛?」
嫌な、予感が…。
皇族を指導する教育陣に、「ほどほど」という言葉はありません。
できるかできないか。
できないなら、できるまでやらせる。
それだけです。
…それだけです。
「要するに、昨夜の記憶を塗りつぶせばいいんだろう?」
「あ…あの…」
「任せてくれ。もう自分を抑えたりしないから」
笑顔の圧が凄いですわー!
「いえ…ですから…」
「君が昨夜僕にしたことなど、児戯に思えるくらいのことをしてやろう」
夫は本気にしか見えません。
すうっと身体から血の気が引きます。皇帝教育の内容なんて知らないですけど、絶対ヤバいという確信だけはありますわ!
「い…いえ…そこまでしていただかなくても…」
「遠慮するな。僕らは夫婦だ」
「いえ、夫婦の間にも節度というかなんというか…」
「大丈夫だ。僕はそんなものが必要だとは思わない」
「で、ですが…」
夫は目を細めて、後退る私の顎をつかまえました。
「それに、これは僕らの義務だろう?」
「う…」
…昨夜、夫に言い放った言葉が私を追いつめます。
「お返しだ。今度は僕に、君を可愛がらせてくれ」
少し意地悪そうな笑みを浮かべた夫の顔が近づいてきます。
どうやら逃げ場はないようですわー…。
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半年間持ち腐れていた知識が、ついに日の目を見ました!