シューティングスター 最速のウンコぶっしゃー
日比野健司は毎日ジョギングをすることを日課としていた。
その日も、途中で急激な便意に襲われたが、まったく動じない。とても暑い日だった。額からは汗がボタボタと零れ落ちる。グゥ。お腹が鳴る。空腹からではない。体の中で巨大なモンスターが暴れ始めているのだ。
健司はモンスターを飼いならす方法を知っている。ジョギングのスピードを少し落とす。体の力を抜いて、怪物のなすがままにされる。我慢してはいけない。むしろ怪物を大きく、巨大にするよう、下腹部に神経を集中させる。脱糞ポイントはもう近くだ。
健司はジョギングコースの各所に脱糞ポイントをあらかじめ見定めている。いずれも、外部からは見えにくいが、すぐに入れる物陰になった場所。その日の最短脱糞ポイントはサンゴジュの生垣の影だ。怪物は下腹部でかなり大きく成長している。ふ化は近い。大いなる台地との対話である野グソ。自然と人間との循環、連続性を実感できるその瞬間はまもなくだ。
健司は生垣の裏側へと滑り込む。あたりを一瞬確認する。大丈夫だ。誰にも見られていない。ジャージとパンツを一緒に下すのとほぼ同時に下腹部に思い切り力を込める。
ブリュブッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ。巨大なウンコがとぐろを巻きながら一気に出てくる。油断はしない。巨大な大蛇を放った瞬間。健司はジャージとパンツをつかんで一気に腰まで上げる。と同時に、サンゴジュの生垣から飛び出す。それから、何事もなかったかのようにゆっくり走りだす。
健司はその日も勝利した。ティッシュは使わない。スピードが重要なのだ。健司は、流れ星のようだと思った。