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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
最終章

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第788話 その先へ


 属性エリアは弱点属性が強く表れる魔物が多い。

 当然のことながら、SSランク上位のエルダーダークドラゴンであっても光属性が大きな弱点となる。

 それは先ほどの〈光の玉〉を食らった時の様子でも明らかだろう。

 しかし北条は容赦なく更に圧倒的な攻撃を発動させる。


 エルダーダークドラゴンの周囲に、空中からも余さずエルダーライトドラゴンで包囲させた北条は、無慈悲な命令を発する。


「よーし、一斉に"ハイライトブレス"を吐けぇ!」


 ドラゴンはエルダードラゴンクラスにもなると、"ブレス耐性"などのスキルや種族特性によって、ブレス攻撃が効きにくい。

 しかし属性竜や属性上位竜であれば、ブレス以外の属性の部分がかみ合えば大きなダメージを与えることも可能だ。


 更にそこに北条や信也など他のメンバーからも、これで倒しきると言わんばかりの勢いで強力な遠距離攻撃が繰り出されていく。

 これにはダンジョンのボスであろうと、尻尾巻いて完全に逃げの態勢を取ろうと動き始める。

 しかし慶介の"アテンションブレイク"がそうはさせない。


「GRRRR………………」


 叫び声のような鳴き声あげながら、その場から飛び去ろうとしたエルダーダークドラゴンだったが、途中でまるで意識を失ったかのように動きを止める。

 これは特殊能力系スキル"アテンショントリック"の上位スキルである、"アテンションブレイク"による効果だ。

 このスキルは対象にほんの短い間だが、注意力やら集中力、思考力などといったものを完全に削ぐ効果がある。


 慶介とエルダーダークドラゴンとの間にはまだ大分レベル差はあったが、今の慶介は特殊能力系スキルを三十個以上取得し、『異能者たちの王』というスキル系の五段階目の称号を得ていた。

 この称号効果によって大幅に特殊能力系スキルが強化されており、慶介の"アテンションブレイク"は格上のエルダーダークドラゴンにもとおる。


 しかも"アテンションブレイク"の使い手は慶介だけではない。

 "スキル吸収"で覚えていた北条も、慶介の分の効果時間が切れた直後に再度"アテンションブレイク"を使用する。

 声を掛け合った訳ではないが、これまで一緒にやって来ただけあって息もピッタリだ。

 これによって完全に無防備な状態のまま、エルダーダークドラゴンは暴威に晒されることとなる。 


「GYOOAAAAAAAAAA!?」


 ボス部屋内にエルダーダークドラゴンの悲痛な鳴き声が響き渡る。

 "アテンションブレイク"の効果中は意識薄弱な状態だったが、意識が正常に戻るやいなやのこの大攻勢だ。

 悲鳴には単に痛みからくるものとは別に、驚きによるものも交じっていた。

 しかしすぐに状況を把握したエルダーダークドラゴンは、自由になった体を動かしてどうにか集中砲火から抜けようと動き出す。


 周囲を包囲しているエルダーライトドラゴンも、延々とブレスを吐き続けられる訳でもないので、どうしても息継ぎの時間が必要になる。

 その隙をつこうと、空中を包囲していた一角の攻撃が止んでいた箇所目掛け、飛んで逃げようとするエルダーダークドラゴン。


「逃がしはしない!」


 盾系の最終奥義スキル、"ロイヤルガード"などヘイトを集めるスキルを発動して、空を飛んで逃げようとするエルダーダークドラゴンの注意を引き付ける信也。

 忌々しいそうな鳴き声を上げながらも、魔物の持つ習性ゆえにそれに逆らえず信也に引き寄せられてしまうエルダーダークドラゴン。

 ならせめてもと、信也を食い破って包囲を抜け出そうと牙を剥く。


 体長が四十メートル近くもあるエルダーダークドラゴンは、口の部分だけでも人間何人分もの大きさがある。

 そのような巨大な口を開き、食い殺してやろうと迫るエルダーダークドラゴン。

 それに対し、信也は盾系闘技秘技スキル、"ジャストガード"で持って見事に跳ね返して除ける。


 "ジャストガード"はタイミングをぴったりと合わせて盾で弾くことにより、物理攻撃だけでなく単体の魔法攻撃すら跳ね返すことが出来る闘技秘技スキルだ。

 しかしタイミングが少しでもずれると、相手の攻撃をまともに食らってしまう扱いが難しいスキルでもある。

 それをこの土壇場でドンピシャのタイミングで決めた信也。


 勢いよく噛みつきにいったエルダーダークドラゴンは、その勢いをそのまま自分の方に返されて再び包囲の輪の中に戻されてしまう。

 そこで北条の次なる指示が飛ぶ。


「お前ら! ブレスはもういいから、とにかく肉弾戦でそいつをフルボッコにしてやれぃ!!」


 今のように急接近されて噛みつかれでもしたら、恐らく信也以外だとそのまま噛み砕かれて死んでしまうだろう。

 モーションの大きい攻撃だからそれなりに避け易いとはいえ、そういった危険をなくすためにも北条は完全なゴリ押し作戦を実行させた。


 餌に群がるアリのように、エルダーダークドラゴンへと集るエルダーライトドラゴン。

 相手はボスなので体格が一回りも二回りも大きいが、これだけの数に囲まれると成す術もないらしい。


「これは……酷いもんだな」


 攻め手側である信也が思わずそう言ってしまうほど、それは数の暴力を体現した光景だった。

 そのような状態でもかなりの時間粘り続けるエルダーダークドラゴン。

 だが時間経過と共に動きも鈍っていく。


「GRRRRR……」


 それはドラゴンが発したもので、人には理解出来ない鳴き声であったはずなのに、耳にした北条達にも伝わる悲哀が混じった鳴き声だった。

 こうして闇エリアの最後に待ち受けていたエルダーダークドラゴンは、一度だけブレスによって後衛陣をヒヤッとさせはしたものの、数の暴力に沈んだ。







▽△▽△▽



「やった……のよね」


「ちょっと最後は酷かったが、ボスを倒すことは出来た」


 そう言って信也はエルダーダークドラゴンが倒れた場所を指し示す。

 そこにはあの巨大な体が消えてなくなっており、代わりに山盛りになった素材の数々と、オレイカルコス製の宝箱がドロップされていた。


 オレイカルコスとは非常に硬く、加工すら困難な伝説の金属のことだ。

 これまでも属性エリアの深層を探っている間に、このオレイカルコス製の宝箱を二度程発見していた。

 内容物からいって、金の箱、ミスリルの箱とグレードが上がっていくダンジョンの宝箱に於いて、ミスリルの箱より更にレアなものが入っているワンランク上の宝箱であることが判明している。

 神器の〈光の玉〉も、このオレイカルコスの宝箱から入手したものだ。


「この先に最後の神器が……」


「まあ、そう焦りなさんな。まずはドロップの回収からだぁ」


 メアリーなどは、極レアなオレイカルコスの宝箱よりこの先のことが気になって仕方ないようだ。

 そんなメアリーを北条がやんわりと押し留める。

 回収自体はドロップした量が多かったものの、それほど時間を必要としない。

 北条が一通りドロップを回収し終えると、一同の視線は部屋の奥にある扉へと向けられる。


「では行こうかぁ」


 奥の扉は入口の扉同様にかなり大きい。

 その大きな扉を開け、北条達は先へと進む。

 妙に長い通路部分。

 足元が石床で出来ているせいで、カツンカツンという小気味いい音が人数分響き渡る。


「……妙に長い通路だな」


「そうですね。やはりここが最奥なんでしょうか?」


 すでに歩き始めてから十分ほどは経過している。

 今までのダンジョンでは、守護者(ガーディアン)を倒した先にこのような長い通路が存在したことはなかった。

 どこまでも続くまっすぐな通路は、まるで同じ場所を延々ループしてるかのような錯覚を与える。


「あ、曲がり角っす」


「なんだか妙に焦らす作りだな」


 しかし更に少し先へ進んでいくと、ようやくまっすぐな通路に変化が訪れた。

 奥の部分で右へと通路が折れ曲がっている。

 それを見て何だかなあといった様子で信也が感想を漏らす。

 そしてその表情は、実際に角を曲がった先の光景を見たことで渋いものへと変わっていく。


「階段……ですね」


「そんなまさか……」


 そこには更に下へと通じる階段があった。

 まだ闇エリアは続くのだろうか。或いは新しいエリアが続いているのか。

 どちらにせよダンジョンコアがある部屋に通じているなら、普通は階段など挟む必要はない。

 しかしただ下の階層へ移動するにしては、この長い直線通路は意味深すぎる。


「…………」


「どうするの?」


「どうするったって……進むしかないだろぉ?」


 そう言うと北条は再び先頭を歩き始める。

 信也も大分盗賊系のスキルを覚えてはきていたが、このような深層を移動するにはまだ頼りない。

 北条の持つ盗賊系スキルによって罠に注意を払いながら、一行は階段を下りていく。


 直線の通路に比べたら、その螺旋状の階段を下りきるのに長い時間を必要としなかった。

 数分程下へと下り続けると、やがて下の階層へと到達する。

 もし新しいエリアが続くとするなら、降りてすぐの所に迷宮碑(ガルストーン)が設置されているはずだが、降りた先にはそのようなものは見当たらない。

 ちょっとした小部屋になってるこの部屋の先には、更に通路が続いており侵入者を手招いているかのようだ。


 黙りこくったまま招かれるように、北条達はその通路の先へと進む。

 すると程なくして、ちょっとした広さのある部屋へと辿り着いた。


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