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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第二十六章

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第775話 炎の鍵


「む、こいつは……」


 危なげなくヴァルタゴスサラマンダーを倒した北条達。

 するとそこにはヴァルタゴスサラマンダーのドロップと共に、宝箱が出現していた。

 それを見て思わず声を上げたガルドだったが、当然これまで何度も宝箱発見の瞬間に居合わせたことはある。


 出れば嬉しいが、だがよほど高ランクの箱でもない限り、大きな喜びを見せることもなくなってきた。

 だが先ほどの反応は宝箱が出た嬉しさよりも、困惑の色の方が強かった。

 それはガルド以外の面子も同様だ。

 何故彼らがそのような反応を示しているかというと、デデン! と出現した宝箱の見た目が見たこともない種類だったからだ。


 ダンジョンで見かける宝箱は、冒険者の遺品や置いて行った品が納められた骨の箱。

 そして低レベルなものから順に、木の箱、銅の箱、青銅の箱、鉄の箱、銀の箱……と続いていく。

 Aランクの守護者(ガーディアン)であれば、銀の箱よりワンランク上の金の箱が妥当な所なのだが、目の前にある箱はそれとも違っている。


 この上となると、Sランク級の守護者(ガーディアン)などを倒した際に出るミスリルの箱が存在するが、無論そちらでもない。

 見た目的には、全体的に銅に更に赤みを足したような色合いの金属の箱だ。


「ふむ、どおれ……」


 分からないものにはまず"解析"……ということで、北条が箱を開ける前に"解析"スキルを使用する。

 だがいまいち北条の表情は優れない。


「どうじゃった?」


「いや……。それがぁ『炎の宝箱』と出るだけで、詳しい情報は何も出てこない」


「炎の宝箱か。確かにこのエリアのボスには相応しい名称の箱じゃが……」


「もうさっさと開けちゃえばぁ?」


「ま、そうだな。そうしちまおう」


 どうせダンジョンで手に入れた宝箱は、外部に持ち出しても時間と共に消えてしまう。

 この宝箱が未知の金属で出来ていたとしても、持ち出せなければ意味はない。

 ボスドロップの宝箱には罠も仕掛けられていないことから、北条は軽い気持ちで箱に手をかけて開ける。


「……なるほど。そうきたかぁ」


 見慣れぬ宝箱の中にはたった一つのアイテムしか入っていなかった。

 しかし北条は一目見ただけで、"解析"スキルを使わずともそれが何なのか理解する。


「鍵……じゃな」


「それも赤い燃えるような装飾の鍵だねぇ。これってやっぱりもしかするぅ?」


「ああ、まず間違いない。属性エリア九十層の扉を開ける鍵だろう」


 これまで《サルカディア》では、このようにとあるエリアで入手したアイテムを他のエリアで使用しないと先に進めないという構造はほとんどなかった。

 例外として、フロンティアへ向かう為の〈金の鍵〉があった位だろう。


「確かに、このエリアをクリア出来るようなパーティーなら、中間エリアまで辿り着き属性エリアに進むこともできよう。順番としては変に狂っていない辺りは良心的じゃな」


 基本的に他エリアと絡ませるような作りのダンジョン自体が少ないのだが、中には難度の低いエリアの先に進む為に、難度の高いエリアを先に進まないといけないようなあべこべな造りのダンジョンもあるという。

 だが《サルカディア》に関しては、今のところそういった構造の場所はないようだ。


「ねえねえ、これってさぁ。もしかして雪山エリアのボスも鍵を落としたりしないかなぁ?」


「確かにその可能性はありえるなぁ……」


 火山エリアと雪山エリアは、共に大草原エリアの三十七層から分岐している。

 対となるような環境に、更にどちらも階層が四十五層までと同じ階層構造をしていた。


「とりあえず、まさかの一発で〈炎の鍵〉はゲット出来たぁ。本来はこの後キカンスらと合流してから、再度隠し通路を意識して捜索予定だったがぁ、一旦拠点に戻ってもいいな」


 なんやかんやで、大草原エリアも抜けてきているのでここまで来るのにそれなりに日にちが経過している。

 結局北条達は、この後キカンスらと合流した後に前言通り拠点へと変えることにした。


 今の『ジャガーノート』の探索スタイルは、七つのパーティーに別れて《サルカディア》の各エリアを探索。

 そして二か月に一度を目途に、拠点に集まって会議を行うという流れになっている。

 なのでパーティーによって、どの程度ダンジョンに潜るかのタイミングなども違う。

 だが北条達が拠点へ帰還すると丁度都合よく、雪山エリアへと向かっていた陽子パーティーが拠点へと帰還しているところだった。




「いよう、早いなぁ。もうクリアしてきたのかぁ?」


 拠点へと戻り、いつものようにジャガーキャッスルのリビングルームに北条達が向かうと、そこでは陽子とマデリーネが駄弁っていた。


「私達は先に火山エリアを攻略してるからね。火山エリアの三十八層の迷宮碑(ガルストーン)に飛べば、大草原エリアを大幅スキップ出来るのよ」


「ああ、それもそうかぁ。って事は、もう既に何日か休んだ後だったりするのか?」


「そうよ。ディズィーとシクルムは町の方に行ってるみたいね。明日には探索再開しようと思ってたところよ」


「そいつぁたいみんぐばっちぐぅだ!」


「ちょっとなあにその言い方。少し……いえ、かなりオジサンっぽいわよ? 死語なの?」


「ぐぬぬぬっ……。別にそんなんじゃあないがぁ……」


 特に何も意識せずに言った言葉だった為に、北条はぐうの音も出ない様子だ。


「まあ、そんなのぁどうでもいいんだ。俺達も火山エリアを攻略してきた所でなぁ。そこでこんなもんをゲットした訳だぁ」


「それって……もしかして探していた鍵って奴かしら?」


「おうよ。まさかの一発ゲットだったぞぉ」


「ええぇ? どうやって見つけたのよ? 私地図作りは大分しっかりやったつもりなんだけどなあ……」


 陽子はダンジョン探索を始めた頃から、マッパーとして地図を作り続けてきた。

 外部のダンジョンを潜った時は予め地図を仕入れたりはしていたものの、マッピング系のスキルは大分磨かれている。

 それだけに、自分が何か見逃したのではないかと気になるようだ。


「いや、これは隠し通路とかじゃなくてだなぁ。守護者(ガーディアン)が見たことないタイプの宝箱をドロップしてな? そいつを開けたら中に入っていたんだよ」


「そう……、ボスドロップね。それなら納得だわ」


「って訳でだなぁ。火山エリアとは対照的なエリアである雪山エリアの守護者(ガーディアン)は、何か落としたりしなかったかぁ?」


「うちらはブリザードゴーレムと戦ったんだけど、特別なドロップはなかったわね」


「俺達がラーヴァゴーレムを倒した時も出なかったからな。鍵箱のドロップ率はそこまでよくないのかもしれない」


「そうなるとちと面倒だなぁ……」


 火山エリアは既に〈炎の鍵〉をゲット出来ている。

 この鍵が〈金の鍵〉のように使い捨てなのか、或いは繰り返し使用出来るのかはまだ分からない。

 だが〈金の鍵〉の時のことを考えると一度で全員で扉を突破すれば、後はその先にある迷宮碑(ガルストーン)に登録することで、鍵を再び入手する必要はなくなる。


 ちなみに最近冒険者の間では〈金の鍵〉の取引が行われ始めたようで、中には単に普通の鍵をメッキしただけの「金の鍵詐欺」も発生しているらしい。

 詐欺はともかく、最近はフロンティアも大分広まっているようで、ギルドの方にも色々情報が入っているようだ。

 その情報によると、やはり他のフィールドエリアと比べても圧倒的に広いということが判明している。


「とりあえず、俺達は次に雪山エリアに向かうつもりだから、耐寒用の魔法具(マジックアイテム)をくれぃ」


「いいわよ。北条さん達も、火山エリアの攻略が終わったんなら耐熱用の魔法具(マジックアイテム)ここ(拠点)に残していったら?」


「それもそうだなぁ。まだクリアしていないパーティーもいることだし」



 その後、魔法具(マジックアイテム)のやり取りをした北条は、慶介と共に《セフィーリアの迷宮》へと向かう。

 そこでは既に何度か搬入された資源を吸収したのか、大分コアに貯蔵されている魔力が溜まっていた。


「ううん、これはかなり魔力が溜まっていますね。やはり資源を色々と吸収させたからでしょうか?」


「それだけが原因ではないかもなぁ。明らかにこのダンジョンは世界樹の影響を受けている。そっちからも魔力が流れてきてるのかもしれない」


 確かに最初の方は高ランクの魔石をこれでもかと吸収させていたが、それにしてもコアの貯蓄魔力量は多かった。

 北条の言うように、世界樹の影響もあるのだろう。


 そこへ更に慶介が魔力を籠めていく。

 そして大分溜まっていた魔力を一気に消費し、五階層までだったダンジョンを一気に十二階層まで拡張する。


「……何分他のダンジョンの平均を知らんから断言は出来んがぁ、これ相当早いペースで成長してる気がするぞぉ」


「ですよね……。でも十一層から魔物のランクを最低でもFランクにしたせいか、少し消費魔力が増えましたね。この調子だと、高ランクの階層を増築するのは大変そうです」


「まあ、その辺はジックリと行こう。そう焦る必要もないだろ」


「北条さんは魔力を籠めていかないんですか?」


 いつもは二人でコアに魔力を籠めていたのだが、今日は魔力を籠めていたのは慶介だけだ。

 ダンジョンでそこまで消耗した訳でもないので、北条の魔力は今大分余裕があるはずだ。


「俺ぁちょっと別件で魔力を使う予定でなぁ」


「別件……というと魔法具(マジックアイテム)作りですか?」


「じゃなくてだなぁ。そろそろ南西のマヌアヌ湿地に手を入れようと思ってな」


「マヌアヌ湿地……。ああ、北条さんが領地でもらった所ですね。結構広い範囲で湿地が広がっていて、おまけに魔物も住み着いていると聞きます」


「うむ。まあ、とりあえず頭ん中にアイデアはあるんで、それでやってみるつもりだぁ。休日の間にある程度進めておきたい」


 北条達は今日を含め、明日明後日と休みを入れている。

 その短期間ではいかに北条でも出来ることに限界はあろうが、ダンジョン作成と同様に時間をかけつつ様子を見ていったほうがいいような大きな事業だ。

 なので、北条は早い内からちょこちょこ作業を進めていこうと思っていた。


「という訳で、ちょっくら出かけてくる。拠点にもちょこちょこ戻るから、何かあったら〈ケータイ〉で呼んでくれぃ」


「分かりました」


 慶介は拡張したばかりの迷宮の様子をチェックするらしく、ここにまだ少し残る。

 そこで北条は先にダンジョンを抜け、一人マヌアヌ湿地へと向かうのだった。


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