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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第二十六章

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第772話 ダンジョン運営


 拠点内に作ったダンジョンのお披露目が終わり、一行はジャガーキャッスルへと帰還していた。

 そこで軽く話し合った結果、創造主である慶介の他にクランメンバーから七名、ダンジョン運営委員を指名することになった。


 七名という数字から推測できるように、これには各パーティーのリーダーが割り振られることになる。

 すなわち、北条、信也、陽子、ライオット、シグルド、ムルーダ、キカンスの七人だ。

 そして翌日に改めて、ダンジョンに関する話し合いをしようということになった。


 日を改め翌日になって、ジャガーキャッスルの会議室にはすでに出席者が集まっていた。

 まずはクランの方から慶介と七人のダンジョン運営委員。

 一応肩書も用意してあり、北条がダンジョン運営委員長。慶介がダンジョン運営委員の顧問に就任した。

 もっとも名前だけの役職なので、とくに他の平委員と変わりはない。


 ダンジョンの存在をおおぴらにする訳ではないが、通常は発見されたダンジョンはその地を治めるものが管理するというのが慣例だ。

 そしてこの拠点と、まだ何も開発に着手していない南西の《マヌアヌ湿地》は北条が治める領地となっている。

 よって、北条が委員長の座に就くこととなった。


 そしてこの場にはクランの正規メンバー以外の者も出席していた。

 まずはルカナル。

 彼は普段ジャガーキャッスルに入ることはないので、どこか緊張気味に室内を窺っている。

 まだ用件を何も伝えていないので、何故自分がここに呼ばれているのか疑問に思っているのだろう。


 それからツィリルもこの場に参加している。

 元Bランク冒険者であった彼は、今ではすっかり『ジャガーノート』のあらゆる事柄を統括する家宰として活躍していた。


 ツィリルの隣には、彼を補佐するメイド長のアンナも着席している。

 実質一般の使用人と日頃から接触する機会が少ないツィリルと違って、アンナは城に務める者達を直接纏め上げていた。


 そのツィリルの隣には、これまた女性ながらに辣腕を振るう元守衛長だったナターシャも席に座っている。

 彼女達守衛の一部は、今ではジャガーノート騎士団として騎士に任命されていた。

 誰もが騎士へと昇格した訳ではなく、武力や人となり。それから学問や指揮能力なども評価の対象となって、第一期の騎士団員の任命が行われている。


 その中でもナターシャは武力は勿論のこと、部下への気遣いや人を纏め上げる能力。そして上に立つ者として学が必要と言われれば、素直にそれに取り組み、なおかつ短期間で成果を上げていく飲み込みの良さ。

 それらの実績を踏まえ、騎士団結成からしばらくの間空白だった初代騎士団長の座にナターシャは就いている。


「あ、あの……。何故私はこのような場に呼ばれているのでしょうか?」


 最後にもう一人。

 ナターシャの更に隣に落ち着きがない様子で座っている男がいる。

 この男の名はイーブルといい、第二次人材募集の際に現会計のクラウスらと共に拠点にやってきた男だ。


 職務としては財務を担当しており、拠点で生産される交易品やら税徴収やらを担当している。

 普段は中央館……いまではすっかり役所として機能している場所で働いているのだが、今日は城からの伝令を受けてこうしてこの会議の場に参上していた。


「うむ、どのような者を参加させるのか迷ったんだがぁ、とりあえずこんなもんかなと思って呼んでみた」


「は、はあ、左様で……」


 いまいち納得のいっていないイーブルだったが、かつてはやり手の商人として知られていた彼は、如才なく受け応えする。


「それでは全員揃ったことだし、これより会議を行う……がその前に一つ。今回の会議の内容は一級秘密事項に当たるので、絶対に外部に漏らさないように」


「い、一級秘密事項!?」


 イーブルが戸惑いの声を上げる。

 それも仕方ないことだろう。

 別段そのような事項が定められている訳でもなく、日頃から使われている言葉でもなかったので、『一級秘密事項』なるものがどのようなものかをイーブルは知らなかったのだ。


「あのお、ホージョーさん。それ(一級秘密事項)ってどういうものなんですか?」


 初めから雇い主に雇われた立場であるイーブルは、北条に対してはどうしても一歩引いてしまう部分がある。

 特に今では爵位と領地を持つ貴族様なのだ。

 しかし、イーブルより古い付き合いのルカナルは余りその辺りのことを気に留めず、いつも通りに北条に尋ねる。


「うむ、それだはな。……とにかく超重大な秘密がアレだから外部に漏らすなっていうアレだ」


「一級秘密事項とは、超重大な秘密がアレである……と」


 まだ本題に入っていないというのに、メイド長のアンナは書記として北条のどうでもいい言葉尻までしっかりメモしていく。


「そ、そんなことよりだなぁ。今回集まってもらったのは、セフィーリアの迷宮の運営方針について話し合う為だぁ。その為にクラン外の拠点メンバーからも人を呼んでいる」


「団長! ……いや、ホージョー様。セフィーリアの迷宮とは一体何のことだ……でございますか?」


「ナターシャ。慣れないなら無理に敬語を使わんでも……」


「いえ、それはなりません。栄えあるジャガーノート騎士団の団長という立場になったのですから」


「人の多い所ならともかく、このような場ならそこまで気にすることはないんだがぁ……まあいい。セフィーリアの迷宮とは、拠点南東の世界樹区画に新たに造られたダンジョンのことだぁ」


「は……はあ。ええと、つまりはその、ダンジョンを模した場所を用意し、そこで訓練を行うということでしょうか?」


「違う違う。そうじゃなくて本物のダンジョンのことだよ」


「あの……それは一体どういうアレで?」


 イーブルも何が何だか分からない様子だが、ルカナルやアンナ達も同じ反応をしていた。

 そこへ陽子から注意の声がかかる。


「ちょっと北条さん。順番に説明しないと混乱するだけよ」


「む、それもそうか。ええとまずはだなぁ、ダンジョンの奥にはダンジョンコアというものがあってだな……」


 陽子の忠告に従い、慶介が"迷宮創造"のスキルを得る段階から順に説明していく北条。

 説明を受けていくにつれ、イーブルの目が鋭くなっていく。

 そこには先ほどまでおろおろとしていた姿はない。

 イーブルだけでなく、ナターシャやルカナルらも北条の説明にのめりこんでいく。


「……まさかダンジョンを自由に生み出せるなんて。それが出来れば、鉱物資源には困らなそうです」


「それだけではございませんぞ! ダンジョン内には魔物の他にも採取可能な動物や植物など、食料の採取場所としても優秀です。本来はそういった有用な採取場所が、ダンジョンの奥地にあったりしてなかなか有効活用が出来なかったりするものですが、それを自分達で好きに設定できるとなれば、それはとんでもない利益を生むことに――」


「ああ、まあ落ち受けイーブル。そういったことを含め、具体的にどのようにダンジョンを生成していくかについて、今日話し合いの場を持とうと思ったのだ」


 元商人でもあるイーブルは、この場にいる誰よりもダンジョンを好きに操作できるということの有用性に気付く。

 そのせいでいつもは冷静に物事を判断できるのに、少しばかり暴走してしまっているようだ。

 そんなイーブルを諫める北条。


「ダンジョンを好きなように生成できるといっても、幾つか決まり事のようなものがある。まずはその辺をダンジョンの産みの親である慶介に語ってもらおう」


「はい。それでは僕がダンジョンについて説明をさせていただきます。まずは――」


 ダンジョンを実際に作成してからも時間をかけて調べたせいか、慶介の"迷宮創造"に対する造詣は深まっている。

 例えば、ダンジョン入ってすぐの場所にいきなりレベル百以上のSランクの魔物を配置したりは出来ないといった縛りがある点。


 どうもダンジョンには第二階層とか第三階層とかのフロアごとの階層とは別の部分で、構造的な階層構造を持っていることが明らかになっている。

 慶介はこれを分かりやすいように、深度という単位で表すことにした。


 深度一の階層では、配置できる魔物はEランクまでの魔物に限定され、設置出来る罠も殺しにかかるようなえぐい罠の設置は出来ない。

 ダンジョンの入口からすぐの場所が深度一のエリアとなっており、ここから分岐して深度二のエリアへと繋げることが出来る。


 深度二のエリアでは、およそAランクまでの魔物と少し強力になった罠の設置が行えるようになる。

 ただし、深度一のエリアより全体的に配置に必要なコスト=魔力が増えるので、拡張するにはかなりの魔力が必要だ。


「ほうほう、それは……。なんとっ、そのような!?」


「なるほど……なるほど! それは興味深い話ですね……」


 慶介の説明に、イーブルだけでなくライオットも興味深そうに話を聞いている。

 そして一通り慶介が話を終えると、ようやく本題であるダンジョン運営会議が始まるのだった。


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