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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第二十六章

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第764話 迷宮実験


 一週間の休みに入った『ジャガーノート』。

 北条が対策グッズを製作するとはいえ、陽子やライオットらは耐熱耐寒装備などを自分達で出来る範囲で揃えたり、ドランガランなどは誰かに頼んで"氷魔法"を打ち込んでもらって"凍結耐性"の訓練に勤しんだ。

 龍之介など他のメンバーも、今拠点に帰還している『ノスタルジア』のメンバーと戦闘訓練を行ったり、魔物や魔法について情報を交わしたりと次の探索に向けて意気込んでいる。


 そんな中、北条はといえば当然のことながら魔法具(マジックアイテム)開発……ではなく、世界樹区画に作ったダンジョンの中で実験をしていた。

 陽子やライオットに頼まれていた魔法具(マジックアイテム)は、信也やディーヴァの協力があったとはいえわずか四日で出来上がっている。

 なので、残りの三日を"迷宮創造"スキルの研究に充てている所だった。



「おおう。やっぱ装備や魔法具(マジックアイテム)そのままだと素材としては吸収しないんだなぁ」


「のようですね。僕達もこれまで何度も骨製の箱は開けてきましたが、やはりあれは元は冒険者達の遺品ということで間違いないみたいです」


 北条と慶介の前には骨のような材質で出来た箱が置かれている。

 それは人工ダンジョンの二階に作った部屋の中に置かれていた。

 ダンジョンには、ダンジョン外から入って来たものなどを吸収する仕組みがある。


 外部から持ち込んできた食料や装備。

 それだけでなく、死んだまま放置すれば死体もやがて吸収されるし、装備なども吸収されてその場から消えてしまう。

 これは以前から周知されていたことなのだが、ダンジョン内に置かれた骨製の箱に関しては、冒険者の遺品が収められていると以前から言われていた。


 そんな中北条達は、適当な通路に置いた装備や魔法具(マジックアイテム)などを敢えて吸収させる実験を行っていた。

 まだ二層までしかなく、規模も極小規模な人工ダンジョンではその行方を辿るのも大分簡単だ。

 敢えて吸収させた装備などは、一定時間が経過した頃にはその場から吸収されて消えており、それから更に少し時間が経過した今になって、骨箱の中身として戻ってきていた。


「大分ダンジョンの作り方については分かってきたなぁ」


「感覚的に操れるのは助かりますね」


 そう言って二人はこの二か月の日々を思い出す。


 彼らは拠点に戻ってきたタイミングで、"迷宮創造"のスキルについての検証を行っていた。

 骨箱についての検証など、機能を確かめるのにも少し時間の経過を見る必要がある"迷宮創造"スキル。

 一、二週間のサイクルでダンジョンから帰ってくるので、様子見する時間をダンジョン探索にあてられるのである意味丁度いいとも言えた。


 そんな慶介の"迷宮創造"スキルで幾つか判明したこと。

 その内の一つは、同時に生成できるダンジョンは一つのみだという点。

 これは最初の方の実験ですぐに判明した。

 二つ目のダンジョンをコアから作ろうとしたが、すぐにそれは無理だと慶介が気付いたのだ。

 熟練度が上がれば同時に二つ以上作れるのかもしれないが、現状では一つが限度らしい。


 次にコア生成時に使用する素材に関して。

 これは単純に魔石や魔水晶などを多く積むほど、生成した〈ダンジョンコア〉の貯蔵できる魔力量が上昇することが判明した。

 ではその他の魔物素材のドロップなどは必要ないのか? という点だが、これら素材にも魔力容量を僅かに拡張させる効果がある。

 だがそれ以外の効果が、実際にダンジョンを生み出して色々やっていく内に明らかとなった。


 "迷宮創造"のスキルには……いや、正確に言うと迷宮を操作する権限を持つ者は、迷宮内の様々な操作が行える。

 それらの操作を行えば、『ジャガーノート』がこれまで潜ってきたようなダンジョンを再現することも理論的には可能だ。


 そうした操作の一つに、ダンジョン内の指定階層に魔物を配置するというものがある。

 明らかになったことというのは、魔物配置の際に事前に魔物素材をコアに入れるかダンジョンで吸収させておくと、その魔物や同種の魔物の配置コストが軽減されることが明らかになったのだ。

 初めにその可能性が浮上した後に、改めて新しいコアでダンジョンを作り直してみたことで、それは明らかとなった。


 前のダンジョンと、ウルフ系の素材を大量に組み込んだ〈ダンジョンコア〉で作成したダンジョン。

 その二つでは、後者の方がウルフ系の魔物。ひいては大雑把な分類で動物系の魔物を配置する時のコストが低下することが確認された。

 コストというのはつまり、魔物を配置設定したり生み出したりする際に、コアに蓄えられた魔力をどれだけ消費するかというものだ。


 迷宮の操作には必ず魔力が必要となる。

 通路や部屋を作成したり、罠を作成したり。

 とにかく何をするにしても、コアに蓄えられた魔力を消費する。

 それ故、少しでも魔力を消費軽減出来るというのは重要だ。



「それで、骨箱に収まらずに消えた素材に関してはどうだぁ?」


「では試してみます」


 骨箱が収められていた部屋から移動し、二層最奥にあるコアルームへと移動した二人。

 当然のことながら、何も設定していないのでコアを守る守護者(ガーディアン)は存在しない。

 普通に魔物を配置設定するより魔力を食うようなので、まだその実験は行っていなかった。

 そしてコアルームに付いた慶介は、もう一つの実験成果を確認する為に〈ダンジョンコア〉へと触れる。


「……実際に試してはいませんが、感覚的には鉱脈の設置コストが下がっている感じがしますね」


「ほおう。では上手くいったという訳かぁ!」


 二人が行った実験は簡単なものだった。

 吸収されずに骨箱へと移動した装備の他に、鉄のインゴットなどの金属系の素材も一緒にダンジョンに吸収させていたのだ。


 そしてそれらのインゴットは骨箱へと一切移動せず、完全にダンジョンに吸収されていたことが先ほど開けた骨箱によって明らかになっている。

 そして金属のインゴットを吸収したダンジョンでは、鉱脈関係の設定コストが下がることが判明した。


 コアを作る際の素材は何も魔物素材に限らない。

 鉱物や植物なども素材として利用出来るのだが、それは何もコアを作る段階で全て用意しておかなくても、作った後にダンジョンに吸収させればいいということが、これで判明したのだ。


「そうですね……。ただ、思った程コストは下がっていないようです。恐らくは、〈ダンジョンコア〉を作る時に素材を投入した方が、後でダンジョンに吸収させるより生産コストが下がるんだと思います」


「なるほどなぁ。とはいえ、沢山の素材で〈ダンジョンコア〉を作ろうとすると結構難しいんだよな?」


「はい。コア生成時は質というよりは量……体積によって難度が変わるようなので、コアの素材は高品質なものをけちらずに使った方が良さそうです」


 慶介はこのダンジョンの創造者故か、何か迷宮を操作しようとした際に魔力をどれくらい消費するのかということを感覚的に理解出来る。

 それは迷宮機能の解明に多いに役立っており、すでに大まかなダンジョンの作り方については目途が付いてきていた。


 そしてこの実験によって、吸収によって後からでもダンジョンを成長させられる事も判明した。

 これまで幾つもダンジョンを作っては取り壊してを繰り返してきたが、そろそろ次の段階に進んでもいい頃合いかもしれない。


「だがこれで大分目途が付いてきたぁ。そろそろダンジョン製作に本気で取り掛かるかぁ?」


「いえ……、まだ色々と試してみたいことがあるのでもう少し時間をください」


 大分乗り気になっていたせいか、慶介の返事を聞いて少し勢いが弱まる北条。


「む、そうかぁ……。なら本ちゃん用の〈ダンジョンコア〉作成の準備を、先にやっておこうと思うんだがどうだぁ?」


「準備って……何をするんです?」


「慶介は……余り関わってないから詳しくは知らんかもしれんがぁ、俺ぁ砂属性の魔法で〈魔水晶〉を作ることが出来る」


「なんとなくそういう事が出来るってのは聞いたことありますけど、確かに詳しくは知らないですね」


「実はこの拠点には、一部の者しかしらない魔力貯蔵所がある。そこには俺が魔石吸魔陣を使って作った、高純度の〈魔水晶〉が幾つも並んでいてなぁ」


「そうだったんですか……。実は僕も迷宮作りを通して、〈ダンジョンコア〉のような魔力を蓄えておく仕組みが、魔法的な施設には必要不可欠なのを感じていた所でした」


「そうだろうそうだろう……それでだなぁ。コアの素材として、六式魔陣を使って更に凝縮された〈魔水晶〉を作ろうと思うんだよ。そして、それをコアの素材とする」


「それは良さそうですね……。コアを作る際に北条さんの用意した〈魔水晶〉を何度か試しましたが、どれもSランクの魔石より性能的には優れてました」


 確かにSランクの魔石ともなると、他の魔石と比べれば格段に秘められた魔力は強い。

 しかし、北条がこれでもかと魔力をつぎ込んで生み出した魔水晶の方が、魔力の器としての容量は大きい。

 なんせその魔水晶一つを作るのに、魔石吸魔陣でその何十倍もの数の魔石を使用しているのだから。


「それでは僕は引き続き迷宮実験の方に取り掛かりますね」


「では俺の方は一旦素材の売却と、ギルドに不思議エリアについての報告をしにくとするかな」


 まだ本格稼働は先になりそうだが、慶介のダンジョン生成は着実に前へと進んでいた。


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