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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第二十六章

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第763話 ダンジョン報告会 ~局地エリアと本命エリア~


「私が報告するわ」


 北条が次の話に移ろうとした所で、名乗りを上げたのは陽子だった。


「私達とライオットのパーティーは、途中までは一緒に行動してたの。鉱山エリアの二十層から大草原エリアを抜けるまでね」


 現在確認されてる中では、鉱山エリア二十層からの分岐が一番多い。

 その幾つかある分岐の中で、南にある階段を下っていった先にあるのが大草原エリアだ。

 ここはその名の通り、フィールドタイプの見晴らしのいい草原地帯となっていて、朝と夜が普通に訪れる。


 魔物としては動物系の魔物が多く、EランクのバイツラビットやDランクのツインヘッドスネークなどが、広い草原地帯に散らばっている。

 また二十九層からはちょっとした池や湖などが増えてきて、魔物の生態もギガントードなど水辺にいそうな系統の魔物が加わっていく。

 そのため、大きくエリアの様相は変わってはいないのだが、二十九層以降を水辺エリアを呼ぶ冒険者もいるようだ。


「まあそこまでは今の私達なら問題ないね。最大でもCランクの魔物までしか出ないのだから」


「そう……なんだけどねえ。その先はやっぱり対策なしだとキツイわね」


 ライオットの言葉に頷きながらも、苦い顔をする陽子。

 何故なら、大草原エリアの先にあるエリアの攻略に未だ成功していない為だった。

 それは何も陽子のパーティーだけでなく、途中まで一緒だったライオットパーティーも同様だ。


 というのも、大草原エリアは三十七層まで続いていてそこから二つのエリアに分岐するのだが、そのどちらも厄介な環境を持っているからだ。

 火山エリアと雪山エリア。

 その内、ギルドに攻略報告が上がっているのは火山エリアのみとなる。


「私は火山エリアの方に向かったんだけどね。あそこってあちこちに溶岩の池やら川やらがあって、マップを埋めようと探索するのが面倒なのよ。地味に魔物も強いし……」


「それは大分暑そう……いや、熱そうなエリアだな」


「まあ熱だけだったら私の【断熱結界】で防げはするのよ。たださっき言ったように、溶岩地帯が多くて探索に手間取っちゃったわ」


「そーだな。それに場所によっては有毒ガスが噴出している所もあって、探索にも気をつかわねーといけなかったしよお」


 陽子パーティーの斥候役だったシクルムが、忌々し気に愚痴る。

 彼は"飛行"のスキルなどを得ていたので、溶岩地帯であろうと空を飛んでの斥候が可能ではあったのだが、溶岩中に潜んでいる魔物や毒ガスなどのせいもあって、あまり自由に空を飛んでの探索が行えなかった。


「それでも四十四層までの地図は大体埋めといたわ。攻略したパーティーの情報によると、守護者(ガーディアン)はその次の四十五層みたいだから、あと少しね」


「ほおう。それで魔物の方はどうだったんだぁ?」


「それもギルドで下調べした通りね。あの灼熱の環境の上にAランクの魔物まで出て来るんだから、そんじょそこいらのパーティーじゃ攻略出来ないでしょうね」


 火山エリアではC~Aランクの魔物が出現し、中でもタフな上に熱いAランクのラヴァゴーレムなどは、陽子達でも倒すのに一苦労する。


「なるほど。ライオット達の方はどうだったんだぁ?」


 ここで陽子の方の報告は一先ず終わったと見て、ライオット達へと話を向ける北条。


「こっちも似たようなもんですね。ヨーコさんがいないので、寒さ対策はヴェナンドさんの【サーマルプリザーベーション】頼りだったんですが、それだけだと完全には寒さは防げませんでした」


 【サーマルプリザーベーション】は温度を調節するというよりは、掛けた相手の体温を維持する"付与魔法"だ。

 しかし余りに過酷な環境では維持できる体温の範囲を超えてしまう。


「それにこっちは吹雪で視界が遮られることも多くて、探索は余り進められませんでした」


「どこまで探索できたんだぁ?」


「ええっと、四十二層までですね」


 雪山エリアでは寒さ由来の困難な条件が幾つも出て来る。

 勿論低温は言うまでもないが、ライオットの言った吹雪による視界の悪さ。

 足元が凍り付くことによる足場の悪さに、雪崩の危険性。


 一応陽子達もライオット達も、挑むエリアがエリアなだけに事前に北条から幾つか魔法具(マジックアイテム)を提供してもらっている。

 それらによって、他の冒険者に比べたら格段に快適な探索は出来ていたのだが、それでも探索の進みは遅かった。




「……ううむ。これは更に対策を練らんといかんなぁ。和泉も一緒に手伝ってくれぃ」


「局地専用の魔法具(マジックアイテム)を開発するということか。了解した」


 陽子とライオット。

 火山と雪山に向かった二人の報告を聞き、局地で役立つ魔法具(マジックアイテム)の開発を決意する北条。

 今の拠点には魔法具(マジックアイテム)研究所も建てられており、そこではディーヴァが日々魔法具(マジックアイテム)の研究に励んでいる。

 北条と信也も合わせて三人で開発すれば、対策の品も出来上がることだろう。


「支給された魔法具(マジックアイテム)のテントなんかもすごい助かったんだけどね。それでも実際に探索してみると、あれが欲しい、こういった機能があれば……って場面が結構あるのよ」


「うむ。その辺はまた後でまとめて意見を出してくれ。それを参考に魔法具(マジックアイテム)を開発していこう」


「それで団長の方はどうだったんでしょう? 二パーティーで中間地点の奥にあるエリアに向かったんですよね?」


「ああ。最初ちらっと探索した時には仮に平地エリアと名付けていたがぁ、今回探索したことで新しい名称を付けることにしたぁ」


「へぇ。それは何という名前です?」


「名付けて『属性エリア』だぁ」


「属性……」


「エリアぁぁ?」


 ボソリと呟くライオットの後に、龍之介の間の抜けた声が繋がる。


「まだ奥まで辿り着いた訳じゃないがぁ、恐らくそういうコンセプトのエリアだと思われる」


 そう言って北条は中間地点の先、平地エリア改め属性エリアについて語り始める。

 属性エリア五十二層から六十層までは、何の変哲もない平地エリアが続く。

 このまま大きな変化がなければ、態々名称を変えることもなかっただろう。

 しかし六十一層からは、明らかに階層の雰囲気が変わった。


「六十一層から七十層までは、水属性のエリアとなる。川や池なんかも多いし、出現する魔物は水に関する魔物ばかり。おまけに、この水エリアでは環境効果によって水属性は強化されるがぁ、火属性は減衰される」


「へぇ。巨城エリアみてーに"神聖魔法"が減衰されないだけマシだな」


「そうだな。出現する魔物もC~Bランク程度なので、それほど大きな問題もない。それと、七十層では領域守護者(エリアボス)としてウォーターミドルエレメントと戦ったぁ」


「……中位精霊か」


 エスティルーナはダンジョンで襲ってくる精霊については通常の精霊とは別物として割り切っているが、それでも気になりはするらしい。

 ダンジョンは色々な種類の魔物が出現するが、中でも悪魔、天使、精霊、造り人辺りは出現箇所が少ないと言われている。

 この四種の中ではまだ精霊は見かける方ではあるが、それでも希少な種族なのでドロップには高い値が付く。


「そして、七十層を抜けた先。そこはどこまでも続く荒野地帯で、ここでは土系の魔物だけが出現し、環境効果によって土属性が強化され、風属性が減衰される」


「荒野地帯っつーと、フロンティアの東に進んだ先にもあったなー」


 なんだかんだで他に優先することが多いので、未だに探索が進んでいないフロンティア。

 一応このエリアも三種の神器の候補エリアとして挙げられているが、余りに広すぎるので他のエリアを見て回っても見つからなかった場合、このエリアを探索することになっている。


「水、土と来たら次は何のエリアだろうね?」


「それなんだがぁ、生憎今回は七十一層をちょろっと見て回ってから帰還している。迷宮碑(ガルストーン)は六十一層と七十一層にひとつずつ。多分、各属性の最初の階層に設置されてるんだろう」


「ふうん。でも水と土があるなら火と風もあるだろうね。そうなると、百層まで続いてるのかもしれない」


「百層とはまた大分深いな……」


 シグルドの推測に、重く頷く信也。

 幾ら迷宮碑(ガルストーン)があるとはいえ、一層ずつ探索していくことには違いない。

 土フロア以降も十層ずつ続くなら、探索にはそれなりに時間がかかるだろう。

 それは信也やメアリーにとってもどかしいことではあるのだが、その分ここがやはり本命なのでは? という期待をも同時に抱かさせる。


「まあ、そんな訳で俺達の報告は以上だぁ。……これでとりあえず全パーティーの報告は聞いたな。では話の中で出てきた内容をここでもう一度まとめてみよう」


 そう言うと、北条は一つずつ話を振り返っていく。

 次にダンジョンに潜る時は各自担当のエリアは一旦置いといて、先に大鉱山エリアを全員で攻略してしまおうということ。


 不思議エリアの守護者(ガーディアン)については、冒険者ギルドに報告しておくということ。

 火山と雪山エリア攻略の為に、新たに魔法具(マジックアイテム)を用意しておくということ。


 大きく纏めるとこの三点となる。


「という訳で、これまで二か月間新たなエリアの探索をしていた訳だがぁ、ここでまた一週間程休みを挟もうと思う。その間に俺や和泉で魔法具(マジックアイテム)の開発を済ませておこう」


 ここで今日の会議はお開きとなった。

 

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