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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第二十二章

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第639話 遠方からの客人


「……出発は少し延期するぅ!」


 "念話"で話していた北条は、西門の守衛業務を行っていたドライセンから直接事情を聴くと、即座にダンジョン出発の延期を発表する。


「ええぇ! なんでだよ、オッサン!」


「西門に訪ねてきている客の応対をしてくる」


「それはさっき話してるのを聞いたけどよ、一体誰が訪ねて来たってんだよ?」


「お前も知ってる相手、ゼンダーソンだよ。今回はパーティー全員で訪れたらしい」


「え? マジかよ!?」


 ゼンダーソンの名を聞いて、驚きの声を上げる龍之介。

 近くで話を聞いていた信也やシグルドも、その言葉に納得の表情を浮かべる。


「入れ違いにならなくてよかったな。ダンジョンに向かっていたら、少なくとも一週間以上は会うのが遅れてた所だ」


「という訳で、俺はちょっくら転移で先に西門へと向かう」


「え? ちょ……」


 そう言うなり北条は転移魔法で西門まで飛んでいってしまった。

 残された者達は、どうしたもんかと北条が立っていた辺りに視線を這わせる。


「それじゃ、僕達も西門に向かう?」


「……そうね」


 別に集合するように言われた訳でもないが、ゼンダーソンというビッグネームは『ジャガーノート』の面々の注目を大いに引き付けた。

 特に、エスティルーナやヴェナンドらなど、前回ゼンダーソンが拠点に逗留した時にはいなかったメンバーも数名いる。


 冒険者にとって、Sランク冒険者という存在は特別だ。

 結局シグルドの提案を受け、その場に残された者達も西門へと向かう事となった。






▽△▽



「おー、ホージョー! 久々やなあ」


 北条が西門付近に転移して守衛の詰め所へ向かうと、そこには六人の冒険者達――『バスタードブルース』の姿があった。

 北条を見るなり気安く話しかけてきたのは、パーティーリーダーである獅子の獣人、ゼンダーソンだ。


「あぁ、相変わらず悩みがなさそうなツラしてやがるなぁ」


「ワッハッハ、初っ端から言うやないか!」


 会って早々の辛辣な北条のセリフに、しかしゼンダーソンは気にした様子もなくバンバンッと北条の背を叩きながら応える。


「ふっ、こいつがノーテンキな面してるのは間違いないからな。久々だな、ホージョー。俺の事は覚えてるか?」


「勿論。……どうやらレベル百の壁は突破したみたいだなぁ?」


「お? 一目見ただけで見抜くか。おかげさんで、ユーローに続いて俺も限界を突破する事が出来たぜ。感謝してる!」


「なあに、アンタらなら俺がアドバイスしなくてもすぐにそうなってただろうよ」


 パーティーのサブリーダーであるが、実質的にはリーダー役をしているマージ。

 彼も今やレベル百の壁を越え、三つの職業を有している。


 その後北条は、前回ゼンダーソンを迎えに来ていた盗賊職のコーヘイジャー、エルフのユーローと挨拶を交わし、最後に初対面となる二人の女性と自己紹介を交わした。


「ウチはルビアや。見ての通り前に出て戦いもするけど、どっちかちゅうと神官寄りやねん。よろしゅうな」


 ルビアと名乗った女性は獣耳と、正面からは見えにくいがお尻から小さな尻尾を生やしている。

 それら尻尾と耳の形状などから、どうやら熊の獣人のようだと北条は当たりをつけた。

 身長の方もそのせいか女性にしては高く、二メートルには届いていないがそれに近い位はある。

 首筋までのショートにしたブラウンのソバージュヘアが、活発的な印象を周囲に与えており、少し太めな眉がそこに野性味を加えていた。


「初めまして、ホージョーさん。私は魔物使いで"回復魔法"の使い手でもある、エンデと申します」


 最後に挨拶したのは、亜人が多い『バスタードブルース』の中でも、マージと同じ人族の女性だった。

 我の強いキャラが多い中、一見した感じだとエルフのユーローと同じく物静かなように見える。

 肩まで伸びる黒髪をポニーテールに纏めており、スラッとした美人系の顔立ちをしていた。


「ああ、こいつぁどうも。俺ぁ北条だぁ」


「エンデはな? こない大人しそうな見た目やけど、ゴツイ魔物を使役しとるんや」


「ミュウちゃんはゴツくなんかありませんけど?」


「ワハハハ、そない言うたかてあないでかいドラゴン。どっからどー見てもゴツイやろ……アツツッ!」


「かわいいですけど?」


「せ、せやな……。ミュウちゃんはぎょーさん可愛かったわ」


 どうやらエンデが使役している魔物はドラゴンらしい。それをゴツイと表現するゼンダーソンの鳩尾に、無言で突きを繰り出すエンデ。

 見た目は武闘派には見えないエンデだが、高レベル冒険者だけあって中々の威力だったようだ。


「ホージョーさんも、ドラゴンをテイムしたと聞いております。ぜひ、うちのミュウちゃんとお話しさせて上げたいです」


「あ、ああ。それは構わないんだがぁ、その前に場所を変えないかぁ?」


「そうだな。何だか前俺が来た時に比べて大分ここも変わっちまったみてーだし、中がどんな風になっているか興味あるわ」


「ちゅうか、あの山はなんやねん。あんなん、前はなかったハズや」


 以前ゼンダーソンらが訪ねた頃は、まだ拠点の大改造前だった。

 今では東地区以外の大体の区画の基礎開発が終わり、小さな城下町のような見た目になっている。

 初めて拠点に訪れた女性二人も、これが冒険者クランのホーム(拠点)と聞いて、規模の大きさに驚いていた。


「あの山はテイムしたドラゴン用に、魔法で作ったんだよ。あー、それでだなぁ、ウチでは中に人を招く際には契約を結んでもらう事になってる」


「契約ぅ? そんなん、前来た時はなかったやないか」


「いや、一応あの時からあったんだがなぁ。ま、要するに中の情報を漏らさないっていう契約を結んで貰いたい」


「そういえば、秘密を守ってもらいたいとは前も言われてたな」


「あん時より、外に漏らしたくないもんが詰まりまくっていてなぁ。これはお前らを信用してないとかそういう話じゃなく、拠点関係者全員に行ってる事だ。なんせクランのメンバー達とも契約を結んでる位だからなぁ」


「ほーーん。ほなら、さっさとその契約ちゅうのを済ませて、中を案内してくれや」


 契約をしてくれという北条に、サバサバと応対するゼンダーソン。

 他のメンバーも特に反対はないようだ。


「それじゃあ、パパッと終わらすぞぉ」


 そう言って北条は契約条件などを伝え、それに応じる旨を示したゼンダーソンらに"契約魔法"を行使した。

 北条がわざわざここまで出張ってきたのも、彼らほどの高レベルの相手となると、簡易契約の魔導具では失敗する可能性があったからだ。


「よし、これでいいだろう」


「まさか、ホージョーが"契約魔法"までを使いこなすとはな。恐れ入ったぜ」


「そんなん今更やろ。ホージョーなら屁ぇこいて空飛んでもおかしくないわ」


「もう、アンタはなんでそない下品なん? ウチらの品位ちゅうもんが疑われるやろが」


「品位については今更だがぁ、空を飛べるのは間違っちゃいないぞぉ」


「ほおう、それは魔法によるものか? それともスキルか?」


 これまで黙って話を聞いていたユーローが口を挟む。

 彼は無口というほどでもないが、必要がなければ口を開かない性質のエルフだ。

 ただ知識欲は高いので、気になる事があれば空気を読まずに質問する事はよくある。


「まあ、どっちでも出来るな。或いは魔法具(マジックアイテム)を使うなんて手もあるがぁ……」


 などと話しながら、西門を抜けて拠点の住人が多く活動している西区へと移動すると、ゼンダーソン達の興味はそちらへと移行する。


「……なんだこれは」


「なんであないゴーレムがぎょーさんおんねん!」


「それも、見た事もないようなゴーレムも交じっている。まるで古代文明のゴーレムを彷彿とさせるフォルムだ。以前見かけたゴーレムとはまた違うようだが……」


「うひぃ。相変わらずここはワクワクするねい!」


「お? ホージョー、アレはなんや!? 馬が曳いてないのに荷車が動いとるで!」


「わあ、ここには魔物も暮らしているんですねえ!」


 他とは一線を隔す拠点の光景に、一行からは次々と声が上がっていく。

 一度拠点を訪れた事のある四人の男達も、あの頃とは大分様変わりした拠点に興味津々だ。


 新規組のエンデは、時折見かける魔物に興味を抱く。

 これは、北条が外から魔物使いを勧誘して魔物と契約をさせ、主に拠点内の緊急移動用や防衛用に利用させている魔物達の事だ。


 拠点内の様子に驚きはしゃぐ様子は、拠点の住人からしたら見慣れた光景だ。

 ゼンダーソン達はそんな拠点住人の生暖かい目に見送られながら、西区画を抜けて本区画へと辿り着く。


 以前ゼンダーソン達が訪れた時は、まだこの本区画しかなかった頃だった。

 今となっては、外壁ではなく内壁になってしまった本区画を囲う壁。

 これらの壁は、未だに"刻印魔法"などによる強固な防御力を維持したままだ。


「ほんと、こんな強固な拠点は見た事ねえぜ」


 久々に目にした本区画の壁を見て、しみじみと感想を述べるマージ。

 それから北条を先頭に、通用門から本区画へと入った一行は、そこで東門から移動してきた信也達他のメンバーと合流するのだった。



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