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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第二十一章

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第625話 みーちゃんとおはなし 後編

※この話と後の628話にて、登場させるつもりがなかったキャラクターを誤って出していた部分を修正しました


「まずはやはり、"悪魔結界"を打ち破る方法について聞きたい。俺が推測するに、同レベルの相手の必殺攻撃をも無効化する結界など、どこかしら穴があるとしか思えんのだがぁ……」


「んーー、そうねえ。その推測は間違ってないわよぉ」


「やはりそうかぁ。天使様は勿論その事をご存じで?」


「勿論ご存じだけどお……、みーちゃんの事天使様って呼ぶのをやめてほしいなあー?」


「……じゃあ、何て呼べばいいんだあぁ?」


「みーちゃんの眼を持ってしても能力が見えない君にはあ、特別に『みーちゃん』と呼ぶことをゆるそー!」


「な、ななななんですとおおおおおおおおっっ!?」


 ミリアルドが北条を認めるような発言をした事で、ミリアルドの傍に残っていたヤーちゃんと呼ばれていた男が大声を上げる。

 頭を振り乱しながら噛みしめた唇からは血が滴っており、そんな状態で目線だけは北条に向けられているので、さしもの北条もブルッと体が震えた。


(さっきから一体何なんだぁ、こいつはあ。ってか、さっきの会話でSランクがどうこう言っていたが……)


 最初の奇行のせいか、なんとなくまだ"解析"を掛けていなかった男だったが、改めて北条はスキルで調べてみた。

 するとヤークス・テイラーという名前と、百三レベルというデータがまず目に入る。

 確かにこのレベルならSランク基準には達しているが、少し前に退室させられた神官騎士も同レベル帯だったので、特に気にする部分ではない。

 北条が気になったのは、職業の部分だった。


(『アーチビショップ』に『グランドケミストリー』はまだ分かる。回復系に薬師系って事だからな。だが三つ目の『愛天使ラブリーナイト』ってのぁ、一体何なんだ……)


 結局北条が"解析"を掛けてみて分かったのは、ヤークスという男の名前と、彼が変態だという事だけだった。



「いい加減話を進めて欲しいんだがぁ……」


「むう~、みーちゃんって呼んでってゆったでしょお~? あ、ちなみに君の名前はなんてゆーのかなあ?」


「……はぁぁ。俺の名前は北条だぁ。それで、"悪魔結界"を破る方法について教えてくれないかぁ? み……みーちゃん」


 このままでは話が進まないと思い、仕方なく名前で呼ぶ北条。

 そんな北条の様子を見て、同行している陽子が今にも吹き出しそうな顔になっていた。

 シグルドなどは隠す気もないらしく、クスクスと笑っている。



「うんうん~、じゃあ、教えてあげるねぇ。ホーちゃん」


 未だかつて誰にも呼ばれた事のない呼び方をされた北条。

 それを聞いて、ついに我慢の限界を超えた陽子がケタケタと笑いだす。


「……ああ、そうしてくれると助かる」


 背後で仲間が噴出している状況に苦々しい顔を浮かべながら、北条が相槌を返す。

 ここまでは主に北条が一方的に疲れる会話になっていたが、ここからはようやく本題に移っていった。


「ホーちゃんの言う通りで~、"悪魔結界"を破るには幾つか方法があるわあ」


「具体的には?」


「まずは力技ねえ。相手の結界強度を上回るくらい攻撃を加えればぁ、強引に打ち破る事は出来るの~」


「そいつぁ、俺らには使えん手だなぁ。聞いた話ではエンシェントドラゴンのブレスですら、結界で防がれたと聞く」


「んーー、エンシェントドラゴンならあ、相手の悪魔のレベルによってはいけると思うんだけどお……。恐らくその話をしたエンシェントドラゴンは、まだ成熟してなかったのかもねえ」


「そこら辺は俺も詳しく知らんがなぁ。ちなみに、俺らがこれまで倒した悪魔の中に、"悪魔結界"を持った奴はいなかったし、その結界について書物などにも殆ど記されていない。低ランクの悪魔には結界持ちはいないのかぁ?」


「そうねぇ。ダンジョンに出て来る悪魔はまた話が別なんだけどお、ふつーの悪魔は一定以上のランクじゃないと"悪魔結界"のスキルは持ってないと思う~」


「それは具体的にはどれ位のレベル……もしくは位階で言ったら第何位以上の悪魔になるんだぁ?」


「……」


 まったりとしたミリアルドのペースに、場の雰囲気までフワフワし始めていた室内。

 しかし最初に"悪魔位階"の話を持ち出した時同様に、ここで一旦ミリアルドが真顔に戻る。

 そのオンオフの切り替えを北条はつぶさに観察しながら、ミリアルドの回答を待つ。


「ふ、ふーーーん? 位階の事も、し、知ってるのねえ?」


「ああ、詳しい事までは知らんがなぁ。ただお陰さんで、悪魔とは違う形式の位階が天使にもあるって事を、今日知る事が出来たぞぉ」


「…………そ、そお」


 必死にポーカーフェイスをしようとしているが、完全に隠しきれていないミリアルド。

 「今日は普段とは違うミリアルド様が沢山見れるッ!」っと、ヤークスは一人興奮した様子でそんなミリアルドを様々な角度から眺めていた。


「それで、具体的に"悪魔結界"ってのはどの程度の奴が使ってくるんだぁ?」


「それはっ……そうだなあ~。おおよそだけどお、第六位階以上の悪魔は大体使えるハズだよお。レベルでいえばぁ、大体百四十以上……ってとこかなぁ?」


「第六位階でそのレベルとは……。こりゃあ、俺もそのうち本格的にノーチラスのように覚醒を目指した方が良さそうだなぁ……」


「へ、へぇぇ、覚醒についても知ってるのねえ。……ホーちゃんってもしかして神人族の生き残りとかじゃないわよねぇ~?」


「神人族? いや、俺ぁただの人族のつもりだがぁ?」


「そおおぉ? なら、いいんだけどお……」


 ここへは悪魔に関する情報を求めてやってきた北条だったが、ふと気になるワードが飛び出してきたので、ミリアルドにその言葉について尋ねる。


「その神人族ってのはなんなんだぁ?」


「何千年も昔に栄えてた種族よ。それよりも、"悪魔結界"の話をしにきたのよね。ええっとお、結界を破る方法は他にはぁ……」


 少し早口になってる辺り、全く誤魔化しがうまくいっていないミリアルド。

 しかしミリアルドと腰を据えて話し合うと、どんどん時間を取られる気がしたので、北条はその事(神人族)にはそれ以上追及せず、"悪魔結界"の事を中心に話を聞いた。


 その結果、ミリアルドから幾つか"悪魔結界"に対する有効な攻撃法を知る事が出来た。

 まずは、"ソーンマジック"などの反射ダメージ。

 それから慶介が取得している"定眼"という、見つめた相手に一定のダメージを与えるような固定ダメージ系の攻撃。

 ファエルモがダンジョンの祝福で覚えたレアスキル、"削減の魔眼"という名の見つめた相手のHPを割合で削っていくという、割合ダメージ系の攻撃。


 こういった特殊なダメージを与える攻撃は、"悪魔結界"では防げないらしい。

 また、"デビルクオリティ"や持ち前のステータスとレベルの高さのせいで、あまり実用的ではない方法だが、毒などの状態異常にすることが出来ればダメージを与える事も出来る。


 そして、"悪魔結界"は名前に結界とついているが、"結界魔法"や"聖域魔法"とは別物らしい。

 なので、結界を壊す系のスキルや魔法具(マジックアイテム)などは、ほぼ効果はないという事だった。




「おいおい……。話を聞いた限り、まともに戦える状態じゃあねえぞぉ? 消極的に相手の生命力を削りつつ、悪魔が退いてくれるかこちらが逃げるかしかねえじゃねえかぁ」


 "悪魔結界"への対処方法を求めてここまでやってきたというのに、ミリアルドが語った情報は北条だけでなく、他のメンバーにまで重い気持ちにさせた。

 そもそも、ミリアルドが語ったような反射ダメージや固定ダメージなどを与えるスキルは、特殊な部類に入るので使用者が少ない。


 唯一使えそうなのは、相手の防御力などを貫通してダメージを与える貫通系の攻撃だろう。

 これは特殊なスキルの他にも、闘技スキルでそれなりに見られる攻撃特性だ。

 アシュールの使う剣系闘技秘技スキル"ソリッドスラッシュ"や、楓の使用する苦無系闘技秘技スキル"絶影"などが、貫通系の攻撃スキルに分類される。


 ただし貫通系ダメージに関しては、他の反射系や割合系に比べるとダメージが通りにくいだろうと、ミリアルドは語っていた。

 "悪魔結界"を使用してくるレベルの悪魔となると、"再生"などの自分のHPを回復させる手段を持っているような奴も多い。

 そうなると、ダメージの通りが悪い貫通系ダメージでは、仕留めるのはかなり厳しいものになる。


「ああん、もう、落ち着いてよお~。まだ話には続きがあるんだからあ~」


 最初に力技だとか、反射ダメージだとか、常人には試しにくい方法を提示したのも、それはまず出来ないだろうと予想して、先に無理めな方法から話していたかららしい。

 そう説明された北条は、ミリアルドの本命の話を聞くために続きを促すのだった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] >ただお陰さんで、悪魔とは違う形式の位階が天使にもあるって事を、今日知る事が出来たぞぉ 自分は視ることができないのに、相手からは一方的に視られるという [気になる点] 三つ目の職業は職業…
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