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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第二十一章

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第622話 二つの対悪魔武器


 少しして、部屋に戻ってきたアドゥスタは小脇に巾着袋を抱えて戻ってきた。

 "魔力感知"スキルなどを持っている者なら、その巾着袋から魔力を感じられるので、〈魔法の袋〉である事はすぐに分かるだろう。


「アドゥ爺、中身を出してくれ」


 ジャルマスに言われるがままに、〈魔法の袋〉へと手を突っ込むアドゥスタ。

 そして取り出したのは、大きなメイスと一振りの刀だった。


 メイスの方は白を基調とした金属で出来ており、先端部は殴られたら痛そうな、ギザギザとした小さな羽状の凸凹とした作りになっている。

 柄の長さが一メートル以上と通常のメイスより長いので、通常のメイスより扱うのが難しいだろう。


 刀の方は見事な装飾の鞘に納められており、今の状態では刀身までは見えない。

 しかしながら、柄の部分とのバランスを考えて作られた鞘は、シンプルでありながら精緻な彫刻がなされており、美術品的な価値も十分ありそうだ。


「このメイスは〈デーモンパニッシャー〉と言ってな。悪魔に対して絶大な威力を発揮するという。ホージョーが対悪魔装備を探していると聞いて、取り寄せたものだ」


「ほおう。これは見事なもんだぁ。細川さん向けの装備だなぁ」


 早速"解析"で〈デーモンパニッシャー〉を調べてみた北条は、その性能に納得する。

 きちんと悪魔種族への特効効果もあるようだ。


「そしてこちらの剣の方は少し変わっていてな。刃が片方にしかついていない、カタナという武器だ。"剣術"でも扱えるらしいが、専用の戦闘スキルもあると聞く」


「うむ、"刀術"だなぁ? 仲間に刀の使い手はいるから知っているぞぉ」


「おお、それはよかった。実はそいつはウチの倉庫に眠ってたもんでな。使い手がなかなかいないもんで、売れ残っていたんだ」


 北条はこの刀にも"解析"を使用する。

 こちらも〈デーモンパニッシャー〉と同じく性能面には問題ない……というより、攻撃力的にはこちらの刀の方が上だった。

 勿論悪魔への特効効果もある。

 銘……というか、この刀の名前もズバリそのまま〈魔断刀〉というらしい。


「こちらもかなりの品と見たぁ。それで、この二つの品を幾らで譲ってくれるんだぁ?」


「ホージョー達には娘が世話になったので出来るだけ安くしてやりたいのだが、物が物だけにそれなりに頂きたい」


「構わん構わん。で、幾らなんだぁ?」


「スマンな。〈デーモンパニッシャー〉の方は八十金貨、カタナの方は百三十金貨って所だ」


 なお〈デーモンパニッシャー〉も〈魔断刀〉も未強化状態だ。

 その事と性能の事を考慮すれば、確かに大分値段を抑えている事が北条には分かった。

 これが強化品だったらまた値段も変わってくる所だ。

 ちなみに、北条が強化した〈バルドゼラム+10〉をもし売りに出せば、とんでもない値が付くことになるだろう。


「合計で二百十金貨……金貨はゼラム貨だなぁ?」


「ああ、そうだった。お前達はロディニアで活動してたんだったな。そうだ、帝国の貨幣であるパノティア貨ではなく、ローレンシアのゼラム金貨で二百十枚……パノティア貨だと大体二百五十金貨換算だな」


 《ヌーナ大陸》では、主に北半分と南半分で使用されている貨幣が異なっている。

 そして、『パノティア帝国』のパノティア貨に比べ、『ローレンシア神権国』のゼラム貨は金属の含有量が多く、大陸最古の国という信用もあって、一枚当たりの貨幣の価値が高い。


 ジャルマスが提示した金額は、おおまかな日本円換算だと二億円以上。

 これでも大分値下げした状態なので、本来はこの倍くらいしてもおかしくはない。

 低ランクの冒険者からすると、目ん玉飛び出る位の値段であるが、今の北条達にとってはこの程度は大した金額ではない。


 というか、北条が本格的に金を稼ごうと思えば、『メッサーナ商会』規模ならすぐに追い抜く事も出来るだろう。

 それは北条が、様々な魔法具(マジックアイテム)を作り出す事が可能だからだ。


「分かったぁ、値段はそれでいい。支払いは現金でも可能だがぁ、他の方法もあるぞぉ」


「他の方法?」


「うむ……そうだなぁ。ちょっと広い部屋に移動したいんだがぁ」


「む? 分かった、今すぐ移動しよう」


 かつて《迷宮都市ヴォルテラ》でも同じような流れがあり、その時は北条が屋敷の中庭でウォータードラゴンをデデン! と出してのけた。

 その時の事を思い出したのか、何かを感じ取ったジャルマス。


 前回とは違い「ちょっと広い部屋」という事で、中庭ではなくダンスホールのような場所へと案内される北条達。

 部屋というのとは少し違うが、場所的にここが一番近くて条件に嵌る場所だったらしい。



「うん、ここならいいだろう。今からここに幾つか品物を出していくので、それらの品々との物々交換という方法を提示したい」


「おお……、それは願ってもない。出された品には俺とアドゥ爺でもって値段をつけさせてもらう。その金額で納得したら、その品を買い取らせてもらおう」


「うむ、それで頼む……って、その言い方だと出したものは装備代関係なく、何でも買い取るという風に聞こえたがぁ……」


「ああ、それで間違ってない。まあそもそもその品を買い取るかどうかの判断もするがな!」


 わはははっっと笑いながら上機嫌な様子のジャルマス。

 彼は一流の商人として、『ジャガーノート』の事を高く評価していた。

 それは冒険者クランとしての能力の高さも勿論ある。

 しかしそれだけでなく、『ジャガーノート』の拠点との取引をしていくにつれ、金儲けの臭いがムンムンと漂ってきているのを感じ取っていたからでもあった。


 彼の拠点に関しては、当然のことながらジャルマスも調査を入れている。

 ただ調査とはいっても、直接中に忍び込むという方法は取っていない。

 最初の前調査の段階で、同じことをしようとした調査員が例外なく酷い目に遭っている事を知ったからだ。


 また、拠点の住人は拠点に縛られている訳でもなく、『ジャガー町』の方に出てくる事もある。

 しかしそれら住人に話を聞こうにも、皆一様に口を閉ざす。


 そんな中、一度外出中の住人が拐かされる事件が発生し、拷問まがいの聞き込みがされた事があった。

 しかし一介の町人であるその女性は、最後まで拠点の内情を話す事なく、最終的には拠点から派遣された守衛やクランメンバーによって救助される。


 この事件の主犯は商人ではなく貴族である事が後に公表されたが、その時にはすでに事を終えた後だった。

 ベネティス領の男爵であったその貴族は、一夜にして屋敷ごとこの世界から消滅した。

 また犯行に関わりのある裏組織や貴族の関係者は、軒並み謎の死を遂げている。


 この一件以来、拠点へと手を出す者は激減した。

 また、この事件をきっかけに拠点の住人が外出を控えるようになったので、情報収集も更にやりにくくなっている。


(そんな……そんな謎に包まれた彼らとの取引。彼の拠点にはロディニアの王子と姫も逗留していると聞く。小国とはいえ、一介の冒険者クランの拠点に王族が暮らすなど通常はありえない事だ)


 ジャルマスの頭の中では、一瞬にしてこのような考えが脳裏に過っていた。

 これらは実際に『ジャガーノート』と接するようになってから得られた情報だが、そもそも初めて北条達に会った時に、ジャルマスは"ドフォールインスピレーション"を通じて大きな利益を齎す相手だと確信していた。


(それにエルダードラゴンをテイムし、ウォータードラゴンの素材を持っているという事は……他のドラゴンの素材も持っているに違いない。それもダンジョンではなくフィールドで倒したのだから、かなりの量のドラゴン素材を獲得しているハズ……)


 ジャルマスの予想は的を射ており、まず最初に出されたのがそうしたドラゴンの素材だった。

 《ガリアント山脈》に生息する、ガリアントドラゴンやワイバーンの爪や牙、鱗などなど。

 これらはすでに解体されたものであり、北条の"ディメンジョンボックス"にはまだ未解体状態のドラゴンが多数眠っている。


「おおっ、おおぉぉ……」


 次々と出されていく高ランクの素材に、ジャルマスの感嘆の声が止まる事がない。

 それら竜素材を出し終えると、続いて北条が取り出したのは、魔物の素材ではなく魔法具(マジックアイテム)の数々だった。


 目玉商品として時間停止の効果のある〈マジックバッグ〉に、拠点では一般的に使用されている冷蔵庫や水道の魔法具(マジックアイテム)

 北条なら"砂魔法"を使用して簡単に生み出せてしまう高品質な〈魔水晶〉に、【炎の矢】などの簡単な攻撃魔法を放てる訓練用の魔法具(マジックアイテム)などなど。


 それから特殊な魔法の力を極力使わずに住人達が作成している、ガラス製品や高品質な鏡なども北条は取り出していく。

 これらの品の中には、単価がそれほど高くないものも存在しているが、拠点の産物を紹介するかのように、北条は次々と品を出していった。


 この場には目利きの商人であるジャルマスや、"鑑定"スキルを持つアドゥスタもいるので、ちょっとした魔法具(マジックアイテム)でも見る事が出来る。

 興奮した様子で北条の出していった品に値段をつけていくジャルマスは、結局全ての品を買い取ると申し出た。


 それら合計買い取り金額は、ゼラム貨で三十ミスリル銀貨以上の値がついた。

 ミスリル銀貨はゼラム貨のみに存在する貨幣で、五十金貨と一ミスリル銀貨が同じ価値だ。


 これは金属そのものの価値というよりは、加工に関して高度な魔法技術が用いられているので、偽造する事がほぼ不可能という背景があってこそ成り立っていた。

 そもそも、一般の商人が手にする事はほとんどないような貨幣なので、一種の小切手のようなものとも言える。



「……自分で出しといてなんだがぁ、まさか全て買い取るとはなぁ」


「ハハハッ、今日は思いがけず良い取引をさせてもらったぞ! ……ところでこれらの魔法具(マジックアイテム)なんだが……」


 結局装備代を支払うどころか、逆に大金を受け取る事になった北条。

 竜の素材などはともかく、今後『ドフォール商会』には今回出した冷蔵庫などの魔法具(マジックアイテム)を販売しようと思っていたので、今回北条はそれらの品を見本的に一挙に放出していた。


 その事をジャルマスも感じ取ったのか、北条に今後とも魔法具(マジックアイテム)を取り扱っていきたいという話を持ち込む。

 これらの品は、今は北条が個人的に作っているので生産量は少ないが、いずれは拠点内に魔法道具職人を育てる予定もある。

 そうすれば、簡単な生活用品の魔法具(マジックアイテム)くらいなら量産できるようになるかもしれない。


 北条としても思わぬ所で顧客をゲットする事が出来たが、そもそも今回ジャルマス邸まで来たのはミリアルドへの紹介状を貰う為だ。

 取引を終えてニコニコ顔のジャルマスにその事を改めて伝え、ミリアルドへの紹介状を書いてもらった北条達は、引き留めるジャルマスを振り切って屋敷を後にするのだった。



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