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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十九章

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第536話 エリア攻略


 冒険者クラン、と一口にいってもその性質は様々だ。

 今この町にある大手クランを挙げると、『パッチワーカーズ』は低ランクの者なども受け入れ、無理をせずに行ける範囲でダンジョンを探索している。

 まるで会社員が毎日会社に通うかのように、ダンジョンを単なる職場のように割り切っているのだ。


 それに比べ、『ブレイブバスターズ』はメンバー入会をDランク以上に絞り、ダンジョンの探索を中心に活動している。

 リーダーが外部から流れてきたAランクパーティーなだけあって、それなりに成果も出しているようだ。


 そして『ダンジョンシーカー』は、迷宮の神ガルバンゴスを信仰する神官戦士と、魔法を司るイドオンを信奉する魔術士がサブリーダーとなっているクランだ。

 彼らはダンジョン探索にも力を入れているが、その他にダンジョンで得られる魔法具(マジックアイテム)の収集にも意欲的だ。


 それは何も自力取得だけでなく、他の冒険者が手に入れたものを買い取ったりする事も含まれている。

 その買い取りのための費用も、ダンジョンに潜る事で稼ぐ。

 設立当初のメンバーは神官と魔術士が多いという異色なクランであったが、今では前衛系も増えて大分バランスが取れてきていた。


 それらのクランと比べると、『ジャガーノート』の方針は『ブレイブバスターズ』に近いと言える。

 それは元来の異邦人達の目的である、元の世界への帰還という事を考えると、ダンジョンを隅々まで探索する必要があるからだ。


 しかし死んでは元も子もないので、そこだけは『パッチワーカーズ』のように無理をしない方針を取っている。

 それでいて、ゴーレムの核などを求めてダンジョンに潜る事もあるので、『ダンジョンシーカー』的な側面もあった。



「俺達はここ最近ダンジョンのエリア攻略に力を入れてきたがぁ、ここでさっさと全員で、今行けるところをクリアしていこうと思う」


「行けるとこっつっても、おれ達がクリアできるような所はもうないぜ?」


 ムルーダ達は、合同でクリアしたレイドエリア以外だと、地下迷宮-罠エリアをクリアしていた。

 しかしそれ以上となると、クリアするのにCランク位の実力が必要になるので、攻略が進んでいない。


「そう、まずはそれだぁ。お前達やキカンス達は、レベル的に仕方ないとはいえ攻略済エリアが少ない。そこでクランという利点を活かして、俺がついていってパワープレイでお前達にもエリア攻略をしていってもらう」


「ぐっ……それは……」


「おんぶにだっこではムルーダは不満に思うかもしれんがぁ、ここはまずてっとり早く強くなってもらいたい。なんなら一連のクランでの方針が終わった後に、今度は自分達で好きにエリア攻略をすればいい」


「俺はそういった拘りがないからそれで構わないが……団長。どこか焦っているのか?」


 ムルーダと違って、キカンスは自力攻略に拘ってはいない。

 なので北条の提案は素直に乗るつもりでいるが、方針内容的にどこかダンジョン攻略を急いでるように感じていた。


「俺ぁ別に焦ってはいない……がぁ、俺の故郷の仲間達はそうでもない。ここにいる皆には伝えてあるが、俺達(異邦人達)の目的は故郷に帰る事だからなぁ」


「ああ、そうだった。すっかりその事を忘れていた」


 クランのメンバー達も日ごろの会話や態度などで、誰が故郷に帰りたがっているのか。という事に、なんとなく察しがついてきている。

 反対に、誰がこの世界に残る決心をしているかについても。


「そういった訳で、これからしばらくはクラン単位で動いて、全員の攻略エリア数を増やしていく。その後に中間地点の先にある……仮称、第二レイドエリアでレベル上げ兼、探索を続けていこう」


「よっしゃ! またレイドエリアでレベル上げだな!」


 北条らの力を借りてエリアを攻略する事には余り乗り気じゃないムルーダも、レイドエリアでのレベル上げは歓迎の様子だ。

 それだけ以前のレイドエリアでのレベル上げでは、中々の成果が出ていた。


「あれは……大分慣れたとはいえ、またあの日々が続くのか……」


「何言ってんのよキカンス! ウチらが強くなるには絶好のチャンスじゃない!」


「そうであるぞ? 我の魔力も更に強化されていく事であろう」


 経験者のみんなも反応はマチマチであるが、効果のほどは確かだ。

 そのせいか、絶対嫌だという声までは上がらない。


「今度は駆け足気味じゃなくて、本格的なレイドエリアでのレベル上げかあ。ちょっとキツそうだけど、リューノスケも一緒だし頑張ろっと」


「ちょっとファエルモ!? リューは渡さないわよ!」


「ふふふっ、やだなあ。そんな意味じゃないよお」


 龍之介の名前が出て気色ばむルーティアだが、ファエルモは平然と笑みを返す。


「は、ははは……。お前ら、その……仲良く……だな?」


 そんな両者の間でしどろもどろな様子の龍之介。

 他の場所でもちょっとした雑談などでざわつき始めたので、北条はここで改めて方針を述べて皆の意見を伺う。

 そうして全員の意思を確認した北条は、今日の会議をお開きとし、休憩を挟んだ二日後から、早速新しい方針に従って行動していく事を告げた。







▽△▽△▽△▽




 新しい方針が決まった後、『ジャガーノート』は本格的にエリア攻略を始めて行った。

 すでに六ケ所も攻略しているシグルドらに比べ、キカンスやムルーダは二か所しか攻略していない。

 その為、しばらくの間キカンスらはダンジョン漬けの日々を送る事になる。


 信也ら異邦人組は、すでに単独でもBランクのエリアまではクリア出来るようになっているので、ローテーションで回しながら魔法生物エリアなどをクリアしていった。


 リノイの六人は、今行けそうな所は攻略済みだったので、不死者エリアや火山、雪山エリアの探索を進めている。

 ただリノイのメンバーには"付与魔法"や"結界魔法"の使い手がいないため、不死者エリアの方を優先していた。

 魔法なしで激シブ環境エリアは厳しい。


 北条、エスティルーナ、ボルドなどは、パーティーの軸として分散し、キカンスやムルーダらのエリア攻略を手助けしている。

 特に今回は『ムスカの熱き血潮』のメンバーが数人、祝福によってスキルを授かっていた。

 ムルーダもレアスキルである"魔物育成"を取得し、テンションが爆上がり中だ。


 無論他のメンバーの中にも祝福でスキルを得た者もいるので、戦力的に強化されている。

 それに攻略を優先しているとはいえ、ダンジョンに潜って魔物を倒している以上、レベルだって上がっていた。

 本格的にレベルを上げるのは全員の足並みが揃ってからとなるが、メンバーの中でレベルが低いムルーダやキカンスらは既に二レベル程上がっている。


 結果として、およそ三か月かけて全員がサルカディア内の六つのエリア攻略を果たす事が出来た。

 そして明日からはついに、第二レイドエリアでのレベル上げ初日となる。

 その前日の夜。

 クランメンバーは『ジャガーキャッスル』内で、御馳走を振舞われ、英気を養っていた。



「うえええぇえい! リューノスケぇ、飲んでるかああ!?」


「ねえムルーダ……。それリューノスケじゃなくて、新型のゴーレムよ」


「ムルーダ様。ワタシは見た目は人間ソックリですが、ゴーレムなのでお酒は飲めません」


「なああにいいいい!? リューノスケがゴーレムだってええ!! あはははは、オメー、ギャグのセンスが激ヤベェなあ!」


「ギャグではありません。ワタシは……」


 大分酔っ払っているのか、執拗にゴーレムに絡むムルーダにそれを止めるのを諦めかけているシィラ。


 ダンジョンから持ち帰った植物や、『メッサーナ商会』に頼んで国外から仕入れてもらった植物。

 それらは農業区画にて栽培され、拠点内の食のレベルは大幅に向上している。


 本日出された食事は、食べ物だけでなく酒やソフトドリンクなども全てが格別な美味しさだ。

 特に酒に関しては北条が蒸留した、度数の高いものも混じっている。

 『ジャガーキャッスル』内に設けられたパーティー会場では、それらこの世界の基準からするとハイレベルな食事がそこら中に並べられていた。


 計画はこれからがある意味本番とも言えたが、ムルーダやキカンスなどは四つものエリアをクリアしてきたので、かなりスケジュールが詰め込まれていた。

 その鬱憤を晴らすかのように、大いにはしゃぎ、大いに飲み散らかす。


 拠点の一般住人はあれからもちょこちょこ追加されており、今このパーティー会場で働く使用人の中にも新顔が数人見える。

 彼らは表情は涼し気に振舞いながらも、忙しそうに給仕をしていた。



「ここが……あの何もなかったこの場所が、こんな風になるなんて今思い返すと信じられないな」


「今や俺達だけじゃあない。他の奴らも大勢この拠点には巻き込んでしまったなぁ」


 会場の隅では、『ジャガーノート』の団長(北条)副団長(信也)が会場を見渡しながら話していた。

 二人共感慨深げな表情をその顔に携えている。


「……こうして彼らを見ていると、いずれこの地を去るつもりの俺はどうもいたたまれない気持ちになる」


「気にする事はないさぁ。俺達は好きでこの世界に転移してきた訳じゃあない。だが、そうだなぁ。一つだけ言わせてもらうなら…………」


 北条の言葉の最後は、周囲の喧騒に紛れてほとんど聞こえないような声量だった。

 しかし、すぐ近くにいた信也にだけはその言葉はよく届いていた。

 単純に声としてだけでなく、北条の抱いた心情までも。



『――言わせてもらうなら、お前達がいなくなると寂しくなるな』



 普段口にしないような北条のこのセリフは、場の雰囲気とアルコールのせいだったのかもしれない。

 しかしその言葉は信也に深く突き刺さった。


 すでに異邦人達は、各々が先の進路を決めている。

 おおよそ帰る者と残る者が、半々に分かれる事になるのだ。 


「…………」


「どうしたぁ?」


 不意に黙りこくった信也に北条が問いかける。

 すると信也は近くにいた給仕を呼びとめ、手に持っていたトレイに乗せられたブランデーを一気に飲み干す。


「ぷはぁ……。こ、こいつはよく効くな」


「あ、ああ。確かそいつは俺が魔法で蒸留した奴だから、相当度数の高いやつだぞぉ?」


「そうかあ。それは丁度いいやあ」


 そう言って信也はトレイからもう一つ同じグラスを手に取ると、再び一気に飲み干す。


「おまえ……」


 北条はそんな信也の様子を見て何かを察し、口からこぼれだした言葉が途中で途切れる。



 翌日からダンジョンに潜るというのに、今宵は大いに盛り上がり、そして酔いつぶれる者が続出する。

 しかし、それもまた彼らの記憶へと、深く刻まれる事になるのだった。



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