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どこかで見たような異世界物語  作者: PIAS
第十九章

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第530話 ダブル攻略


◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ここは一旦俺が引き受る! "インペリアルガード"」


 地下迷宮エリアの三十層。ボス部屋の中では信也達が守護者(ガーディアン)であるグローツラングと戦っていた。

 ここのボスはオルダカマク、グローツラング、オーンボロゾ、ロックボアの中からランダムでどれかが選ばれるが、グローツラングは中でも一番厄介なボスだ。


「すまないねえ……」


「キュッキュ!」


 信也が盾の闘技奥義スキル"インペリアルガード"を発動させると、これまでナターシャを攻撃していたグローツラングはまっしぐらに信也を狙い始める。

 その間にラビが"神聖魔法"でナターシャの傷を癒していく。


 守護者(ガーディアン)へと挑む信也達のパーティー編成は、信也、マデリーネ、アリッサ、ロアナの四人と、北条の従魔であるニアとラビ。

 当初はこのメンバーで向かうはずだったのだが、守衛組からも参加希望者が出たので、更にナターシャとレオナルドが急遽参加することになった。


 人数は増えたものの、元々その内の二体は従魔だったのでパーティーシステムのカウントには入らない。

 この六人プラス二体で向かったのは、当初の予定通り地下迷宮エリア。

 比較的攻略が容易なこのエリアだが、運悪く最強のグローツラングを引いてしまったせいで、ナターシャが負傷してしまっていた。


「いいか? 迷宮のボスはどれもタフだ。あせってダメージを稼ごうとせず、地道に削っていくことを意識しろ!」


 これまで散々ダンジョンのボスと戦ってきた信也は、これまでの経験で得てきた経験を仲間へと伝える。


「分かったよ。つい攻撃があてやすいもんで、調子にのっちまったようだ」


 素直に反省するナターシャ。

 彼女は戦闘バカな一面はあるが、無謀に突っ込むだけしか能がない戦士ではない。

 引退前はBランクの冒険者だっただけに、退くべきところは退くことを理解している。


「ええい、食らうのです!」


「アリッサ! 左右から挟み撃ちにするぞ!」


「ああん、マディちゃん待ってよぉ」


 信也の使用した"インペリアルガード"は、魔物のヘイトを大きく稼ぎ、同時に防御と魔法防御を強化することができる。

 信也が真正面からグローツラングの猛攻を受けている間に、他の面々がヘイトを稼ぎ過ぎないように攻撃を加えていく。


 ただ信也自身も盾を構えながら魔法や魔眼などで攻撃しているので、そうそうターゲットが信也から外れることはない。

 この辺りもこれまで戦ってきた経験の賜物だ。


 今自分がどれだけ敵のヘイトを稼いでいるか。味方があとどれだけ攻撃したらタゲが自分から外れるか。

 そういったものを、信也は大分感覚的につかめるようになってきている。


 ただ適当に挑発系スキルを使用して突っ立っているのではなく、その辺りをしっかり理解して戦えるようになると、タンクというものの有難みというものが他のパーティーメンバーにもよく理解出来る。


 その後も三十分以上戦い続けたというのに、以降は信也がキッチリとヘイトを管理して他の仲間に攻撃させなかった。

 念のため、後衛のニアとラビの周りには信也が新しく覚えた"結界魔法"で結界も張っていたが、その必要もなかった位だ。


「GUOOOOO!!」


「やった……か?」


「わぁい、やったねぇ!」


 十五メートル近くもある巨大な蛇の魔物グローツラングは、体をうねらせるようにしながら地面へと倒れる。

 大きな音と埃をまき散らしながら倒れたグローツラングは、すぐにも光の粒子となって消えていった。


「や、やりました!」


「ああ。みんな、よくやってくれた」


 信也が労いの言葉を掛けると、レオナルドは照れ臭そうに頭をかく。

 レオナルドは第一次募集組の守衛の一人で、当初は最年少であり実力も一番下だった。


 しかし彼の持つ"取得経験値上昇"と、"剣士の魂"というユニークスキルによって、第一次募集組では一番の成長を見せた。

 今ではレベルも五十を超え、二つ目の職業を解放して更に成長を続けている。


「それじゃあ、さっさとドロップ回収して奥にいきましょ」


「そうだな」


 ロアナの呼びかけに信也は短く答えると、"アイテムボックス"でドロップを回収していく。


「わぁ……。まるでご主人様みたいなのです」


 近接戦闘に攻撃魔法に特殊能力系スキルに"結界魔法"。

 治癒系の魔法も"回復魔法"を覚えており、"アイテムボックス"まで使用できるようになった信也は、"器用貧乏"というスキルの効果を遺憾なく発揮させていた。


 北条以外でスキル称号の四段階目に到達しているのは、現在のところ信也と龍之介の持つ闘技系称号『闘技スキルの限界に挑みし者』だけだ。

 この称号によって、二人には闘技系スキルの熟練度獲得にプラス補正が付くことになる。

 この効果によって既存の闘技スキルだけでなく、新たに闘技スキルを覚えようとする際も短期間で覚えられるようになった。


「はは、まだまだ北条さんには届いていないけどな」


「いやいやたいしたもんさ。最初会った頃はまだ私のが上だったけど、今じゃシンヤには敵う気がしないからね」


 ナターシャも勿論、雇われてからも更にレベルを上げていたが、今の信也には敵わなくなってきている。

 魔法とかなんでもありでやった場合、まずナターシャに勝ち目はないだろう。


「確かに自分でも強くなったとは思う。でも、今のまんまで満足はしてられない。北条さんだって、未だに歩みを止めていないしな」


「ホージョーの旦那は……ありゃあ、なんなんだろうね。神でも討とうってな位、貪欲に強さを求めてる感じがするよ」


「そうねぇ。エルダードラゴンをテイムしてくるなんて、常人の発想じゃないわぁ」


「ふふん、それがホージョーの規格外な所なのだ。常人で測れるような男ではないということだな!」


 何故か得意げに北条について語るマデリーネ。

 そんなマデリーネにアリッサのツッコミが入る。


「あらあらぁ。マディちゃんったら、まるで自分の男のように誇らしげになっちゃってぇ」


「な、なななななぁぁぁ!?」


「確かにホージョーの旦那なら、漢としてはこれ以上ないくらい頼もしい限りだね」


「ば、バカなことを言うな! ホージョーはただ、その、そういうのじゃなくて一人の戦士としてだな……」


「またそれぇ? そうやってグズグズしてるとぉ、他の誰かに取られちゃうよぉ?」


「私も亡き夫と出会う前に知り合っていたら、アタックしていたかもしれんな」


「ぬっ、むむむむ…………」


 アリッサとナターシャの揶揄いだか本気なのか分からない言葉に、マデリーネが思わず口を詰まらせ始める。

 信也とレオナルドはスルースキルを発動して、二人で先ほどの戦闘の話を始めているし、ニアラビは三人の女の様子を興味深く見守っていた。


「あの……ドロップ……回収…………」


 そんな中、一人ロアナの小さな声が誰の耳にも届くことなく、ダンジョン内にか細く響いた。







▽△▽△▽



「にしても約一週間でエリアを一つ制覇か」


「途中の迷宮碑(ガルストーン)から始められたとはいえ、早く終わったねぇ」


 ようやくドロップを回収し、地下迷宮エリアの最奥から転移部屋へと戻ってきた一行。

 とりあえず目的は果たせたので、一旦ダンジョンを出て拠点へと戻ろうとする信也達。

 しかしそこにナターシャから待ったの声がかかる。


「なあ、このペースならあと一つ位はいけるんじゃないか?」


 今は元々拠点にいた三つのパーティーを編成しなおして、バラバラに行動をしている所だ。

 その中で一番時間がかかるのは、レイドエリアに向かった陽子たちだろう。


 これらの探索が終わった後は、一旦拠点で全パーティー揃っての会議をすることになっている。

 陽子たちにタイミングを合わせるなら、確かにまだ時間的に余裕はあった。


「む、そうだな……。地下迷宮の罠エリアならいけるかもしれんが……」


 地下迷宮の罠エリアは、その名の通り罠の多いエリアだ。

 二十五層に守護者(ガーディアン)が待ち構えており、ここでは固定でルームイミテーターが出現する。

 ストーンゴーレムを召喚してくるが、ルームイミテーター自体がDランクの魔物なので、今の信也達なら問題なく倒せるレベルだ。


「ふむ。強くなれる機会があるなら、私は行くぞ」


「そうねぇ。罠相手だとあたしは何も出来ないけどぉ……。あ、でも罠の矢が飛んできても、マディちゃんを盾代りにしちゃえばいいかもぉ」


「いいかもぉ、じゃない! お前は私を何だと思ってるんだ!?」


「えへへ、マディちゃんはマディちゃんだよぉ?」


「くぬぬ、お前という奴は……」


「分かった。では地下迷宮―罠エリアに向かうか。飛ぶのは十一層でいいな」


 この二人のこうしたやり取りもすっかり慣れてきた信也。

 二人がじゃれつくのを気に止めず、転移部屋の出口に向かいかけた足をUターンさせ、再び迷宮碑(ガルストーン)へと向かう。


 そしてそれから更に一週間ほどで、地下迷宮―罠エリアを攻略した信也達。

 この短期間で二つのエリアを攻略した彼らは、意気揚々と拠点への帰還を果たした。



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